"日本警察史上、最大の不祥事"と言われる「稲葉事件」をモチーフに綾野剛主演で映画化した『日本で一番悪い奴ら』は、あの山田孝之主演の映画『凶悪』(13)でメジャーデビュー作にしてセンセーショナルを起こした白石和彌監督の最新作だ。白石監督自身、「警察という皮をかぶったギャング映画、青春映画を目指した」と語る本作について話を聞いた。
――前作の『凶悪』(13)を観ていたので、今作の青春全開なテイストが意外でした。
そうですね(笑)。今回の作品は警察や裏社会を扱った映画ですが、中身は青春映画なんです。日本ではギャング映画が作りにくく、だいたいヤクザ映画になってしまうけれど、そうじゃない。警察という皮をかぶったギャング映画、青春映画を目指したんです。
――マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』(90)が引き合いにだされますが、あれも主人公のヘンリー・ヒルの青春物語みたいなものですからね。
日本のヤクザ映画と今回の映画が根本的に違う点はチーム感、皆で悪だくみをしながら楽しそうにしているところですね。悪いことをしていながらも、純粋に楽しんでいる姿を撮りたかった。その感じのまま作れないか、いろいろ模索はしました。
――観ていて、ちょっと仲間に入ってみたいって思ってしまいました(笑)。
結果的に悪いことをしてしまうので服役が待っていたりするんですが、ずっと悪いことをしているだけじゃなくて、楽しいことがある人生なんです。仲間がそろえばカニとか美味いものを食べて、酒を飲み、いい女とヤリたいって皆思っていることですよね。
――主人公のモデルの方とお会いしたそうですね。さぞ充実した人生だったでしょうね。
充実していたと思いますよ。もちろん魅力的な方で、一生懸命やっていた記憶しかないんですって。その一生懸命がおかしなことになっていたわけなんですが。普通の警察官で仕事ができる人でも生涯であげるチャカは10丁いくかいかないか。この人は5年かそこらで100丁超えている! まあ、買ったりしているからですけどね(笑)。
――言ってみれば、社畜みたいなものですよね。私利私欲だけでやっているわけではないというか。
そうです。単純に功名心だけでやっているわけじゃなくて。そのことをやっている作業そのものが楽しかったはずなんですよ。だから、損得じゃないんです。僕も助監督を長いことやっていて、寝ないで仕事して先輩に怒られながら仕事していましたが、でも楽しかったんですよね。
――監督も主人公と同じなんですよね。だから、楽しそうな雰囲気がリアルに描ける。
彼はたまたま柔道をやっていたから警察に入るわけで、彼のやっていることと僕の場合を比べても、それほど差を感じてはいないです。彼は求められるがまま拳銃をあげていくけれど、まわりにチャカとかヤクザがたくさんいて、そこにまみれれば、そりゃそういう風になるよねって、すごくシンパシーを感じます。現場レベルの話ってあるじゃないですか。
――会議のシーンとか、実はすごくわかる、わかるって思いながら観ていました(笑)。
鬼畜会議室って呼んでいますが(笑)、「去年より(覚せい剤が)20キロ下回っているから、いいじゃないすかね?」みたいな会話って、ゲラゲラ笑いながら撮っていたんです。「本当にひどいね、こいつら」って、「こんなやつらいるかね」って、言いながら(笑)。でも試写をしたら、ああいう会議はよくあるよねって共感の嵐で。どこもクソ会社ばっかりですよ(笑)。
――『凶悪』(13)に続いて、素晴らしい映画をありがとうございました! 将来的に、どういう監督になっていたいとかありますか?
5年後、10年後は、考えたことないですね。でも『凶悪』(13)や今回の"日悪"を観て、映画監督を目指したようなことを言われたらうれしいです。僕も映画を観て人生が変わったので、そういう力が映画にはあると思うんです。映画監督が職業のすべてじゃないですが、そういうことを聞ければ監督冥利に尽きるなと思いますね。
映画『日本で一番悪い奴ら』は、6月25日(土)より、全国ロードショー!
■参照リンク
『日本で一番悪い奴ら』公式サイト
nichiwaru.com
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