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『その夜の侍』(12)の赤堀雅秋監督による最新作『葛城事件』は、日本映画史に確実にインパクトを与える紛れもない傑作だ。無差別殺人事件を起こした家族の長で、抑圧的で思い込みが強い父親・葛城清を、名優・三浦友和が怪演! 家族崩壊の元凶となるクズ男だが、「基本的に悪い人じゃない」と優しい目線を送る三浦は、どのような想いで演じたのか!?
――凄まじい衝撃作でした! 最初に脚本を手にした時、どのような感想を?
僕はト書きまで丁寧に読み、画を頭に浮かべながら読み進める習性がありますが、本当に面白い脚本だなと思いました。ただ、どう映画にするのかな? と思いもしましたが、とにかく魅力的な内容でした。面白いという表現よりも、ざわつく感覚がありましたね。
――家の主で諸悪の根源である葛城清という役柄は、魅力的でしたか?
いままで読んだことがない脚本ということにまず惹かれまして、自分自身でもオファーされた葛城清という役柄がものすごく魅力的でした。滑稽で弱くて、強引で思い込みが強くて、ダメな男。ただ、この役柄は誰でもない、自分が演じたいと思いましたね。
――葛城清は家庭を壊そうとしたわけではなく、理想の家庭を作ろうとしていたことがポイントですよね。
基本的に家族を大事にしていた人が、屈折していく話なんです。そういう点がまずあって、あくまでも家庭を放棄した男の話ではない。だからいい脚本だなと思い、監督にお会いして2時間くらい。この役柄についての思いをうかがい、お返事させていただきました。
――彼のリアリティーに満ちた存在は一度観たら忘れないほどのインパクトですが、どこかで観ている気もする中年でした。
身の回りにいる人なんですよ。だから僕が見聞きしたことも参考にしています。たとえば、レストランでああいう人いるじゃないですか。タクシー乗った時、いきなり威張りだす人とかね。普段ものすごく丁寧になのに「え?客の立場になるといきなりこうなるのか?」みたいな人っていますよね。その辺は、かなり参考になっていますよね。それってハタからみると、滑稽じゃないですか。そういう人物像は、参考にしました。
――彼はモンスターではありますが、誰でもがなりうる日常の先にいそうな存在だと思いました。
理想の家族像を持ってはいたけれど、ダメになった。新築の家を建てた時は「ここからだ」って思い、小さい子たちにも夢を抱いていた。その瞬間はね、幸せだった気がするんですよ。でもそれは清さんの理想であって、子どもたちや妻の理想ではなかった。そのズレ、溝がどんどん大きくなっていって、家庭が崩壊していってしまった。
――だからこそ、彼を観ていて共感も少しはする。彼に愛着や一定の理解を持って演じられていたようにも見受けられました。
もちろんです。妙な言い方なんですけど、魅力的な人。すごく弱い。自分の弱さに気付いていない人ですが、それって僕らも自分の中に持っていて、気づいていないこともあるでしょう。自分にも理解ができるなと思ったので、撮影が楽しみでした。
――葛城清は、特別な人間じゃない点が怖いです。どこにでもいて、誰もがなりうる。
そうですね。基本的に悪い人じゃない。「あんた、それ違うよ」って、兄弟や親戚がいて、口を出してあげればよかった。彼は、自分の理想郷を作りたかったのでしょう。基本は、本質は家族を大事にしたかった人だろうなということです。そこが、怖いんです。
映画『葛城事件』は、2016年6月18日(土)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー!
(C)2016「葛城事件」製作委員会
(C)2016「葛城事件」製作委員会
■参照リンク
映画『葛城事件』公式サイト
katsuragi-jiken.com
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