エスポワールアレンジャー座談会 2016/10
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エスポワールアレンジャー座談会 2016/10

2016-10-23 12:00

    こんにちは。エスポワールの広報担当、tk_saxo(@tk_saxo)です。
    2016年10月某日、当団アレンジャー陣にエスポワールについての話をうかがいました。
    今回はその内容をお届けします。

    □参加者
     高野猶幸(以降TN):
      サクソフォン・クラリネット奏者であり作編曲も行うマルチプレイヤー。
      ホームページ⇨works146.com
      twitter⇨@works146
      
     中尾敦(以降GG):
      エスポワールのバリトンサクソフォン担当。
      バリトンサックスアンサンブル「ろうさうん堂」も企画。
      ホームページ⇨ろうさうん堂
      twitter⇨@Gelgooog
      
     宮本賢一(以降MK):
      エスポワールの代表であり第1回定期演奏会からの参加メンバー。

    ■エスポワールとの出会い

    ----高野さんはいつからエスポワールに関わっているのでしょうか?
    TN:
     第1回から。最初は学生として、しかもクラシックサックスをやったことがなかったんだけれど、
    吹奏楽でクラリネットをやっていたときにサックスパートのメンバー(後の創設者)から ソプラノサックスもってたよね?と誘われてメンバーになったんだ。
     第1回定期演奏会のときにはもうプロとして活動していたんだけど、仕事をしながらも数年は団員は継続して、 退団してからもアレンジャーとしてバックアップしているんだ。
    MK:
     エスポワールは最初、編曲はせずに既存の楽譜で活動していたんですよ。

    TN:
     第3回定期演奏会のときに買ったトッカータとフーガの譜面があまり良くなくて、
    原曲の調で、よりよいオーケストレーションで演奏したかったので自分で編曲することにしたんだ。
    ----その年は水上の音楽やグリーンスリーブスも編曲されていますね。
    TN:
     水上の音楽は自分で選曲候補に出したんだ。自分でやりたいサウンドを書いた。

     あの時のエスポは学生が多く、音大生やプロもいて、野心があったなあ。
     クラシックサックス界を変えようくらいの空気があったと思う。
    MK:
     今ではその考えがエスポワールのスタンダードになっていますね。
    編曲ありきでなく、やりたい曲は編曲して演奏しようと。でも初期の活動のベースはミベモル(※)の楽譜だったな。第1回のハンガリー狂詩曲第2番など。
     ※:ミ・べモル・サクソフォン・アンサンブル
       関西で活動するプロのサクソフォンアンサンブル。

    ----中尾さんはいつからエスポワールに関わっているのでしょうか?
    GG:
     参加は第5回定期演奏会から。団員からの紹介で入団しました。

     こういう音楽がやりたいという目的で入ったと言うよりは、フワッと入って好き放題やらせてもらっている感じかな。
    ----ラージアンサンブルの編曲はどれが最初ですか?
    GG:
     モルダウ(第6回定期演奏会)だね。

    ----いきなりモルダウは大作ですね!
    GG:
     モルダウは小学生の頃から好きな曲で、思い入れもあったからできたと思う。

     逆に、今ほどラージアンサンブルの知識があったら言い出さなかったかもしれない(笑)
    ----演奏者のことを考えた譜面になっていて配慮が行き届いていると感じました。
    GG:
     そう、現場主義で書いてます。
    ピアノを多少弾けたこともあるし、吹奏楽等でつまらないパートをやらされているサックス吹きの フラストレーション、欲望を詰め込んだらどうなるか、ということでもあるかな。
    ----その試みは成功していますね!
    GG:
     成功させてもらっていると思う。実現できる団員のおかげだと思います。

    TN:
     エスポ水準に慣れてるよね。

    GG:
     普通あんなのできないですよ。(一同笑)

    ----私ははじめてサックスラージを聴いたのがそのモルダウの回だったのですが、すごく難易度の高いことをやっているなと感じました。演奏者としては楽譜がでてきたときどう思いました?
    MK:
     でも、この時期にはすでにエスポワールはおかしかったよ(笑)

     くるみ割り人形(第2回)や、弦楽セレナーデ(第5回)をやったのが大きいと思う。
    ----弦楽セレナーデはミベモルですか?
    MK:
     ミベモルだね。

