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  • 小飼弾の論弾 #141 「宇崎ちゃんよりも大きな「いらすとや」問題」

    2019-11-30 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2019年10月29日(火)配信その2をお届けします。

     次回は、2019年12月10日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2019/10/29配信のハイライト(その2)

    • 宇崎ちゃんよりも大きな「いらすとや」問題
    • 英語の民間試験をめぐる天下り問題を解決するには「捨扶持」?
    • 吾妻ひでお逝去とギャグマンガ作家の寿命の縮まり方

    宇崎ちゃんよりも大きな「いらすとや」問題

    山路:じゃあ、宇崎ちゃんの話からいっちゃいます?この献血のところで、宇崎ちゃん、私このマンガを知らなかったんですけど、これマンガなんですかね?

    山路:『宇崎ちゃんは遊びたい』というポスターが献血のところにありまして、それに対してこういう胸の大きな女の子で献血を呼びかけるのはいかがなものかと、けっこう噛み付いて来た人もいて、それでまぁちょっと話題になってますよね。

    小飼:ちょっとこのリンク、何かっていうと、じつはですね、僕21日ちょうど1週間ちょい前に献血行って来たんですよ。別に宇崎ちゃんが云々とかぜんぜん関係なく、たぶん宇崎ちゃんよりも、献血を促すメールのほうがウザいかなというのはあるんですけども。
     僕が問題だなと思ったのは、宇崎ちゃんのほうじゃなくって、この「いらすとや」のイラスト。

    山路:ええ、そこ?宇崎ちゃんではなくて、いらすとや。

    小飼:うん。いやなんでそもそもこっちを問題にしないんだろうかね?特に、絵かきのプロの皆さん。これ宇崎ちゃんのやつと比較してみると、この宇崎ちゃんというのは、まぁいわば、今回はキャンペーンのトップダウンできてますよね。だから献血の日本赤十字の組織の上のほうでコラボレーションが決まって、各献血ルームにポスターが配られるという形ですけども、翻ってこのいらすとやさんのイラスト。
     単にいらすとやさんがこのために描いたのではないですよね。現場の人がいいたいことを描くのに、要は部品として、素材として使ってますよね。これ献血だけじゃないじゃないですか、今いろんな、たとえばレストランとかバーとかもいらすとやのイラストも使ってますし、もちろん役所も使ってますし。

    山路:いらすとやさんによると20点以上まとめて使う場合は、金払ってくれみたいなことはあるらしいけど。

    小飼:とにかく安心してお金を払わずに使える素材イラストというのは、本当にいらすとやに席捲されてますよね。

    山路:それは、問題と考えるべきなんでしょうか?

    小飼:問題と考えるべきだと思います。だって、要は一昔前の言い方で言うと、クリップアートですよね。世界における多様性というのが、ごっそり失われて。

    山路:ただそれでいうならば、Linuxとかそういうオープンソースウェアみたいなものって、これに近いことだったりしません?つまり今までプロプライエタリがソフトを作っているそういう業界の人たちからみたら、オープンソース、Linuxみたいなもんって、まさにいらすとやのように見えるんじゃないかなとか。

    小飼:それはイエスでもありノーでもある。というのもLinuxというのは現代的なコンピューター用のオペレーティングシステムとして、必要なものというのを一通り持っている。じゃあいらすとやのイラストのみで、世界を均一出来るの?だからもちろんそれに近いことをネタとしてやっている人たちはいるよ。あのヤクザガンダム(『鉄血のオルフェンズ』)の、最終回の一歩手前の「止まるんじゃねぇぞ」というのを全部いらすとやでやったりとか。

    山路:それちょっと見てみたいな、後で検索してみよう(笑)。

    小飼:うん、ネタとしてやっている人はいるけれども、でも本気で色んなところのイラストというのを、いらすとやさんので全部出来るの?いらすとやさんで、ある日、もう無料で使うことはまかりならん、というふうに言ったら皆さんどうするの?過去にあるものも含めて。

    山路:過去に、でも自由に使っていいっていったやつをたとえば、ある時からそれ以降は使えないということができても、過去には許可してたんだったら、過去のやつを回収しなきゃいけないということになるんですか。

    小飼:なりますね。なりうるというの風に、たとえばAmazonの中の人が判断した場合というのは、いらすとやのイラストが使われている作品というのをKindleから引き上げちゃうかもしれないですよね。

    山路:うーん、なるほど。

    小飼:だから未来永劫、何をどうしても無料ではないんですよね、いらすとやさんの。

    山路:ある意味、その作者の方の胸先三寸、もう本当に腹づもりにかかってると。

    小飼:うん、だから何種類かはなければいけないんですよね。やっぱり無料のイラストというのは。いらすとや、何重もの意味で凄くて、まず上手いですよね。

    山路:上手いですね。

    小飼:まず普通のイラストレーターが取り上げないような素材というのも、果敢に取り上げてくれますよね。

    山路:けっこう、ブラックなネタとか。

    小飼:そうそう、時事ネタとかっていうのをサッと拾ってくれますよね。それだけではなくて、一目見ていらすとやってわかるよね。

    山路:あれ、一人で描いてるんですかね?本当に。

    小飼:いや、だからこれ本当に凄いですよね。

    山路:これしかし、ただそれに対する対抗って、なかなか難しくないですかっていう。あれだけのアセットを、種類のアセットを、しかも人に受け入れられる、なんかクスッと笑えるような形であれだけの膨大なやつを無料でクリエイティブ・コモンズか何かで提供するみたいなことっていうのが、相当難しいわけじゃないですか。

