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17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・3
※注意※
以下の続きです。
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・1
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・2
~My Opinion~私的前半戦ベストイレブン
文・とんとん
普段脚光を浴びる機会の少ないチャンピオンズリーグ・ヨーロッパリーグに不参加のチーム、若手の活躍が目覚ましいブンデスリーガらしい23歳以下で、それぞれベストイレブンを選んでみた。
<CL・ELに不参加>GK オリベル・バウマン(ホッフェンハイム)
DF ベンヤミン・ヒュブナー(ホッフェンハイム)
DF 二クラス・シュタルク(ヘルタ・ベルリン)
DF マルツェル・ハルステンベルク(ライプツィヒ)
DF パヴェル・カデルジャーベク(ホッフェンハイム)
MF オマール・マスカレル(フランクフルト)
MF セバスティアン・ルディ(ホッフェンハイム)
MF ケレム・デミルバイ(ホッフェンハイム)
MF ヴィンチェンツォ・グリフォ(フライブルク)
FW エミル・フォルスベリ(ライプツィヒ)
FW ティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ)
次点
GK ルーカス・フラデツキー(フランクフルト)
DF フレデリク・ソーレンセン(ケルン)
DF マルクス・ズットナー(インゴルシュタット)
MF ナディアム・アミリ(ホッフェンハイム)
MF マルコ・ファビアン(フランクフルト)
MF セルジュ・ニャブリ(ブレーメン)
FW サンドロ・ヴァグナー(ホッフェンハイム)
<23歳以下>GK ティモ・ホルン(ケルン)
DF ニクラス・ジューレ(ホッフェンハイム)
DF マルセル・ティッセラン(インゴルシュタット)
MF ベンヤミン・ヘンリクス(レーバークーゼン)
MF ヨシュア・キミッヒ(バイエルン)
MF ジャン=フィリップ・グバマン(マインツ)
MF ナビ・ケイタ(ライプツィヒ)
MF ウスマン・デンベレ(ドルトムント)
MF マルセル・ザビッツァー(ライプツィヒ)
FW トルガン・アザール(ボルシアMG)
FW ジョン・コルドバ(マインツ)
今後に期待の若手
GK ミヒャエル・ツェッテラー(ブレーメン)
DF パスカル・シュテンツェル(フライブルク)
DF ティロ・ケーラー(シャルケ)
MF サリフ・エズカン(ケルン)
FW シャニ・タラシャイ(フランクフルト)
MF カイ・ハフェルツ(レーバークーゼン)
MF フィン・ポラート(ハンブルガーSV)
第6章 記憶に残った好チーム
サポートするチームの試合を観ていると、敵ながらも魅せられる好チームに出会うことがあるだろう。あるいは他の試合をチェックする中で、つい肩入れしたくなるプレーを魅せるチームを見つけることがある。そんな印象的だったチームを挙げてもらった――。
■予想を超えたライプツィヒ、後半に期待が持てるインゴルシュタット文・とんとん
まずは、やはりライプツィヒ。ヨーロッパリーグの出場権争いには絡むと予想していたが、優勝を争える順位につけるとまでは思っていなかった。補強に巨額の投資をしてはいるが、個に頼るシーンは少なく、非常に組織立った好チームだ。統制のとれた4-4-2の守備ブロックはシーズン序盤から改良されている。2CB+アンカーで組み立てる敵に対して、2トップで3人を見る工夫が施され、ウィークポイントが1つ消えた。ただ、メンバーが固定的なため、選手が変わると守備に綻びが出るシーンもある。
前線のポウルセン、ヴェルナー、フォルスベリ、ザビツァーは揃ってスピードがあり、前線のどの位置でもプレーできるため、流動的なポジションチェンジが可能だ。昨季のラングニック監督期とは攻撃パターンが異なるが、別のインパクトを感じた。
後半に期待を持てそうなのがインゴルシュタットだ。カウチンスキからヴァルプルギスに監督が代わったものの、前線からのプレスという軸はぶれない。
ヴァルプルギスは非常に特徴的な5-2-2-1というシステムを採用。守備の仕組みとしては、まず1トップに入るレスカノが敵CB間のパスコースを切りながらプレス。これでサイドを限定すると、中盤の2-2の4人が中央の選手をマンツーマンで潰しに直走る。
こうしてサイドに誘導し、最後は5バックの大外に位置する選手が上下動して刈り取る。中盤・前線の5人には膨大な運動量が求められるが、この守備でライプツィヒ、レーバークーゼンを立て続けに撃破。順位を上げるには徹底した身体面のケアが欠かせない。
■堅実に中位をキープする2部王者文・昴
今季、まさに旋風を起こしているライプツィヒを抑えて昨季のツヴァイテリーガを制し、昇格したフライブルク。14-15シーズンの最終節、14位から17位へ転げ落ちる、まさかの逆転降格から僅か1年のことだった。
降格しても、なおシュトライヒ監督の下継続路線を続けるチームは、今季も安定した戦いを見せている。
資金力には乏しいが若手主体の走るチームはリーグ走行距離トップ。とはいえ、流行のトランジションスタイルではなく、短いパスを繋いで崩している。
そのスタイルの影響かどうかは分からないが、4つのペナルティーキックを獲得。全て沈めている。これはリーグトップの数字だ。
選手も粒揃いだ。局面で違いをつくり、リーグトップクラスのチャンス演出数を誇るグリフォや、平均走行距離でトップを走るハーベラー、対人勝率の高いアブラシとソユンク。全て交代出場からチームトップの5ゴールを決めているスーパーサブのペーターセン。個々の強みを最大限に活かして、非常にまとまったチームとなっている。
戦力で上を行く相手に力負けする試合は少なくないが、勝てる相手からきっちり勝ち点を積み上げる安定感は、さすが2部王者である。
今季は中位を維持したままシーズンを終えると見ている。2年連続の昇格2チーム残留は、ほぼ間違いないだろう。それどころか、歴代最高の昇格組と呼ばれるかもしれない。
~My Opinion~
前半注目のライプツィヒは好き?嫌い?2009年のレッドブルによる買収騒動から早7年。当時5部に居たSSVマルクランシュタットはRBライプツィヒへと名前を変え、色々な議論を生みながらも遂に今季ブンデスリーガに乗り込んできた。現地では他クラブサポーターの応援ボイコットなど多数の反発が話題を呼んでいる。恐らく、誰の目からも鮮烈な印象を残したライプツィヒの是非を問う。
■魅力的なコンセプトには好意的だが、レッドブル社のあり方に強い嫌悪感文・Fusshalt
サッカー文化の破壊者たるライプツィヒが、前半戦で旋風を巻き起こした。個人的にはチームとしてのコンセプト(若手を中心に据えたチーム、戦術コンセプトに合致した若手選手の補強、ユース育成も含めたチームコンセプトの徹底、施設・設備を充実させる)は非常に魅力的であり、バイエルン一強状態といえる現状を打破しうる存在として、また豊富な資金をバックにした才能溢れる若手達による旋風のように激しいプレーは見る者にとって魅力的で、好きか嫌いかで言えば好きである。
だが、あくまでそれはチームとしてであり、バックにあるレッドブル社には嫌悪感しかない。「50+1ルール」を回避するために下位リーグの資金難のチームを買収し、自社の宣伝のためにチームの歴史や伝統の象徴であるエンブレムを自社のモチーフである牡牛に変更し、チーム名に自社を連想させるRBを入れる為に「Rasen Ballsports」(=芝生のボール競技)という造語を作った。
そういう、まず会社ありきという在り方には反感しか生じない。特に昨季英プレミアリーグを制したレスターシティがライプツィヒと対極にあるチームだから、余計にそう感じるのかもしれない。こちらは大富豪がチームを買収したケースだが、チームに敬意を表した運営を貫き、ただしスポンサードなどで自身の宣伝を行うというやり方は、実にスマートだ。
レッドブル社は数多くのスポーツをバックアップするという意味で無くてはならない存在ではあるが、何が何でも自身を前に出そうと言うスタイルを変えない限り、ブンデスリーガでは永遠にヘイトを集め続ける存在となると思う。
■個人能力に頼らない好チームと合理的な“系列システム”文・とんとん
潤沢な資金で選手を獲得し、選手の個人能力で上位に食い込むようなら別だが、非常に組織立った好チームであるという印象だ。
今夏、ザルツブルクからアウクスブルクに移籍したヒンテレッガーが「ライプツィヒはザルツブルクを下部組織としか見ていない」と批判したように、レッドブル系列のザルツブルクから多くの選手を獲得している。その数は、24人のスカッドのうち7人(グラーチ、ベルナルド、シュミッツ、ケイタ、イルザンカー、サビツァー、今冬加入のウパメカノ)にもなる。
これも非難の対象となっているが、個人的には非常に合理的であると感じている。同じチーム哲学を共有し、言語も同じザルツブルクからの獲得はチームへの不適合リスクの心配が少なく、組み込みやすい。一方通行気味になっているが、ローンでの貸し出しで双方向とし、経験を積ませるのも面白いと思う。
ただ、ザルツブルクファンからしたら良い気はしないのかもしれない…。
■印象を変えた開幕戦。ハーゼンヒュットルの下、欧州への挑戦に期待文・だのら
アンチが多いライプツィヒ。少し憎く、嫌いなところもあるが、私は好きだ。シーズン開幕前、豊富な資金を手に有望な若手を揃え、監督も引き抜いたこのチームにはあまり良い印象を受けなかったが、開幕戦を見てそれは変わった。
ハーゼンヒュットルの縦に速く、守る時は守るサッカーは知っていたが、ポゼッションもし、中央からじわりじわりと人数をかけて攻める。そのサッカーは昨シーズンのハーゼンヒュットルのそれを遥かに上回っていた。まさか、このチームが本当に優勝争いをするとは思いもしなかったが、今やバイエルンの連覇を阻止して欲しいと思うほどに好きになってしまった。
そしてこのままの流れで行くと、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの出場権も見えてくる。昨シーズンのレスターシティのように、勢いそのまま駆け抜け出場権を獲得し、ハーゼンヒュットルのサッカーが世界にどれほど通用するのか、ぜひ見てみたい。
■スタジアムの熱量は他に劣らず、大都市のポテンシャルも文・まるよし
2択での選択肢しか無いのであれば、個人的には好意的に捉えている方の立場だ。単純に質の伴った魅力的なサッカーでリーグを活性化させているというだけでもブンデスリーガにとってプラスと言える。事実、ライプツィヒが旋風を起こしていなければ、今シーズンも既に優勝争いは終わっていた。まだ今のところは、他クラブのエース格のような主力選手を大金で引き抜くような補強もしておらず、競技面だけに限って言えばケチの付けようはあまり無いように思える。
一方でクラブ名の経緯など、マーケティング目的と言われても仕方が無い商業色の強さは否めないし、その部分に世間からマイナスの感情が集まっているのには頷ける。しかし、大企業をバックに躍進を遂げたのはヴォルフスブルクやホッフェンハイムも同じ。クラブ名で言えばバイエル・レヴァークーゼンという前例もある。ファン感情とは別に、何もライプツィヒだけが全て特別ではないというのは理解しておくと良いかもしれない。
また、クラブの歴史が浅いが故に、イメージ先行でスタジアムの熱の低さやファンの少なさを揶揄されることもあるが、一度レッドブル・アレーナで試合を観戦した身として、それは偏見に過ぎないというのは伝えておきたい。
2シーズン前に訪れた当時は、まだ初の2部を戦っているシーズンではあったが、スタジアムには老若男女問わず多くのファンが訪れ、アットホームでありながら熱量の高い雰囲気に包まれていたのを覚えている(写真)。それは、他のクラブと比べてもそれほど差異のあるものではなく、自分自身が事前に持っていたライプツィヒに対する先入観とのギャップを感じたのであった。
注)筆者提供
ライプツィヒ自体は、東ドイツでも屈指の大都市。街の大きさやスタジアムの規模を考えれば、レッドブル社の資金力を抜きにしても高いポテンシャルを持ったクラブであり、今後は地域のシンボルとして地元に根付いたクラブになっていくのではないだろうか。
余談ではあるが、唯一不満に感じたのはレッドブル商品で占められたスタジアム内の売店(写真)。これだけは受け入れられなかった(笑)。
注)筆者提供
■「西ドイツのリーグ」時代を変えうる痛快劇文・ゆんゆん
好感を持っている。
長い間、苦汁を舐め続けた旧東ドイツのクラブが巨大資本を後ろ楯にリーグを席巻している。周囲の敵意を物ともせずに。ディナモ・ドレスデン、エネルギー・コットブス、ハンザ・ロストックなど、かつて1部で戦った旧東ドイツのクラブは幾つか存在するが、どれも長持ちせず短期間で姿を消した。統一後のブンデスリーガは変わらず「西ドイツのリーグ」であり続けた。その時代が、ついに変わるのかもしれない。ライプツィヒはリーグの覇権を争うだけのポテンシャルを秘めているし、現に早速王者バイエルンと優勝を争っている。国内外のビッグクラブが羨むような有望株を掻き集めているとはいえ、昇格初年度にしては出来過ぎだとは思うが。これにはラングニックのコンセプトに基づいた一貫した強化とハーゼンヒュットル監督の手腕を称える他はない。来季の欧州行きもほぼ手中に収めたと言っていいだろう。
レッドブル社への反発から抗議運動を展開するファンには特に共感を覚えない。そもそも何に対して抗議をしているのかがよくわからない。大企業が資金を注入してクラブを強化しているのはヴォルフスブルクやレヴァークーゼンなども同様ではないか。それとも外国企業だから問題だということなのだろうか。旧共産圏のクラブに「カネより伝統」と抗議するなんて時代は変わるものだ。
いずれにせよ、カタール資本やアブダビ資本の入った欧州のビッグクラブを特に違和感なく応援している日本のサッカーファンには、そうムキになるようなことでもないと思う。ブンデスリーガを楽しむうえで何から何まで現地のファンに合わせる必要もあるまい。
それよりも、筆者は旧東側のクラブがこの櫓舞台で西側のクラブを蹴散らしている痛快さを楽しんでいる。
いいぞ、もっとやれ。
アナタの“正体”を暴く?!カルトクイズ~出題編~恒例となりつつあるクイズだが、よりマニア度が上がったかもしれない。執筆者から募り、集めた10問(各10点、合計100点)。アナタは何点取れるだろうか。
出題者・YAMADA
問1
16-17シーズンのドイツ・ブンデスリーガは、昨シーズン王者バイエルンのホームゲームで開幕した。この日、アリアンツ・アレーナに集結したバイエルン・ウルトラスは自分達の背番号10番に対して弾幕を掲げた。
曰く「ミュンヘンにあるクラブは1つだけだよ、アリエン!」
では何故、空飛ぶオランダ人はウルトラスからこんなことを言われたのだろうか?
a:ロッベン本人に1860ミュンヘン移籍の噂が上がった。
b:ロッベンの妻が1860ミュンヘンのファンショップで買い物をした。
c:ロッベンの息子が1860ミュンヘンのサッカースクールに参加した。
問2
ドイツと言えば、ビール。ビールと言えば、ミュンヘンのオクトーバーフェスト。バイエルン・ミュンヘン御一行様も毎年このビールの祭典には足を運んでいる。
では、2016年のオクトーバーフェストに登場したこの女性のパートナーは誰?
a:ドグラス・コスタ
b:キングスレー・コマン
c:ラフィーニャ
出題者・まるよし
問3
2010年にザンクトパウリが世界で初めてスタジアムに作った施設は何?
a:墓地
b:保育所
c:分娩室
出題者・暁空也
問4
現役時代はブレーメンやドイツ代表で活躍したGKティム・ビーゼが、現役を引退してから始め、昨年プロデビューを果たした競技は?
a:プロレス
b:卓球
c:レスリング
d:スキー
問5
ドイツの美人主審、ビビアナ・シュタインハウス氏が昨年10月下旬、交際を明かした元レフェリーの男性は?
a:岡田正義
b:ハワード・ウェブ
c:ピエルルイジ・コッリーナ
d:バイロン・モレノ
問6
「ポケモンGO」の流行を捉え、昨年7月にホームスタジアムで「ポケモン狩りツアー」を開催したクラブは?
a:バイエルン
b:ドルトムント
c:ヴォルフスブルク
d:シャルケ
出題者・かめゆみこ
問7
「キッカー」が選んだ2016年の言葉大賞は、ケルンのシュテーガー監督の「副審に私の眼鏡を差し出したよ。それでも見えなかったようだが」だった。では2位は?
a:「ミュンヘンは歯医者に行くようなものだ。毎回行かなくちゃいけない。たくさん痛むことも、どうにか無事に終わることもある」(ブレーメン時代のプレードル)
b:「チームでは何の問題もない。君も僕も8割はタマを掻いたことはあると思うよ」(ドイツ代表でのポドルスキ)
c:「家探しをすでに一つ断られたよ。貸主は長期の借り手が欲しかったようでね」(シャルケ・ワインツィアル監督)
出題者・るか
問8
若くして選手としての道を絶たれたナーゲルスマンが指導者への道を歩み出すにあたってキャリア選択に最大の影響を与えたとナーゲルスマン本人が語ってるのは誰?
a:トーマス・トゥヘル
b:ラルフ・ラングニック
c:ヨス・ルフカイ問9
現在のブンデスリーガの監督のうち、選手時代にチームメイトとして一緒にプレーしたことがあるのは?
a:ディーター・ヘッキングとヨアヒム・シュトライヒ
b:ヴァレリアン・イスマエルとトルステン・フリンクス
c:ニコ・コバチとパル・ダルダイ
問10※完答のみ正解
2011-12のチャンピオンズリーグの決勝に登録されたバイエルンの控えメンバーで、現在も独ブンデスリーガでプレーする選手は3名いる。それぞれが所属するクラブは?
