気候変動と商売上手
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気候変動と商売上手

2015-06-08 04:32

    6月7日からのG7サミットで気候変動の問題が話し合われるそうです。日本も当然「大きな役割」を果たすことが期待されており、安倍首相もその方針を述べるそうです。ただし、現実には、原発再稼動の問題経済成長との兼ね合いで、なかなか思い切った対策は取れません。
    (節電などの対策も進んでいるとはいえ、景気回復が順調なら電気の使用量も上がるはずで、電力不足のリスク判断の基準である「2010年の猛暑」を超える猛暑も十分考えられるため、今年の夏はどうなることか非常に心配です)

    世界的に見ても、気候変動に対する会議は「がんばろうね」の掛け声で終わることが多く、「エネルギー消費を抑える=消費を冷やす」政策は敬遠されてきました。
    最近になってようやく協調的な動きが見られるようになって来ましたが、前途多難です。
    昨年9月の国連気候サミットでは米国と中国も積極的な態度を見せましたが、「被害が大きくなってきて、ようやく慌てだした」という感じです。

    「気候変動はシャレにならない」ことが明らかになるにつれ、化石燃料業界の責任を問う声も大きくなってきました。昨年9月の国連機構サミットの会議直前には、「世界最大の石油財閥」ロックフェラー兄弟財団が化石燃料への投資から撤退すると発表しています。
    これまでの石油業界の態度、例えばエクソンモービル(ロックフェラー兄弟財団の関連企業)は最近まで「温暖化は事実だが大丈夫」という立場をとっていたことから、このニュースは大きな驚きをもって受け止められました。

    石油業界は、当然、「気候変動は化石燃料の使用による」という主張を快く思いません。
    エクソンモービルは、地球温暖化懐疑論のスポンサーでした。
    単に「多面的に論じる」ためでなく、議論を混ぜっ返すことで政治的な混乱を呼ぶ手法は、様々な方面で非難を呼びました。一例として、著名な経済学者であるポール・クルーグマンは「惑星の敵」というタイトルでニューヨークタイムズに寄稿しています。後にクルーグマンは気候変動による食糧問題が”アラブの春”のような政治的混乱を増す可能性も唱えており、気候変動の問題が単なる科学論争やビジネスに留まらないことを見抜いていたのです。

    石油ビジネスで巨額の金が動く中、そのビジネスを守るため企業が後ろ暗いことをするのは、ある意味当然のことです。しかし、学者がそれに加担したり、第三者が踊らされ、間違った正義感で自滅につながる愚かな選択をするのは残念なことです。
    真っ当な科学者の中には、デマに踊らされた人たちから殺害の脅迫まで受けた人もいました。しかし、多くの科学者は粛々とデータと論理を積み上げて懐疑論に打ち勝ってきました。
    今日、世界中の国が温暖化対策に乗り出し、石油企業もビジネスモデルを再考するようになってきたのは、デマにも脅迫にも負けなかった誠実な科学者たちの努力の賜物です。

    と、これで終わればキレイな物語だったのですが、財団が「化石燃料への投資撤退」を発表したのはまた別な思惑があったようです。
    財団の発表があった9月から後、原油価格は急落しました。見事に。
    価格急落の原因は、米国のシェールガスによる供給過剰、それに対抗したサウジの増産ロシアへのけん制中国の景気後退などが言われており、それぞれ正しい面があるのでしょうが、いずれにせよロックフェラー兄弟財団は情報を事前につかんでおり、対策を打った上でタイミングを計り、投資撤退を発表したのでしょう。さすがの商売上手です。

    でも、財団が化石燃料から投資撤退するのが単なる「ビジネスのタイミング」であるならば、問題の解決とともに「やっぱ投資再開します」もあるわけで、上に挙げられた原因が短期的なものでしかない以上、撤退はごく短期に過ぎない可能性もあります。
    ビジネスはビジネスである以上、長期的な環境の影響を考えて「改心」するのは望み薄です。
    また、本当に企業が「持続的なビジネス」のために環境を考えたとしても、税制を変えて「化石燃料を使わない」ように方向付ける方法では「化石燃料をやめられない」という声に押されることもあるでしょう。温暖化対策と経済成長のジレンマから抜け出せません。
    やはり、本質的な変革をもたらすには「石油より儲かるエネルギー」の提示が必要です。これは「太陽光発電の買取で儲かる」とかの小手先の話ではなく、全体のパイを増やす話です。
    そういう新たなテクノロジーを開発していくのは科学者の務めであり、現に幾つか有望なものも見つかりつつあります(このブログで、今後、解説していきたいと思います)。
    日本はもっともっと科学技術に投資し、とくに民間の力が弱っている今は「国として」力を注いで欲しいと願います。「脱石油」は気候変動以外に日本の利益にもなるはずですから…


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