    小飼:相当難しいんですけども、でもこの現状が続くというのはヤバい。だから現場で少しでもいじって使うイラストというのは、もう本当にいらすとや以外になくなりつつある。まだこれなら一昔前のMicrosoft Officeについてたダサいクリップアート、コピペしてもらった方がマシなんじゃねという。

    山路:Microsoftやめちゃいましたもんね、なんかあの辺のやつ。

    「いらすとや補完計画」(コメント)

    小飼:だからそのいらすとやのイラスト、前に比べればそれこそ数あるコラボレーションキャンペーンのキャンペーンガールの1人の胸の大きさなんていうのは、それこそ小さな問題。

    山路:なるほどね、少なくともこのなんかいらすとやに席巻されている……。

    小飼:これの問題というのは、いらすとやはぜんぜん悪くないよね、全く悪くないどころか誉めることしか出来ない。誰も責められない。誰も責められないんだけれども、何かそこにこのまま放置しておくとヤバい問題があるという例では、いらすとやのイラストの蔓延という方が、よっぽどでかいですよ。

    山路:それは何というかそれこそ、たとえば植物とか動物とかでもある一種のやつが全部広がっちゃって、なんか米の品種もとっても美味しくてどこでも獲れて、丈夫な米が日本全国すべてそれになった時に。

    小飼:そうそう磯焼けした磯になりつつあるんですよ。

    山路:なんか伝染病が起こった時に、一挙に全滅しちゃうという。

    小飼:だから生物界における葛ですとか昆布ですとか雲丹ですとか、そういうものにいらすとやのイラストはなりつつありますよね。

    山路:アニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』とかでもけっこうそういうネタを使ってましたよね。そうか、多様性をどこかで維持する努力というか、方向っていうのを、何となく皆が持ってないと、ただ安易に、楽だからとそこだけに流されてると危険に……

    小飼:だから、そのうちに宇崎ちゃんがいるところも、もういらすとやのイラストになるんじゃないかと。

    山路:文句つけにくいんですもんね。いらすとや、あんまり色っぽくないから、アハハ。うーん、なんか老若男女に問題ない形のやつを選べちゃいますもんね。へえ、ちょっとなかなかそれは面白い。

    小飼:そろそろこの現状でいいんですか?という風に言っておかないと。

    山路:それになんとかしようと思ったら、けっこう金を積んだりとかして、そういうイラストみたいなものを、金をつぎ込むとかなんかそういう政策もとらざるを得ないんじゃ……

    小飼:今までのOfficeについてたクリップアートとかと違うところというのは、個性がはっきりしているところなんですよね。もう一目見ていらすとやじゃないですか。もう本当に多様性を確保する場合にも、そこを注意しなければいけない。だから匿名のクリップアートを復活させるのではなくって。いらすとやとガチンコ勝負出来る人材が欲しいわけですよね。

    山路:難しいな、それ(笑)

    小飼:難しいよなあ(笑)

    山路:凄えなそれ、超難易度高いですね。政府主導でなんか無料クリップアート作ったら絶対つまんないやつになりそうですもんね。

    小飼:うんうん。

    山路:これは誰も悪くない上に、なんかじつは危機が迫っているという難しい問題だな。

    小飼:危機だと思わないのであれば、それはそれまでなんですけども。

    山路:本当ね、いらすとやさんがそれこそなくなっちゃったりとかしたって、それだけでも。

    小飼:まだ1桁年ですよ、2012年ということは。

    山路:ああ。じゃあもう1つ社会関係で、軽いネタではないですけども、お笑いネタになるんですかね、もうこれは。マラソンが札幌になるかもしれないという、これは(笑)

    小飼:いや、そのニュースが流れた時に、虚構新聞が「うちが出したニュースじゃないから」という凄い、虚構新聞すら匙を投げるという、これ謝罪記事よりも更にレベルが一歩上がりましたよね。

    山路:アハハ

    小飼:うん、虚構新聞が敗北宣言を出したというのは。

    山路:しかもこれに対して、東京都が打ち出したのが午前3時にスタート。

    小飼:もう益々ひどいというのかね。

    山路:五輪のマラソンに対してはさんざん報道されている通りなんですけど、最近この現実の虚構化が進んでいるというか、本当に俺たちは現実の世界に生きているんだろうかということが疑わしくなるような事件が多くないですか?

    小飼:いつの間にかあれですよ、我々の肉体もいらすとやのイラストになるんですよ。

    小飼:というかもともとそうで、我々じつは、Vチューバーのアバターだったという、そういうオチがつくかもしれない。というのか、もうこの世界自体が仮想なんだからどうでもいいやって、本当に匙を投げたくなるような、もうニュースなのか何なのか。

    山路:もう今さら聞くのも何ですけど、札幌でマラソンやることについてどう思います?どっちゃでもいいですよね、弾さん(笑)

    小飼:うーん。

    山路:いやまぁ、ただ出場のために頑張ってきた人とか、そのボランティアの人とかは大変だろうなという、いろいろ思いますけど、これは今言ってももう何かしょうがない話ですけれどもね。

    「ルームランナーでいいやあ」(コメント)

    小飼:もう本当に。

    山路:国内、競技場何かでグルグル回ったらいかんのかみたいな話は出てますけどね。

    小飼:いや、だから選手、みんなVチューバーでいいじゃん。

    英語の民間試験をめぐる天下り問題を解決するには「捨扶持」?

