Summer Pockets 感想【ネタバレあり】
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Summer Pockets 感想【ネタバレあり】

2018-07-06 22:43
    眩しさだけは、忘れなかった――。この台詞が印象的だった、keyから6月29日に発売された久しぶりのPCゲーム。
     レコードが100%になったということで、Summer Pocketsの感想です。
     基本ネタバレ全開なので、ご注意を。
     Summer Pocketsは、ネタバレを見ずにやったほうが絶対に楽しいですのでやったことない人はリターンだ!



     私の攻略順は、しろは→鴎→紬→蒼という順番でした。
     個人的には導入として、しろはルートが面白かったのでこの順番で攻略してよかったかな、という感じです。後にしろはルートの再構築ルートがあるわけですし、連続でやるよりはよかったです。

     共通ルート
     MAPから移動先を選択するタイプなので、好きなヒロインを追っかけて話に集中できるシステムなんですが、天善や良一とは選択しない限り共通ルートでの会話はそれほどなく、本当にヒロインだけを追っていると、各ルート突入後にいつの間にかヒロイン以外とも親しくなってる……と感じてしまうのが残念なところでした。
     MAP選択開始前にもう一段階仲良くなるシナリオが何かあれば印象も変わったと思うんですが、ここら辺は感じ方次第でしょうか。個人的には物足りなかった部分。
     会話部分はこれまでのkey作品のように珍言や迷言、記憶残る部分はなかったんですが、つまらないことはなく、特別面白いわけでもない、絶妙に夏休みの何気ない日常感が出ている塩梅で個人的には好きな部類でした。
     
     しろはルート
     私はまず第一にしろはを攻略したわけですが、正に青春王道ストーリーという言葉が似合う展開で、しろはとの微妙な距離感から始まり、縮まっていく過程が丁寧に描かれており、ラスとにいろはの問題を差し込んで終了。
     個人的には一番好きなルートです。Summer Pocketsを最後まで楽しくできたのは、ここで引き込まれた部分はあるかな。
     島民仲間とのわいわい感がよく、島に逃げてきた主人公もいろはの問題に逃げることなく立ち向かおうとする、王道ながら楽しかったひと夏でしたね。
     ただし、後のグランドエンディングルートの芯に該当するルートであるため、他の個別に比べて、ヒロインであるしろはの問題が完璧に解決したわけでないという単体評価には困るルートでもあります。

     鴎ルート
     全体的に鴎に張り巡らされたミスリードがしっかりと機能したルートであり、読んでいた時のワクワク感はSummer Pockets全体を通しても一番の部類。
     しかし個人的に一番好きなルートにならなかった原因は、序盤で鴎といろはたちにあまり交流がなかった点でしょうか。
     終盤で船の改造を手伝ってもらう際に、安易に頼った感じがどうしても抜け切れず、そこだけは残念。もう少し鴎といろはたちに交流があれば納得していたと思います。
     シナリオ構成自体はよくまとまっていて、序盤は冒険を重ねて、終着点についたのち、鴎がいなくなることにより主人公の目的がはっきりするので、前述したもの以外で引っかかることはなく良ルートでした。
     最後に鴎に出会えたのは願望だったのか、本当にだったのか、わからないところですが……個人的には、あの部分が蛇足に感じたのも評価が下がった点。ハッピーエンドっぽいんですがね。

     紬ルート
     個人的には一番面白くなかったルートであり、二度目はやらなくていいかな、と思ったルート。
     基本的に構成自体は悪くなく、良くできて纏まっています。
     紬はこの夏に消えてしまうから、全力で夏休みにこれからの人生のイベントを詰めてしまおう、最後の時まで笑って過ごそうというオーソドックスな泣き展開なんですが……。
     どうにもこの全力で夏休みに人生のイベントを詰め込もう、というのが過剰に台詞で描写されていて退屈気味に。
     中盤以降、紬が消えると発覚してからは同じような問題、似たような会話を延々繰り返してるようでもあり、他のルートに比べてヒロインとのイチャイチャ度も度を越して多く、そういうところもあまり気に入らなかった原因。
     中盤で登場したツムギも特に解決されることはなく、放っておかれているのも残念なところでしたね、ハイリをあの場に召喚する意味自体はあると思いますが、シナリオ上での意味をもう少しつけて頂きたかったところ。ツムギの問題は解決していたんでしょうかね?
     実際、素直なシナリオで好きな方がいるのも理解できるルートなんですが、かなり賛否両論あるルートだと思います。

     蒼ルート
     蒼のキャラクター性がよく出たルートであり、蒼が好きなら楽しめるルート。
     設定的に重要な七影蝶が唯一説明されるルートではあるんですが、内容自体は無難で、全体を通してみても平均的なルート。
     シナリオがすべて予想通りで終わっているルートであり、特に驚きもなく、不可もないのが残念なところですね。紬と同じくイチャイチャはしてるんですが、蒼の陽気なキャラもありテンポよく進んでいくのでそこは問題ありませんでした。
     蒼はギャグがこなせて、ノリがよくチョロインという魅力的なキャラなんですが、そこだけしか見所はなく、いやもう本当無難なルート、故の評価という感じでしょうか。
     七影蝶の記憶は、各ルートで無念を遺した人たちと思しき記憶があって、そこに気づけた点で蒼ルートは最後に回してよかったかなと。

