• 立命館のピクシブのアレについて

    2017-06-01 19:03

    1週間ほど前からピクシブのR18小説を解析に使った論文が炎上しているようです。
    異分野ですが、私も論文を書くとき他の論文を引用したりデータの解析に使ったりしており、今回の件は興味を惹かれたのですが、何だかあまりにも出鱈目な解釈が蔓延っているので今回の記事にしました。

    ・「会員制サイトであるピクシブのR18小説を使っていいか?」
    著作権法上、「公表された著作物は、引用して利用することができる(第三十二条)」のであり、引用を拒否することは出来ません

    ・「会員制だし、R18で一般には見られていないのに?」
    「公表」とは「著作物が、権利者の了解の下に、発行され、又は上演、演奏、上映、公衆送信、口述若しくは展示の方法で公衆に提示された場合を言います(第4条)」ということで、「公衆」とは「「不特定の人」又は「特定多数の人」」であり会員制であっても50人程度を目安に「特定多数」とされます。
    サイトに作品をアップして公開に同意し送信可能化」したとき、「公衆向けに送信したとなります。
    つまり、例の小説は「公表された著作物」であり、引用を拒否できません

    ・「引用ではなくデータの利用では?」
    引用ではなく、著作物のデータ利用であれば敷居はさらに低くなります。
    著作物は、電子計算機による情報解析(中略)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(中略)を行うことができる」(第四十七条の七)ので、小説をワードやエクセルに切り張りして統計処理することは合法です。そして、その結果得られた解析結果はすでに「著作物」ではありませんから保護されません
    「A作者の新刊は510ページだった」という話が著作権侵害だと思いますか?

    ・「URLや作者の名前を付けるのはプライバシーの侵害では?」
    引用であると認められるためには「著作物の出所を(中略)明示しなければならない」「表示されている著作者名を示さなければならない」(第四十八条)とあります。
    URLは作者個人とは関係ない情報ですし、作者の名前は作者自身が公表しているものです。
    氏名表示権によって「著作者は(中略)その著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する(第十九条)」ので、個人場情報の開示が望ましくないのであれば匿名で発表できます

    ・「有害・わいせつだとされたのは著作者人格権を傷つける」
    著作者人格権は「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」であり、「批判されない権利」ではありません。エスパー魔美の「~に批評の権利があればぼくにだっておこる権利がある」ってやつです。

    ・「猥褻の定義が無い。猥褻あつかいは犯罪だという決めつけ」
    論文中に「本論文では猥褻な表現として,性表現を扱うこととする」と定義されています。
    その他、有害情報などの定義については「性に関連したもの、あるいはそれを表現しており、性器の結・接合、あるいは性行為を想起させるもの」は「18歳未満の方の閲覧が不適切」であるとピクシブ自体が規定しており、研究の目的が「ゾーニングから漏れた有害情報のフィルタリング」であることからピクシブのゾーニング規定に基づいてゾーニングされた作品の、ゾーニングに相当する表現を選んでいるだけであると分かります。

    ・「人を対象とする研究には倫理規定がある」
    あの論文は「作品」を対象としており、「人」は対象ではありません
    むしろ「作者と作品を混同している」のは、論文を批判する側ではないでしょうか?

    ・「結果として作品は非公開になってしまったので論文は無価値」
    残念なことですが、まあ、PCに残ってるデータから「~年~月~日参照」と説明すれば済むことでしょう。

    ・「配慮が欲しかった」
    その通りであり、問題はその一点です。
    そして、その"配慮"は研究者側だけではありません。作者やピクシブ側にも要求されます。作者は「引用される可能性」を考えて公開すべきだし、ピクシブなどは作者にその危険性を伝え、「引用の際は」と一言「お願い」しておくべきだったのでしょう。
    今回は立命館大や人工知能学会といった立場の研究者であったため素早く論文は「非公開」となりましたが、「ネット小説問題を考える会」などが確信犯的に引用し公開した場合に対抗するためにも、研究者側だけに対応を要求するべきではありません