    山路:じゃあええと、この英語の民間試験の話、ちょっと行きますかね?

    小飼:だから何で文科省はあんな風にするっていうことにしたのか?しかも英語だけ。天下り確保以外に合理的な理由っていうのは、ありえる?

    山路:今までの試験の何が良くなかったいうのが、正直ちょっとわかんないんですよね。

    小飼:少なくとも、英語に関しては大学を受験する前に6年もやってて、この程度なのかというのは感じますね。でもそれをやるのであれば、まず真っ先に変えなければいけないのは、あれですよね。

     
  • 小飼弾の論弾 #140 「ダークウェブ上のBBCサイトと、シャム双生児の米中」

    2019-11-23 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2019年10月29日(火)配信その1をお届けします。

     次回は、2019年11月26日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2019/10/29配信のハイライト(その1)

    • 「テクノロジーに長けていた」キリスト教と「非信者は人にあらず」の一神教
    • Googleの量子コンピューターはなにが新しいのか?
    • Microsoftが落札した国防総省の事業案件の規模
    • 仮想通貨Libraのゆくえ
    • 中学生が書いたプログラム言語とオライリーのサブスク移行について
    • 「中国依存」と人類単位でのリスクヘッジ
    • 人種のIQと「孤高の天才は凡人軍団に敵わない」

    「テクノロジーに長けていた」キリスト教と「非信者は人にあらず」の一神教

    山路:今日はタイトルにもあった通り量子コンピュータの話ちょっと触れたりとか、あとは中学生が開発した、ブローン(Blawn)って読むんですかね?この独自プログラミング言語、あとそのタイトルには出さかなったんですけども、文科相の「身の丈」発言というのがありまして。

    小飼:ああ、はいはい。

    山路:けっこう、炎上しとる様子ですよね。その辺り。この受験の問題に関しては限定のほうで話をしたいと思っているんですが、ちょっと前半ITの話が多目になるかなという気がするんですけども、軽いところから言うと、個人的に最近ウケたのがローマ法王庁の。

    小飼:アハハ

    山路:どういうことなんですか、このネタ。ローマ法王庁が十字を切ると、バイブルの一節が読める、そんなような感じの機能を持った。

    小飼:脆弱性があったというのが。

    山路:あれって何なんですかね、何となく利権のニオイがしなくもないんですけれど。

    小飼:免罪符アプリとかまだ売ってないのが不思議なくらいだよね。

    山路:アハハ、よく考えてみたらローマ法王庁っていうか、あの辺のカソリックまわりのやつって、そういうこと商売にずっと昔からしてきた人たちですもんね。

    小飼:昔からけっこう新しい技術にもじつは長けてた。

    山路:新しい技術というのは、たとえば?

    小飼:新しい科学技術とかっていうのも、だからわからないものは、弾圧も出来ないんですよ。こういう言い方もなんだけど。

    山路:ああ、だからけっこうそういうその時代の最先端のとこはいちおう調べて。

    小飼:そういうことです。ガリレオをもっとも正しく理解していたのはたぶんもうローマ法王庁です。

    山路:なんというか知能の無駄遣い的なところはありますけどね、そういう話聞くと。農業技術とかもけっこう修道院が最先端なやつをやってたという話も。

    小飼:実際ベルギービールってどこが作ってるんですか?そういうことですよ。

    山路:なんか不思議ですよね、そういう風に神を重んじる人たちっていうのが、1番テクノロジーに理解を示しているっていうのが。

    小飼:実際にそういう理解があったからこそ、生き残っているというところはあると思います。

    山路:ああ、コメントで神学って結局何なのかよくわからない。って、私もわからないですね。キリスト的神学って。

    小飼:うんまぁそれを言ったらね、イスラムのファトワはもっとわかんないんだけども。
     でも少なくともキリスト教までは非信者じゃなくても、キリスト教を知っている非クリスチャンという存在はあり得ることになっている。
     だから信者ではないけれども、聖書のことをよく知っているという。

    山路:いちおう教会的にはそれなりに認めているというか。

    小飼:そうそう。だからじつはそこの部分というのが、イスラムとの1番の違いで。
     だから知ってるけれども、要は外からの批判というのが構造的に出来ない筈なんだよね、イスラムというのは。だからイスラム学者というのは、必ずイスラム、そう宗派もイスラムなんですよ。中田先生みたいに。

    山路:これ言うと問題になるかもしないけど、つまり入っちゃわないと、信者じゃないと発言できないという。

    小飼:そうなの、これは前にも言ってるんだけれども、信教の自由とは相容れないよね、どう考えてもっていう。

    山路:それって改革が起こしにくいですよね、とても。

    小飼:そう、だからクルアーン(コーラン)で言ってることと、たとえば科学的なObservationというのが食い違った場合にはクルアーンを取らなければいけなんですよね。
     クルアーンに書いてあることというのも、けっこうでかい隙間があるので、だから人間がいろいろワイワイガヤガヤ言う余地があるわけですよ。
     これこそが、クルアーンが言わんとしていることだ。っていうのは判定するのはあれですね。

    山路:この、宗教指導者の何だっけ。

    小飼:そういうことです、ファトワを出す人たちですね。

    「コーラン原理主義は相容れない」(コメント)

    小飼:相容れないんですよ。だからキリスト教でもけっこう苦しいんですよね。信教の自由というのは。

    山路:苦しい?