第7章 前半戦を彩った名手達例年に比べ、勢力図が大きく動いた前半戦。変化の中には幾人もの名手の姿が浮かぶ。皆の目に映った名手は誰だろうか――。
■“ジズー”の面影重なるフランクフルトの超新星
文・暁空也
昨年12月21日、マインツの守備陣は18歳に蹂躙された。フランクフルトのアイメン・バルコック。驚愕のショーの始まりは、75分だった。左サイドでボールを持つと、重心の移動だけで対峙するCBハックに尻餅をつかせ、ペナルティエリア内に侵入。飛び出してきたGKレスルもフェイントで軽やかに交わし、ボールをゴールに流し込んだ。
さらに、85分。絶妙な飛び出しで味方からパスを引き出し、中央を突破すると、後方から追いかけてきたドナーティをいなして左のフルゴタに繋ぎ、アシストを記録した。
※以下の動画の34秒以降
https://www.youtube.com/watch?v=DRrk4vATqdo
188cmの巨躯からは想像しづらい、繊細で柔らかいタッチや豊かなスピードと、18歳の若さに似つかわしくない怜悧な判断力。才気は溢れ、迸(ほとばし)った。バルコックは1998年5月21日、フランクフルトでモロッコ国籍の両親の元に生まれた。SGプラウンハイムでフットボールを始め、ロット・ヴァイス・フランクフルト、キッカーズ・オッフェンバッハを経て、2013年にフランクフルトの下部組織に加入。右利きで“本職”はセントラルミッドフィルダーだが、柔軟性に優れ、サイドもこなす。
独「ビルト」によれば、早くから注目される選手ではなかったという。十字靭帯を損傷したり、自転車で転倒して肘を骨折したり、U-19ドイツ代表に初めて招集された際には練習で怪我を負ったりと、不運にも見舞われた。
しかし、徐々に台頭。昨年10月20日にプロ契約を結ぶ。「夢が叶った」と笑顔を見せた彼は、同11月20日のブレーメン戦でデビューを果たす。
75分にガチノビッチに代わって投入されると、90分だった。こぼれ球を拾って前進すると、寄せて来たマーカーを左への切り返しで交わし、ペナルティアーク付近で左足を振り抜く。美しいカーブに彩られた白球は、ゴールの左へと吸い込まれた。
※以下の動画の冒頭
https://www.youtube.com/watch?v=DRrk4vATqdo
初出場初得点の快挙に、バルコックは「信じられないよ」と歓喜を爆発。コバチ監督も「1-1の状況でティーンエイジャーを投入するのは『クレイジーだ』と思う人もいるかもしれないが、彼には並外れたテクニックがある。あのゴールを見ただろう?」と賞賛した。バルコックのアイドルは、ユベントスやレアル・マドリーで活躍し、フランス代表をワールドカップや欧州選手権のチャンピオンへと導いたジネディーヌ・ジダンという。「彼のテクニックと試合の流れを読む力はズバ抜けていた。また、ボールを持つと非常に冷静だ。それが好きだった」と語る。確かに、卓越した技巧と閃きは、同じアフリカ大陸のアルジェリアにルーツを持つジダンを彷彿させる。
もっとも、偉大なる「ジズー」(ジダンの愛称)の域に達するためには、まだまだ改善が必要だ。時折、球離れの悪さが顔を覗かせ、一方でボールに触る回数が少ないと試合から消えてしまう。ヘディングも弱点の1つだ。
ブレーメンやマインツを呑み込んだ眩(まば)ゆい輝きを、より磨き上げられるか。フランクフルトの背番号28がハードルを越えた時、“本家”の背中が見えてくる。
■無敗のホッフェンハイムで攻守に貢献したヒュブナー
文・だのら前半戦を唯一の無敗と、メディアを大きく驚かせたホッフェンハイム。その中でも私が印象に残った選手がベンジャミン・ヒュブナーだった。
私の贔屓チームであるインゴルシュタットから移籍したこともあり、注目はしていたが、その出来は予想以上だった。序盤はジューレ、シェア、フォクトとのポジション争いに、新加入ということもあって遅れを取ったが、古巣・インゴルシュタット戦を機に出場機会を得ることになり、
以降は全試合出場。移籍後のシーズンを主力として活躍した。
高い身長を活かした空中戦の強さや、タックルの上手さが光っており、ピンチの場面も落ち着いた対応を見せていた。15節のドルトムント戦では、コーナーキックからヘディングで繋いでのアシストに加え、前線へのロングパスからのアシストも記録し、攻守においての貢献が目立った。27歳ながらセンターバックとしてさらなる成長を遂げる彼には今後も目が離せない。
■要を担うフォルスベリとチアゴ
文・とんとん
まず前半戦のMVPとして真っ先に思い浮かぶ2人、ライプツィヒのエミル・フォルスベリとバイエルンのチアゴ・アルカンタラだ。フォルスベリはライプツィヒの独特の守備タスクをこなしつつ、カウンター時はスペースメイク・フィニッシュ・アシストと、どの役割でもハイパフォーマンス。引かれた時にはエジルのような豊富なアイディアとテクニックで攻撃をつくり、チームの躍進を支えた。
チアゴは巧みなポジショニングで攻撃の起点を担う。スペースメイクの動きが少ない今季のバイエルンの中で、自らサイドに流れてギャップをつくったり、わずかなスペースの中でボールをコントロールし中継点となったりと、攻撃の中心として存在感を放った。何気に1試合あたりのパスカットの本数はリーグで最多である。
その他、若手に目を向けるとマインツのジーン=フィリップ・グバマンが印象的。今夏に入団した彼はバウムガルトリンガーの抜けたボランチとして定位置を掴む。フランス産ボランチらしい強靭なフィジカルと危機察知能力で敵のチャンスの芽を摘んだ。
フライブルクのヴィンチェンツォ・グリフォはプレーエリアが広く、アタッキングサードだけでなく、リンクマンとして低い位置で組立てのサポートもこなした。どのチームでも重宝される万能タイプで、イタリア方面からもオファーの噂が挙がっている。
下位チームで印象的なのがインゴルシュタットのパスカル・グロス。右足のキック精度が非常に高く、プレースキックに定評がある。チームは17位と低迷しているにもかかわらず、1試合平均のキーパス数はリーグでナンバーワン。非常に献身的に守備もこなすチームの支柱だ。
■昇格クラブの最終ラインで奮闘する若き戦士
文・YAMADA
昨シーズンのツヴァイテリーガを優勝したフライブルクは、今季のブンデスリーガでかなり頑張っている。なんと冬休みを1桁順位で迎え、ボルシアMGは言うに及ばず、シャルケやレーバークーゼンよりも上にいるのだ。にもかかわらず、あまり取り上げてもらえないのは、ひとえにチームが地味だからだろう。その地味なクラブにあって、自分のハートを射抜いてくれた選手がいる。20歳のCBカグラル・ソユンクである。
自分がソユンクのプレーを注目するきっかけとなったのは、第7節ホッフェンハイム対フライブルクであった。最初は「フライブルクのCB、髪がクルクルしる~」、「あ、ガム噛んでるぞ~」くらいの軽いきっかけで、ソユンクが目にとまった。が、それだけのことで、ハートを打ち抜かれはしない。
左がソユンク、右はワーグナー
実は、この試合、アレヨアレヨという間に「ソユンクonステージ」な展開となったのだ。まず34分、最終ラインのソユンクがパスミスし、これが相手への決定的なアシストパスに。敵からパスを貰った形になった相手FWワーグナーは、当然これを相手ゴールに押し込んでホッフェンハイムが先制した(ソユンク=逆アシスト1)。
失敗を取り戻すべく、後半も滅茶苦茶張り切るソユンクは78分、前線へ見事な縦パスを通し、これをニーダーレヒナーが決めてフライブルクが同点に追い付く(ソユンク=アシスト1)。
しかし、その直後の80分。フライブルクのペナルティエリア内に侵入してきたルディをソユンクが後ろから押し倒してあっさりとPK献上。これをクラマリッチが決めてホッフェンハイムが逆転に成功した(ソユンク=PK献上=逆アシスト1)。
結局、試合は2-1でホッフェンハイムが勝利し、ソユンクはこの試合の3得点全てに絡む大活躍(1アシスト&2逆アシスト)を見せたのだ。
なんというエンターテイナー。面白過ぎる。
ちょっと暑苦しい外見(トルコ系らしい彫の深い顔立ち、太い眉と少々眠たそうな二重瞼)で、滅茶苦茶覚えやすい顔立ちなのもイイネ!
その後、フライブルクの別の試合をDAZNで見ていたら、解説者が「20歳と若いのでポカも多いが、対人も強いしパスも出せるしこれからが楽しみなCB」というような紹介をしていた。
確かに、ソユンクのプレーには波が有る。「キッカー」の採点を見ても、あまり高い評価は得られていない。
だが、Optaによると、16-17シーズンの前半のツヴァイカンプフ(1対1、いわゆるデュエル)の勝率2位がソユンクで、174回・69.0%なのである(ちなみに1位はバイエルンのフンメルスで163回・69.3%)。
素晴らしいじゃないか、高い可能性を感じるぞ、ソユンク!
と、いうわけで、今一押しの若手CBソユンクなのである。みんな、応援してね。
~My Opinion~
ミュラーの不調で露わになるバイエルンの特異性、タイトルより大事なものがある?文・まっつー
トーマス・ミュラーの調子がどこかおかしい。2008-2009シーズンにトップチームに昇格して以降、毎年のように公式戦で2桁得点を挙げてきた男が、今季はここまでリーグ戦の15試合に出場し、僅か1ゴールにとどまっている。指揮官は何としてでもこの問題を解決する必要があるが、カルロ・アンチェロッティはまだその重要性を理解していないのかもしれない。
最初はアンチェロッティ監督によるシステム変更の“被害者”だと考えられていた。開幕から4-3-3というポジションにこだわっていたアンチェロッティのチームにミュラーの居場所はなかったからだ。
もっとも、居場所はないと言っても、試合には出場し、ポジションは与えられていた。ある時は右ウイング、またある時は左ウイングといったように。ドリブルで違いを生み出せるタイプではないミュラーにとって、難しい位置であることは間違いなかった。
一方で、アンチェロッティ監督は中盤の3人のうちの1人にミュラーを当てはめるつもりはなく、9番のポジションにはロベルト・レヴァンドフスキがいるため、納得がいく選択でもあった。
改めて説明するまでもないが、ミュラーは「トーマス・ミュラー」というポジションを与えて初めて活躍できる選手なのだ。「相手にとって危険な場所が感覚的に分かる」と以前にインタビューで話したこともあるミュラーが、スペースを見付けるのには中央が好ましいということをアンチェロッティは理解できていなかった。
実際、それからミュラーは得点感覚という最大の武器をなくし、チームの不調をも招いた。11月には公式戦3試合で勝利から遠ざかるという厳しい時期も経験している。そのため、12月3日に行われたマインツ戦からアンチェロッティ監督は4-2-3-1を採用し、ミュラーをトップ下に据えた。柔軟性を最大の長所とするイタリア人指揮官らしい選択で、ミュラーの動きも見違えるほど改善されている。それからほどなくしてシーズン初ゴールも生まれ、ミュラーの完全復活は近い…はずだった。
フォーメーションを変更後、確かにチームは上昇気流に乗った。マインツ戦以後、公式戦は全勝中ということからも容易に理解できることだろう。一方で、自らのポジションに戻ってきたはずのミュラーにゴールラッシュの波は訪れず、“チームの顔”の表情はどこか冴えない。
それは長い中断期間を経た後の後半戦でも同様だ。カタールで行われた冬のキャンプでアンチェロッティは4-2-3-1をみっちり鍛えたというが、再開後の2試合を見る限り、どうやらミュラーを最大限に活かすために割かれた時間はそれほど長くなさそうである。これは決して簡単に見過ごしていい問題ではないというのに、だ。
フライブルク戦ではビルドアップの際にアルトゥーロ・ビダルが最終ラインの左に落ちることで、ドウグラス・コスタへのパスコースの角度を確保。ミュラーも中央で、相手DFを釘付けにするというタスクを担っているが、あくまでサイドの突破力を活かすために採られた策だ。もっとも、この試合ではビルドアップからのミスが多く、作戦がハマったとは言えなかった。
ブレーメン戦では両サイドに陣取るフランク・リベリとアリエン・ロッベンというアンタッチャブルな選手を最大限に活用するため、ボールはミュラーを通過し続けた。中央で虎視眈々と狭いスペースを睨み続けるミュラーは、まるで存在しないかのごとく扱われ、62分にレナト・サンチェスとの途中交代を余儀なくされている。
アンチェロッティほどの指揮官がミュラーを隅に追いやる危険性を理解できていないはずがない。かつてバイエルンを率いたルイ・ファン・ハールは「ミュラーは常にピッチに立つ」と語り、ジョゼップ・グアルディオラ前監督がチャンピオンズリーグの準決勝という舞台でミュラーをベンチに置き、多くのバッシングを受けたことは記憶に新しい。だからこそ、アンチェロッティは最も穏やかな方法を採っている。ミュラーを起用しながら、決して彼中心のチームにはしないといったようにだ。
実際、外部の人間もそういった“企み”を見抜きつつある。ローター・マテウス氏は自身が執筆する「シュポルト・ビルト」のコラムで「4-2-3-1というシステムにミュラーのポジションはない」と断言し、トップ下にはミュラーではなく、チアゴ・アルカンタラを推している。現状で「6番」のポジションとして起用されているスペイン人テクニシャンだが、ミュラーが活躍できていない現状を客観的に見ることができれば、「10番」のポジションに引き上げるのは悪くないアイディアだろう。
とはいえ、ミュラーを先発から外すことは誰も望んでいない。先日、クラブの重鎮であるウリ・ヘーネス会長が「トーマスが疑いなき、先発メンバーになることを願っている。彼は調子が良く、自信を失っていなければ、常に先発に入るし、バイエルンのカギになる選手だからね」と語った通り、ミュラーはバイエルンの“シンボル”なのだ。
確かに、タイトルの獲得や結果といった面で見れば、レバンドフスキ、ロッベン、リベリ、コスタといった個の力を活かすことが最も効率的な道筋で、リスクが少ない。これまでもアンチェロッティ監督はそういったスター選手の能力を活かすため、システムを整備し、多くの成功を収めてきた。
しかし、ことバイエルンに関しては好まれるやり方ではない、許されないとすら言っていいかもしれない。バイエルンの指揮官は、時にシステムにマッチせず、不調に陥っている選手を使わなければならないという“特異性”にも適応しなければならないのである。
アナタの“正体”を暴く?!カルトクイズ~回答編~
問1の答えはc
ロッベンの息子が1860ミュンヘンのサッカースクールに参加した。ブンデスリーガ開幕前の8月中旬、ロッベンの息子ルカ君があろうことか1860ミュンヘンのサッカースクールに参加。ロッベン本人もその練習を見学しており、1860サポから驚きの声が上がった。
問2の答えはb
なお、ドグラス・コスタのパートナーはこちら。
また、ラフィーニャのパートナーはこちら。
問3の答えはb
「海賊のすみか」と名付けられた保育所は、6歳以下の子どもを最大100人受け入れ可能。試合のある日は来場客の子どもたちを引き受ける。保育所からはピッチを見渡すことができ、子供達もザンクトパウリを応援することができる。ちなみに墓地はHSVが作り、分娩室はハノーファーがオープンした。
問4の答えはa
WWEと契約し、昨年の11月3日にデビューした。ちなみに、タッグマッチを見事に制した。
問5の答えはbハワード・ウェブとシュタインハウスは共に元警察官で、審判の講習会で意気投合したという。ウェブは既婚者で、英国紙によれば家族関係は破綻しているそうだが、実質的には「不倫」であり、審判員の“ファール”にレッドカードが出されてもおかしくない。