    =====批判してる奴、大丈夫かあ?なところ====
    ところで、この問題ではネット上の「自称」を含めて様々な「研究者」が批判をしていますが、その中に「こいつ、分かってなさすぎだろ」という頓珍漢なものも多くありました。正直、研究者としてあまりにもナサケナイので晒します。

    ・「論文の質が低い」
    関係ありません。ハイクオリティな論文だったらよかったんですか?
    そして、↓のような点で「質が低い」としているのが多かったのですが、あの論文はそんなことより「目的と方法が一致していない」のが最大の問題点です。
    論文では「性表現に暗喩が用いられている」という前提で、「ドメインごとの暗喩の特徴」を人工知能に覚えさせフィルタリングするのが目的ですが、論文内では「単一ドメイン内(ピクシブ、R18カテゴリ)の暗喩の抽出」にとどまり、その特徴や「ほかのドメイン」との比較をしていません。結果、「暗喩が使われていることが分かった」だけであり、それは前提の繰り返しにすぎません。私が査読者ならその一点で書き直しを指示します。(査読無しの論文ですけど)

    ・「何故ピクシブなのか? プロの出版物では出来なかったのか?」
    「ネットの有害情報のフィルタリング」だからです。

    ・「なぜ10本を」「人工知能使ってないじゃん」
    研究の目的は「人間なら理解できる暗喩を人工知能で判別する」ことであり、現段階ではそれが出来ないから前段階として「人間の目でこう理解できる」と分類したのです。人力なので、いわゆる「ビッグデータ」のような多数の解析はしていません。
    トップ10を選んだ理由は「多くの人の目に触れたから」でも何でもいいので説明はあるべきだったでしょうけど。


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  • 小泉人民解放軍

    2016-10-03 01:26

    JA全農幹部と小泉進次郎氏とのニュースを見ました。


    農作物を出荷するときに払う「手数料」について「農家って農協職員を食わせるために農業やっているんですか?」と言ったそうです。

    私個人は、橋下前大阪市長のように「私怒ってます」というパフォーマンスは嫌いなのですが、ここで小泉氏の詭弁が心底「いやだな」と感じたので書きます。

    何が詭弁かというと、「手数料が農協の収入になる」という”一部”を切り抜いて、それが農協の全てであるかのように断じるところです。

    農業に対して「経営の発想が必要」と小泉氏は言いました。ならば、一般企業の業務で例えてみます。
    「製造部が作った商品を営業マンが売った利益から、経理や人事部の給料も出ている。製造部や営業マンって、経理や人事部を食わせるために商品作ってるんですか?」

    無茶苦茶な話であることはすぐに分かると思います。商品を直接売る人たち以外にかかる間接費を無視しているのですから、これでよく「経営の発想」などと言えるなあと感じます。

    橋下氏も「民間では」などとよく言っていましたが、所詮は印象でしかないんですよ……

    そして、小泉氏は、父である小泉純一郎元総理とよく比較されますが、その小泉(父)は非正規雇用を拡大しました。
    そのときに使われたのが「会社に縛られない生き方」というイメージです。
    そして、その結果「一般企業に縛られない代わりに派遣会社に縛られる」ことになりました。

    小泉進次郎氏の「農協に縛られない」で「農家の所得を増やす」という話は、これと同じです。それで利益を得るのは「農家」ではなく「派遣会社に相当する企業」でしょう。
    「農協に頼らず高収入な農家」は「正規社員より高収入な派遣社員」と同じ”夢”です。

    小泉純一郎氏にしても小泉進次郎氏にしても
    「お前たちは搾取されている」から「解放してやる」
    というロジックで、より厳しい環境に多くの人々を投げ込みます。
    それは「人民解放軍」によって「共産党の独裁政治」が支えられるのと同じです。
    このロジックに惑わされて日本の農業が酷いことにならないよう祈ります。

    ※1
    こう書くと「では、お前は日本の農業が今のままでいいと言うのか」という人もいるでしょう。しかし、それは「Aで無ければBしかない」という「誤った二分法」として知られる詭弁です。

    ※2
    私は「小泉親子は共産主義者」と主張してはおりません。
    共産主義も、その対極の新自由主義なども共に「分かってる人が導けば万事解決!」というナイーブな思想から出ている「革新的思想」です。ここでは単に「やっていることは同じ」という指摘に止まります。
  • 蓮舫さんの国籍問題で思うこと