    小飼:いや、だから導入するというのは。まともに信教の自由というのをインストールしようとしたら、少なくとも政治、そうクリスチャンに勝つ政治家というのはその時点でもうかなりあり得なくて、イスラムで勝つ民主的に選ばれた政治家というのはもっとあり得ないんじゃないかと。
     これはもう僕の個人的な意見だけではなくって、リチャード・ドーキンスがわざわざ1冊本を書いてそう言ってますね。

    山路:ああ宗教ディスりまくったやつでしたっけ。

    小飼:そうです。『God Delusion』です。

    山路:これが今イスラムのちょっと苦境にも繋がっているんじゃないかなという気は、苦境というかあっちのほうの揉めてることにも繋がってるんじゃないかという気がしなくもないですけどね。

    「一神教は理解しづらい」(コメント)

    山路:まぁ確かに日本人は気楽でいいですよね、その点。

    小飼:ああでも理解できないということを知っておくだけでも違うんですよ。だから1つ知っておかなければいけないのは、一神教徒からすると「神を信じていないというのは、それだけで人に非ず」なんですよ。
     この認識っていうのは、絶対に持っておかなければいけない。

    山路:いや本当、海外に行った時なんかに。

    小飼:だからそう、猫とかと同じカテゴリーになんですよ。かわいいし、だからイジメたりするものではないけれども、人権があるかというと、そもそもあいつら人じゃないしなんですよ。

    山路:ほんと海外で宗教に関する話する時って、めちゃめちゃ用心しないといけない。

    小飼:そうなんですよ。だからイコール beingではないんですよ。対等な存在ではないんですよ。

    山路:いやいや怖い怖い、皆さんも気をつけて下さい。

    小飼:俗っぽいところではけっこう何となくクリスチャン、何となくイスラムという人もいることはいます。

    山路:うーん、イスラムの世界でその何となくイスラムっていうのは、けっこう許容されているというか、そんなにひどい目に遭わないんですかね?国にもよるっていうことなんですかね?結局。

    小飼:ただしcritical conditionになった時にどうなるのかっていうの時には、まぁ要は日本だと、こういう時に名前が出てこないな。

    山路:え?宗教の?イスラム関係で?

    小飼:この間、この間っていうほどの……。

    「『聖☆おにいさん』はイスラムは入れれない」(コメント)

    山路:ああ、コメントで、あれもけっこうじつはギリギリのマンガですよね。

    小飼:けっこう、記述ヤバいと思うんだけども、けっこうあれが攻撃されてないというの奇跡だと思う。
     だって『悪魔の詩』を翻訳した人は殺されてるんですよ。この国で殺されてるんですよ。筑波で殺されてるんですよ。だから日本といえども安全とは言い難いですね。

    山路:そういう小説家な、戯曲になるのかなあれは。私も読んでないんですけども、そこでマホメットとかをちょっと揶揄する表現があってということですよね。死刑、どこまでも追い詰めて殺せみたいなものを出されちゃったんですよね。そういう命令を確か。

    小飼:ああやっと出てきた。最近、固有名詞がさっと出てこなくて、遠藤周作。

    山路:ああ、はいはい『沈黙』とかの。

    小飼:はい。『沈黙』まさに、本当にそういうレベルになった時に、踏み絵を踏めるかっていうかね。

    「大英博物館に『聖☆おにいさん』が展示された奇跡」(コメント)

    山路:凄いな。そんなことあったんだ。

    Googleの量子コンピューターはなにが新しいのか?

    山路:じゃあちょっとITのほうの話で、最近世間を驚かせたというのか、凄い普通の新聞の一面にも載ってた、Googleの量子コンピューターの話が。

    小飼:ああ、あれはですね、予め先に言っておくと、「なるほどわからん」です。

    山路:アハハ。私も本当にぜんぜんわからないですね。

    小飼:なるほどわからんの1番の理由というのは、Quantum Supremacyというのが、Buzzwordになっている。

    山路:量子超越性っていったりするやつですか。

    小飼:そう量子超越性というのは、要は量子コンピューターを使えば、今のConventionalなコンピューターを在来型っていうのかこういう時に、そう在来型のコンピューターよりも、ずっと素早く計算できる。要は実値でQuantum Computingというのが役に立つ事例が出始めますよというのが、Quantum Supremacy。

    山路:今まででもそのたとえば、素因数分解なんかを解けますよとか言われてたじゃないですか。それっていうのは、完全に従来型のコンピューターよりも、量子コンピューターのほうが優越するっていう証明まではされてなかったということなんですか。速く出来そうだっていう。

    小飼:いや速く出来るというのは証明されたんです。でもその速くするために具体的に、どのくらいの大きさの素因数分解をするんですか?っていった時にそこにbit coherencyという言葉が出てきて、要は何で量子コンピューティングが速い理由というのは、それが一種の並列計算だからなんです。

    山路:なんか状態0と1のはっきり分かれてるんじゃなくて、重ね合わせたみたいな状態がいくつもあってという。

    小飼:そう、それを何ビット分重ね合わせられるかっていうのが、まぁ要は実用になるかどうかというのが1つの指標だったんですけども。だいたい53ビットくらいだろうという当たりをつけて。それを実現できたと。でも実際にたとえば今使われているRSA暗号というのは、2048ビットが主流なんですけども、ついこの間まで1024だったんですけども、そろそろ量子コンピューティング抜きですよ、並列コンピューティングでも1024ビット、ヤバいんじゃねということで2048ビットに。
     でも基本的にショアのアルゴリズムだと、必要な量子coherencyというのは2048ビットの筈なんですよね。
     だから別の問題ですね。53ビットで十分。でも53ビットっていうのでも、もう尋常じゃない。

    山路:凄い業績なんですか?これは、今回の。

    小飼:いや、だから、「本当かよー」で、それは言いすぎだよっていうふうにIBMから物言いがついてますよね。

    小飼:今回のニュースでむしろ1番笑ったのが、仮想通貨の暴落ですね。

    山路:コメントにも「ビットコイン暴落」って出てますよね。あれ?それにつられてFacebookも暴落した、ちょっと下がったんでしたっけ?