問6の答えはcポケモンGOに便乗したのはヴォルフスブルクで、料金は5ユーロだった。
問7の答えはc過去10年で11人目の監督になったワインツィアル。彼は首脳陣が納得する結果を出せるのだろうか。
問8の答えはaアウクスブルクのセカンドチームで引退を決めたナーゲルスマンは、当時のセカンドチームの指揮官だったトゥヘルにスカウティングを任されたことから、指導者を目指すようになった。ちなみにcのルフカイは当時のトップチームの監督。
問9の答えはcヘルタ・ベルリンの在籍が1997-2011と15年近くになるダルダイ。コヴァチは92-96で一度チームを離れていたが、03年に帰還して03-06の3シーズンで共演し、ボランチでコンビを組んだ。
ちなみにフリンクスはブレーメンが97-02、05-11、バイエルンが04-05。イスマエルはブレーメンが03-05、バイエルンが05-07で、すれ違っている。シュトライヒはDDRオーバーリーガのみでのプレー。ブンデスリーガでのプレー経験はない。
答10の答えはバイエルン、フライブルク、アウクスブルク該当する選手はラフィーニャ、ペテルセン、宇佐美。その他の控え選手はブット、ファン・ブイテン(共に引退)、プラニッチ(FCコペル・スロベニアリーグ)、オリッチ(TSV1860ミュンヘン・ツヴァイテリーガ)。
皆様、何点でしたか?適当にランクを分けると…
0点→大凶
10問中9問が3択でありながら0点とは、驚異的な運の持ち主です。籤引きなら大凶が引けるかもしれません。
10点~40点未満→初級者
まだまだ独ブンデスリーガを学び始めたばかりのアナタ。少しずつ、知識を蓄えていきましょう。
40点以上~70点未満→中級者
幅広く情報を収集しているアナタ。60点近く取れたならば、上級者への扉は目の前にあります。
70点以上~90点→上級者
基礎から流行、ディープまで対応できるアナタは、独ブンデスリーガにどっぷりと浸かっています。大切な友人やパートナー、家族などに呆れられたり怒られたりしないように気を付けましょう。
100点→マニア
神話級の実力者。是非とも次回からこの企画に参加して頂きたい。丁重に、おもてなし致します。ご連絡、お待ちしております(笑)。
第8章 “青き侍”の前半戦
今季も多くの日本人がブンデスリーガでプレーしている。前半戦の彼らのプレーについて感想を集めてみた。
■再び分かれた明暗文・暁空也
“青き侍”の明暗は、今季も分かれた。ケルンの大迫やHSVの酒井、フランクフルトの長谷部、ヘルタ・ベルリンの原口が主軸を担う一方、アウクスブルクの宇佐美やドルトムントの香川、マインツの武藤は怪我もあって先発に定着できず、ヨーロッパリーグで途中出場を果たしたシャルケの内田も、ようやく復帰への一歩を踏み出したに過ぎない。独ブンデスリーガでは数年来、日本人の誰かが活躍すると誰かがポジションを失うという状況が続くが、今季もそれは繰り返された。
大迫は、トップ、トップ下、両サイド、さらには中盤の底でも起用され、主にチャンスメイクを任された。ケルンは、得点の大半をモデストが挙げる。彼に繋ぐ、彼を生かす動きを、シュテーガー監督は大迫に求めた。実際、攻撃では優れたキープ力と正確なパスでモデストにチャンスをもたらし、守備では走れない――恐らくは“走らない”――モデストの穴を埋める。決して本意ではないだろう。しかし、チームのために奮闘。手にする好機が限られる中でも得点やアシストを伸ばしており、ケルンの躍進を支える大黒柱だ。
酒井は逞しさを増した。以前は好不調の波が激しく、精神的な弱さを窺わせたが、不慣れな中盤の中央でのプレーや主将の責任感は、彼を“大人”に変えていく。今では1つひとつのプレーに安定感があり、表情にも自信が漂う。攻撃での迫力や精度が増してくれば、リーグで屈指のサイドバックになり得る。
長谷部は、3バックの中央で声価を高めた。190cm級のセンターバックが多い独ブンデスリーガで、180cmの彼が輝けるのは、いわゆる「フットボールIQ」が抜群だからだ。味方と敵のポジションや体勢などを見極め、いち早く動き出し、ピンチの芽を摘む。常に“先”を取れるため、高さやパワーで勝る相手との競り合いにも勝てる。元々は中盤の選手であり、最終ラインからのビルドアップの向上にも貢献。独メディアが彼を「ベッケンバウアー」と評したのは、最大級の賛辞だ。
原口は、攻守のクオリティが一段と上がった。攻撃では「自ら仕掛ける時」と「味方を生かす時」を的確に判断。ペナルティエリア付近での怖さが増した。守備は従来の運動量や献身性に強靭さが加わり、“奪い切る”回数が上昇。決定力に難を抱え、得点の数は物足りないが、サイドアタッカーとして着実に進化している。
宇佐美や香川は、コンディションの問題だけでなく、その個性が監督の志向と一致せず、ピッチから遠ざかった。前線の人選でも守備力を重視するアウクスブルクと宇佐美の親和性は低く、縦に速いスタイルへシフトしたドルトムントに香川の居場所は見付けづらい。ただ、宇佐美はシュスター監督の解任後に出番を増やしており、香川も継続的にチャンスを与えられている。ゴールやアシストなど“目に見える結果”を示し、先発の座を掴みたい。
武藤は怪我の回復が遅れ、3試合の出場にとどまったものの、2得点の“荒稼ぎ”。マインツの前線は充実しており、競争も激しいが、シュミット監督は最前線でも2列でも機能する彼を重用する。後半戦は当面、「スーパーサブ」としての起用が濃厚だが、限られた時間で輝きを放ち、序列を覆したい。内田は、復帰後に右膝とは別の場所を負傷。シャルケの戦力に数えられるまでは、なお時間を要する。現実的には、後半戦も“試運転”に充て、来季に復活を期すべきかもしれない。
■信頼を得た酒井、巻き返しを期待される宇佐美、そして内田は大怪我から待望の復帰も文・だのら
酒井高徳がHSVのキャプテンに就任したり、期待された宇佐美があまり使われなかったりと、色々なことがあった。怪我の武藤、宇佐美、香川は出場機会をあまり得られなかったものの、全体的に見れば多く与えられており、良いシーズンになっていると思う。
モデストとコンビを組み、ケルンの攻撃を牽引した大迫や、攻撃のキーマンと化している原口は、ゴールやアシストこそ少なかったものの、自分の役割をこなした。長谷部や酒井も不慣れなポジションながらも良いパフォーマンスを見せ、監督の信頼を得ていた。これから始まる後半戦も、彼らは出場機会を得るだろう。
また、出場機会が少なかった宇佐美も、新監督の構想内に入っており、後半戦での巻き返しに期待がかかる。長期間怪我に悩まされ、一時は引退報道も出た内田篤人の復帰も間近とのことなので、日本人同士のマッチアップなど、“日本人ダービー”の楽しみがまた増えるだろう。
■得点を量産するモデストを支える大迫文・とんとん
日本人でのベストは、ケルンの大迫。得点ランクで2位につけるモデストは得点こそするが、守備は下手な上、ほとんど関与しない。そんな彼とコンビを組むとなると、守備のタスクは膨れ上がり、起点となる動き出しにも奔走しなければならない。絶対にコンビを組みたくないタイプだ。システムによってはサイドなど別ポジションでの起用となるが、ほぼ全試合でスタメン出場。献身性とその時々に応じた融通の利くプレーでシュテーガー監督の信頼を掴んだ。
~おわりに~
「3」の公開が大幅に遅れ、誠に申し訳ありません。執筆者の問題ではなく、全て私の責任です。読者および執筆者に、平身低頭して陳謝致します。
そして、来たる「独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“回顧録”」は、遅くとも7月中旬には公開できるよう、すでにプロジェクトが進行中です。
私は罪滅ぼしも兼ねて新しい執筆者の“スカウティング”を積極化しましたが、幸いにも成果は上々。既存の執筆者と合わせて20人を突破する見込みです。ドルトムントやケルンも、ついに担当者が決まりました。内容は、さらに濃密になります。完成品を思い描くだけでワクワクしますし、ご期待下さい。
最後に、読者および執筆者に心からの感謝を。
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17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・2
※注意※
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・1の続きです
第4章 ブンデスリーガ前半戦の総括
文・昴
2016-17シーズンも既に半分が終わり、後半戦に入った。今季も秋の王者はバイエルンで落ち着いたが、途中で首位に立ったライプツィヒや昨季と同様の躍進を見せるヘルタ・ベルリン、見違えたフランクフルトなど、順位表には大きな変化が見られる。各クラブの詳細は各担当者に委ねるとして、この項目ではリーグ全体の簡単な総括を行う。
勢力図の大きな変化過去5シーズンにおいて、チャンピオンズリーグ圏内に入ったのは、バイエル、ドルトムント、シャルケ、レバークーゼン、ボルシアMG、ヴォルフスブルクのみだ。昨季も序盤こそヘルタの躍進があったが、最終的にはEL圏ギリギリのところまで落ちてしまった。少なくとも、ここ数シーズンにおいて上位陣の顔触れは大きく変わることなく、ほとんど決まったクラブが世界最高峰の舞台に挑戦していた(この傾向はドイツに限らず欧州の各リーグに見られるものだが)。
今季はバイエルンこそ首位を守っているものの、ドルトムントが6位、レバークーゼンが9位、シャルケが11位。ヴォルフスブルクとボルシアMGに至っては、入れ替え戦ラインの16位ハンブルガーSVまで3ポイント差の13位と14位に留まっている。上位4クラブがいつもの顔触れに落ち着くのは難しい状況だろう。
一方、昇格組が2クラブとも安定した戦いを披露。まさに1部を“荒らしている”ライプツィヒが目立っているが、育成に定評のあるフライブルクも8位につけており、残留はもちろん、EL圏内を窺える位置だ。
昨季に続いて前半戦を湧かせたヘルタ、昨季期待を裏切っていたフランクフルトやホッフェンハイムがドルトムントと共に上位グループを形成。ホッフェンハイムは引き分けこそ多いが、リーグ唯一の無敗のまま前半を終えた。モデストの爆発があったケルンもトップハーフに入っており、今季は日本人所属チームの好調が目立つ。
下位は昨季の昇格組2クラブが北部の2クラブを追う構図。ここ数年、幾度の降格危機を乗り超えてきた北部の名門2クラブは今季も苦しい戦いを強いられている。昨季堂々の残留を果たしたインゴルシュタット、ダルムシュタットの両チームも今季は正念場だ。
例年になく多発した監督交代
ドイツでは例年、イタリアやイングランドに比べれば監督交代が少ないが、今季はまるで別のリーグだと感じる程に指揮官の解任が起こった。
実に7クラブが前半戦で監督交代に踏み切っている。丁度順位表の下から7クラブだが、交代により復調の兆しが見えるクラブもある。特に交代時、勝ち点が僅か2(第10節終了時)だったインゴルシュタットは交代後の6試合で勝ち点10を積み上げた。交代した各監督はウインターブレイクでようやくチームを作る時間ができるので、後半戦の入りには注視したい。
第5章 応援するクラブの中間考査と後半戦の展望昇格直後のシーズンながら期待値を超えたライプツィヒを筆頭に中堅クラブの躍進が目立ち、昨季以上の荒れ模様を見せたブンデスリーガの前半戦。それでも秋の王者を譲らないバイエルンとは対照的に、近年のCL出場クラブが苦しみ、いくつかのクラブは残留争いに巻き込まれている。しかし、まだ折り返し地点。各々のクラブを愛する面々が前半戦を振り返るとともに、後半戦の展望を語る。
※順位が上のクラブから掲載する
文・YAMADA
■結果は合格点だが、平凡な内容に終始(バイエルン)
第16節の1位と2位の直接対決において、バイエルンはホーム・アリアンツアレーナでライプツィヒを退治し、首位で冬休みを迎えることができた。結果だけ見れば合格点だが、シーズン前半の試合内容で見れば平凡、独「キッカー」の採点でいうところの3.0というのが実感。昨夏には欧州選手権と五輪があり、開幕前にチームとしての練習時間が不足、アンチェロッティ新監督がチームを作る&選手が監督の意思を理解し表現するのに時間がかかったのだろう。
また、ペップ前監督があまりに独特だったため、それに慣れてしまった選手が脱ペップに時間がかかったのかもしれない。その事情は分かる。
だが、事情はどうあれ、メディアやファンの間で「また4-3-3なの?4-2-3-1の方が~」、「ミュラーが得点できないのはその起用法が~」、「守備っていうか、プレスをかける位置が~」などの議論がしばしば見られたのも、要するに「アンチェロッティのやり方はマズイよな?」ということの表れだ。
何がいけなかったのか?素人丸出しでいえば「プロスポーツってなぁエンターテイメントだろ?見ていてウキウキしねぇ試合なんざぁつまらねぇんだよ」ってことだ。
さらにイカンのは、バイエルンが頼りない試合を展開することで、他のクラブに「バイエルンは倒せる相手だ!」と希望を与えてしまったことだ。誠にもって残念至極。1強・悪役としてのアイデンティティに関わる大問題ではないか(とはいえ、バイエルンとしても緊張感あるリーグの戦いを求めており、リーグ内に強いライバルがいる状況は大歓迎なので、そこんとこは他サポさんも勘違いしないで頂きたい)。是非、冬休み明けからは本気のバイエルンを見せて欲しいと思っている。グダグダと説明する必要はない。それだけの選手が揃っており、監督との戦術確認もとれたとなれば、あとは強さを証明するだけ、だろ?
<前半戦のMVP>
チアゴ・アルカンタラ(MF、15試合3ゴール3アシスト)
前半戦のバイエルンにおいて、ほとんど唯一、安定して高いレベルのプレーを披露した選手、それがMFチアゴ・アルカンタラ(25歳)である。元々はペップ・グアルディオラが“秘蔵っ子”としてバルサから引き抜いたスペイン代表選手だが、ペップがイングランドに渡ってもチアゴ本人はバイエルンに残り、大いに活躍してくれている。
既に過去のシーズでもこの背番号6番は独特のプレーテンポと傑出したボール捌きを披露して、バイエルンファンの心をとらえてはいた。が、アンチェロッティ監督に代わってからは、さらにそのプレーに輝きが増し、中盤から前目はチアゴの支配が行き渡るゾーンとなり、彼のタクトで全てが回ると言っても過言ではない状態に。本人も実に楽しそうにプレーしているのが見て取れた。
バイエルン好きの間では「チアゴ、明らかに昨シーズンよりイキイキしてんな!」、「むしろペップの方が、チアゴの使い方を分かってなかったんじゃね?」などと喜びの声が多数聞かれる。
これまで、どちらかと言うと苦手としていた守備面にも改善が見られ、自分が奪われたボールを猛然と奪い返す姿に、ファンからはハートマークがまき散らされている。
プライベートでいえば、ミュンヘンに来てから結婚した奥様は現在妊娠中で、出産も近いと聞く。チアゴにはハッピーパワーでこれからも是非活躍して頂きたい。
<後半戦の注目選手>
ファン・ベルナト(DF、6試合1アシスト)シーズン開幕前、バイエルンの注目選手はホルガー・バドシュトゥバー!と自分はここで宣言したのだが(参考記事:http://ch.nicovideo.jp/football-kyo-no-utage/blomaga/ar1111567)、この怪我がちなCBは残念ながらあまりプレー時間を得られず、ウインターブレイクの合宿直後にシャルケへ半年間のローン移籍してしまった。
がんばれ、ホルガー!
