昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクションを、『クライマーズ・ハイ』の原田眞人監督が完全映画化した映画『日本のいちばん長い日』。公開を記念して、LINE株式会社が運営するニュースサイト・BLOGOS(ブロゴス)によってジャーナリストの田原総一朗と漫画家・小林よしのりによるトークイベントが開催された。
【戦後70年、いま振り返る"終戦の日"とリーダーたちの決断~映画『日本のいちばん長い日』トークイベント】と題し、田原は本作の特徴として「昭和天皇をバックショットなどで描いた作品はあったが、当時はまだ時代の流れからはっきりと描けていなかった。本作はしっかりと昭和天皇を描いていた」と語り、小林は「今までの作品は、モノマネをするようにして昭和天皇の人物像を描いていたが、今回の本木さん演じる昭和天皇には気品を感じる事ができた。モノマネでなく自然な姿で演じられていたのが良かったと思う」と昭和天皇を演じた本木を絶賛した。
また、鈴木貫太郎首相を演じた山﨑努について、小林は「あの人うまいですね~、良い味を出していましたよね、鈴木首相の、何を考えているか分からないといったような凄みをよく出していますよ(笑)」と賛辞を送り、「二・二六事件で銃弾を打ち込まれて死にそうになった人が、よく総理大臣をまたやるという決意をしたなと、本当に凄いと思います」と、時の内閣総理大臣を務めた鈴木貫太郎首相を讃えた。
当時敗戦を経験したことのなかった日本について、小林は「戦争をやめるか、やめないかという自体になったときに誰も決められなかった。天皇に聖断を仰ぐというのは本当はやってはいけないことだった。国民の代表たちが政治的決定を下さなければいけない。当時は軍部大臣現役武官制という制度があり、現役の軍の大臣を内閣に入れなければいけなく、その大臣が辞めるといったら総辞職しなければならなかった」と当時の背景を語り、田原は、「(本作の主人公である)阿南惟幾大臣は、戦争をやめないという将校たちの気持ちも分かり、同時に天皇の気持ちも分かっていた」と話すと、小林も「そう!あのときの代表が阿南大臣でよかった。阿南さんが辞めるといっていたら戦争を止められないという状態になっていた」と強調、「あのとき閣議をやっていた他の人たちは阿南が辞めると言うのではないかとドキドキしていたと思う。陸軍の部下たちが、なにがなんでも徹底抗戦を謳っている中、それを抑えていたというのは、本当にものすごい胆力のいることだったと思う」と功績を語った。
そして、田原は「映画では鈴木首相が『阿南さんは辞めません』と話している描写があるが、そういったシーンからも、鈴木首相、阿南大臣の信頼関係がわかる。自殺(切腹)することで将校たちをおさえた」と語り、小林は「阿南さんは昔は主戦派として描かれがちだったが、戦争を止めさせたいと願う昭和天皇の想いをしっかりと考えて、部下たちの戦争継続を願う思いも理解し、苦悩している部分が、この映画では役所広司さんが演じていたことでよく描かれていた」とコメント。
さらに小林は「(1967年の)岡本喜八監督版の『日本のいちばん長い日』は、"舞台劇"といった感じで、色々な意味での"背景"が見えなかったが、漫画家として、今回の作品はものすごく参考になる。考証がしっかりとしていて、映画になっている。DVDが出たら買って資料にしようと思っている(笑)」と絶賛している。
最後に原田監督も是非観てほしいと語る若い方へのメッセージとして、小林は「とにかくこの映画を観て分かる通り、天皇陛下に最後を決めてもらわなければいけないような、そんな時代にしてはいけませんよ。国民は、自分たちで決めるような時代にしないと!」と熱弁。
田原は「今まさに、そういう時代になりつつありますよ。いまの天皇は憲法を守ろうと言っていて、安部首相は変えたいと言っているけど、また天皇頼るというようなことが(可能性が)出てきている」と語り、小林は「だからある意味、天皇の言葉や行動に注目した方がいいと思います」と熱く訴えかけ、イベントを終了した。
https://youtu.be/LxEWiHiiCkk
『日本のいちばん長い日』は8月8 日(土)より全国公開
■参照リンク
『日本のいちばん長い日』公式サイト
http://nihon-ichi.jp/
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