     ALKAルート
     恒例の全ヒロイン攻略後のルートはヒロインを攻略するたびにうみが変化していった理由が語られるルートであり、しろはルートの再構築。
     共通ルートのうみが毎回変化していたこと、ハイリが何度も既視感のようなものを感じていたこともあって、真相に気づきやすかったのが残念でしたね。
     うみとしろはの夏休み、二人の関係が丁寧に時間をかけて描かれていたんですが、これまた大体予想していた通り、どこかで見たような話だなーと話が進んでいったこともあり、今までのkey作品のようにガツンと心に響くものはありませんでした。
     ただし、それが悪かったかと問われるとそうでもなく、これまでの積み重ねとうみとしろはの会話で心を持っていけるポテンシャルはあり、Summer Pocketsの山場であり、楽しく進められたのは間違いありません。
     前述したように、一発の強烈なパンチが足りなかったのが残念な部分でしょうか。エピローグにあたる部分は経過報告じみた描写不足感はあるものの、うみが生まれるまでの過程が見れたのは嬉しいところですね。そしてうみが生まれる直前、新たな問題に直面し、最終ルートに続く、と真相がパンチ力に欠けていた部分を除けば、概ね楽しいルートでした。

     Pocketルート
     Summer Pocketsの総決算ルートであり、ラストルート。
     ここでようやく語り部たる七海=うみが登場し、過去のしろはと接触してしろはが過去に戻る力を得たきっかけを取り除くための短いお話ですが、Summer Pocketsが伝えたいことが凝縮されていて、親から子へ、子から親への愛情が最も表現されたルートでした。
     最終的にうみは消えてしまい、過去と未来に縛られていた二人の物語がしっかりとした完結を迎える瞬間は、ハッピーエンドではありません。
     最後の最後まで後悔するようなことが続く。それでも、しろははそれを受け入れて未来に進もうとする、でも、しろはは苦悩する続ける言葉を流しながら、EDに入り、EDのうちに時間は経ち、またあの夏とは少し違う夏が始まる。
     それは、しろはが力を得なかったことによって未来が確定せず、ハイリが島民として仲間と過ごすことのない夏休み。しろははうみからもらった記憶を次第に忘れていっても、それでもその未来でありながら、しろはにとって過去の記憶である夏休みの眩しさだけは覚えて、過去に縛られることなくこの夏まで過ごしてきました。
     そして、しろはの力がなく未来が確定しない夏休みにトラウマを抱えることなく、島にやってきたハイリは、島民と仲良くなることもなく、蔵の整理を黙々と手伝っていくんですが、これってプレイしてきたユーザーの思い出を整理する時間でしょう。
     これまでプレイしてきた夏休みとは、まったく違う。何事も起こらない、ただちょっとしたイベントが一つあって、ただの夏休みの日常が流れていく。プレイヤーが何回もプレイしてきた中で出来なかった蔵の整理をさせることで、この作品の終わりが近づいていることを教えてくれている。
     蔵の整理が終わって島から去ろうとするハイリの目には、この島で出会うはずだったけど、出会わなかった、うみが過去を変えたことよって、正に蝶の羽ばたきが遠い地で竜巻を起こしたように、抱えるものがない心で夏休みを楽しむ少女たち、仲間たちが居ても、それでも足を止めることなく、島から出ていこうとしてしまう。
     すでに夏休みは終わっていて、もうこの島にいる理由もない。でも出航前に見たいろはに、どうしても伝えたいことがあって、ハイリは行動を起こし、いろはに会うために危険を冒してまで船から飛び降り――いろはとハイリがしっかり出会って終了、とざっと整理しながら書き出しましたが、エピローグはプレイヤーによって感じるものは多彩だと思います。
     この話を通して、ちょっとでも感じるものが、心に残ったものがあればそれがSummer Pocketsの答えなんでしょう。
     このまま総評に移ります。

     まとめ
     これまでのkey作品、CLANNADやリトルバスターズ、Rewriteに比べて一発あたりの心に残る物語というのは希薄です。主人公も最終ルートで話に関わるのは、Pocketの最後の最後だけで何ができたわけでもありませんし、そこは明確な不満点の一つではありますが、この終わりだと仕方がないのでなんとも難しい部分ですね。
     話を戻すと、歴代key作品のように終わったあとの、特有の胸にぽっかりと穴が開いた状態というのはこの作品にはありませんでした。個人的にはそこを期待していたこともあって、最初は相対的に評価が低めだったんですが、数日経つに連れて、Summer Pocketsの中にあったものに気づいたんです。
     この作品は、決して壮大ではなく大きな仕掛けはない。ですが、この作品を思い出して、まさにキャッチコピーである「眩しさだけは、忘れなかった」という、ひと夏の思い出のように振り返ることがありました。ええ、この作品は眩しかったです。
     この振り返らせてくれる思い出こそが、Summer Pocketsの中にあったもので、このゲームをやって私が得たものであったと、そう思います。
     特別、珍しくもない締め方だし、吸い寄せられるような新しい手法を持ったシナリオがあったわけでもない。絶賛するにしても、それは言い過ぎだと感じる。それでも全体的にトータルでは綺麗に纏まっており、まさにひと夏の思い出を記憶の片隅にあるポケットに与えてくれるような、楽しく、心の中にそっと寄り添ってくれる作品だったと思います。
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