    2016-09-10 03:06
    蓮舫さんが台湾国籍ではないのかと話題になっています。
    この問題で、蓮舫さんの説明からは
    ・蓮舫さんは「国籍」の話を「心情」に摩り替える詭弁を使う
    ・蓮舫さんは微妙かつ自分でも曖昧なこと断言してしまう
    という人物像が明らかになり、これは政治家としての資質を疑わせるものです。
    以前も中国船の体当たりの動画がYoutubeにアップされたとき
    「違法にアップされたものを私が見ることはありえない」
    と言っていましたが、これは
    「ある事柄が『事実か否か』と『法的に正当か否か』を混同する」
    ことで、その延長は「違法な中国船の侵入など知らない」という無責任さにつながります。
    「違法なことなど知らない」という無責任さ、現実から目を背けつつ、それを恥と理解できない蓮舫さんの政治家としての資質を疑わせる事件でしたが、その性格・資質が今回の国籍騒動でも「台湾籍であるか否か」を誤魔化し「台湾国籍が有効か否か」に摩り替えることで現れています。

    蓮舫さんが政治家の資質に欠けることは明らかですが、それに対する世間の議論もおかしなものです。
    世間の議論は「二重国籍か否か」を主眼にしています。
    しかし、これは単なる「事実確認」に過ぎません。本来ならそこから是非の議論を始まるべきです。
    事実確認に止まっているから、そこで「手続き上のミスだから仕方がない」「二重国籍の何が悪い」「多様性があってもよい」という反論で「問題」の幕引きを図る人もいます。

    この問題の本質は、そういった手続き上の問題ではなく、「なぜ悪いのか」を考えるべきです。
    「なぜ悪い」という問題を指摘する人は、「どっちを向いているのか」と指摘します。
    これは1つのポイントです。
    台湾人あるいは中国人としてのアイデンティティを持つのであれば、それは「良い人」であるほど「台湾あるいは中国のために働く」でしょう。
    しかし、このポイントの問題点は、アイデンティティが目に見えないことにあります。
    「私は心情的に日本人です」と本人が言えば、それを否定するのは水掛け論です。

    二重国籍の問題は、もっと具体的なものです。
    ある国において、その国民はその政府の定める法に従うべきです。これは当然です。
    中国政府が、中国国内において、中国の法律で、中国人を処罰するのは当然です。
    台湾政府が、台湾国内において、台湾の法律で、台湾人を処罰するのは当然です。
    もし蓮舫さんが台湾国籍を持っているのであれば、
    台湾国内において、蓮舫さんは台湾人として台湾の法律で処せられます。
    台湾を独立国として認めない中国では、蓮舫さんは中国人として中国の法律で処せられます
    蓮舫さんが中国や台湾に行ったとき、その政府が急遽
    「中国/台湾国籍でありながら外国で政治活動を行ったものはスパイとして捕まえる」
    という法律を作ったら、蓮舫さんはその場で逮捕される可能性があるわけです。

    当然、日本政府も日本人として蓮舫さんの解放を求めるでしょう。
    しかし、その問題解決は困難でしょう。それは「自国民の処遇に対する内政干渉」ですから。

    「二重国籍は」の世間の議論で危惧するのは、それが「日本国内の目線」でしかない点です。
    国籍の問題なのだから「相手の国ではどうか」という視点があってしかるべきであり、それを疎かにして手続き論や感情論に留まるのは、あまりにも視野が狭いと思われます。

    いずれにせよ、蓮舫さんの説明を信じるのであれば
    「未成年の時に手続きを行い、それ以降は台湾国籍を抜く手続きを行っていなかった」
    のだから、現在も台湾国籍をもっているのでしょう。(20歳以前の手続きは無効のため)
    したがって、事実確認の第階から一歩進み、
    「蓮舫さんは台湾や中国では『自国民』とみなされ、その法で縛られる危険がある」
    ということを理解して、政治家としての進退や民進党の党首選を決めるべきであると思われます。
    これは、最初に書いた「政治家としての資質に欠ける」以上に深刻な問題だと思うのです。