さて、気を取り直して後半の“オシメン”であるが、これはもう、満を持してフアン・ベルナト(23歳)の登場である。
バイエルンにはラームとアラバという強力なSBがいるため、同じSBのベルナトは陰に回りがちだが、そんな日陰者にしておくにはもったいなさ過ぎる要素を身長170cm(ラームと同じ身長だ!)のスペイン人は持っている。
確かに、昨季までのベルナトはバイエルン贔屓の間ですら「ベルナトがスタメン、だと?!・・・バイヤンおわた・・・orz」という扱いだったように思う。
だが、今季のベルナトは違う。「ベルナトはアラバを超えた、のか!?」、「ここはアロンソを下げてベルナトだな」などと思わせることもしばしば。今季のバイエルンの他の選手がいまいちノリきれていないことを考慮にいれても、これは大きな変化だ。
それが顕著に見て取れたのが、前半戦の中でも最悪とされるCLグループステージ・ロストフとのアウェイゲームだ。バイエルンは極寒の地で2-3の敗戦に終わったのだが、この試合で1人獅子奮迅の戦いを披露(1ゴール1セーブ)したのがベルナトなのである。
背番号18番の前半戦の出場試合はリーグが6試合(0ゴール1アシスト)、DFBポカールが2試合(0ゴール0アシスト)、CLが3試合(2ゴール1アシスト)。出場時間が少ない割にはゴールという結果を出している、SBなのに。
果敢なオーバーラップから相手PA内への侵入、適切なクロスの供給、そしてサンタクロースが受け損なったパスすらもフォローする戻り。
※参考動画:https://youtu.be/7WeP4yATlyc
ベルナトの活躍によって思わず笑顔が漏れてしまうバイエルンファンは数知れない。
キッカーによるシーズン前半のSBランキングにおいてもベルナトは9位を獲得しており、その評価は確実に上がっている。ベルナトの時代が確実にやって来ているのだ。後半戦、ベルナトのさらなる躍進がチームを勝利へ導くことは間違いない。
■想像以上だった台風の目(ライプツィヒ)
文・Tomao
ライプツィヒについて書かせて頂くことになったが、ライプツィヒに注目をしたのは昨季からであり、今季から本格的に追うようになった。そのため、総括も昨季との比較はできず、長い間ライプツィヒを追っている方やドイツを追っている方からしたら物足りない内容になってしまうが、ご理解いただきたい。<データ>
第16節終了 順位2位
11勝3分2敗 勝ち点36 得点31 失点15
得点は3位 失点は3位タイ若手主体かつ昇格組でありながら、各国の代表クラスが多くいる。監督は昨季昇格組のインゴルシュタットを11位に導いたハーゼンヒュットル。正直、ここまでの成績を収めるとは思ってもいなかったのが本音である。「良くてEL圏争い」と予想していた。
強みと言えば、カウンターである。次から次へとゴールへ向かう雪崩のようなカウンターは、見る者を魅了したのではないか。今季、カウンターからの得点は7点。これはブンデスリーガで1位の成績である(WhoScored参照)。ちなみに、試合開始10分までの得点が6点、80分以降の得点が6点と、試合終了まで運動量を落とさず試合をコントロールすることができていた。
躍進を決定づけた自信
今季初の公式戦はDFBポカールのデュナモ・ドレスデン戦であった。この試合、前半で2点を取っておきながら、後半に追い付かれてPK戦で負けるという後味が悪く、最悪のスタートを切っていた。その1週間後のブンデスリーガ第1節、ホッフェンハイム戦。1-2で迎えた後半45分、ザビツァーの同点弾によりアウェイで引き分けに持ち込むことができた。そしてライプツィヒの躍進を決定付けたと言っても過言ではない試合を迎える。
第2節のドルトムント戦。ライプツィヒの基本布陣は4-4-2(4-2-2-2)で、ドルトムントのCBにはボールを持たせ、徹底的にヴァイグルをマークする。ボールが入ってくるところを限定し、プレスの網に引っ掛け、ボールを奪ったらすぐさま縦のスペースへ送った。このボールは雑だったが、スピードを生かし一瞬の隙を突くという意思が感じられた。ドルトムントが活路を見出せない中、後半44分、ザルツブルクから獲得した途中出場のケイタがゴールを決め、まさかの大金星を飾った。
ここでハーゼンヒュットル監督のこんな言葉を紹介する。「大事なのは『自分の強さをボールを持った時だけでなく、相手がボールを持っている時にこそ出せるようにしたい』という気持ちを持つことだ。与えられた役目を実行する。そうした覚悟が質の高さに繋がる」
ドルトムントとの一戦の後、2つの引き分けを挟んで怒涛の8連勝を飾り、首位にまで躍り出たのは、チームの勢いとともに、自信を持ち、全員が与えられた役目をハードワークすることができたからだと思う。勝つことで自信は膨らみ、それを過信することなく、自分たちのスタイルをより質の高いものにしていったのだと感じた。
後半戦の展望
旋風を巻き起こしたライプツィヒも全てがすべて上手くいった訳ではない。ライプツィヒの強みはカウンターであると書いた。しかし、ボールを持って試合を進めることが多くあった。その中で露呈したのがビルドアップ能力の低さ。では、ボールを持つ展開で相手をどう崩していたかと言うと、ケイタ、フォルスべリ、ザビツァーの個人技を主としてボールを運び、戦っていた。もちろん、守備ブロックを形成する相手には個人の力が必要である。しかし、これはチームのデキが若い選手に左右されてしまうことに繋がり、毎回安定した戦いができるとは思わない。
そしてもう1つ。バイエルン戦で今までやってきた自慢のプレスを構造から破壊されてしまったこと。ボール奪取もできず、カウンターに繋げられず、ただただ何もできずに前半30分で試合が終わってしまった。
これは他のクラブも参考にして対策を練ると考えられるので、システムの引き出しを増やすのか、基本的なことは変えず、より強みが出るように何かを加えるのか、ハーゼンヒュットル監督がどう考えているのか注目していきたい。個人的には、短所を改善しようとできないことをしてバランスが崩れるくらいなら、今季は長所をとことん伸ばしていって欲しいと思う。
リーグ戦の再開から再び優勝争いができるかは、初めの3試合にかかっている。フランクフルト(4位)、ホッフェンハイム(5位)、ドルトムント(6位)と、いきなり上位陣と戦わなければならない。そのため、再び勢い付くためにも非常に大事な3連戦となるだろう。
正直、このまま優勝争いを演じるのは対策を練られることで厳しくなると考えている。しかし、優勝争いから脱落しても欧州圏内に入れば100点満点であると私は思う。私が感じている不安をハーゼンヒュットル監督には良い意味で裏切ってもらいたい。今からどのようなフィナーレを迎えるのか楽しみである。
<前半戦のMVP>
ディエゴ・デンメ(MF、15試合3アシスト)ライプツィヒにはヴェルナーやフォルスべリ、ザビツァー、ケイタといった選手が数字としても結果を残し注目されているが、私は前半戦のライプツィヒに欠かせない働きをしたデンメをMVPに選んだ。
ライプツィヒはカウンターの上手いチームである。カウンターをするためには相手にとって嫌な位置でボールを奪うことが必要だ。ライプツィヒは相手の最終ラインと中盤の間に人数を置き、多くの局面でボールの受けどころを限定することができていた。ボールを誘導し、適切な位置で奪いきることができているからこそ、雪崩のようなカウンターができる。
奪い切るために人数をかけているのもこのチームの特徴である。しかし、人数をかけているため、ボールを奪うことができずに突破されると、大ピンチに繋がる。そこでボールを奪い切ることができ、味方を補佐することができる選手が必要だと私は思う。
その役割を担っていたのが、MVPに挙げたデンメという選手だ。
データを見ると、インターセプトとタックル数でデンメがライプツィヒの中で1位であることが分かった。またタックルに関してはブンデスのなかでも5位になっている(WhoScored参照)。調べることはできていないが、聞いた話によると、出場15試合でほとんどの試合でチームトップの走行距離だそうだ。
試合を見ていると、終盤でも顔色ひとつ変えずに走り回っている。プレスを搔い潜られてしまった時に、デンメが物凄いスピードで戻り、ボールを奪ったのを何度も見た。
そのため、攻撃ではカウンターの出発点を多く作り出し、守備では多くのボールを摘むデンメをライプツィヒのMVPとして選んだ。
<後半戦の注目選手>
デヨール・ウパメカーノ(DF、冬の移籍市場で新加入)
ライプツィヒの弱点としてCBが挙げられる。守備の能力は今のCB陣でも低くはなく比較的安定はしている。しかしビルドアップ面では効果的に試合を作ることができていない。カウンターのチームであることは間違いないのだが、後半戦は対策として守備ブロックを形成され、ボールを持たされることも増えてくるだろう。
また前半戦の終盤、安定していた最終ラインに怪我人が続出し、本職がボランチであるイルザンカーがCBに入った。案の定、イルザンカーのところが穴となり、危険なシーンを何度も作られていた。戦力として計算できるCBが控えにいなかったのは前半戦の痛手となっていた。そこで、今冬にザルツブルクから獲得した将来有望なCBウパメカーノを注目選手として挙げた。
U-17欧州選手権でフランス代表として優勝した実績もあり、ビッグクラブからのオファーも多くあったと言われている。私はザルツブルク時代の映像を確認したが、その試合ではボランチとして出ていたため、試合を作るCBなのかはわからなかった。しかし、頭数の足りないポジションを補強したことはチームにとってプラスになるはずだ。この有望なCBが即戦力となるのであれば、後半戦も一味違うライプツィヒを見ることができるかもしれない。
■残留争い候補から一転、コバチの手腕で躍進(フランクフルト)
文・なかがわ しんや
近年のブンデスリーガの特徴として、思いもよらぬチームが上位に絡んでくる点が挙げられる。今季も例外ではなく、残留争い候補から一転躍進しているクラブが存在する。そのクラブの名は。フランクフルト。まさかの4位で前半戦を折り返し、前前前前年の2011-12シーズン以来の好スタートを切った。好調の要因として真っ先に挙げられるべきは、監督ニコ・コバチの手腕。昨季に引き続いて守備に重きを置き、前半戦だけでクリーンシートは7試合。これは首位バイエルンと並んでリーグ1位の記録であり、失点数の12はリーグで2位の少なさだ。
また堅守速攻だけでなく、シーズン途中からは3バックも導入。前半戦の平均ポゼッション率は50.9%で、これはリーグ6位の数字となる(昨季は47.53%)。対戦相手によってメンバーやシステムも変更する柔軟な戦術でシャルケ、レバークーゼン、ドルトムントといった強豪から勝利を掴み、バイエルンからも勝ち点1をもぎ取った。
後半戦、「フランクフルトの奇妙な冒険」の鍵として1つ重要になってくるのは、アウェイゲームではないだろうか。今季ホームでは5勝3分の無敗だったが、アウェイでは3勝2分3敗。先に述べた強豪クラブからの勝利は全てホームでのものであり、後半戦は敵地で厳しい戦いが予想される。
<前半戦のMVP>
ルーカス・フラデツキー(GK、16試合)
前半戦のMVPはこの男で間違いない。GKフラデツキー。昨季は2部降格寸前のチームを救い、今季は上位進出の立役者に。チームのクリーンシート数はリーグ1位タイ、失点の少なさはリーグ2位という成績も、彼による貢献が非常に大きい。正にゴールマウスを守る「守護神」である。<後半戦の注目選手>
ヘスス・バジェホ(DF、16試合)
後半戦も前半戦大活躍のフィンランド代表GKに注目が集まるが、個人的に推したいのは若手選手2人。スペイン人CBバジェホと18歳のバルコックだ。今季レアル・マドリーからローンで加入したバジェホはウインターブレイクまでの16試合の全てに出場。開幕は怪我で出遅れたが、第3節からはレギュラーに定着。3バックの一角としてチームの堅守を支えている。この活躍で半年でのマドリー復帰も噂され、来季は恐らく中国移籍が濃厚なペペの後釜として迎えられることだろう。いずれ白い巨人、そしてスペイン代表のDFラインを任されるこのCBを今からチェックしておいて損はない。
アイメン・バルコック(MF、5試合2ゴール1アシスト)
2016年11月20日、この日をバルコックは一生忘れないだろう。後半30分、1-1で同点の場面でピッチに送り出され、トップチームデビュー。そしてアディショナルタイムに左足を振り抜き、決勝ゴールを決めて見せたのだ。
バルコックは本来中盤の選手。しかしその才能からアタッカーとして起用され始め、着実に出場機会を増やしている。冬季中断前の第16節マインツ戦ではドリブル突破からの素晴らしいゴールも決め、改めてその才能の片鱗を見せ付けた。後半戦も途中出場が主な出番なるだろうが、このライジングスターから目が離せない。
■最年少監督の下、唯一の無敗ターン(ホッフェンハイム)
文・とんとん
<データ>
リーグ戦:6勝10分0敗 28得点17失点 5位
DFBポカール:2回戦敗退総括と展望
前半戦5位、唯一無敗での折り返し。プレビューでも注目クラブとして挙げたホッフェンハイムは今季、ブンデス一のパスサッカーで躍進中だ。
この躍進の要因は大きく2つ。1つはブンデス最年少監督・ナーゲルスマンの戦術の浸透度だ。今季のホッフェンハイムは負傷者数が非常に少なく、リーグ2番目の数字を記録している。
しかし、怪我人が少なくチームの調子も上々であるにもかかわらず、2試合連続で同じスタメンで臨んだ試合はほとんどない。下部上がりの若手を含む多くの選手に出場機会を与えている。そして、どの選手を起用してもチームの機能性が落ちないのだ。これはナーゲルスマンの戦術を落とし込む指導力の賜物であり、負傷者予防、サブのモチベーション維持との好循環を生んでいる。2つ目は新戦力の活躍。今季からの新戦力は5人、合計1300万ユーロを投じ、派手さは無いが非常に的確な補強を行った。CBヒュブナーは今季リーグトップクラスのパフォーマンス。本職がCH(センターハーフ)のフォクトはCBの位置から正確なフィードと配球でゲームを作る。IH(インサイドハーフ)デミルバイは精度の高い左脚で、ルップは機動力を生かして幾度もチャンスを演出。FWヴァグナーはポストワークをこなしつつ、チーム得点王(9ゴール)と文句無し、ドイツ代表入りも噂される。彼らが下部上がりのトリャンやズーレ、アミリ、その他の既存戦力と完全に馴染み、チームとしての幅が増えた印象だ。
課題は、多過ぎる引き分け(10)から分かるように、勝ち切れない試合の多さだ。失点が特別多いわけではないが、攻撃に比べると守備の役割はやや曖昧な部分もある。特にサイドからのクロスへの対応と“アンカー脇”のケアには改善の余地が見られる。
この10分けのうち1つだけでも勝ち切れていれば、3位での折り返しとなっていた。今後は勝ち切るための守備も詰める必要がある。
ナーゲルスマンの戦術
次にナーゲルスマン監督のサッカーの特徴を見ていく。シーズン序盤は4バック、途中から3バックを基本システムとし、それぞれのポジションの大まかな役割は下図の通りである。
ホッフェンハイムの得意な攻撃パターンを、第9節のヘルタ戦を例に2つ紹介する。◆◆WB(ウイングバック)が敵SBを釣り出しIHが抜け出すパターン(外攻撃) ◆◆
①攻撃の起点は常に3バックの脇の2人。ボールコントロールが上手く落ち着きのあるヒュブナーと、バイエルンへの移籍が決まったズーレ。決まり事は、敵SHを誘き出すこと。そうすると外のエリアの守備は敵SB一人だけになる。
②突破力のあるWBカデジャーベクをSBがマーク。中央で高さのあるヴァグナーを警戒するCBとの間にスペースが…。
③このスペースに、機動力のあるルップがワンツーで抜け出す。
◆◆ヴァグナーが作り出したスペースにIHが抜け出すパターン(内攻撃)◆◆
①攻撃の起点は3バックの脇の2人。ヒュブナーがボールを運ぶ間にクラマリッチとデミルバイで敵の右ボランチの注意を外に向ける。
②展開力のあるルディが敵アンカーの注意を惹く。すると敵中盤2人の間にスペースができ、ヴァグナーへのパスコースが綺麗に開ける。
③ヒュブナーから縦パス。降りて受けにくるヴァグナー、それを妨害するCB。これにより空いた裏のスペースにルップが抜け出す。④ヴァグナーがボールを裏に送り込みGKと1vs1!
