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 ヤマジカズヒデ(G)、森川誠一郎(Vo,B)、そして箕輪政博(Dr)。
 こんなことが34年ぶりに起ころうとは、本当に目の前で、実現するとは。あと残された奇跡は北村昌士が黄泉から帰還することぐらいだが、この夜のMCで箕輪も触れたように、森川いわく“死んだ人は無敵”なのでもうこれ以上強くなられても取り返しのつかない事態はご免被る。
「G.T.O Ⅲ」でのイエス「ハート・オブ・サンライズ」ばりの高速プログレ・リフや「Untitled」後半でのツェッペリン「ハートブレイカー」のごときハードロック・フレーズなど、こんなヤマジのタイトなプレイぶりを誰が想像できただろうか。しかしエンリオ・モリコーネのカヴァーとなる新曲「L'Assoluto Naturale」ではdipが仄かに溶け込んだグラデーションがとっても美しい。
 その一方で極限までシャウトを抑制しつつも血と雫の根幹である抒情性で北村ヴォーカルを塗り替え、「Aqua Perspective」ではジョン・ウェットンと北村がW憑依したかのようなヘヴィ・ベース・サウンドを躍動させた森川。
 そして昨年末のイルボーンに次いで、完全現役復帰のフィニッシュとなった箕輪。「Bolero」でのインタープレイには超絶技巧なシンバル・テクニックが繊細極まりない。
 評価が絶対的になり神話性に傾くという意味で確かに“死者は無敵”だが、その不在はバンド自体の死に直結する。しかし今回のCanis Lupusはその“死”を無視したり避けるわけではなく、むしろじっくりと時間をかけて対峙してきた。中心メンバー=箕輪の現役復帰という絶対的命題の解決、つまり箕輪がドラマーとして34年前のレベルにまで最低限達しないとバンドとして成立しないという大前提を克服しつつ、なおかつバンドを死から生への蘇り=黄泉がえりを新編成として果たすという、考えるだけでも立ちすくみ不可能性の絶望と常に背中合わせのテンションを負いつつ、今回の奇跡はもたらされた。
 ああよかった、次のライヴはいつかなあなどと決して安心してはいけない。バンドが新たな生を獲得したからそれが自動的に継続されるとは思ってはいけない。生きているということは少なからず細胞レベルでの闘争が介在するからだ。3人ともまったく異なる音楽的出自と経験のバランスは、安易な再結成やこづかい稼ぎの復活劇とはまるで違う。
 今のうちに大阪と京都に駆けつけた方がいいかもしれない。
(文=石井孝浩/撮影=秋山典子・井上恵美梨)


05/17 (fri) 難波BEARS 
05/19 (sun) 京都UrBANGUILD

Dr : 箕輪政博
Ba+Vo : 森川誠一郎
Gr : ヤマジカズヒデ