    小飼:リブラの関係かな。Facebookはむしろ、この後出てくるんだっけ?リブラの話。

    山路:そうですね。

    「シミュレートしたのが量子コンピューター自身だからな」(コメント)

    山路:あ、今回のQuantum Supremacyを証明するのに使われた題材がということですね。これってビットコインが暴落したっていうのは、あんまり何というのかな、ちょっとパニック売りというか、あんまり関係ないですよね。
     これ素朴な疑問なんですけど、量子コンピューターって普通のエンジニアとか研究者じゃない、普通の人にとって使われる時のイメージってどういう感じになるんですかね?身の回りにパソコンみたいな感じで量子コンピューターが。

    小飼:一種のASICというのか一種のコプロセッサになるというのは確実ですよね。というのもどんな問題でも普通の在来型、ノーマル型のコンピューターよりも、上手く解けるわけではないので。それに向いた問題をいっぱい解かせたいと。

    山路:昔のパソコンだったらそれが何か浮動小数点演算用のやつが載って、最近だったらGPUが載って。

    小飼:だけども根源的な違いというのは、そういうGPUにしろASICにしろ、根本的な原理というのはノイマン型なんですよね。但しそれを同時に稼働させるというだけで。だからそこの部分というのが、量子コンピューティングとはやはり決定的に違います。決定的に違う部分というのは決定的に違うんですけれども、ノイマン型だけが演算手段ではないんですよね。だから数ある演算手段の1つなんですけれども、演算手段そのものを記述できて、要は万能演算装置を実装出来るというので。ノイマン型コンピューターは要はセルフホストが出来るわけです。

    山路:ふーん、前ちょっとコンピューターの話題を取り上げた時に、アナログのコンピュータもありえるということが。

    小飼:そう、粘菌プロセッサもそうです。アナログコンピューティングのほうが優れている部分というのはいっぱいあるんですよね。実際にたとえば、高速道路の配置計画とかっていうのは、石鹸膜でシミュレートしてましたよね。

    山路:え?え?何をですか?何を石鹸膜で?

    小飼:たとえば、どういう風に高速道路を敷くと1番短い距離、要は1番安い予算で出来るのかっていうのを。

    山路:石鹸膜で?

    小飼:どうやるかっていうと、まず各都市にあたる部分というのを、爪楊枝みたいなのを板に立てておくわけですね。地図に。それでもう1枚地図で蓋をします。石鹸膜にぴちゃんとつけます。あげます。パチンと弾くと石鹸膜が残ったところというのが、オプティマルな。

    山路:へえ、しかしそういう手法の計算、そういう計算手法というのは何か自己記述は出来ないということになっちゃう。

    小飼:そういうことです。万能性に欠けるわけです。

    山路:そうか、だからアラン・チューリングのユニバーサル・チューリングマシンが凄かったという。

    小飼:凄かったというのはそういうところなんですよ。

    山路:ああ計算が出来ればいいということでもない。

    小飼:はい、どんくさくても、計算が出来るものであれば、必ず書き落とせると。

    山路:風力であろうが水力であろうが。

    小飼:そうなんです。

    山路:石使おうがなにしようが。

    小飼:そうなんですよ。今のところは1番簡単な手段というのは、シリコンで電子回路を作ってというものですけれども。

    山路:量子コンピューターはそれとは違う。

    小飼:違うんですよ。

    山路:これは自己記述みたいなことでいうと、量子コンピュータはユニバーサル・チューリングマシン的なものを目指している?

    小飼:はい、だからUniversal Quantum Computerというのはまだない筈です、僕の知る限りでは。

    山路:なんか今回その量子コンピューター自体がシミュレートしたというのがあるから、何かそいうことなのかなと思ったんだけども。

    小飼:何だけれども、普通の在来型コンピューターでは解くのがあまりに辛い問題が、スルッと解けそうだよという問題が見つかり始めたから話題になっている。

    山路:ああ、じゃまだ本当に自分達の生活がどうにかなるというレベルで影響を与えるというところまではぜんぜんいってないわけですよね。

    小飼:うん、本当に1番重要なのは、普通のコンピューターがそのまま何百万倍、何億倍、何兆倍速くなった、わけではないっていうことですね。
     根本的な原理からして違うという。だから根本的な原理からして違うので、普通のコンピューターに慣れた人が取るであろうアプローチというのは、かなり間違っている可能性が大きい。だから量子コンピューターに詳しい人たちが、普通のコンピューターに詳しいかというとそういうことはないので。

    山路:量子コンピューターの入門書みたいなのをパラパラっと見たんですけど、量子コンピューターのプログラムって今の段階で見ると、言ってみたら配線とか回路を組むみたいな。

    小飼:ちょっとトウが立ってるところはあるんですけども、ブルーバックスでずばり『量子コンピューター』というのがあるので、はい。だから最初の1冊としてはあれ薦めておきます。