1つの攻撃に、これだけ多くの選手が絡めるチームはそう多くない。複数の選手が同じイメージを共有できていないと実現できないプレーの連続だ。スターはいないが、敵の守備を破壊するための「スペースメイク」という黒子役を全員がこなせる点が最大の特徴である。活かし、活かされ1つの攻撃を作り出す。そこにナーゲルスマン・ホッフェンハイムの魅力があると感じる。今冬以降の移籍市場
今冬に加入する選手はいない。来夏の案件としてはブレーメンのグリリッチュの獲得(フリー)、ズーレ(2000万ユーロ)とルディ(フリー)のバイエルンへの移籍が決まった。
ズーレはフィジカルが強く足下の技術に非常に長けた、今後のドイツ代表を背負って立つCBだ。しかし、後釜にそれほど困ることはないだろう。現スカッド内にはビチャクチッチ、シェアとレベルの高いCBが控え、さらに今季終了後ローンバックが決まっている若手CBが2人いる。
1人はデュッセルドルフの22歳アクポグマ。世代別ドイツ代表ではキャプテンも務め、SBもこなせるのが売りだ。ズーレより足元は劣るがフィジカル能力に長けた、最終局面で無理の利くタイプ。
2人目はザントハウゼンの19歳ギンバー。スピードは無いが対人に強く足元の技術も高い。ズーレに近いタイプで、彼も世代別でキャプテンを務める。どちらもまだ若く(ズーレも若いが)、後釜として未知数だが、下部組織から後釜候補が続々と出てくるホッフェンハイムの育成は非常に恐ろしいものがある。
ルディの後釜はキック精度に定評のあるグリリッチュも考えられるが、いずれにしろ他所から獲得する必要がありそう。同ポジションのシュベグラーも来夏での退団が噂される。
<前半戦のMVP>
ベンヤミン・ヒュブナー(DF、11試合2アシスト)各ポジション、各選手がそれぞれ機能していたからこその今季のホッフェンハイム。強いて1人、前半戦のMVPを選ぶならヒュブナーだろう。
序盤は出番がなかったが、第6節の古巣・インゴルシュタット戦から定位置を確保。攻撃の起点はほとんど彼のいる左サイドで、ハーフスペースでの巧みな持ち出しと配球でチームの攻撃を後方から支えた。今季からCBにコンバートされたフォクトへのカバーも見事。
<後半戦の注目選手>
後半戦の注目は前半戦に引き続きアミリと、今季開花したデミルバイとカデルジャーベクを挙げておく。
ナディーム・アミリ(MF、15試合1ゴール2アシスト)
アミリは常に世代別代表に名を連ねるIH。ボールを引き出す動きが上手く、高精度のスルーパスも絶品。パス交換の中で存在感を発揮するゲームメイカーだ。ケレム・デミルバイ(MF、11試合3ゴール4アシスト)
IHのデミルバイは過去にドルトムントの下部組織に在籍。ハンブルガーSVでは繰り返しローンに出され、今季ホッフェンハイムに加入。ポジション取りが上手く、敵を引き付けることもスペースに侵入することもできる。また左足の精度が高く、ここまで11試合で3得点4アシストと得点に絡むこともできる選手だ。個人的には前半戦で最大のサプライズだ。
パベル・カデジャーベク(DF、16試合2アシスト)
WBのカデジャーベクはスピードとフィジカルに長けている。多少強引でも駆け上がっていける推進力が魅力だ。ポジショニングやオーバーラップのタイミングも良好、シャルケが興味を示していたように、今後ビッグクラブによる引き抜きも考えられる選手である。
■万全の体制で挑んだはずが、苦しい前半戦に(レーバークーゼン)
文・Fusshalt
今季こそ悲願の優勝に向けて万全の体制で臨んだはずだった。しかし、蓋を開けてみれば期待を裏切る結果で前半を折り返すこととなってしまった。相次ぐ選手の負傷、守備の崩壊に加えて主力の大スランプ……結果、コーチ陣の進退問題にまで発展してしまった。だが、逆風の中でも後半戦へ向けての光も見えてきた。今回はレーバークーゼンの前半の総括と後半の展望を述べていきたいと思う。相次いだ選手の負傷
戦力としては昨季に比しても大きくプラスになったはずだった。しかし、それがフルに発揮されたことはほぼ皆無だったと言っていい。理由はシンプルかつ簡潔だ。負傷者が続出したのである。大小問わず多くの選手が離脱と復帰を繰り返した。
特に序盤でシュミット戦術の中核を担うカリム・ベララビが腿の筋断裂で長期離脱したのは非常に痛かった。そのため、ハイプレスからのショートカウンターというシュミット監督の考えるパワーフットボールを変えざるを得ず、試行錯誤しながらの苦しい前半戦を送るきっかけとなってしまった。
この後もチームの主将であるラース・ベンダーを筆頭に、副主将のトプラクや今シーズンの目玉選手であるケヴィン・フォランドも負傷を繰り返して戦力になりきれなかった上、昨季にブレイクしたベンジャミン・ヘンリクスも背筋痛から調子を崩すなど、負傷選手が多数出たため、アスレチック・トレーナーのオリヴァー・バルトレット氏を解任することにも繋がってしまっている。シュミット監督の頭を悩ませた最大の問題であったといえる。
守備の崩壊
復帰後1年でクリストフ・クラマーがボルシアMGに去ったとはいえ、マインツよりオーストリア代表のボランチであるユリアン・バウムガルトリンガーを、そしてディナモ・キエフより同じくオーストリア代表のCBであるアレキサンダル・ドラゴビッチが加入し、守備陣の補強は万全であるはずだった。
しかし、前半戦は昨季よりも失点数が増えている(昨季は16試合終了時で24得点20失点だったのに対し、今季は23得点24失点)。これは、特にボランチと最終ラインとの連携が悪くなっているのが原因であると考えられる。というのも、今季ボランチを組むことが多かったのはチリ代表のシャルレス・アランギスとスロベニア代表のケヴィン・カンプルだが、カンプルは元々は前目の選手であり、アランギスも「ビボーテ」であり、攻撃に転じた際には前寄りになってしまう。
シュミット戦術の肝はボランチも攻撃に参加することにあるが、それ以上に1人が上がった際には1人は守備に残る「釣瓶の動き」にある。これが上手くいかず、非常に微妙なバランスで成り立っているシュミット監督の戦術を崩してしまっている。
それは失点後に特に顕著に表れており、バランスを崩した攻めにより逆に失点を喫するシーンを何度も目の当たりにしてきた。かといって、バウムガルトリンガーに替えた場合、対戦相手のインテンシティが高いと足元の技術不足を露呈。チームのバランスは改善するものの、攻守におけるリンクマンとしては不適当となってしまっている。
また、最終ラインもドラゴビッチが加入し、左右両方をこなせるヘンリクスの成長で層は大分厚くなったものの、安定性に欠けるシーンが多い。特に試合の中盤以降でラインが下がりがちになるシーンも散見され、中盤との間に大きなスペースを作ってしまい、そこを突かれて失点するというシーンが続出した。
失点が嵩み、前へ出ることへの恐怖感が生まれたというのが考えられる1番の理由だとは思うが、シュミット戦術も既に3シーズン目に突入しており、「勇気を持って前へ出る」という基本は既に身に付いていなければならないはずである。そういった意味では、守備のリーダーであるはずのトプラクの統率力不足も原因にあるのかと思う。
攻撃陣の大スランプ
昨季のレーバークーゼンの攻撃陣を牽引したのは、新加入のメキシコ代表ストライカーのチチャリートであった。しかし、今季は逆に大ブレーキになってしまっている(昨季は12試合10G1Aであったのに対し、今季は15試合5G1A)。特に終盤10試合では得点がぱったりと止まり、冬での移籍もあるのではないかという噂まで出た始末である。理由としては、ロシアW杯予選で長距離移動を強いられていることに起因する疲労と、開幕直前での右手の骨折などで体調面での不安も付きまとったことが挙げられるだろう。
チチャリートが怪我と不調で開幕ダッシュに失敗した中、評価を上げたのがツヴァイテリーガでの長いローン生活から復帰したジョエル・ポーヤンパロだった。開幕戦ではチチャリートが直前に右手を骨折して得たチャンスをきっちり掴んで同点弾を叩き込み、第2節のHSV戦でも途中出場からのハットトリックで立場を確立した。だが、好事魔多し。練習中に負傷して戦線離脱してしまった。
キースリングも慣れない途中出場からの出番が多い上に慢性的な腰痛や背筋痛から出場自体が不可能ということも多く、戦力としては計算に入れにくい状況となっている。
ホッフェンハイムから鳴り物入りで加入したケヴィン・フォランドもプレシーズンマッチでは順調な仕上がりを見せていたが、シーズンインとともに調子が下降。代表戦で負傷して戦線を離脱したりと能力を発揮できないまま前半戦が終わってしまった感がある。
後半戦を上位で終えるためにも、以上のポイントが解消されることが絶対に必要となってくるだろう。
一方で、後半戦に向けての明るい材料もあった。
チャルハノールの復調
一昨季にブレイクしたものの、昨季は一転スランプに陥ったチャルハノールだったが、今季は復調の気配である。ここまでは代名詞であるFKからの得点こそないものの、4ゴール・4アシストと好調を維持している。これは活躍した一昨季を超えるペースだ。昨季と違い、ほぼ主戦場である攻撃的な位置での起用が多いこともあるだろう。好調を維持したまま冬のキャンプも終えており、折り返してからも期待が持てそうだ。
若手の台頭
昨季は得点が2桁に到達しなかったものの、先発としてもジョーカーとしても大活躍したユリアン・ブラントが今季も好調を維持して完全に戦力として計算できる存在になっている。
また、サイドバックとして一気にブレイクしたベンジャミン・ヘンリクスは今季も変わらぬ活躍で、ついにはドイツ代表でビューも果たした。だが、今季はさらにもう1人、若武者がデビューを果たした。カイ・ハヴェルツである。
この17歳の若きタレントは負傷などで穴の空いた攻撃陣の中で抜擢されたが、それを埋めるだけの活躍をしたと言えるだろう。ここまで9試合出場で1アシストと数字的にはまだまだではあるが、体がまだでき上がり切っていない中でブンデスリーガという大舞台で結果を出してきているのは立派である。まだまだ伸び盛りなだけに、後半戦にも期待したいところである。
<前半戦のMVP>
ユリアン・ブラント(MF、16試合2ゴール6アシスト)
個人的にMVPに値するのはユリアン・ブラントである。スランプや不調で振るわぬ攻撃陣で気を吐いている。荒削りな部分もあるものの、チームに勢いを付けるプレーは既に貫禄十分である。特に前への推進力は世界でも十分に通用するだけの力を持っており、今季はさらにアシストにも磨きがかかっている。
昨季後半で一皮剥けた得点力をコンスタントに発揮できるようになれば、間違いなくドイツ代表の厚いスタメン組の一角に食い込めるようになるだろう。それだけに、折り返し以降でも好調を維持したまま突き進んで欲しい。<後半戦の注目選手>
ジョエル・ポーヤンパロ(FW、6試合4ゴール)
後半戦に注目して欲しい選手には、ジョエル・ポーヤンパロを推したい。開幕からの2試合で華々しい活躍を見せたものの、負傷で前半戦を棒に振ってしまったが、冬のキャンプからチームに無事に復帰。テストマッチでも得点を挙げて好調さをアピールしており、後半戦に向けて愛称通り‘Danger’な男が大暴れしてくれると確信している。イケメンでもあるので、ブンデス女子の方々も是非ともチェックして欲しい選手であります(笑)
■勝負所で踏ん張れない“満身創痍”(マインツ)
文・暁空也
満身創痍の前半戦だった。怪我人が続出した上、新戦力は適合が遅れ、ヨーロッパリーグ(以下、EL)の疲労に蝕まれる。ELではアンデルレヒト(ベルギー1部)に1-6という屈辱的な大敗も喫した。ブンデスリーガでのウインターブレイクまでの成績は、6勝2分8敗の10位。極端に少ない引き分けも、勝負所で踏ん張れない不安定さ、脆さを浮き彫りにする。三足の草鞋に苦しむ
ブンデスリーガ、DFBポカール、EL。“三足の草鞋(わらじ)”を履くための準備に抜かりはなかった。夏の移籍市場では、推定2600万ユーロ以上を投下してMFレビン・エズトゥナリ(←レーバークーゼン)、DFジャン=フィリップ・グバマン(←ランス)、MFゲリット・ホルトマン(←ブラウンシュバイク)、GKヨナス・レスル(←ギャンガン)、MFホセ・ロドリゲス(←ガラタサライ)、MFアンドレ・ラマーリョ(←レーバークーゼン)らを獲得。昨季は期限付き移籍で加わり、後半戦で前線の核を担ったジョン・コルドバもグラナダから買い取った。
コルドバは勢いに乗ると2人、3人でも止められない(写真はマインツの公式サイトより。以下、同じ)前線からの連動したプレスや攻守の素早い切り替えを戦術の軸とするマインツは、選手の疲労が蓄積しやすい。各ポジションの質を上げるとともに、量も増やし、いわゆる「ローテーション」で3つのコンペティションを踏破する狙いだ。
しかし、その目論見は外れる。グバマン、ラマーリョ、FW武藤、MFラッツァ、MFハイロ、DFバログン、MFフライら負傷者が続出。ホセ・ロドリゲスはアウクスブルク戦の悪質なファールで5試合の出場停止処分を受け、MFはスクランブル態勢を強いられた。
特に、中盤の底(4-2-3-1の「2」)の人選には苦しんだ。怪我で手駒が限られた上、誰が出てもインパクトに乏しく、昨季まで絶対的な存在だったバウムガルトリンガー(現・レーバークーゼン)の穴を埋められない。
攻守の結節点であるポジションの弱体化は、守備力の低下を招く。昨季は第16節を終えた時点で21失点だったが、今季は30失点に急増。ブレーメン(34失点)、HSV(31失点)に次ぎ、リーグで3番目に悪い数字だ。
例えば、ホームでのホッフェンハイム戦(第2節、△4-4)は、フライとグバマンで構成する中盤の底が何度もコンビネーションでマークを外され、中央の危険なゾーンを空けてしまい、4失点を喫した。アウェイでのシャルケ戦(第8節、●0-3)も、グバマンとゼルダルのコンビが圧力を掛けられず、中央から押し下げられて完敗。3列目から飛び出してくるベンタレブを捕まえ切れず、2得点を許したのは、中盤の底の機能不全の典型だ。
センターバックもミスが目立った。主にブンガート、ベル、バログン、ハックが務めたが、いずれも強さや高さに優れる一方、鈍重で不器用。左右からのクロスにポジショニングが甘くなり、アジリティやスピードに長けたアタッカーには翻弄され、失点に絡んだ。守護神・レスルに救われた試合も多く、それがなければ黒星は2桁に乗ったかもしれない。守備範囲の狭さやDFとの連携などに課題も残るが、195cmの長身ながら俊敏で、キャンチングに安定感があり、ハイボールにも強いデンマーク代表は、着実に地歩を固めている。
キャッチングに安定感があり、ハイボールにも強いレスル
リーグ5位の26得点守備力は減退したが、得点力は増進した。26得点は、バイエルン(38得点)、ドルトムント(35得点)、ライプツィヒ(31得点)、ホッフェンハイム(28得点)に続く、リーグ5位。圧倒的なスピードとパワーで攻撃を牽引したコルドバは、決定力を欠いて3得点にとどまったが、マリ(6得点)やデ・ブラシス(4得点)、エズトゥナリ(2得点)ら2列目のMFが巧みに飛び出してゴールネットを揺らす。セットプレーではCBのベルが屈強さを生かして3得点を挙げ、第15節のHSV戦ではラッツァが全てミドルシュートでハットトリックを達成。怪我で長欠した武藤も3試合で2得点の“荒稼ぎ”で勝負強さを示した。多彩な手段で点を奪えるのは、マインツのストロングポイントだ。
下部組織で育った若手の台頭も、後半戦に光を灯す。19歳のMFゼルダルは7試合に出場。ボールに触れる機会が少ないと試合から消えてしまい、守備も拙いが、ドリブルやパスはハイレベルだ。
テクニックに優れるゼルダル
第12節のヘルタ・ベルリン戦で先発に抜擢された20歳のFWアーロン・セイデルも、無限の可能性を秘める。199cmの長身を駆使したポストワークは柔らかく、機動力も備え、ヘルタ戦ではペナルティエリア内のこぼれ球に素早く反応すると、落ち着いてシュートを決めた。ブンデスリーガのデビュー戦で初ゴール。まさに“持っている”俊英だ。昨年12月21日には、21年6月30日までの新契約を締結。クラブも、次代のエースと見込む。
精悍な顔立ちのセイデル
マリからボージャンへと継承された10番攻撃の好調と若手の突き上げで、ウインターブレイクの焦点は守備のテコ入れに絞られた。マーティン・シュミット監督も必要性を認め、キャンプではプレスやブロックの緊密化を追求。MFのラマーリョやグバマンをCBに起用するプランも明かした。レスルをはじめとするGKにも、健全な競争を促す。
幸い、怪我人が次々に復帰。用兵や戦術の幅は広がり、順位を上げていくための準備には事欠かない。
しかし、1月6日だった。マリがヴォルフスブルクへと移籍。推定1250万ユーロと引き換えに、攻撃のタクトを揮ってきた10番を失った。
これまで、チームは4-2-3-1の布陣を採用してきた。傑出したテクニックとフレアー(閃き)で決定機を創るマリに、守備の負担や制約が少ないトップ下で“自由”を謳歌させるためだ。シュミット監督は急遽、トップ下を置かない4-4-2を試し始めたが、6得点、7アシストと躍動したトルコ代表の穴は、戦術では埋まらない。
