◇ボリウッド映画の新潮流『きっと、うまくいく』とスティーヴン・スピルバーグ
ムンバイ滞在3日目、朝食を片手に新聞に目を通していると、スピルバーグが「I just loved "3idiots"(『きっと、うまくいく』原題)」とコメントした記事が目に飛び込んできた。現地新聞"THE TIMES OF INDIA"によると、ドリーム・ワークスの大株主であるリライアンス・グループとのミーティングのために訪印したスピルバーグが、インド映画人との懇親会で発言したとのこと。大監督さえも支えてしまうボリウッドのパワーは、ハイテク分野のめざましい躍進による。その世界進出は凄まじく、ハリウッド映画のCG、VFXから、アニメ制作やゲームまで、様々なコンテンツに関わる。インターネットの中枢となり、グローバルなコンテンツサービスはインドを経由して発信されている。ITの世界でキーパーソンになる、それはインドで成功者になることに他ならない。
スピルバーグが絶賛した『きっと、うまくいく』は、ITで成功を目指すエリート大学を舞台にした青春グラフィティ。理系大学を舞台に、未来のエンジニアを目指す学生たちを描く、アーミル・カーン主演のインド映画史上No.1ヒット作だ。
型破りな自由人ランチョー、カメラマン志望のファルハーン、神頼みが信条の貧乏学生ラージューの3バカ(3idiots)が登場し、困った時に3人は口を揃える。その合い言葉が「きっと、うまくいく!!」なのだ。
物語は、大学の卒業式で突然姿を消したランチョーを探すミステリー仕立て。卒業から10年後、ランチョーを追って、現在と瑞々しい学生時代が交錯して描かれる。スパルタ式の教授、成績ばかりを気にする宿敵などが登場し、真の豊かさとは何かを問いかける。教育という固いテーマを、普遍的に描くことに成功したボリウッド新潮流の作品だ。
この作品のチャームポイントは、押しつけがましさがないことではないかと思う。ラージクマール・ヒラニ監督に聞いてみると、「自分の人生を振り返って、一番大変だった時期はいつかと分析すると、12年生(注:日本の高3にあたる上級中等学校2年生。この年に大学への進学に影響する全国共通テストが行われる)の時だと思った。いい点数を取ることに追いまくられ夜も眠れなくて、試験結果が毎回とても心配だった。どの大学に行けるのかが決まり、生徒には重いプレッシャーがかかる。それを思い出して、教育問題と生徒へのプレッシャーをテーマに、笑いと涙をふんだんに盛り込んだ作品を作ろうと思った」とのこと。僅か3作目にして、インド史上No.1をものにした監督は、穏やかな眼差しで微笑んでいる。その姿は、『きっと、うまくいく』を観終わったときに心に残る、得も言われぬ爽やかさに似ている気がした。最後に監督は「この作品は、きっとあなたを笑わせ、泣かせて、ハッピーにしてくれます」と、もう一度微笑んだのだった。
終わり
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