    GG:
     あれを見ていたから書けた(この人達なら大丈夫だと思った)という面はあるかもしれない。
    信じて書けばいけるだろうと。
    ----そう考えると、ミベモルがエスポワール初期のかなり重要な位置を占めているんですね。
    MK:
     昔は楽譜がぜんぜんなかったからね。CDと楽譜が出ている数少ない団体だったので、どうしても影響は受けていますよ。

    ■英雄ポロネーズ/展覧会の絵について

    ----英雄ポロネーズは、第4回での初演時は選曲委員の会議で決まったんでしょうか?
    TN:
     これは私が提案したんだ。イケると思って(笑)

     音域が足りなくても、意外と成立するということも分かったね。


    MK:
     英雄ポロネーズはとてもよかった。この編曲ならいけると思って今回も取り上げました。

    GG:
     きれいな部分と力強い部分の対比がとてもサクソフォンオーケストラに合っていますね。

    TN:
     普通にトランスクリプションするとメロディがほとんどソプラノになってしまうので、
    いかに隙を見つけてアルトに振るかというところがポイント。
     アルトでいける場所でもテナーで吹ける部分があったら、テナーに積極的に担当させています。ひとつの楽器でユニゾンさせて、伴奏を他の楽器に担当させるなど、メリハリをつけているよ。
    MK:
     音色にメリハリが出ますからね。

    TN:
     既存の譜面ではいろんなパートにフレーズをばらけさせているものが多いけど、
    意外とサックスは楽器ごとの音色の違いを前面に出したほうがいいと思う。
    MK:
     なかなかそこを考えている楽譜は多くないと思います。

    GG:
     この話を個人的に去年聞いて、自分の編曲にも取り入れています。

     火星(第14回)で反省した部分があるので、展覧会の絵ではフィードバックをしている。
     ソプラノの低域、アルトの高域のようにガツンと来る音域を使った金管楽器の音色の再現などですね。
    TN:
     職業作曲家の人って、ものすごいスキルの高い人が多いけど、「サクソフォンのピンポイントな特性」という知識に関しては我々の方がかなり有利だよね。

    GG:
     展覧会の古城の冒頭でソプラノの最低音域を使ってソロをとらせていますが、それはその音色の効果を狙ったもの。
    イングリッシュホルンのような音色を狙ってみました。
    ----確かにここはソプラノのダブルリードっぽい音色が活きていますね。
    GG:
     自分では演奏できないようなフレーズも書いてしまうことがある。
     
    自分よりうまい人がたくさんいるので(笑)
    TN:
     バリトンに関しては、私もできるかどうかは考えていない(笑)
     エスポワールのみんなならできるだろうと。
    MK:
     そのへんの団員の技術レベルのギリギリを狙う感じがいい音楽につながっている気もしますね。

    GG:
     英雄ポロネーズはピアノ曲なので、音色的なアイデアは自分で生み出すしかなかったはず。 
     
     それをあそこまでまとめたのはすごいと思いました。

    TN:
     管弦楽のオーケストレーションの基本を経由しているのもあるかもしれない。

     英雄のテナーのメロディのところはホルンが朗々と吹いているようなイメージかな。
    GG:
     展覧会はピアノの譜面をもとにアレンジしていますが、ラヴェルの管弦楽アレンジにもだいぶ影響は受けました。

    ----英雄ポロネーズなどのピアノ曲に取り組もうと思ったきっかけは何だったんでしょう。
    TN:
     オーケストラの大編成のような規模の大きい曲より、リュートのための古風な舞曲とアリアのような
    弦楽オーケストラのような曲の方がサックスオーケストラには適していると思う。それはサイズ感の問題かな。
     弦楽合奏、ピアノ連弾のような規模がちょうどいい。ショパンやリストをガッツリ弾くようなテンション感があっていると思う。
    ----ショパンといえば、第7回では中尾さん編曲で華麗なる大円舞曲をやっていますね。ここでもテナーに美味しいメロディがありました。私はこれを聴いてサックスラージでピアノ曲っていいじゃん!と。
    GG:
     サックス以外の曲を聴いたときに、脳内でサックスで再生する癖がついている(笑)

     その再生精度がどれだけあるか、みたいな。それで考えたときにいけそうだ、と思えたかどうか。
    MK:
     英雄ポロネーズがいけたから、華麗なる大円舞曲もいけると思ったという面はあるね。

    ----高野さんアレンジの作品を聴き直していて、アルトの響かせ方が素晴らしいと思いました。けっこうサックスオーケストラってアコーディオンぽい音色になりがちだと思うんですが、そうならずにシンフォニックに響かせる秘訣ってあるんでしょうか?
    TN:
     トッカータとフーガのこの部分はアルトに上の音域を担当させ、ソプラノは下をいっているんだけど…