もちろん、補強の責任者であるルーベン・シュレーダーSD(スポーツディレクター)も手を拱いてばかりではなかった。1月29日、ストーク・シティから今季終了までの期限付き移籍でボージャン・クルキッチが加入。シュミット監督は「得点力と創造性に優れ、ずば抜けたクオリティを有する。攻撃的なポジションであれば、どこでもプレーが可能だ」と、新たな10番を賞賛する。バルセロナの下部組織で育ち、そのトップチーム、ローマ、ミラン、アヤックス、ストークと渡り歩いてきたストライカーに寄せられる期待は大きい。
ストーク・シティから今季終了までの期限付きで加入したボージャン
リーグ戦の再開後は、7位のケルンに0-0、4位のドルトムントに1-1と、上位にしぶとく食らい付き、勝ち点を1ずつ積み上げた。2試合で1失点の守備には、成長の跡が窺える。すでに、DFBポカールとELは敗退。リーグ戦に集中できるだけに、ここから順位表を駆け上がる。
<マインツの基本形>
フォーメーションは4-2-3-1。GKのレスル、右SBのドナーティ、トップ下のマリ、1トップのコルドバは不動。CBはベルが軸で、ハック、バログン、ブンガートがポジションを争う。左SBは攻撃的なビュスマン、守備的なブロジンスキで使い分ける。中盤の底は試行錯誤が続き、グバマン、ゼルダル、ラマーリョの出番も多い。ブロジンスキを起用した試合もある。両サイドは、デ・ブラシスやオニシウォも信頼を獲得。逆にクレメンスは次第に格付けが下がり、冬の移籍市場でケルンに放出された。1トップはセイデルが台頭。復帰した武藤も、このポジションを任される。オニシウォのゼロトップも試された。
■一時代の終焉と残留争い脱出への改革 (ウォルフスブルク)
文・脚魂
出会いがあれば当然別れもあり、そして新たな出会いがある。ウォルフスブルクにとっての2016-17シーズンの前半戦。アウクスブルクとの開幕戦を2-0と勝利したものの、以降は怪我人が続出し、夏に獲得した新戦力がチームに馴染むのが遅れるなどの不安材料も重なった。第7節、ホームでライプツィヒに0-1で敗れたあとは、ディーター・ヘッキング監督を解任。12-13シーズン後半から続いた政権に終止符が打たれた。
ヘッキングの後任には、ヴォルフスブルクU-23の監督を務めていたヴァレリアン・イスマエルが暫定で就任した(後に正式に監督に就任)。
このフランス人監督が就任後に行った大きなことが2つある。
1つ目は、今季ヘッキング解任までベンチが定位置だったGKディエゴ・べナーリオ主将のレギュラー復帰。レギュラーGKのクーン・カステールスは開幕から7試合中4試合で無失点ではあったが、イスマエル監督の「主将はピッチ上にいるべき」という方針でべナーリオのレギュラー復帰後はベンチが定位置になった。
2つ目は、左サイドバックが本職のDFリカルド・ロドリゲスをセンターバックで起用。ブンデスリーガでトップクラスの左SBと評価され、欧州の複数のビッグクラブからの獲得オファーの噂が絶えない彼を、CBとして起用するのは極めて大胆である。
そんな状況の中、ウォルフスブルクは残留争いに身を投じていく…。12月にはスポーツ・ディレクター(以下SD)のクラウス・アロフスが解雇というニュースが飛び込んできた。クラブ史上初のポカール制覇、CLベスト8といった結果を残してきたヘッキングとアロフスの退団は、一時代の終焉であった。
触れないわけにはいけないのが、ユリアン・ドラクスラー。開幕前に移籍を志願し、その時は残留したが、「移籍したいオーラ」を出しながらのプレーにはサポーターからのブーイングもやむなし。結局、ウィンターブレイク中にパリ・サンジェルマンへの移籍が決まった。
そのドラクスラーの移籍話をまとめたのがアロフスの後を継いでSDに就任したオラフ・レッべ、38歳だ。
ここでレッべが中心となって行われた冬の移籍をまとめる。※2017年1月31日現在。☆はローン移籍
<IN>
MFリーシェドリー・バズール(オランダ代表/アヤックス=オランダ)
MFユヌス・マッリ(トルコ代表/マインツ)
MFアシュカン・デヤガー(イラン代表/アル・アラビ=カタール)
FWポール=ジョルジュ・エンテプ(フランス代表/レンヌ=フランス)<OUT>
DFカルロス・アスクエス(ペルー代表/FBCメルガル=ペルー)☆
MFダニエル・カリジューリ(シャルケ)
MFユリアン・ドラクスラー(ドイツ代表/パリ・サンジェルマン=フランス)
FW ブルーノ・エンリケ(サントス=ブラジル)
FW オスカル・ザワダ(カールスルーエ)
FW アントン・ドンコー(エヴァートン=イングランド)☆こうした新戦力に加えてMFダニエル・ディダヴィら怪我人が復帰すれば、残留争いからの完全離脱は不可能ではない。
<前半戦のMVP>
ジェフリー・ブルマ(DF、15試合1ゴール)
3年ぶり(2011~13年にチェルシーからハンブルガーSVにローン移籍)のブンデスリーガでのプレーになった今季、退場による1試合の出場停止を除けば開幕から全試合に出場。シャルケに移籍したナウドの穴を埋める活躍を見せている。<後半戦の注目選手>
マリオ・ゴメス(FW、16試合6ゴール)
ウォルフスブルクの躍進にはこの男の活躍が不可欠。前半戦は16試合6ゴールではあるが、実績から考えるとまだまだ。後半戦に期待したい。
■明らかな采配ミスにより、あまりにも酷い前半戦(ボルシアMG)
文・とんとん
<データ>
リーグ戦 4勝4分8敗 15得点25失点 14位
DFBポカール 3回戦進出
CL 1勝2分3敗 GS3位、ELへ一言でいえば、情けないシーズン前半戦であった。16試合を通して勝ち点はたったの16。9月末以降は3カ月で1勝。なんら改善されないまま、いたずらに前半戦を過ごした。内容的にも今季の18クラブで最もつまらなかったと思う。ファンでなければ絶対に見ないチームだ。もはやELすら難しい状況まで陥った原因は明らかにシューベルトの采配ミスにある。
シューベルトはとにかくシステムを弄りたがる。特に昨季のバイエルン戦の勝利に結び付いた3バックには特別なこだわりを見せていた。そしてその3バックが全く機能しなかった。攻撃時はどこで数的優位を作るかが全く練られておらず、距離感がバラバラ。守備においては人に付くのかスペースを守るのか、誰がどこをカバーするのかがバラバラ。戦術的ノウハウを全く持ち合わせていないのだ。
CLはチームが慣れ親しんだ4-4-2で挑み、内容も充実していた。このままリーグ戦も4-4-2で立て直すだろうと思われたが、再び機能しない3バックを用いる。これでは波に乗れない。悪い流れを断てないのも無理はない。そんな彼がチームを立て直すことなどできるはずもなく、ウィンターブレイクに入ると同時に解任された。
エベールSDは、もっと早くに彼を解任できたはずだ。戦術的ノウハウを持ち合わせていない監督に、チームの立て直しや将来性など期待できるわけがない。あまりに遅すぎる決断で、順位表の修復が不可能な段階まで来てしまった。
今季何の策もないシステムでのプレーを強いられた選手の評価は付けがたい。与えられた役割が無い以上、評価基準も無いから採点のしようが無い。本当に酷い前半戦であった。
ドミンゲスの引退
CBのドミンゲスが背中の怪我を理由に27歳で引退を発表した。過去数年、慢性的な背中の怪我に悩まされ、昨季ようやく主軸らしいパフォーマンスが見られたと思ったら、数試合プレーして再離脱。ファンとしては「ゆっくり休んで下さい」というスタンスだったが、円満な別れとはいかない模様。彼はボルシアMGのメディカルに対し「トップチームのレベルに無い」と批判。訴訟を起こす構えであるとの報道もある。
ボルシアMGは、そのCBにセビージャからコロジェイチャクを約700万ユーロで獲得。エベールSDは否定しているが、恐らくクリステンセンのローンバックの後釜という意味合いでもあるだろう。エベールはフランスの世代別代表に選ばれていたコロのことを17歳の頃から知っていたそう。CBとしてそれほど上背は無いが、スピードと足元の技術に長け、SBもこなせるという彼好みの選手だ。
展望
後任監督は選手時代にボルシアMGに在籍歴のあるヘッキング。一昨季のブンデス最優秀監督であり、CLベスト8経験者はリーグ内で彼とアンチェロッティしかいないと言えば聞こえは良い。しかしデブルイネの抜けた後は全く狙いの見えないサッカーに終始し、今季途中でヴォルフスブルクを解任されている。正直、この人で好転するとは思えず、迷走が続きそうな予感…。強いて期待できる点を挙げるとすれば2点で、1つは若手の起用だ。
ボルシアMGにはダフードの他にもソウ、ベネス、ドゥクレを筆頭にリュッテン、M・シュルツ、シマカラ、ニコラス、ヌデンゲとポテンシャルの高い若手が数多い。ヘッキング、エベールSD、アシスタントコーチのステフェスともに若手起用に前向きな発言をしており、新たな戦力として期待している。この低迷をプラスに捉え、積極起用でメンバーを刷新するのもアリかもしれない。もう1点は4バックに戻し、ヘッキングとボルシア共通の特徴であるサイド攻撃が蘇る可能性だ。
しかし、迎えたヘッキング体制1戦目は、なんと3バック。シューベルトと同じシステムであった。全く機能せず、PK2本で辛勝。2戦目も3バックで臨み、ビハインドを負い前半終了。ここで4-4-2に変更すると後半に逆転。このまま4-4-2を詰めていくのがベターだが、試合後のヘッキングは「4-4-2が良かった」ではなく、相手に合わせた「システム変更」が良かったとコメント。システムには今後も柔軟性を持たせる、とシューベルトと瓜二つの抱負を述べていることからも筆者としては非常に先行きが不安である。
4-4-2固定で臨んだテレコムカップは2連敗。怪我人が多いことに加え、人選も試行錯誤でフルメンバーではなかった。特にスペースメイクで攻撃に流動性を生むタスクを担うSHには適切な人選が求められる。ここまで怪我の少ないホフマン、トルガンの積極起用、ソウやベネスの抜擢が必要だ。
またCHのダフードとクラマーのコンビは役割分担が明確でなく、共に動きすぎて然るべきポジションに2人して居ない場面が多々ある。ここの分担・人選も課題だ。
新監督ということで、一度くらいフルメンバーで形にする必要があったはずだ。消化不良の冬だったが、早いところ最適解を見つけ出さなければならな
い。<前半戦のMVP>
ヤニク・ヴェスターゴーア(DF、16試合1アシスト)
戦術的に整理されていない中で評価するのは難しいが、前半戦MVPを強いて挙げるならばヴェスターゴーアだ。高さだけでなく足元の技術も確かで、機能しないシステムの中でも頭を使って組立て、次の展開を促すようなメッセージ性の強いパスを送り込んでいた。
次点でクラマーとシュトロブルのCHコンビ。中盤の守備はこの二人に任せきりになる場面が多かったがスタミナとフィジカルを活かした守備で貢献。今後はこの二人の負担を減らせるようバランスをとる必要がある。
<後半戦の注目選手>
ジブリル・ソウ(MF、リーグ出場なし)
ラズロ・べネス(MF、リーグ出場なし)後半戦の注目はソウとベネスの19歳コンビだ。
ソウとベネスは期待の若手としてエベールから繰り返し名が挙がっている。この2人の主戦場はともにIH。ヘッキングがどのシステムを使うのかにもよるが、SHとしてもCHとしても計算できる。
ベネスは左足の精度が高くスペースを見付けてのランニングも可能。中央からもサイドからもゲームを作れる今までボルシアにいなかったタイプだ。ソウは万能型。スピードがあり、裏への抜け出しからシュートまで正確にこなせる選手だ。そのためIHでの起用がベストだが、現状怪我で手薄なサイド起用がベターかもしれない。
この2人は一刻も早くローテーションに組み込むべき逸材である。ヘッキングの重要任務の1つとも言える。
■開幕直後の茶番劇から、満足すべき残留圏 (ブレーメン)
文・ゆんゆん
勝点16の15位。結論から言えば満足すべき成績だ。新シーズンに望む前の段階で判断を大きく誤った。まずヴィクトル・スクリプニク前監督(及びトルステン・フリンクス助監督)を続投させたこと。そして指揮官交代を模索していたトーマス・アイヒン前GMの事実上の更迭。限界をとうに露呈していた前監督を徹底擁護し、まさかの続投判断を下したクラブに理解が及ばないが、さらに驚くべきことが続く。
DFBポカール1回戦で3部のロッテに完敗してシーズンの幕を明け、リーグ戦で開幕3連敗を喫して4試合14失点のロケットスタート。案の定の結果ではあったが、まさかここまでの醜態を曝すとは。
すると、あろうことかクラブは続投させたスクリプニクをあっさり解任。僅か4試合で覆る程度の判断、覚悟だったのだ。あの感動的な擁護の弁は何だったのか。その軽さに閉口する。
その後、暫定的にU-23から昇格させていたアレクサンダー・ヌーリを後任として正式に任命。目ぼしい候補者が見当たらなかったか、それとも全て断られてしまったか。
極め付けは、昨年11月の記者会見でのアイヒンの後を継いだフランク・バウマンGMの発言。就任直後「ヴィクトルがブレーメンにとって最善の揮官。彼に大きな信頼を寄せている」と言っていた人物から、程なく「監督を続投させたのはミスだった」という言葉が出てきてしまうのだから驚く。第一声で留任が条件の監督について「信頼していない」とは言えないだろうが、それにしてもスクリプニクの続投が無ければ今その地位にないであろう者が、この短期間でそれを言ってしまうのか。こうして今季は幸先よく第一歩から踏み外してスタートした。
茶番劇はチーム編成を大きく混乱させた。ヌーリ監督は就任後まもなくサンブー・ヤタバレ、ファルー・ディアニェをトップチームのメンバーから外し、後者は夏にやって来たばかりだが、この冬メツへ移籍が決まった。他にもスクリプニク体制下で加入した新戦力が冷遇される。5季ぶりに古巣ブレーメンに復帰したレンナート・ティーは昨季まで所属したザンクト・パウリへUターン、タノス・ペツォスは英フルアムへ。彼らもまた在籍僅か半年でクラブを去った。
補強もちぐはぐだ。既にティー、ジャスティン・アイラース、フロリアン・カインツの獲得を決め、逸材ヨハネス・エッゲシュタインの慰留にも成功していた前線に、さらに大金を投じてマックス・クルーゼとセルジ・ニャブリというビッグネームを加えた。
その一方で、昨季在籍した4選手が全員抜けたセンターバックにはブンデスリーガで実績のない外国人選手を格安で獲得して済ませたのだから、首を傾げざるをえない。攻撃的な選手ばかりに投資し、最大の懸案は人件費を節約して頭数だけ揃える。そのうちの1人は僅か2試合だけ出場し、もうフランスに帰ってしまったのだから失敗は明らかだ。
指揮官交代後もチームは常に2桁順位の低空飛行を続け、ウィンターブレイクを迎えた。しかしこれほど稚拙なマネジメントにもかかわらず、降格圏外で前半戦を終えられたのだから、やはり満足すべきなのだろう。
失点数はリーグ最多の34。近年失点の多さでは必ず上位に顔を出しているが、毎試合必ず2点は献上している計算になる、とりわけ誇らしい数字を叩き出した。
大量失点を受けてGKはフェリックス・ヴィートヴァルトが降ろされるも、代わりのヤロスラフ・ドロブニーは怪我がちで、フィードの精度にも物足りなさがあり、全幅の信頼を得るまでに至らず。このポジションは夏の補強が確実視されており、後半戦のデキ次第では両者揃ってポジションを失うことになるだろう。
個別に賞賛に値するのは、言うまでもなくニャブリ、そしてレフトバックからスタートしサンティ・ガルシア復帰後はライトバックのポジションを奪取したロベルト・バウアーの五輪代表組。バウアーは左右のサイドバックに加え、ウイングバックから3バックの一角までこなす柔軟性を見せた。テオドール・ゲブレ・セラシエのように不必要なチャレンジからボールを失うこともない堅実で攻守に亘る一定以上の貢献が期待できる選手で大変重宝している。そしてイゼト・ハイロヴィッチ。14年に加入後、一時戦力外となったが今季は右サイドで躍動。キレ味抜群のカットインから数多くの決定機を築いた。しかし12月のインゴルシュタット戦で前十字靭帯断裂の重傷を負い今季絶望に。チームとして痛手であることはもちろん、ようやく陽の目を見たサイドアタッカーにとっても、あまりに残酷な仕打であった。
一時話題を攫ったガンビア人FWウスマン・マネーはレヴァークーゼン戦での活躍など華々しく表舞台に登場したが、技術的に未熟でモーションもワンパターン。警戒した相手チームが対策を講じてくると間もなく沈黙した。スケールの大きさを感じるが、トップチームでレギュラーを任されるまでになるのはまだまだ先の話だろう。
前任者と同じく、またしても1部はおろか2部ですら指揮経験の無い下部組織のコーチがトップチームを率いることとなったが、ヌーリ監督は意外なほど柔軟かつ的確な判断能力の持ち主であった。就任後、初戦から抜擢して脚光を浴びたマネーをあっさり降ろしてみせたように、一時の成功体験に固執することはなかった。様々なシステムや組合せを試しては駄目と見るやスパッと止める思い切りの良さは好印象。大金をかけているピサーロとクルーゼはどちらもベンチに置くわけにはいかない「縛り」がある中で、よく遣り繰りしている。
ここから後半戦の展望に入ろう。
後半戦も変わらず1部残留が目標となる。「浮上のためには守備の改善を」といつも言われるが、リーグ最多失点のチームなのだから、そんなことは誰でもわかることだ。このクラブにやろうと思ってそれができるのなら、初めから苦労は無いのである。
ラインコントロールすら覚束ないようなその守備を立て直すべく前半戦は試行錯誤の連続であったが、結果はホッフェンハイム戦で御目見えした3-1-4-2の新システムという形で、どうも落ち着きそうだ。中央に絞った位置でのプレーを好むニャブリのタスクを減らす効果もあり、手持ちの戦力を上手く活用できるだろう。ヌーリ監督も手応えを口にしており、筆者も一定の改善が期待できると見る。順位は降格圏スレスレだが、それほど悲観はしていない。
