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歴史上「絶対悪」であるヒトラーが現代に甦り、テレビの世界で大スターになるという大胆不敵な設定で世界中を沸かしたベストセラーの実写映画作品『帰ってきたヒトラー』がいよいよ日本に上陸する!そんな話題作で、21世紀にカムバックしたヒトラーを演じたのは、リアリティを追求するために選ばれた無名の実力派舞台俳優オリヴァー・マスッチだ。この度、AOLではマスッチ氏にインタビューを実施。撮影を通じて「民主主義が非常に危険な状況になっている」と彼が実感するワケとは?現代の日本に生きる私たちにとっても他人事ではないかもしれない...!
--エンターテインメントでありながら政治を風刺した素晴らしい作品だったと思います。
ありがとうございます。映画だから娯楽はないといけないと思いますが、それだけだとダメで、メッセージもないといけません。この映画はまさにそれに成功しました。ベストセラーの映画化ということで、たくさんの人の関心を呼び、観客は【笑い】を期待して劇場に足を運ぶのですが、観終わると「これって実は笑えないことなんだな」と気づき、映画館を後にしていました。
--まさしく、最初の方で笑っていたことを、鑑賞後は恐ろしく感じてしまいました。
この映画の狙いは最初は【笑い】です。現代に蘇ったヒトラーの目線で、いろんな状況が語られるということですごく笑える。だけど途中、「何でもいいから人種差別のジョークを考えてくれ」というシーンがあり、そこが破ってはいけないタブーを破るところなのです。強制収容所やユダヤ人に関するジョークが出てくるのですが、要するに犠牲者をジョークのネタにしてしまっている。あのシーンは観客が静かになるんですよ。あの瞬間からそれまでコメディ・風刺映画だったのが悲劇に変わります。
--ドイツでヒットした理由をどうお考えですか?
まず、小説をすごく気に入った方々が観に来られました。また、ドイツではヒトラーものの映画を「観たくない」という人もいるのですが、そういう方々も口コミによって観に来るようになった結果、これだけのヒットになったのだと思います。結局、この映画はヒトラーを茶化しつつも、現代の社会で民主主義が危険な状態になっているということを警告している作品なのです。
--本作でヒトラーを演じることで、ヒトラーに対する考えが変わりましたか?
よく聞かれる質問です(笑)。この映画を撮る前も後も、私のヒトラーに対するイメージは全く変わりません。彼は昔も今も、私にとって非常に邪悪なファシストです。
--では、新しく知ったことなどはありますか?
多くの人が、「今のドイツにはファシズムやナチ政党になびく人など、そんなにいないだろう」「ナチスがまたこの世の中に蘇るなんていうことはありえないだろう」と考えています。しかし、実は私たちがこの映画で実験的にいろいろ行ったことによって、そんなことはないことがわかりました。
映画の中には、ヒトラーに扮した私が親しみを交えて、アドリブで一般の人々と交流するシーンがあるのですが、そこで一般の人が私に対して、外国人を敵視するような発言をするシーンがあります。私がヒトラーに扮し、そういう会話を誘導をすると、そのような発言が出てしまうのです。それは驚きでした。
--マスッチさんがヒトラーに扮して街頭に繰り出すドキュメンタリーのシーンは実験的ですね。あの場面の撮影中に、なにか印象に残ったことなどありますか?
「仕事をしない奴が多い」という人に対して、ヒトラーが「1933年に作ったような強制労働収容所を作ったほうがいいかな」と言ったら、彼が「そうだね」と返答するシーンがありますよね。実はあの後、彼は「強制収容所はやっぱり要るよね」とも言っているのです。あまりにも怖い発言だったので、映画では採用しなかったのですが、それがショックでした。
2台カメラが回っている前で、しかもその発言が映画になることを承諾しサインをした上でのことです。そういう状況であるにもかかわらず、そのような発言をする人がいる。10年前のドイツだったら考えられないようなことが起きてしまっています。
--実際にヒトラーを演じて、ヒトラーはなぜ大衆を動かすことができたのだと思いますか?
当時はドイツが非常に厳しい時代だったからでしょう。また、ヒトラーは「政治とは演説だ」という考え方を持っていて、彼自身非常に演説の上手い人物でした。ヒトラーが登場した時代、第一次大戦の後で、ドイツは恐慌にあえいで大変な時期だったのですが、そういう中でヒトラーが「ドイツは復活できる」「世界チャンピオンになれる」のような誇大妄想のようなことを言って、国民の心を動かしたのです。
--70年前のようにならないようにどうすればいいのかと考えていますか?
この映画を通して、人々は不安を煽られてしまうと簡単に誘導されてしまう、操作されてしまうことも学びました。たとえば、難民問題に対してヨーロッパでは「柵を自分の国に作ってしまえ」と考える政治家もいますが、難民問題はもっと複雑なものです。柵を作っても絶対解決はできないんです。でもそういう簡単な解決策に人々がなびいてしまう、そういう風潮があります。
しかし、私たちが手に入れた大きな価値あるもののひとつが、「民主主義の中で自由に選挙に行ける」ということです。だから、私たちは、自分たちが選ぶ人がどういう人なのか、しっかり見定めて選ばないといけないと思います。ヒトラーのような人が選挙で選ばれないようにするためにも。
映画『帰ってきたヒトラー』は6月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー
ⓒ2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH
■参照リンク
映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト
gaga.ne.jp/hitlerisback
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RSSブログ情報:http://news.aol.jp/2016/06/17/hitlerisback/