    MK:
     そこアルト高いもの(笑)

    TN:
     アルトが高音域でパーンといったほうが良いと思って。

     同じ音が出せるシーンであれば、ケースバイケースで、どの楽器の音色がいちばん効果的か検討して選択しています。
    MK:
     お二人ともアルトの使い方がうまいと感じます。無茶だと思うことも度々あるが(笑)

    TN:
     去年の「春の声」はちょっとやりすぎたと反省しています(笑)

    GG:
     私はもう反省しないことにしました(一同爆笑)

     アルトの高音を効果的に使う発想は、最近私も使うようにしています。
    TN:
     インスパイア系の(笑)

     測ったわけではないけど、ソプラノよりアルトのほうが鳴るよね。
    MK:
     鳴りますね。アルトがぐわっと出すとソプラノに負けない。

    GG:
     団員のみんなが鳴らせるかどうかを知っているという強みもあるよね。

    TN:
     あとは、今まで自分が演奏してきて、「ここはこう書いてほしかった」と思った体験の蓄積が活きてるんだろうね。

    ----プレイヤーならではの視点ですね。
    GG:
     あとは、真ん中のレとミはなるべく避けて、テナーとアルトを入れ替えるというのはよく使っています。
    音色としてちょっと曇った音がほしいときは敢えて使うこともあるけど。
    TN:
     私は内声部を書くときはそのほわっとした音色が欲しいことがあるなあ。

    GG:
     音程の不安がない状態のほうが精神的にも安定して演奏しやすいと思って、音程が悪くなりやすい音を避けています。

    MK:
     確かに、中尾さんの楽譜では音程の問題を感じにくい。

    TN:
     その視点は発見だった。ミが上ずらないサクソフォンを誰か開発してほしいね。
     私はクラリネット出身だから、第一倍音の上の方、サックスでいうとシ、ド、ド♯あたりを無意識で避けたくなり、音色を優先してすぐ上のレやミが多くなってしまうのかも。

    ----中尾さんはテナー、バリの使い方がすごいと思います。特にテナーで和音を組むときにとてもあたたかいサウンドになる。なにか秘訣はあるんでしょうか?
    GG:
     あまり深く考えたことはないけど、同じ和音に対して、いろんな試行錯誤をしてみる。

     例えばドミソを鳴らしたとき、低音でドミソにするとごちゃっとするけど、ちょっといじるといい音になる。弾いてみて、聴いて判断しています。なので、演奏してみて変な響き方、というのはあまりないと思う。

    TN:
     
    聴いて判断できる人はそれを信じたほうがいいと思う。
     一概には言えないんだけど、色んな人の良い判断を後から解析して体系化して、苦手な人のための基準になるのが音楽理論なんじゃないかな。

    ----吹奏楽のトランスクリプションものでも、原曲の音域を活かそうとしすぎて変になっているアレンジとかありますよね。お二人はそこを自分なりのヴォイシングで変更して、最適化しているんですね。
    GG:
     オクターブの変更はけっこうする。響きをよくするため。鳴ったもん勝ちかなと。

    TN:
     例えばヴァイオリンとサックスでは鳴る重ね方が違うので、そこを汲み取ってサックスで鳴るようにしたらどうなるのかを考えたい。メロディもオクターブ下げても成立する、より映えるケースも多いし。原曲に敬意を表して、原曲の雰囲気を表現するために、あえて原曲と違うオクターブや音の積み方を選ぶ勇気も必要だよね。
    GG:
     もとの音域にこだわれるほど音域の広い楽器ではないしね。ソプラノもバリトンも足りない。

    ----高野さんはよくソプラノにフラジオ書きますよね(笑)
    TN:
     それは初期メンバとのやりとりの中で「大丈夫なんだな」と思ってしまったというか…

    GG:
     私はフラジオの使い方がいまいちピンとこないので使わないんですけど、フラジオの魅力ってなんでしょうね。

    TN:
     それはスリルと壁を超える快感…(笑)

    MK:
     完全に発想がアスリートですよね(笑)

    ----トランペットのハイノート的な(笑)
    GG:
     それは奏者の立場じゃん(笑)

