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MY『パシフィック・リム』レビュー (杉山すぴ豊)
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MY『パシフィック・リム』レビュー (杉山すぴ豊)

2013-07-10 16:00
    Filed under: 国際, AOL限定, カルチャー, 映画, トレンド

    「子どものころ、日本の怪獣映画やロボット・アニメが好きで、大人になったら、いつかこういう映画を作りたいと思っていたんだ」と、この映画の監督ギレルモ・デル・トロ氏は言いました。
    僕もデル・トロ監督と同じような"生い立ち"なのに、
    この作品を創ることが出来たあなたが、本当に、本当にうらやましいです。

    *******以下、極力 ネタバレがないように レビューします*******

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    2013年、突如、海底から現れた巨大怪獣たち!人類は、奴らと戦うべく巨大ロボット"イエーガー(ドイツ語で狩人の意味!)"による軍団を組織し、迎え撃つ!

    ある意味、これだけの、シンプルな映画です。
    でも"これだけ"だからこそ十分ワクワクさせてくれる
    そしてなによりも少年心を熱くしてくれるのです。
    そして、このシンプルな、けれど太いストーリーに、様々な要素をトッピングして
    スーパーエンタテインメントに仕上がりました!

    しかも、この映画は、いきなり"クライマックス"から語られます。
    つまり、怪獣が現れ、人類がイエーガーを作り、対怪獣戦争がずっと続いていて、
    という歴史を冒頭で、手際よく見せてくれて、
    なんと人類対怪獣の最後の決戦前夜という、異常に盛り上がるところから
    物語は始まるのです。

    でも語りがすごくうまいから、観客は、この"いきなりな展開"に
    置きざれるにされることなく、
    素直にこの世界を理解することが出来て、
    そして 主人公たちに感情移入してしまうのです。

    この映画のドラマ性を高めているのは、
    一体のイエーガーを操縦するには、2人の人間=パイロットが必要であり、そのパイロット同士の精神的結合が欠かせない、という設定。

    パイロット同士の精神的結合のために、特殊な装置を使って脳をつなげ、お互いの記憶や感情を融合させるのですが、この映画の主人公である2人のパイロットは、男と女であり、2人とも肉親を怪獣に殺された、という心の傷を持っている。
    この過去=心の傷を乗り越え、明日のために立ちあがれるか? がポイントになってきます。

    ベタですが、こういうエモーショナルな部分がしっかりしているから、主人公たちを応援する気持ちになれるし、アクションが盛りあがるのです!

    本作は、日本の怪獣映画とロボット・アニメへのオマージュということですが、どちらかというと"ロボット・アニメ寄り"ではないかと思います。
    というのも、怪獣とロボット、どちらに感情移入出来るのか、というとそれは、明らかにロボットの方なのです。

    僕は優れた"怪獣映画"であるためには、怪獣にも感情移入出来ることが必要と考えているので、そういう意味では 怪獣自体にあまりシンパシーは感じなかった。

    なので、映画の最後に、怪獣映画のマスターである、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎監督(「ゴジラ」の監督)に捧ぐ、とのメッセージが出てきますが、
    僕は この2人の作り上げてきた怪獣 ないし怪獣映画の匂いより、
    ハリーハウゼンについていえば、タロス(「アルゴ探検隊の大冒険」)やカーリー(「シンドバッド黄金の航海」)といった動く巨大銅像系の魅力をイエーガーに感じたし、人類と科学が結束し、更なる脅威に立ち向かう、というこの映画のプロットは、本多監督の傑作「地球防衛軍」や「幼星ゴラス」に通じるものがあります。。

    あと各国の特色を活かした、個性豊かなイエーガーが登場するあたり、
    日本の実写特撮巨大ロボット TVドラマの傑作「レッド・バロン」を思い起こさせました。(デル・トロ監督は「レッド・バロン」観ているのかな?)

    しかし、「じゃあ怪獣が魅力的ではないのか?」というと、とんでもない!そこはデル・トロ監督! 怪獣を単なる"やられ役"としては描かず、一つ一つに、かっこいい見せ場を与えています。また造形も、"モンスター"というより、ちゃんと"怪獣"になっています。

    なんたって、この映画の世界では、怪獣=KAIJYU が
    世界共通語になっているのですから!

    先ほど悪の怪獣軍団VS人類を守る巨大ロボット兵団というシンプルな構造と書きましたが、デティール部分に
    面白い味付けがしてあります。

    一つは、怪獣の死体でビジネスする闇のブローカーの存在。怪獣の骨の粉末が、精力剤として取り引きされていたりする(笑)。
    各国政府が、怪獣対策には、
    防護壁を建てる方が効果的と、イエーガー軍維持の予算をストップしたり、と、とても"ありそうな"設定が、妙なリアリティをこの作品に与えています。

    さて、僕がとても心に残ったのが、最後の出撃を前に司令官(演じるのはイドリス・エルバ。『マイティ・ソー』『プロメテウス』『ゴーストライダー2』でおなじみですね!)が 皆に決起のスピーチをするシーン。
    その時、今日こそ怪獣たちを撃退し、
    "CANCELING THE APOCALIPSE"
    と言うんです。
    このときの"APOCALIPSE"は、黙示録 転じて 世界の終末的な意味合いで使っているのでしょう。
    僕は、とても英語に堪能なわけではないのですが、
    STOP(ストップ)ではなくCANCEL(キャンセル)というコトバを
    使うところ。
    "世界の終末"をくい止める=STOPだけではない、
    この破滅自体を帳消し=CANCELしてやるんだ、という
    人類の強い意志を感じたのです。
    名セリフです。

    観終わった後、イエーガーと怪獣のおもちゃがほしくなり
    豆魚雷さんでGETしました!

    今年の夏は、あなたの少年心を全開させて、是非、イエーガーに乗り込んでください!

    (杉山すぴ豊)

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