    山路:なるほどなるほど。

    小飼:ちゃんとショアのアルゴリズムも載ってます。

    「南方熊楠みたいな人が上手い使い方をみつけるかも」(コメント)

    山路:確かに。なんか南方熊楠、確かに量子コンピューター使いこなしそうな気もしますね。

    「Googleが何で量子コンピューター研究するの?」(コメント)

    小飼:それはお金が余っているからでもありますし、もしかしたら自分達の商売を脅かす存在になるかもしれないですし、だから研究しない理由というのがむしろないですね。だから敵に回るのであれば早いうちに、摘み取っておきたいですよね。そう、金は唸るほどあるわけですから。

    山路:その辺のところはGAFAはやっぱり凄いところありますね。

    小飼:YouTubeはかつてはGoogleではなかったわけですよね。だからYouTubeを買うような会社が、量子コンピューターを買わないわけがない。むしろBoston Dynamics手放しちゃったほうが僕としてはショックです。

    山路:変な犬とか、オッサンみたいな感じのロボットを開発しているところですね。

    小飼:そうそう、Alphabetの一部分として何で残さなかったのだろうなというのが。

    山路:金、余裕ありそうなのにって思いましたけどね。

    小飼:むしろそっちのほうが不思議ではある。

    「Googleは最近検索アルゴリズムを変えたらしいですね」(コメント)

    山路:BERTってやつでしたっけ。

    小飼:すみません、量子超越性を吟味できるほど俺、量子コンピューターに詳しくないんだよな。ただ何で量子超越性という言葉が出たのか、Quantum Supremacyという言葉が出たのかというのはわかる。かつては量子の重ね合わせで、どれくらい重ね合わせなければいけないかといった時に、やっぱり1024とか2048のオーダーだろうと思われてきたけども、それよりもずっと少ない、64ビットよりも少ないくらいのオーダーでも役に立つというのが見つかりだした。だからそれを実現できる量子コンピューターが出来るのであれば、本当に使い物になるかもしれないよという論文が出たからです。

    山路:ふーん、じゃあけっこうこれお金とか量子コンピューターのところに、ガンガンと人材とか人とかが、人材とかお金が集まってくるかもしれないわけですよ。

    小飼:でももう少し役に立つところを見せてくれんとな。

    山路:日本でも自民党の量子コンピューターを押す議員連盟が出来たらしいですが(笑)。

    小飼:まぁでも通常型の、うん、通常型、在来型どっちでもいいんですけども、コンピューターを量子コンピューターが置き換える前に、あのバカどもを普通のコンピューターと置き換える方が先なんじゃないですか。

     
  • 小飼弾の論弾 #139 「メッキが剥がれてきたギグエコノミーと、映画『ジョーカー』『HELLO WORLD』評」

    2019-11-16 07:00
    550pt

     「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
     無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!

     今回は、2019年10月8日(火)配信その2をお届けします。

     次回は、2019年11月26日(火)20:00の配信です。

     お楽しみに!

    2019/10/08配信のハイライト(その2)

    • 『ジョーカー』の気になったところと日本から見た「アメリカの豊かさ」
    • ビジュアルを頑張った『HELLO WORLD』と世界をスキャンするための壁
    • ギグエコノミーからわかる「レギュレーションの意味」と「法とアーキテクチャ」

    『ジョーカー』の気になったところと日本から見た「アメリカの豊かさ」

    【00:57:44】

    山路:映画『ジョーカー』、弾さんが昨日メッセージ送って来て『ジョーカー』できれば見ておいてと。私も見ようと思ってたんで行ってきたんですけど。これ凄いですね。

    小飼:いちおうちょっと聞いてみましょうか。『ジョーカー』を見た、あるいは見る予定という方、ノシして、もし『ダークナイト』をまだ見てない人は『ジョーカー』見てからにしてください。

    山路:あ? そう?

    小飼:時系列的に。

    山路:ああ、なるほどね。

    小飼:はいはい。ちょっと『スター・ウォーズ』みたいになってますね。4、5、6のほうが1、2、3よりも先に出たという。

    山路:『バットマン』って何回かリブートとかしてたりするから、直接の話がピタッと繋がっているわけではないんだけど、話的には上手く、結果的に繋がってますよね。

    小飼:だけれども、まあ21世紀の『バットマン』に直接繋がるのはこっち。

    山路:いわゆる『ダークナイト』3部作というのかな。

    小飼:そうそう。20世紀のやつっていうのは、それに比べると本当に何と言えばいいのかな、おこちゃま向けコミック。

    山路:1作目とかジャック・ニコルソンとか出てますが。

    小飼:あのね、でもやっぱりジャック・ニコルソンの無駄遣いとまでは言わないけども。

    山路:確かにな。

    小飼:やっぱり、じゃあどっちが映画史に残るって言ったら21世紀版のほうですよね。

    山路:昨日改めて『ダークナイト』見直したんですけども。

    小飼:いや、でも見たくなるよね。でも『ジョーカー』を見た後、立て続けに『ダークナイト』見たらかなり辛くなるよね。

    山路:なんか思想的に汚染されしまう感じが相当、この『ジョーカー』ってけっこう、映画の『ジョーカー』アメリカでも非常にこう作品の評価とは別に映画館で厳戒態勢が敷かれたりとか、映画館自体が子供にはもう見せないで下さい、絶対に見せないで下さいと言っている。