    TN:
     フラジオが外しても成立するように書いているんだけどね。

    GG:
     保険はかけていると。

    TN:
     でも、お互いサックス吹きだよということを理解しているからこそというのはあるかもね。

    ----作曲者、編曲者と演奏者の間の共感意識みたいなものが、いい演奏につながっているのかもしれないですね。
    TN:
     たとえばサックスのことを全然知らない人が去年の「火星」の譜面を持ってきたら、バリトンは
    「サックスはチェロじゃないんだ、息継ぎが必要なんだぞ」と思うかもしれない。でも、中尾さんの譜面だと思えば「そっか、じゃあ頑張ろうぜ」ってなるでしょ?
    ----なりますね。
    MK:
     あえてやらせてるんだなというのがわかるからね。

    TN:
     
    自分の頭の中で、書いた楽譜どおりの音がきちんと鳴らせているかどうかだよね。
     PC上での再生はあくまで補助的なものと、音間違いの確認のみ。生音の鳴り方を想像できているかどうか。そのへんをしっかり意識して編曲しているので、きちんと響いてくれてるんだろうね。
    GG:
     できるだけ楽器の欠点を隠して、長所を活かすように書きたいよね。

    ----けっこう、「各パートに活躍の場を」みたいな意識を楽譜から感じることもあるのですが。
    GG:
     基本的には曲にあったやり方を選んでるつもりなんだけどね。

    TN:
     去年の「春の声」だと、原曲はずっとメロディが1stヴァイオリンなんだよね。

     ワルツのフィーリングを狙うのであれば、メロディと伴奏を分業制にするという選択もありだった。
     アマチュアの練習の実情や、モチベーションを考えると、いろんなパートに振り分けたほうがとも思う。
    GG:
     この環境は現場からのフィードバックがすぐにもらえるのがいいよね。

    MK:
     リアルタイムでやってますからね。
    文句も言うしね(笑)
    ----そういう意味では理想的な環境ですよね。
    TN:
     楽器法を本当に理解するって、やっぱりこれなんだよね。

     自分でやるか、吹ける友人にやってもらうか。

    ■今年の演奏について

    MK:
     最近、音が合うようになってきたね。

    ----確かに、ここ数年で明らかにサウンドができてきましたね。
    MK:
     今年は例年よりやりやすい曲が多いというのもあるけど、
    けっこう最初からちゃんと音ができていて、アーティキュレーションや表現の話ができているね。
    TN:
     団体として成熟してきたのかもね。

    MK:
     うまくいっているので、どこが良かったのか考えてつなげていきたいね。

     そうやって演奏も編曲もどんどんレベルアップしていって、いい音楽になっていけるといいね。
    ----今年は合奏の最初にコラール練習を入れましたが、効果は感じますか?
    MK:
     それがよかったのかはまだわからないね。

    ----コラールというシンプルなハーモニーをやってみることで、和音に慣れてきたのかもしれないとも思います。
    MK:
     単純なハーモニーがきちんとつくれるって大事なことだと思いますね。

    GG:
     ハーモニーの良し悪しを判断する力も必要だからね。

    TN:
     
    一流のプロ奏者がみんな和声のエキスパートかというと、そうでない事の方が多いと感じる。
     感覚を研ぎ澄ませた結果、直感的に何が正しいのか瞬時に理解できるようになった人の方が多数派じゃないかな。
     耳でとって、感覚であわせるというのはとても大事だよ。
    MK:
     なんとなくハーモニーを体験するということがいいのかもしれないね。

     正しい姿にするためには解析する人も必要だとは思うけど。
    TN:
     団員全員に解析を求めなくても、感覚であわせられればいいよね。

    ----今年も面白い演奏ができそうで楽しみですね。今日は長い時間ありがとうございました!

    (2016年10月某日、都内スタジオにて)


    --- エスポワール・サクソフォン・オーケストラ 第15回定期演奏会 ---

       

    [日時] 2016年10月30日(日) 開場:13時00分 開演:13時30分
    [場所] 川口総合文化センター・リリア 音楽ホール
    [アクセス] JR京浜東北線 川口駅 西口正面
    [指揮]福井健太

    ※入場無料※

    <曲目>
    ・組曲「展覧会の絵」より(ムソルグスキー)
    ・「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲より(レスピーギ)
    ・バラード(トマジ) ※独奏:福井健太
    ・英雄ポロネーズ(ショパン)
    小編成アンサンブルステージもございます。

    ホームページ
    http://www.geocities.jp/espoir_saxophone/content/concert.html


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