残留とは別にテーマを掲げるなら「フリッツとピサーロに頼る体制から脱却する」ことを目指したい。両ベテランはピークをとうに過ぎており、フリッツに至っては引退を1年延ばしている状況。戦線を離脱する頻度が目に見えて高まっている彼らへの依存が続くことは、即ちチームパフォーマンスの不安定さに直結するリスクだ。
鍵を握る選手は冬の新戦力トーマス・デラニー。ペツォスとルーカス・フレーデを放出、フィリップ・バルクフレーデが再び離脱して復帰時期が見通せない中、手薄となった守備的MFのポジションで移籍後すぐさまフル稼働を求められている。
そしてクルーゼ。ニャブリの強烈な個に頼っていた攻撃陣を引っ張らなければならないのは本来、彼のはず。序盤戦は明らかなウェイトオーバーで動きも鈍かったが、試合を重ねるごとにキレを増し、併せて結果も付いてきている。昨季後半戦12得点の固め打ちで残留の原動力となったクラウディオ・ピサーロに同様の働きを期待することはできないし、すべきではない。紆余曲折を経て再びプレーすることになったブレーメンの新時代を担うのは自分だという気概を見せて欲しい。<前半戦のMVP>
セルジ・ニャブリ(MF、15試合7ゴール1アシスト)リオ五輪得点王の肩書は伊達ではなかった。その貢献度はチーム最多の7ゴールと数字にそのまま表れている。加入後、瞬く間に中心選手となり、その存在感は国内外のビッグクラブからの注目を集めるほどだ。活躍が認められドイツ代表にも招集されており、恐らくブレーメンに長く在籍することはないだろう。重心の深いドリブルで敵陣を蹴散らし、振りの速いシュートでゴールを矢のように射抜く。厳しいチェックにもボールを失わないことから1トップを任されることもあった。
ハイライトは10月のダルムシュタット戦。出し手のマネーが目測を誤ってパスが長くなり、相手GKミヒャエル・エッサーがこれを悠々とキャッチすると誰もが思ったはずだ。
しかし、ニャブリは信じられないような加速から猛スピードでボールをGKの眼前で掻っ攫い、そのままゴールに流し込んだ。パスを出したマネーやバルテルスが頭を抱えて悔しがっていたように、味方すら追い付くと信じていなかったスーパーゴールであった。
彼には1試合でも多くブレーメンのユニフォームを纏って戦って欲しい。ただ、同時にこうも思う。「ニャブリに残留争いは似合わない」と。
<後半戦の注目選手>
トーマス・デラニー(MF、新加入)
今季のCLグループステージを観戦されたファンの方が、筆者よりも彼について詳しいのではないか。こう言ってはなんだが、CLとELの常連であるコペンハーゲンのキャプテンが、いつ降格してもおかしくないブレーメンに何しに来たんだと思っている。それもエバートンなど英プレミア勢からの魅力的なオファーを断ってまで。いちファンとしては嬉しいことなのだが未だに不思議でならない。実際のプレーを見たことがないので、正直なところ、彼がどんな選手かほとんど知らない。遠めからでも得点を狙える攻守に亘って存在感を放つボランチだと聞く。前項でも書いたが、中断明けからいきなりチームの中心として働いてもらうことになる。笑ってしまうような話だが、初めから彼の代わりはいない状況だ。
前クラブで若くしてキャプテンを任されたリーダーシップも買われており、今季で現役を退くフリッツの後継者としても期待されている。
■立ち直った昨シーズンから一転、「いつもの」試練へ (ハンブルガーSV)
文・まるよし
昨季を10位で終え、さらなる安定と成長、そしてEL出場権を目標にジャンプアップを期待して迎えた新シーズン。待っていたのは「いつもの」試練の連続だった。オフには目立った主力の流出も無く、コスティッチ、ウッドといった実力のある選手を加え、戦力の強化に成功。若干、ボランチから後ろの層の薄さが気にはなったが、悪くないチーム編成ができたと言っていいだろう。
しかし、開幕から4試合未勝利。途端に周囲が騒がしくなってくると、昇格組のライプツィヒ、フライブルクに連敗を喫した時点でラバディア監督の解任が実質的に決まった。第5節のバイエルン戦では、終盤まで得点を許さない健闘を見せたものの、クラブの決断は覆らず。3シーズン目を向かえたラバディア体制はあっけない形で終わってしまった。
その後、新監督にギスドルを招聘し、すぐに立て直しを図ったのだが、ここからチーム状態はさらに悪化。第7節から第9節までは、3試合連続で退場者を出す散々な結果で、新監督の戦術浸透もままならない状況が続いた。
依然として開幕からの未勝利記録が伸びるそんな苦しい状況の中、ギスドルはチームの現状を打破すべく、試行錯誤して幾つかの新しい手を加えた。
まずは、選手のポジションの入れ替え。数年ぶりにホルトビーを本職のトップ下に配置すると、両サイドバックの酒井高徳とオストルツォレクを2人ともボランチで起用する大胆なコンバート。さらに、大きなインパクトを与えたのが酒井高徳のキャプテン就任だった。それまでキャプテンを務めていたジュルーは試合に出場こそはしていたものの、プレーに安定性を欠き、お世辞にも求心力は高くなく、キャプテンの変更は頷けるものだった。しかし、加入2年目の酒井にその大役を託すのは、周囲はもちろん、本人にとっても大きな驚きであった。
そして、結果的にその幾つかの変革が吉と出る。酒井がキャプテンに就任した初戦のダルムシュタット戦でようやく初白星を挙げ、開幕から続いていた未勝利記録を12でストップ。次のアウクスブルク戦でも勝利し、連勝を達成すると同時に最下位からの脱出にも成功した。続くマインツとのアウェイゲームに敗れはしたが、中断前ラストのシャルケ戦は内容が伴った試合で見事に快勝。中断前5試合に限れば、3勝1分1敗の好成績だ。紆余曲折があったものの、なんとか自動降格圏から這い上がり、確かな手応えを残したまま中断期間を迎えることになった。
またも露呈したクラブの“悪癖”。求められる指揮系統の正常化
メディアが集まる大都市に身を置くこのクラブの宿命とも言うべきか、今季も話題の中心はピッチの中よりも外に向けられてしまった。何と言っても最大のトピックは、ラバディア前監督の解任、バイヤースドルファーCEOの更迭だろう。まずラバディアの解任についてだが、この選択は正しかったかどうかは現時点では判断できない。というのも、後任のギスドルも就任直後は結果が出ずに苦しんだが、徐々に狙いとするサッカーが明確になり、チーム状態が上向いてきているからだ。
恐らく、あのままラバディアが留任したとしても、ある程度は勝ち点を拾えていただろう。だが、ギスドルも決して遜色のない手腕を発揮しつつあり、上昇の兆しを感じさせている。全ては後半戦の結果次第。当時の判断の是非は最終的に残留できるかどうか、その一点で決まる。
監督人事に関しては賛否両論、今となっては納得の余地もあるのだが、問題視するべきはCEOの交代だ。一般論として、シーズン途中にSD職も兼務しているクラブのトップが任期途中で追いやられるのは、異常とも言うべき事象でしかない。
そして、一番の問題は「決定権の掌握者」が不透明なこと。2年前に株式会社化した際に、それまでのクラブ幹部を刷新してからは、そういった政治的なしがらみからは開放されたと思っていただけに、今回のバイヤースドルファー氏の更迭は問題の根が深い。
一説によれば、今回も補強資金を提供している外部からの圧力との見方が強いのだが、それもあくまで憶測の域を出ない。いずれにしても、長年足枷となってきた体質を露呈し、クラブの財産とも言える優秀な人材を自ら手放したという事実だけが残った。
浸透するギスドル色と充実の補強。後半戦の見通しは明るい!?
ギスドルと言えば、いわゆるラングニック流派の指導者である。そのラングニックが作り上げたライプツィヒと同じく、ハイプレス&ハイラインで縦に速いサッカーを信条としている。ラインを高く押し上げ、前線からアグレッシブにボールを奪いに行くやり方はラバディア時代と変わりは無いが、オフェンスに関しては変化が大きく、戦術の変更に慣れるまで選手達は幾分か時間を要した。前任者のスタイルは、どちらかと言うと距離感を縮めて細かいパスで崩していくものだったが、逆にギスドルは速攻を重視。そのため、オープンな展開になる分、前線の選手のスピードや突破力に攻撃のクオリティが左右される部分が大きいのだ。現在のHSVで、その役割を担っているはコスティッチとミュラーの2人。特にコスティッチは、期待に違わぬ圧倒的な独力での突破力を発揮しており、ギスドルのサッカーを体現する上で最も欠かさせない選手となっている。
一方で守備に目を向けると、ラインを高い位置に設定するこのサッカーはセンターバックが肝となる。HSVにとっては、元から非常に層の薄いポジションであったとはいえ、前半戦は平均的な水準に届く選手が見当たらず、失点数はリーグ内ワースト2位と苦しんだ。それを踏まえ、冬の中断期間にケルンからマフライ、ライプツィヒからパパドプーロスと実績のある選手を補強。「冬のマーケットの勝者」と言っても過言ではない的確な補強に成功した。
試合を重ねるごとに高まる新しいサッカーの浸透度。そして、弱点を補うピンポイントの補強。中断前の時点で16位ながら、後半戦のHSVへの期待感は決して小さくない。
<前半戦のMVP>
該当者なしキャプテンとしてチームを牽引した酒井高徳や、前半戦の終盤でフィットしたコスティッチは評価に値するべきだったが・・・。チーム、選手個人ともに本来のポテンシャルを発揮したとは言い難い前半戦だった。
<後半戦の注目選手>
メルギム・マフライ(DF、新加入)
キリアコス・パパドプーロス(DF、新加入)
長年センターバックの人材難に苦しんでいたHSVにとって待望の本格補強が実現!マフライは、ケルンで開幕から全試合スタメンで出場していた選手で実績と実力は疑いの余地無し。今季限りで同選手との契約が切れるはずだったケルンが契約延長の意思が無かったことから、今回HSVが移籍金を支払い、獲得が決まった。水面下では早い時期から交渉が行われていたようで、この移籍はバイヤースドルファー氏の最後の置き土産となった。
パパドプーロスは、HSV移籍の要因にギスドルの名前を挙げた。2人は、シャルケ時代に選手とアシスタントコーチという間柄であった。ライプツィヒでは怪我もあり出場機会には恵まれなかったが、シャルケ、レーバークーゼン時代の活躍でポテンシャルは証明済み。屈強な体格を生かした当たりの強さや、水際での危機察知能力は抜群のモノ持っているセンターバックだ。既に完成されたプレーヤーでありながら、まだ24歳と年齢も若く、本来であればHSVが獲得できるクラスの選手ではない。ひとまず、今夏までの半年間のローン移籍とはなるが、ギスドルを慕っていることから先の可能性を期待せずにはいられない。
■開幕10試合未勝利のチームを救った無名の新指揮官 (インゴルシュタット)
文・だのら
昨季、降格濃厚なチームを見事に残留へと導いた指揮官と、そのチームの主力ディフェンダーが他チームに引き抜きかれ、戦術がフィットする時間や、連携の難しさなどを踏まえて、ある程度苦戦を強いられるシーズン前半なことはある程度予想していたが、そんな私の予想を遥かに上回ったシーズン前半戦となった。前述の通り、昨シーズンチームを率いたハーゼンヒュットルがライプツィヒの監督へ就任し、カールスルーエの指揮官だったカウチンスキが後任に任命された。
カウチンスキは監督就任会見で「前任(ハーゼンヒュットル)のサッカーを受け継ぐ。システムはあまり変えないよ」と発言しており、戦術のフィットやフォーメーション変更での連携などの負担は軽減するだろうし、「大丈夫なのでは?」と周囲に安心感を漂わせていた。
が、現実は甘くなく、開幕前のフレンドリーマッチでチャンピオンシップ(英2部)やツヴァイテリーガのクラブと対戦したが、いずれも勝つことはできず。格下との対戦となったDFBポカールでも何とかPKでの勝利という最悪な形でシーズン開幕を迎えることとなった。
その後はご存知の方も多い通り、開幕以降10試合で0勝2分8敗と言う不名誉な結果を打ち立てることとなり、解任された。後任にはフォーダやブライテンライター、ルフカイと様々な噂があったが、いずれも断られ、無名のヴァルプルギスを新監督へ迎え入れた。
「ドイツの下部リーグを指揮していた彼に、ブンデスリーガの監督ができるのか?」と不安が募ったが、彼はその声をすぐさま払拭することとなった。
誤審や相手の決定力不足にも助けられたが、10試合勝ちなしで勝ち点2しか得られなかったチームに、1試合で勝ち点3をもたらした。新体制のチームはその後も、昇格組で当時無敗で首位と波に乗っていた前々監督ハーゼンヒュットル率いるライプツィヒを破るなど、就任後6試合で3勝1分2敗という結果でウィンターブレイクを迎えた。
前半戦は前述の通り勝てず、長く、苦しく、厳しいシーズンだったが、1週間後にリーグ戦と切羽詰まる中、新監督を選び、「これぞ解任ブーストだ」と言わんばかりの勢いで巻き返せたのは評価したい。戦術面においても流行りの3バックを採用し、守りを堅め、決めるべき時に決める。そんな縦に速い昨季のようなチームになっているので、新監督のチョイスはベストだった。
チームは昨季の勢いを取り戻しつつあるので、後半戦は是非とも残留を期待したい。
だが早速、そんなチームの中心選手となりつつあったマルセル・ティッセランがアフリカネーションズカップで離脱。さらにハウケ・ヴァールをレンタル移籍で放出と、CB不足の問題に直面している。ロマイン・ブレジュリィがティッセランの抜けた穴を埋めると予想されているが、果たしてそこを埋められるか。前半戦同様に厳しい問題を抱えたままでの再開となった。前半戦は乗り越えられなかった課題を後半戦序盤、いかに乗り越えるかによって、インゴルシュタットの残留か降格かの運命が決まると言っても過言ではないだろう。
<前半戦のMVP>
パスカル・グロース(MF、16試合1アシスト)
開幕から10試合で勝ち無しと監督交代を余儀なくされたシーズン序盤、そんな中でも、クオリティを維持しつつ、チームに貢献してきた選手が、このパスカル・グロースだった。セットプレーでは質の高いボールを送り、守備も怠らず、90分間走り続けた。結果的には報われず、カールスルーエ時代の恩師・カウチンスキも解任という結果になった。その後、新体制となり、フォーメーションを変えたことにより、選手の配置を入れ替える結果となったが、インゴルシュタットの10番は不動のスタメンとして変わらずチームを牽引している。
<後半戦の注目選手>
ロジャー(MF、16試合1ゴール)
インゴルシュタットの最大の悩みと言えば、決定力の低さ。流れの中からエリア内に持ち込めるものの、シュートがお粗末だったり、惜しいパスミスでチャンスを逃している。それは前半戦はもちろん、監督が変わった後半戦でも言えることで、これからも言われ続けるだろう。そうなると、残留へより重要になってくるのが守備。昨季インゴルシュタットはリーグワースト2位の得点数だったが、PKやセットプレーでの得点で得たリードを守り抜き、チームは11位でシーズンを終えた。しかし、今季は昨季の守備を牽引したディフェンダーや守護神を引き抜かれたこともあり、守備が安定せず、16試合で27失点と今の順位も納得出来る数字になっている。
しかし蓋を開けてみると、監督交代前は10試合で21失点、交代後は6試合で6失点と監督交代で大きく改善できている。
その要因がフォーメーション変更にある。4-3-3から3-6-1または5-4-1へと変更したことにより、失点数を大きく減らすことができている。
その中でも、このフォーメーションで最重要な役割を担っているのがロジャー選手だ。監督交代後は3バック、5バックへの変更に伴い、これまで出場していたボランチからセンターバックへコンバートされ、不慣れなポジションでの出場を余儀なくされている。
が、連係ミスは多少あるものの、そんなことを感じさせない働きを見せており、チームの守備を立て直している。
また攻撃面でも、主にセットプレーにおいて貢献している。家庭の事情により8月に母国ブラジルへ帰国するためチームを去ることになり、今季限りとなった彼のプレーに、是非とも注目して欲しい。
文・昴
■淡い期待を打ち砕いた8連敗(ダルムシュタット)開幕前、かなり悲観的な予想を立てていた私にとって、第8節までの戦いは評価できるものであった。8試合で勝ち点8は残留を十分に狙える数字であり、アウェイでの戦績はともかく、ホームで無敗というのは誇れる戦果だったと言える。とりわけ、今季序盤から好調のフランクフルトに土を着けた第2節は会心の試合だった。
しかし第9節のライプツィヒ戦でホーム初黒星を喫すると、そこから連敗
5つを数えたところで指揮官のマイヤーとファッハSDを解任し、ベルンドロートが暫定で指揮を取った残りの3試合も全て敗れ8連敗。序盤は混迷を極める北部の両雄やウォルフスブルク、そして10戦未勝利だったインゴルシュタットの陰に隠れていたが、気付けば1番下でウインターブレイクに突入していた。得点11、失点30という数字を見ると、ライバルに比較して失点数が極端に多いわけではないが、16試合中9試合で無得点であれば、当然勝ち点は伸びないだろう。無失点試合も件のフランクフルト戦のみであり、半数以上の試合で得点が奪えず、無失点にはほぼできないのだから、結果は推して知るべしだ。
