<YouTube> や<spotify>などが普及した現在ほど、手軽に様々な音楽を楽しめる時代はないだろう。しかし、かつてのリスナー達にとって音楽を聴くこととは、レコードショップでアルバムを買った帰り道にワクワクしながらジャケットや中のデザインをしげしげと見つめ、中に収録されている音楽を想像したりといった、いわば副次的な楽しみも含まれていた。そんな楽しみを味わってきたリスナー達の中には、思い入れあるアルバムのジャケット写真の舞台となった名所を巡ってみたいと思う者はきっと多いことだろう。
ニューヨークを拠点に活動する写真家、ボブ・イーガンが取り組むシリーズ「ポップスポット」の中で、彼は写真のロケーションを調べ、同じアングルで現在のその場所の写真を撮影し、そこにアルバム・ジャケットの像を合成させるという興味深い試みを続けている。思い出のジャケットとその場所の現在の姿が重なる写真からは、時間の流れが感じられる。そのジャケット写真や音楽に思い入れがたっぷりあるリスナー達にとっては堪らないはずだ。
「長い間ニューヨークに住んでいるけど、僕は多くの知人達を、映画や音楽といった文化的なものが潜んだ名所に案内してきたんだ」と言うイーガン。ボブ・ディランの有名なアルバム・ジャケットの撮影場所が気になって調べたというのが具体的なきっかけで、同じように撮影場所となった名所を調べては撮影し、ニューヨークを訪れる観光客達のためにサイトに写真をアップし始めるようになったという。
写真は話題となり、彼はそれ以降ニューヨーク以外の土地でも同様に写真を撮影するようになった。最近作にはレッド・ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』、ビートルズ『アビーロード』、オアシス『モーニング・グローリー』などがある。
そんなわけで現在大人気の「ポップスポット」は、とりわけツイッターで大きな注目を集めているようだ。およそ40カ国もの人々からコンタクトがあり、中には「次の作品はどこで撮るのか?」などと尋ねるてくる人もいるのだとか。彼に今後の計画について実際に訊いてみると、「LAやロンドン、アメリカ中西部でのものを今後アップしてゆく予定だよ。その後は映画のシーンや有名な絵画、歴史的な写真なんかにも挑戦しようと思っている。きっと人々は、歴史を追体験できるってところを楽しんでくれてるんじゃないかな」と語ってくれた。
誰もが想像しながら実際には実現できなかった試み「ポップスポット」、今後も注目したい。
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