10月22日に、MLBナショナル・リーグの優勝決定シリーズ第6戦、シカゴ・カブス対ロサンゼルス・ドジャースが行われ、5-0で勝利したカブスが、71年ぶりのワールドシリーズ進出を決めた。
前回、チームがリーグ優勝を果たした1945年は、第二次世界大戦が終戦を迎えた年といえば、この名門チームがいかに優勝から遠ざかっていたかがわかるだろう。そんな中、カブスが優勝に近付くたびに語られてきたのが、「ヤギの呪い」こと「ビリー・ゴートの呪い」だ。
カブスが優勝できない理由として、長年語られてきた「ヤギの呪い」は、カブスがワールドシリーズ進出を果たした1945年、シカゴの本拠地リグレー・フィールドでの第4戦にやって来たカブスファンのレストランオーナー、ビリー・サイアニスが連れてきたヤギのマーフィーを、球団関係者が入場拒否したことが発端となっている。
熱烈なカブスファンだったサイアニスは、それまで何度も2枚のチケットを購入し、自分の店のマスコットだったヤギのマーフィーを連れてこの球場に訪れていた。しかし、シリーズ第4戦、サイアニスは、いつものようにマーフィーを連れやってくると、入口で追い返されてしまい、激怒!(追い返された理由は「ヤギの臭いに苦情か来ていた」など諸説ある)「カブスがリグレー・フィールドでワールドシリーズを戦うことは二度とないだろう」と捨てゼリフを吐き球場を去った。その後も、オーナーのリグレー氏に抗議の手紙を送っていたというので、好きだったチームに裏切られたことに対する怒りは相当なものだったようだ。
ワガママなファンの一言にすぎなかった「ヤギの呪い」は絶大な効果を発揮した。翌年こそ3位だったものの、その後転がり落ちるようにチームは衰勢。20年間、シーズンの勝率5割を割り続け、70年代に入るとチームの成績が上向きになることもあったがリーグ優勝まであと一歩のところで逃したり、80年代には2度の地区優勝を果たすも、リーグ優勝決定戦で負け続けたり。
そして、カブスにかけられた「ヤギの呪い」を印象づけたのが、2003年、リーグ優勝決定まであと1勝のところで起きた悲劇「スティーブ・バートマン事件」だ。
この年のリーグ優勝決定戦において、フロリダ・マーリンズ(現マイアミ)と対戦したカブスは、初戦を落としたものの、その後3連勝で大手をかけ、3勝2敗で迎えた第6戦を7回の裏まで3対0とリード。8回1アウト2塁で、あと5つのアウトでリーグ優勝という場面に悲劇は起きた。
3塁観客席に飛んだフライを、レフトが取ろうとすると、カブスファンの青年スティーブ・バートマンが手を伸ばし守備を妨害。これをきっかけに、それまで完封していた先発もマーク・プライアーがペースを崩し四球、連打を浴び8失点し歴史的な大敗を喫した。その後の試合も連敗し、またもワールドシリーズ進出を逃し、改めて「呪い」の強さがクローズアップされたのだった。
さらに、2008年、チームのオーナーだった新聞社シカゴ・トリビューンの経営破たんを期に、有望な選手が放出され、2010年代には、5年連続地区最下位と低迷を続けていた。
そんなカブスが復活の兆しを見せたのが、昨年2015年。地区順位こそ3位だったが、名将ジョー・マッドン監督を招聘し、若返ったチームはワイルドカードからリーグ優勝決定戦まで進むことに。そして再び、「ヤギの呪い」へ挑戦するも、4連敗。しかも、対戦相手メッツに所属する、ヤギと同じ名前の「ダニエル・マーフィー」に、4試合連続でホームランを浴びせられるという信じられないオチまで待っていた。
71年にも渡る負の歴史を背負いながらも10月22日、本拠地リグレー・フィールドで、ついにナショナル・リーグ優勝を決め待望のワールドシリーズ出場を決めたシカゴ・カブス。サイアニスの「2度とこの球場でワールドシリーズは戦えない」という「ヤギの呪い」を解くことに成功し、26日からアメリカン・リーグの王者、クリーブランド・インディアンズと対戦する!
Your 2016 National League Champions. #FlyTheWpic.twitter.com/18EErLswso - Chicago Cubs (@Cubs) 2016年10月23日
最後にもうひとつ、ゾクゾクするようなネタを披露したいと思う。ナショナル・リーグ優勝を決めた10月22日は、奇しくも呪いをかけたビリー・サイアニス(1970年10月22日に逝去)の命日だったのだ。やっとサイアニスから許されたとも思えるこの絶妙すぎるタイミング、これも偶然ではないような気がする。
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