Mix Speaker's,Inc.
2014年春 TOUR「天国への階段~rest in peace~」 ツアー・ファイナル
2014.04.19 赤坂BLITZ
【SET LIST】
~SE Majestic Satan Instrumental
1. SKY HEAVEN
2. Pandora
3. うらめし屋敷メドレー
4. HELL FIRE
5. GREEN
6. 激情アナザー
7. 遠い風
8. 約束の森
9. ONESTAR
10. BIG BANG MUSIC!
11. PINKY ADVENTURE
12. little star
13. CRAZY TRAIN A GO! GO!
14. Friday Night Busters
15. Crash Clover
16. No,5 COASTER
17. If
(ENCORE-1)
18. the end
19. MONSTIME
20. Shiny tale
(ENCORE-2)
21. JUNK STORY
YUKI(Vo) MIKI(Vo)
AYA(G) keiji(G)
seek(B)
S(Dr)
(文=袖山綾子)
このライヴをもってYUKIが脱退という、誰もが特別な感情を抱かずにはいられない日だっただろう。“この6人のMix Speaker's,Inc.(以下:MSI)を目と耳に焼き付けよう”というファンの思いが開演前から全体に漂う。彼らはいつも通りという思いでいただろうが、ライヴは楽しみたいしYUKIを華やかに送りたいけれど、でも悲しみは拭えない……そんな複雑なファンの感情に、メンバーも開幕直後は飲み込まれそうな感じだった。しかし、最初のMCで「俺もメンバーもお客さんも含めて壊れていきます!」とYUKI自身が喝を入れたことで、広がっていた重い雰囲気が消し去られていく。別れを連想させる歌詞の曲では、ファンが切ない表情になる場面はあったものの、YUKI&MIKIのじゃれあうようなMCや、6人ヴォーカルの名曲「ONESTER」「BIG BANG MUSIC!」での熱い一体感(唯一場所を移動できるSのはしゃぎっぷりが微笑ましい)、会場を2チームに分けてのノリ対決、「Crash Clover」の波打つフロアにダイヴするseek……等々、いつものMSIらしい名シーンとメンバーの笑顔が、しんみりしそうな空気を一蹴してくれた。
それでもその瞬間はやってきてしまう。本編最後の「If」、イントロの短い間にYUKIが「今日の今日まで何を話せばいいのか分かりませんでした」と吐露。そして「このツアーで改めて、メンバーのことが好きだと思った」とだけ言い、感謝の気持ちを込めて力強く歌い切った。
アンコールでは、「MONSTIME」の煽り&レスポンスを全員で楽しんだ。楽器陣がお立ち台で煽るのは1回ずつが定番だが、keijiが2回目に突入し、舞台端にまで煽りに行くという珍しい場面も。逆にAYAはこの煽り以外、最後まで言葉を発しなかった。発言を求められても断り、キャラクターの役に徹して表情も変えなかった。そうすることで、感情に流されない自分を保っていたのかもしれない。そして旅立ちに相応しい「Shiny tale」が門出を彩る。Wアンコール、終盤になるにつれ感じてきた会場を包む淋しさとすすり泣く声に、MIKIが「泣いていてもいいから楽しんでYUKIさんのことを送って」と一言。YUKIの「俺たちの始まりの曲いくぜ!!」のかけ声で、MSIの歴史の1ページ目である「JUNK STORY」にはたくさんの笑顔が溢れた。曲が終わり、seekの「YUKI君、7年間お疲れ様でした」の合図で、MIKIから花束が渡される。サプライズに照れながらも、MSIが好きで自信を持って歌ってきたこと、一緒に夢を追い続けたかったが、自分の中に少しずつ違う思いが出てきたことなど、胸の内を正直に語った。そして「こことは違う場所で歌うことを決めました。何かを見つけてまたこ(音楽の舞台)に帰ってきます」……そう誓う彼に、温かい拍手が贈られる。中央の階段を上り、ステージ後方の大きな扉を開けてメンバーが去っていく。最後にMIKIが階段の途中で1人立ち止まり深く頭を下げた。YUKIと一番長い時間を過ごしたMIKIは、翼を片方もがれたような痛みを味わっただろう。それでも “今後のMSIを、そして相方をよろしく”とでも言っているような長い一礼に胸が締め付けられた。と同時に、ラストの曲中で放ったYUKIの言葉を思い出す。「勘違いするな、今日が終わりじゃねーんだよ!」