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うだるような夏も終わりを告げ、日本列島にようやく秋が到来した。秋と言えば味覚の秋。そんな中、一人の女優が食材へと変貌を遂げた。その女優の名は倉科カナ。味のある演技と魅力的な肉体、実に「美味しそう」な彼女がついに食材になってしまったのだ! ......とは言えご安心を。これはテレビのコマーシャルのお話。彼女はタイガー魔法瓶の「GRANDX」のコマーシャルで、米、肉、パン、コーンという4つの食材に扮しているのである。


<素材の化身米・肉篇>
http://youtu.be/HWhXDutlE10


<素材の化身パン・コーン篇>
http://youtu.be/Vbfwq0tENeI


4つの食材に扮した倉科カナは、それぞれの食材の気持ちになって私たちに語りかける。「米です。正直、土鍋以外で炊いてほしくない......」「肉です。私の魅力はステージ次第。えっ? 陶板? 良いんじゃない?」「パン生地です。私、面倒見が良くないとカリふわにならないから」「コーンです。極上のスープにしたいなら、段取り悪いのはイヤ」と。かなり上から目線で注文をつけてくるわけだが、食材が注文をつけてくるというのがなかなかに憎い。倉科カナのどこか別世界にいるような存在感も相まって、おもわず食べてしまいたくなる魅力に溢れている。

しかしながら、よくよく考えてみてほしい。確かに倉科カナほどの女優ならば、食べても美味しいだろう。だがそれはつまり倉科カナとの別れを意味する。倉科カナを食べたいという欲求に従えば、倉科カナは私たちの胃の中で消化され、この世界から倉科カナが消えてしまうということになってしまう。倉科カナを食べたい。でもやっぱり、倉科カナを食べたくない! そんな相反する二つの欲求で、私たちの心は引き裂かれそうに揺らぐのである。

というわけで本日はそんな揺れる想いを、米に扮する倉科カナさんにぶつけてみます。これは、物寂しい秋の訪れを告げる、世界でたった一つのラブストーリー......。


「米です。正直、土鍋以外で炊いてほしくない......」
倉科カナはそうぼくに告げてから、少し微笑んで、おこわのように固く目をつむった。既に覚悟は出来ている、と言うように。だがぼくの心はまだ整理がつかずにぐちゃぐちゃで、まるで雑炊のようだ。そんなぼくの気持ちを推し量って倉科カナは目を開き、再びぼくに告げる。
「米です。......お願い。あなたに、炊いてほしいの......」

倉科カナの気持ちはよく分かっていた。米として産まれてきた彼女の幸せは、食べられることにある。そして彼女はぼくを選んでくれた。もち米のようにつややかな瞳が、ぼくを真っすぐに見つめていた。だけどぼくは、どうしても、倉科カナとの別れを決められずにいる。彼女の存在は、ぼくの中ではほとんど主食のように大きなものになっていたから。そして彼女は恥ずかしそうに言う。
「あなたのためなら......私、もっと脱穀しても良いんだよ......?」

女の子の口からこんなこと言わせるなんて、男の子失格だ。それでもぼくは、彼女を失うのがこわかったのだ。言わば、おこわだ。倉科カナを失うのがおこわだったのだ。彼女はその夜、何度もぼくに迫った。炊いてくれ、と。きつく炊きしめてくれと。だがぼくはその度に首を横に振った。そんなやり取りが八十八回続いたとき、倉科カナが突如光りを放った。目の錯覚か? いや、違う。彼女はまるで炊きたてのコシヒカリのように輝いていた。
「オリゴ糖......いいえ......ありが、とう......」

聞いたことがある。お米には八十八の行程が加わっていて、ひと粒のお米には八十八の神が宿っていると。ということは、ま、まさか......?
「米です。いえ、神です。あなたの想い、この神に伝わりましたよ。礼として、ひとつちょっとした奇跡を授けましょう」

奇跡? いったい......!? そう思う間もなく、倉科カナの全身は光で纏われ、そして次の瞬間、倉科カナは米から人へと進化を遂げていた。無洗米のように純粋で汚れのない、生まれたての倉科カナが立っていた。彼女はぼくに手を伸ばす。ぼくもその手を受け取る。二人の手は、おむすびのようにきつく結ばれ、その手を離そうとする者は世界のどこにもいるはずがなかった。
「人間としては新米だけど......これからも、ずっとよろしくね」

倉科カナの頬は、赤飯のように紅く染まっていた。まるで二人の将来を祝福するように。照れながら見つめ合う二人のあいだには、熱々の湯気が立ちこめていたのだった......。


<結論>
秋と言えば、食欲の秋。おいしい新米を食べるときには、頭のどこかで一度倉科カナさんのことを思い浮かべてみるというのも一興ではないだろうか。もちろんお米を炊くときの調理器具は、タイガー魔法瓶の「GRANDX」でキマリだ!

(相沢直)

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