ザ・ドリフターズによる伝説的番組『8時だョ!全員集合』(TBS)には常に5パターンほどのエンディングが用意されていたという。
生放送ゆえにきっちりとした時間が計算できないからだ。
流す曲の部分を短縮したり、演奏するテンポを早めたりしていた。だから「ババンババンバンバン」が異様に早い時があったのだ。生バンドによる演奏だからこそできた芸当だ。その中でもルールがあった。加藤茶の「風邪引くなよ!」というフレーズだけは必ず入れていたという。
そんなドリフなどの裏話を志村けんが語ったのが、『シューイチ』(TBS)での中山秀征との対談コーナー「中山のイチバン」だった。
『全員集合』の多くの回で最後のコントを担当していた志村は、稽古の時には5分だったコントが2分に短縮されるときもしばしばだったという。自分だけならなんとか対応できるが、ゲストがついてこれない。それを上手くまとめきったときの達成感は格別だったという。
そういった部分も含め、生放送にはハプニングがつきもの。『全員集合』の魅力のひとつに「狙い」なのか「アクシデント」なのか区別の付かないアドリブがあった。
「見てるお客さんが台本があるのかな?って思わせる空気が面白いんだよね。台本が見えちゃうのはあんまり好きじゃない。どこからがアドリブでどこまでが稽古したものなのか分からないくらいのほうが面白いよね」と志村は言う。
だから、アドリブと思われている部分の多くは、アドリブっぽく演じるように徹底的に稽古したものだったという。
それを見たお客さんは「私が見た回で間違えてさ!」と"特別な一回"感を感じることができる。その特別感こそがエンターテイメントの醍醐味だ。
ある日の本番、志村はセットの階段で思いっきり膝をぶつけ、苦悶の表情を浮かべた。
舞台袖に戻ると「大丈夫ですか!?」と血相を変えたスタッフが救急箱を持って駆けつけた。
「何が?」と事もなげに言う志村に「膝は?」と心配そうに聞くスタッフ。
「わざとやってるんだよ、バカヤロウ!」
エンターテイメントにとって大事なのは身内をも"騙す"演技力なのだ。
文=てれびのスキマ(http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)
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