    小飼:21世紀の3部作の、3作目の『ダークナイト・ライジング』の時に映画館での乱射事件があったじゃないですか。

    山路:はいはい。ただこれ自分が見て思ったんですけど、そうですね、じゃあ簡単にストーリー言っておいたほうがいいのかな。これ、本当にストーリー自体は非常にじつはシンプルなんですよね。

    小飼:うんというのか、もうネタバレというよりも。

    山路:予告編である意味、全部語られているといえば語られているんですよね。

    小飼:うんうん。

    山路:一番有名な悪役のジョーカーが、一体どういう生い立ちで、どんなふうにその悪のカリスマみたいになってしまったかっていう。

    小飼:そう、アーサー君が母ちゃんを介護して、心優しいピエロのアーサー君がいかにしてジョーカーになるのかというそういうお話ですけど。

    山路:本当にもう話としては、それだけとも言える話なんだけれども。

    山路:いちおうじゃあこのネタバレ中……R-15指定じゃないと確かになんか描けないというのは暴力シーンが酷いとかっていうことではないんですよね。

    小飼:ない。

    山路:暴力シーンの酷さ自体は他の映画のほうが、もっとアクション映画だったりとかそんなんのほうが遥かに酷かったりする。むしろそのそういう暴力のシーンはあるんだけど、決してそれがメインではないんだけど、思想的にヤバい感じになる、非常にこうジョーカーの一人称に観客もついなってしまうような、そういう映画の作り方をしてて。

    小飼:ただ凄い上手いなと思ったのは、僕の最初の感想というのは『ダークナイト』ほどじゃないよね。

    山路:そうですか。

    小飼:うん、だからホアキン・フェニックスのジョーカー素晴らしかったけれども、ホアキン・フェニックスが道化師で、師は師匠の師で、道化師だとしたら、ヒース・レジャーのジョーカーはもう道化神だなと。

    山路:アハハ。神のほうの。

    小飼:なんだけども、これ続き物として見た場合というのは、ジョーカーの強さっていうのは、凄いピッタリと来るんですよ。だから自然とアーサーだったジョーカーが完全体になった頃というのが『ダークナイト』の頃で、その前のお話だっていうのが。

    山路:ああ、なるほどね。

    小飼:まだ人間の面影がある人間といっちゃああれだけども、残ってた頃だったんですよ。だからそうやって考えると、ヒース・レジャー以上のジョーカーを演じちゃったらおかしいよね、順番逆だよね。

    山路:パワーダウンしちゃうことになっちゃうからっていう。うんうん。

    小飼:だからジョーカー耄碌したなっていうことになっちゃうので。シリーズとしてのバランス、これでよく取れたなっていう。

    山路:うんうん。このジョーカーの主張っていうのが、けっこうその単純な悪役のつけたセリフというよりも、刺さってくるセリフ、首尾一貫してるんですよね。『ジョーカー』で言って語っていることと『ダークナイト』で言っていることっていうのが、ちょうど。

    小飼:うん、首尾一貫してないところでも、首尾一貫してるよね。あくまで誰をどう弾くというのは、アトランダムなので。だから皆殺しする人ではないよね。

    山路:これやっぱり重要なセリフっていうのは『ダークナイト』に出て来る「The thing about chaos」なのかなと。
     なんかカオス、「社会をカオスにするのは何だと思う?」っていうそのジョーカーの問いかけというのが、その『ジョーカー』でも『ダークナイト』でもけっこうでかいテーマになっているのかなと。

    小飼:いや、だけれども主義主張はないわけです。

    山路:ジョーカーは。

    小飼:本人が。

    山路:それに共感したまわりが、寄ってくるっていう?

    小飼:そうそう。だから『ジョーカー』何が怖いかっていったら、本人以上に狂気が伝染するところが怖いんですよね。

    山路:映画のジョーカーってまさに今弾さんが言ったように、怖いなと思ったのが『ジョーカー』の映画って、今回の今上映中の映画って、かなり暗い話なんですけど、見た後になんかカタルシスがあるんですよね。そのカタルシスを感じる自分が怖いなみたいな、そういうところがありますよね。「狂気、何するかわからない的な」(コメント)そうなんですよね。これはちょっと見ておく、これたぶんアカデミー賞とりますよね。

    小飼:まぁとるだろうね。

    山路:少なくとも主演男優賞は確実だなと思うし、これアメリカとかで非常に劇場とか警戒していることに関して、どう思います?

    小飼:いちおう『ジョーカー』というのが『バッドマン』という話舞台というのは、ゴッサムというあくまでも架空の都市です。ニューヨークがモデルだとされているけれども、あくまで架空の都市なんですけれども、じゃあどの国にあるかっていったらこれは、あのねU.S.A.以外にはありえないというのがわかる映画でもありますよね。

    山路:USAとは言ってないんでしたっけ?

