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園子温監督自身のシオンプロダクションの第一回作品となる映画『ひそひそ星』は、もっとも園子温らしい作品と言っても過言ではなかった。園監督が20代の時に書いたオリジナルの物語が、構想25年を経てモノクロームのSF映画として結実。神楽坂恵演じるアンドロイドの主人公が、いくつもの寂しい星に降り立っては人間たちに大切な思い出の品を届けるという物語だ。作品を発表するごとに新しい一面を披露して、映画ファンを沸かす園監督。最新作の『ひそひそ星』に込めた想いとは何か? 園監督にインタビューで尋ねた。
――奥様でもある神楽坂恵さんが演じるアンドロイドの鈴木洋子"マシンナンバー722"ですが、どういうイメージで作り上げたキャラクターなのでしょうか?
簡単に言うと、特殊な人にはしたくなかったんです。SF映画なのでストイックなモデルさんみたいな人を使っておしゃれな映画にすることもできたけれど、気取った感じのね(笑)。それだとお決まりになっちゃって面白くないし、僕が作る意味もないんですよ。彼女とはいつも一緒だからわかるのかもしれないけれど、作品の中に日常性がほしかったし、所帯じみたところもほしかった。そういう平凡な女性の話なので、彼女にお願いしました。
――以前、『映画 みんな!エスパーだよ!』で神楽坂さんをインタビューした際、『冷たい熱帯魚』の頃を思い出すほど厳しかったと(笑)。身内の場合、やりにくい面もなにかとありそうですが。
そうですか(笑)。実際、何人かの女優さんが手をあげていましたが、これ自主映画なんで、そこにセールスポイントを求めてもおかしい話なんですね。この映画の芸術性は好きなものを撮ることで実現するわけだから、ドライな関係の人が一人でもいると違うことになる。簡単に言うと、好きな人で撮るということです(笑)。といっても恥ずかしいことでもあるので、乗り越えていくことが必要だったんですけど。
――ロケ地は、"3.11"の傷跡が残る福島県でした。『ヒミズ』『希望の国』と、福島が題材として続いています。
もともと福島に残っている風景の映画を撮りたかったけれど、『希望の国』が終わった後、どうしていいかわからなかったんですよね。で、2013年に自分のプロダクションを立ち上げて、その第一作目をと思っていた時に、この話が持ち上がりました。第一作目にしては実験的すぎる感じがあるけれど、今しか撮れないこともあると思うんですよね。
――船出した会社のことを考えると、キャッチーなエンタメ作品を撮る案もありそうですが。
事実、すぐお金になるようなエンタメ映画の案もあったけれど、これで良かったんですよ。次に福島に行った時、ロケ地がなくなっていたりするんですよ。きれいな更地になってしまっていて、何もない。すぐ変わってしまう。だから、記録のためにも撮っておいてよかったと思います。
――そのこととは別に、たとえばお金になる映画はお金とわりきって撮る、撮りたい映画も撮る、みたいな考え方はいかがですか?
それってワイロを受け取ることと同じで、1回でも受け取ると、その時点で何かを失うんです。それは、その期間は、毎日少しずつ死ぬことと同じことを意味しますね。だからもう、僕は自分が撮りたくないものは撮りたくないですね。よくないことなんですよ。
――「もう」ということは、過去にあったと言うことですね(笑)
(笑)。そういうことをやると、悪い意味でのバカになると思うんですよね。一本撮るたびに脳の中の何かが破壊されて、大切なものを失っていく気がします。いろいろな意味でダメになりますよ。きれいごと言うわけじゃないけれど、お金のためが一番にあるとダメだと思います。僕はいま、めちゃくちゃおもしろい映画が撮りたいです。
――映画の世界を飛び出して、広く人々に伝わる想い、そして真理であると思います。
低予算になるとは思うけれど、ほかの映画会社でもこういう映画を撮ってみたいですね。iPhoneだけを使って製作費1万円くらいで長編映画を撮るとか、そういうことも面白そうだなって思います。『ひそひそ星』は自主映画で、モノクロで地味だけれど、面白い題材であれば今後も撮り続けたいです。
映画『ひそひそ星』は、2016年5月14日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
■参照リンク
映画『ひそひそ星』公式サイト
hisohisoboshi.jp
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