作曲家・佐村河内守氏が実際は作曲をしておらず、ゴーストライターの新垣隆氏が曲を書いていたことが明らかになった。今後、多額の損害賠償が出るとの報道もあるが、時折「そんなに悪いことじゃないんじゃないの?」という声も聞こえてくる。
今回の佐村河内氏の件では「耳が聴こえない現代のベートーベン」というストーリー全体でもって人々の支持を集めていただけに、一般的な「ゴーストライター」とは単純に比較することはできない。「ハンディキャップを背負っているのに頑張っている彼に感動した。故に支援の意味も含めてCDを買った」という人も大勢いることだろう。さらには、「東日本大震災で母親を失った少女のために作った曲」もあっただけに、今回の件は多くの人々を裏切ったことになる。
だが、ゴーストライター経験者からすると「皆さんけっこうナイーブだったんですね......」ということになるようだ。というのも、世の中ゴーストライターだらけだというのだ。
それは書籍だけにとどまらず、ツイッター、ブログ、イベントにおける応援メッセージなど多岐にわたる。過去にとある芸能人・XのブログのゴーストライターをやっていたA氏は語る。
「ボクが担当した芸能人は忙しかったので、『常識の範囲で書いてもらえればいいよ』と言われていました。何本かブログの原稿をマネージャーに送り、修正依頼が来たら直し、その文章が最終的にブログにアップされていたのです」
ところがA氏が驚愕する事態が発生する。なんと、A氏の書いたブログがネットメディアに拾われ、ネットの各所でその話題が登場するようになったのだ。
そこに貼られたリンクを元に、ブログにはアクセスが殺到。A氏は「本当はXが書いたと思っている人が多いんでしょうね......。こんなに注目を浴びると、私もなんだか申し訳ありません......」と振り返る。
大体において、芸能人だけでなく著名な社長などが本を書く時も、最初の段階で大切なのは「誰に原稿書いてもらいますかね?」ということだ。「聞き書き」という形もあれば、本人に取材し、それをライターの腕でなんとか原稿に仕上げることもある。今回の件で「ゴーストライター=悪」のような風潮にもなりかねない空気が漂っているが、前出A氏によると「世の中に創作物を出すには必要不可欠な存在ではないでしょうか......」とのことだ。
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