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直木賞作家・小池真理子の同名小説を映画化した『二重生活』の監督、岸善幸と出演したリリー・フランキーにインタビュー。岸監督いわく、「人間の半端な部分を、この映画は肯定しています」というメッセージについて、リリーと岸監督に赤裸々に語っていただいた。
――今回、映画『二重生活』での共同作業は、何が一番楽しみでしたか???
監督:リリーさんの作品はほぼ拝見していて、「東京タワー...」は原作も読み、母親に対する見方などが印象に残っていて。それを今回の作品に投影しようと思い、原作を脚色したところもあります。それと哲学の大学教授役ということで、素敵な声とどこか思慮深い考え方をしていると思わせるたたずまいも合っていると思いました。リリーさんの過去作とは一線を画した、それでいてリリーさんの素顔のような姿を出せたかなと思います。
リリー:うれしいですね。僕の場合、ホームレスとか暴力的な役が少なくないなか、いつも監督はインテリ寄りの役柄を作ってくれる。でも、僕自身も中年の孤独じゃないけれど、そういうことは日々強く感じていることなので、そこの表現も楽しみでした。
あと毎回岸さんの作品は、仕上がりが想像できないんですよ。だから毎回、完成した作品を観てびっくりします。現場でカメラ、担いでいるんですよ。仕上がりはドキュメンタリーのような、もっと荒れ果てた画になると思っていましたが、そんなことはないっていう。
――岸監督は、独特のアプローチで作品を作り上げると皆さん言いますが、リリーさんから見て、その点はいかがですか???
リリー:岸さんってすごくしつこいんですけど、そこに圧はないんですよ。言ってみれば、綿でゆるゆると首を絞めてくるような。Sとか鞭で打たれる感じじゃなくて、ゆるゆると綿で締められて、最終的に布団の中で動けなくなるカンジです(笑)。でも、明快なモノが監督の中にあるので、すごくやりやすいですね。
――また本作は"尾行"というテーマ、それを描いていく視点が凄まじいと思いました。観ていて、人間が気づきたくないことに気づいてしまうような感覚にも陥りました。
リリー:この映画を観たことで実際の自分だったり、見たくなかった本当の何かしらを知ってしまう感覚にはなりますよね。最近のテレビは不倫の報道ばっかり出ているので、この映画もそこにフォーカスが当たりそうだけれど、不倫そのものはこの映画において大きな意味合いは持っていないんです。社会にいるすべての人々が二重構造になっていることに気づいてしまう、そういう作品なんです。
監督:それぞれの登場人物は、それぞれの愛を生きているんですよね。だからリリーさん演じる篠原教授も一見、学術肌の無口な教授ですが、僕の中で大好きなラブシーンがあって。そこが丁寧に描けて、僕は撮っている時も感動していましたけれどね。
リリー:長谷川君がこの眼差しでポスターに写っていると、「不倫映画?」と思われるかもしれないですが、そうじゃないんですよ(笑)。それが発端でもいいですけれど。
監督:リリーさんとお酒を一緒に飲むと、かなり下ネタのほうにいかれますが、この映画の中では排除していただいていて(笑)。そこも楽しみだったんですね、それは、期待通りの効果があったと思っています。
リリー:実は僕も、この教授の気持ちがわかるっていうか、映画を観ていて、ちょっと涙が出てきて、切なくなっちゃいましたよ(笑)。
――今日はありがとうございました! AOLニュースの読者は、30~40代の男性が多いのですが、最後に一言ちょうだいできればありがたいです!
リリー:30代、40代の人ならば、僕や長谷川君の役柄だけじゃなくて、どの役柄にも感情移入できるんですよね。長谷川君はエリートの役なんだけど、何かしら欠落しているというか、そういう人の集まりが社会なんですよね。出てくる人たちは、どこか半端というか、完全な成功者、完全な若者として描かれてないから、共感できると思うんです。
監督:そして人間の半端な部分を、この映画は肯定しています。だからと言って、この映画を観ることで元気が出るかはわからないですが、その後の社会は違って見えるはずです。そうなったらいいなと。でも肯定はしていますので、注目してほしいです。
リリー:前半、サスペンスタッチで観ていたはずが、後半変わるんですよ。もう、後半は全然違う。それも素晴らしいですよ。
映画『二重生活』は、大ヒット上映中!
(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ
■参照リンク
『二重生活』公式サイト
http://nijuuseikatsu.jp/
■今月のAOL特集
世界のかわいい動物たち【フォト集】
RSSブログ情報:http://news.aol.jp/2016/08/12/nijuuseikatsu/