    小飼:ぜんぜん言ってないんだけども、これまさにネタバレのところでいうと、ジョーカーの最初の殺人というのが、何でなされるかっていうと、同僚が普通にくれた拳銃なんですね。
     普通に拳銃をくれるというね、それこそクシャミをしたらクリネックスを出すようなそういう気軽な感じで、拳銃をあげてしまうという、これは他の国ではちょっと成り立たないだろうという。
     最初の下馬評見た時には、これ誰でもプリキュアになれる感覚で、誰もがジョーカーに慣れるっていう映画って聞いて、そうか、観客にも狂気が伝染するタイプの映画かなと思って見たんですけども、まあそうでもないというのか、確かにジョーカーになり得るんだけども、ジョーカーにやっぱり成り切るためには、ホアキン・フェニックスくらいの才能がいるというのも、だから誰でもジョーカーになれるわけではないという、だからそこのバランスも凄い絶妙だなと。

    山路:ああ、なるほどね。闇雲に見た人がそういうテロを起こすっていうことではなくて、ちゃんと選ばれた人っていう。

    小飼:そう、テロリズムを喚起する映画ではないですよね。そこはルワンダのラジオ局とはちょっと違いますよね。

    山路:ちょっと1、2年前かな、流行った言葉でインセルってあるじゃないですか。

    小飼:はいはい。

    山路:Involuntary celibate、非自発的禁欲を強いられている人々みたいな、要は非モテって言っちゃっていいのかな。

    小飼:もうキモくて、金のないオッサンという。

    山路:そうそう、彼らが自分達のことをそういうふうに言って、ある意味そういう主義者だみたいなことを言って、銃乱射事件を起こしたりとか、そういうのが話題になってたけど、彼らとかなんかに凄い、彼らのツボにハマる映画かなと思っちゃったんですけど、そんなことないですか?

    小飼:うん、だからツボにうんとハマりすぎて、本当に現実を動かす、現実に本当に動かすピエロの仮面を被った人たちが、現実に乱射事件を起こすタイプの映画かと思ったけれども、その辺のバランスは絶妙だったなと。

    山路:ああそうか、インセルの人が見てもそこまではならないんじゃないか。

    小飼:だから実際のインセルの皆さんの、どれくらいがホアキン・フェニックスばりに。

    山路:演じられるのかっていうことですよね。

    小飼:そうそう、自分をジョーカーに仕立てあげられるのかっていうことですよ。だからやっぱり、お前もホアキン・フェニックスになれるかっていったら、ほとんどの人はなれない筈です。そもそもあそこまで身体を絞ってない、ほとんどの人は。

    山路:アハハ、なるほどね。

    小飼:ホアキン・フェニックスとあとデ・ニーロ。ロバート・デ・ニーロの、だからこの2人の演技だけでも、役者好きの人というのは。

    山路:うんうん。堪能できますよね。

    小飼:堪能できるんですけど、だからこそ気になったのが、原作の荒っぽいところがそのままだったところ。

    山路:荒っぽいというのはつまり、よく出来てないという意味の荒っぽいという。

    小飼:よく出来てない、そう雑なところ。現代日本語でいうと雑なところ。

    山路:どの辺がですか?

    小飼:何がが雑かと言ったら、バットマンの話を皆知ってるのであれば、じゃあなんでブルース・ウェインがバットマンになったのかっていったら、大金持ちの両親が。

    山路:殺されちゃって。

    小飼:そうそう殺されちゃって、しかも街の観劇の後に、劇場を出てきたところを刺されて殺されちゃって、全権株をまだ子供のうちに相続したからっていうことになっているんですけれども、超大金持ちですよ、ウェインは。その頃から超有名な執事であるアルフレッドがそばにいるわけですよ。なのになんで殺された時にはボディガードがいないの?

    山路:まあね。

    小飼:凄い雑なの、だから、あんなあっさり殺される訳ないんだがなと。
     それこそジョーカー、本物のジョーカーが爆発するくらいでないと、そう簡単に殺されねえんじゃねえと。でも実際にはその辺のモブに殺されている訳ですよね。

    山路:まあな、そこはまあ確かに仰る通りではあるんだが、そこんところにちょっと尺を割けなかったのかなと、事情のほうをなんとなく慮っちゃったりしましたけどね、私は。

    小飼:でもジョーカーに関して一番の注意喚起というのは、Batmanは出てきませんというのは。

    山路:ああバットマンね。

    小飼:はい、あるんですけども、ブルース・ウェインは出てくるんですよ。これもネタバレっちゃあネタバレか。

    山路:それは大丈夫じゃないかな。ブルース・ウェインはいちおう出てはきますよね。

    小飼:そう、じつは裏ではジョーカー誕生の物語ではあるんですけども、ブルース・ウェインがBatmanになるきっかけが、ちゃんと映像として出て来る物語でもある。

    山路:そういう『バットマン』シリーズとして見た場合でも、カチッとハマる押さえるべきポイントというのは、かなり押さえてて良かったなと思いますけどね。

    小飼:いや、だからアルフレッド。

    山路:あれアルフレッドなのかな、本当に。

    小飼:いちおうあちこち調べてると、あれがアルフレッドだったというふうに出てます。

    山路:じゃあそうなのか。

    小飼:あのショボいおっさんがアルフレッドなのかという、そこはなんか一番あれだよな。

    山路:納得いかんところはあるけどな。あとこの『ジョーカー』でやっぱりズキッと来たのが、ちょっと同じ階に住む可愛い。

    小飼:はいはい。

    山路:黒人女性いるじゃないですか。あの辺りの話とかっていうのは相当。

    小飼:それもある。たぶんね日本の視聴者のかなりの割合が、アーサー恵まれてるじゃんって思うよ。

    山路:思いますよね、その後の、ああこれはちょっとネタバレになるから言わんとこうかな。

    小飼:実際にアーサーの住まいというのは薄汚れてますし、そこに要介護の母親と一緒に住んでるんで、悲惨に見える一方で、たぶん日本の基準からいくと、そんな悪い部屋じゃないんじゃねっていうふうに言えると思うんで、少なくともレオパレスよりは立派な部屋ですよね。これが一番のネタバレだったりして(笑)。
     デジタルデバイス以前の時代ではあるんですけども、留守電もあったでしょう。