この小クラブにおいて、この冬の動きは、まさに死活問題だった。
冬の移籍市場では、アルティントップ、サムといったドイツでの実績があるアタッカーを加え、ライプツィヒからはFWのボイドを補強した。攻撃面の駒自体は確保できたと思っている。
一方で守備の再構築をどうするのか、これは指揮官の腕の見せ所だった。昨季の残留はシュスター監督のチーム構築が無ければ到底叶わないものであった。
肝心の指揮官だが後半に向けて、まさかのフリンクス就任が発表された。ブレーメンでアシスタントコーチは務めていたものの、監督経験はなく、まさに大博打と言える選択だ。
私は選手時代のフリンクスが好きである。特にブレーメン時代の彼のプレーは凄く魅力的であった。一個人として言わせて貰えば、どれだけ酷い内容になろうと人物としてのフリンクスを私は支持するだろう。しかし、彼に守備構築ができるとは思えず、就任そのものには正直「何故」という感想が拭えない。
もっとも、この火中の栗をよく拾いに行ってくれたという意味では流石フリンクス、と思わなくもないのだが…。
<前半戦のMVP>
ジェローム・ゴンドルフ(MF、13試合1ゴール2アシスト)
チームとしての完成度も低く、MVPを選出するのは躊躇(ためら)われたが、勝ち点への貢献度を踏まえ、ゴンドルフを選択した。昨季はニーマイヤーとともに不動のボランチとして君臨していたゴンドルフだが、今季は負傷や先発を外されるなど苦しい時期を何度か過ごしている。
それでも、この小柄なMFは守備のタスクをこなしながら、チームにおいて得点に貢献できる数少ない選手である。彼の働きは、今季このチームが勝ち点を得た試合の全てに彼がフル出場をしていることからも窺えるだろう。
<後半戦の注目選手>
テレンス・ボイド(FW、冬の移籍市場で新加入)
大怪我からのカムバックを果たしたアメリカ代表FWがライプツィヒから加入した。1年半ぶりに復帰した前半戦は主にセカンドチームでプレー。9試合5ゴールと試合感覚を取り戻しつつある。屈強で得点感覚に優れたストライカーは、ダルムシュタットの補強ポイントと合致している。彼自身のステップアップのためにも輝きを放って欲しいところだ。
~My Opinion~
強さと魅力を失ったバイエルン。アンチェロッティは偉大な前任者を超えられるのか
文・まっつー
カルロ・アンチェロッティとジョゼップ・グアルディオラはどちらが優秀なのか。答えが出るのは当分先になりそうだが、前半戦のバイエルン・ミュンヘンに少なからずケチが付いたのは揺るぎない事実だ。2013年、稀代の名将グアルディオラを招聘したことで、バイエルンのサッカーは格段に進歩した。前任者であるユップ・ハインケスが3冠を成し遂げた直後という難しいタイミングであったにもかかわらず、グアルディオラはひたすらに改革を推し進めた。それは概ねプラスに作用し、ほとんどの選手達は「練習が楽しい」と語り、全てを獲得した直後に訪れる“マンネリ”を避けることに成功している。
また、バイエルンのスタイルをティキ・タカに変えたことも記憶に新しい。ハインケスの元で直線的にプレーしていた選手達は正確なパスで相手を圧倒し、バルセロナを相手にしてもポゼッションで引けを取らないほどにまでなった。
言うまでもなく、成績も付いてきている。グアルディオラがバイエルンで指揮を執った3年間は一度もブンデスリーガのタイトルを取り逃すことはなく、ドイツ国内を席巻した。
さらに、特筆すべきは失点数の少なさだ。1年目こそブンデスリーガ特有のカウンターに苦しみ、グアルディオラも「ブンデスリーガは全てのチームがカウンターを得意としている」と嘆いたが、2年目は18失点、最終年は17失点に抑え、最少失点記録を樹立した。カウンターからの失点がパターン化されていたものの、グアルディオラは着実に改善し、チームをグレードアップしている。もちろん、チャンピオンズリーグで3年連続準決勝敗退となったことには大きな議論の余地があるが…。
アンチェロッティもグアルディオラ同様、船出は上々だった。事実、プレシーズンから連戦連勝を続けた新生バイエルンからは良い話しかこぼれてこなかったことからも、それは窺える。フランク・リベリは前監督であるペップを「話が多過ぎる」と批判しながら、アンチェロッティを評価している。
「彼といると自信を取り戻せる。親しみやリスペクトがあれば、100%ではなく150%すら出せる。僕らにとって完璧な監督だし、彼のためなら何でもするよ」
リベリに限らず、多くの主力選手がアンチェロッティの人間性の素晴らしさを褒め称えた。ペップのもとでは機械のようにパスを回し続けた選手達が笑顔を取り戻し、「ファミリー」を強調するアットホームなバイエルンが戻ってきたと喜ぶ声が少なくなかったことも事実だ。
しかし9月、アトレティコ・マドリーに敗れると状況は一変。それまで公式戦8連勝を達成してきたチームは、続けてケルン、フランクフルトと引き分けて、3試合勝利無しとなった。するとカール・ハインツ・ルンメニゲCEO(最高経営責任者)を筆頭に、チームを痛烈に批判。「こんなのはバイエルンではない」とまで言い放っている。選手達も言い返すことはできず、自己批判を繰り返した。
幸い、10月19日に行われたPSV戦で勝利を取り戻したものの、内容的にはそれまでの3試合と何ら変わらぬ低調なものと言わざるを得ないデキであった。ペップ時代のパスを回して横に広げるサッカーから脱却し、アンチェロッティは「縦に速いサッカー」を標榜に掲げた。
シーズン序盤こそ選手が伸び伸びと前に出ていき、ゴールを奪う姿はファンにペップ・バイエルンを忘れさせるのに十分なものとなっていたが、点を奪えなくなれば、ボールを相手にやすやすと明け渡すスタイルとも言い換えられる。不用意な横パスを奪われ、ペップ政権ではトレードマークとなっていた激しいプレスもかからず、簡単に失点する姿は哀れにすら見えた。
さらに、11月に行われた“デア・クラシカー”(ドイツ版クラシコ)も落としてしまう。国内で最も重要な一戦と位置付けられた戦いで、バイエルンは力負けした。確かに「ドルトムント・キラー」であるアリエン・ロッベンが欠場したのは痛手であったが、この日のバイエルンは決して内容が低調で、芳しくない動きをしていたわけではない。いつも通り戦って、普通に敗れたのだ。ポゼッションでこそ圧倒したが、チャンスの数は互角。決定機で言えばドルトムントの方が多かったくらいだ。それだけに、首脳陣やサポーターに与えたダメージは少なくなかったことが想像できる。
とはいえ、アンチェロッティが率いるバイエルンは例年と同じように首位を走っている。クラブのOBであるオリバー・カーン氏も「国内でバイエルンと優勝を争うチームが出てきたら驚き」と話し、バイエルンが圧倒的な実力であることを認めている。
一方で、格下相手にボール支配率70%近くを常時記録していたペップ・バイエルンの面影は既に無い。どこか隙があり、いくらか倒しやすいチームになってしまったことは揺るぎない事実だ。アンチェロッティが契約終了後、前任者よりも高い評価を得ることになるのかは、まだ誰も分からない。
次回へ続く
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17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・1
~はじめに~
ある専門誌が掲載した独ブンデスリーガ2016-17シーズンの前半戦を総括する記事によれば、マインツは「新守護神のレスルと退団したカリウスの力量差が、そのまま失点の増加(リーグで4番目に多い)に繋がっている印象だ」。果たして、そうでしょうか。好守を連発する彼がいなければ、失点はさらに増えたはずです。
執筆者を貶すつもりは毛頭ありません。ドイツで取材に励み、貴重な情報を提供してくれる同胞に、心からの敬意を表します。ただ、全てのチームに精通しているわけではありません。誤解や不正確な分析も少なくない。そこに、我々のプロジェクトの存在価値が生まれます。日々、ピッチの内外を越えてリーグやクラブを注視するからこそ伝えられる“実像”を、お楽しみ下さい。(編集局長・暁空也)
~序章~「17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”」では、ドイツのブンデスリーガ(1部)およびツヴァイテリーガ(2部)の前半戦を振り返ります。昨年の同時期にも行いましたが、今年の大きな変更点は、ツヴァイテリーガの追加です。細貝や浅野(シュトゥットガルト)、山田(カールスルーエ)、宮市(ザンクトパウリ)などの日本人がプレーしていますし、少なくとも毎節1試合はDAZN(ダ・ゾーン)で視聴が可能ですから、需要はあると判断しました。
また、編集部を再編しました。全体の監修を暁が、ブンデスリーガの編集長を昴が、ツヴァイテリーガの編集長をかめゆみこが、両リーガの副編集長をまるよしが担当。編集長と副編集長の3人で質問を決めたり、執筆者に依頼したり、集まった原稿をまとめたりしました。役割を明確化するとともに、権限を分散し、内容を充実させる狙いです。
実際、執筆者は過去最多ですし、暁の独裁(?)だった過去の企画よりも、情報の質や量は向上したと確信しています。今回の執筆者は以下の画像の通りです。
この場を借りて、執筆者には感謝を申し上げます。読者への注意点ですが、執筆者には原稿の締め切りを「1月25日」と伝えました。そのため、古い情報なども混在していますが、ご容赦下さい。当然ですが、1月25日以降の情報を扱った執筆者は、締切を守っていません(笑)。
その原稿は、執筆者の個性が前面に出るよう、基本的にそのまま使用しています。ただ、クラブおよび選手の名称の統一、誤字・脱字の修正などは編集部が行いました。クラブの名称は独ブンデスリーガの公式サイト(日本語版)、選手の名前は「ヨーロッパサッカー・トゥデイ」(日本スポーツ企画出版社)に準拠しますが、執筆者が独自に用意した画像や表などは修正できず、完璧ではありません。ご了承下さい。
掲載はツヴァイテリーガ、ブンデスリーガの順番です。締め切りを守る執筆者が多く、先に完成したツヴァイテリーガから、ご覧下さい(笑)。
我々の文章を通じ、ブンデスリーガとツヴァイテリーガの面白さや奥深さが少しでも伝われば幸いです。
第1章 ツヴァイテリーガへの招待今シーズンからDAZNでツヴァイテリーガの放送が始まった。浅野の所属するシュトゥットガルト、あるい宮市がプレーするザンクト・パウリを中心に、毎節2試合が放送されている。これまで少数の熱心なファンが追いかけていただけの2部の試合が、徐々に注目されるようになったことは大変喜ばしい。地図を見るとわかるが、旧東ドイツ側にもチームがあり、1部以上に各クラブの個性の違いが際立っている。
2部の魅力はなんといっても、順位の行方が最後までもつれるところだろう。強いチームは昇格してしまうので、1つのチームが長年タイトルを独占し続けることもない。2部と3部の実力差は年々狭まり、下から上がってきたチームに押し出されるように、中堅チームであっても、簡単に残留争いに巻き込まれてしまう。1部で注目を集めているRBライプツィヒも、2部では苦しみ、1年ほど足踏みをした。順位を争ってデッドヒートが繰り広げられるリーグは、本来あるべきサッカーの楽しみを具現しているようにも思う。
前半戦の総括は次章に譲るとして、まずは今回の執筆者にリーグの魅力や、応援するチームの見所を語ってもらった。
■日本との深い関わり (フォルトゥナ・デュッセルドルフ)文・かばちゃん
フォルトゥナ・デュッセルドルフで注目して欲しい所は、何と言っても日本との関わりである。ブンデスリーガにも日本人が増えたことで、色々なサッカーファンの関心を集め、多くのクラブで日本語サイトや公式ツイッターが開設されている。中でもフォルトゥナ・デュッセルドルフは、日本人選手が所属しているという点以外にも、日本との関わりがあるクラブである。フォルトゥナのホーム、デュッセルドルフには多くの日本人が住んでおり、日系企業も多数進出している。こういったことから日立や東洋タイヤといった日系企業もスポンサーとなっていたり、以前から日本語の公式サイト(フォルトゥナは英語サイトはないものの、日本語サイトはある)や、最近ではツイッターも開設され、日本との関わりは、深い。
また定期的に日本語のフォルトゥナ通信も刊行されており、デュッセルドルフ内で無料配布され、インターネットでも閲覧できる。これらのスポンサー獲得や日本語関連の活動は、フォルトゥナ・デュッセルドルフ2でもプレイしていた瀬田元吾さんが手掛けている。フロントの海外組として活躍している瀬田さんの活動も注目である。彼の書いた本を何冊か読んだが、海外のクラブのフロントに入り、スポンサーの獲得に漕ぎ着ける話はとても貴重で、サッカー好きなら読んでも損はないと思う。
今、フォルトゥナには、アンダーカテゴリーを含めて何人かの日本人選手が所属している。現所属は金城ジャスティン俊樹、U19に伊藤遼哉、 U17にアペルカンプ真大がいる。過去には現大宮の大前元紀、元ジェフ千葉の結城耕造がいた。中でもジャスティンは去年のシーズン中にプロ契約した。シーズン前のトレーニングマッチのロリアン戦では、2ゴールをマークするも、直後に怪我をして6週間離脱してしまったが、9月には練習に復帰。10月は9節の古巣・1860ミュンヘン戦で終了間際に出場しプロデビュー、続いてDFBポカール、ハノーファー戦に63分から出場した。
セカンドチームではレギオナルリーガで6試合出場し、1ゴールをマークしている。冬の中断期間にもテストマッチに出場し、アシストも記録した。浅野、宮市、細貝などの日本人と比べると知名度はないが、フォルトゥナの日本人としてこれからも目が離せない。
■各クラブの「ゴール曲」に注目
文・神様仏様ミニョレ様個人的な趣味も入ってちょっと余談のような感じになってしまうが、どうかお付き合い願いたい。
私が選ぶ「2部の注目してもらいたいポイント」は、ゴール後の音楽だ。皆さんも、もしかしたらもう知っているかもしれないが、ドイツの確か3部くらいまでの多くのクラブでは、ホームチームがゴールした後に、選んだゴール曲が流れる。今回は2部の記事なので、2部のチームのゴール曲の中から私が気に入っている曲を、補足情報と一緒に皆さんに紹介したいと思う。
1)アウエ “Immer wieder Aue”
https://www.youtube.com/watch?v=99wcWbZzXtw
まずは今回のメインのチーム、アウエのゴール曲だ。この曲のサビの部分がスタジアムでは使われており、観客は手拍子をしてみたり、歌ってみたりと、思い思いのやり方でゴールを選手とともに喜ぶ。また、歌詞の中に「Wismut」という単語が出て来るが、これは鉱物のビスマスのことだ。アウエは炭鉱夫のクラブなので、とてもらしさが出ていると感じた一曲である。
2)ザンクト・パウリ Blur “Song2”
https://www.youtube.com/watch?v=SSbBvKaM6sk
これもまた「随分と雰囲気にあった曲だなー」という印象を受けた1曲だ。もちろんこの曲は、ブラーがザンクト・パウリのために書いたというようなものではない。これは選んだ人のセンスを褒めるべきだろう(笑)。この曲のサビは歌う、というより叫ぶ、という感じになっており(聞いてみればわかるはず!)、ちょっと気にしてみれば、試合の中継でも、ゴールの後に観客が叫んでいるのが聞こえて来るはずである。
3)ヴュルツブルガー・キッカーズ Dropkick Murphys “I’m Shipping Up to Boston”
https://www.youtube.com/watch?v=Kj73KicRvSw
この曲はレオナルド・ディカプリオなどが出演していた映画、「The Departed(ディパーテッド)」のプロモーションビデオに使われた曲で、イントロの部分がゴール曲として使われている。最初だけ聞くと少し牧歌的な雰囲気もあるが、かなり激しい感じのロックミュージックになっている。
■伝統的なドイツのフットボールクラブを体感 (ボーフム)文・BOJP
ゲルゼンキルヘン、ドルトムントという地理的にも近い2つのビッグクラブは、本国ドイツではもちろんだが、日本人選手が所属することもあって、日本のブンデスリーガファンの中でも人気ではトップクラスではないかと思う。しかしこの2つの町に挟まれるように存在するボーフムは、地味な印象を受ける。
※編集提供すっかり2部に定着してしまった現在では、ボーフムの試合を映像で見られる機会は少なくなってしまったが、かつて1部で戦っていた時期には、小野伸二が在籍していたこともあり、テレビで中継されることも多かった。
ボーフムはビッグクラブではないが歴史のあるクラブで、地元には根強いファンがいる。スタジアムはレトロでこぢんまりとしているが、それがまた独特の良い雰囲気を作りだしており、テレビ画面からも十分に伝わってきた。
試合前にヘルベルト・グレーネマイヤーの曲が流され、徐々に盛り上がっていくあたりなどを見せられると、自分もそこに加わりたい気持ちになったものだ。これらは私自身の中で勝手に作り上げていたトラディショナルなドイツのフットボールクラブのイメージと重なる点が多く、次第にこのクラブに魅力を感じるようになった。試合を見る機会が減ってしまった今でも、動向を追い続けているのである。■“東”のクラブが強くなれば盛り上がる (デュナモ・ドレスデン)
文・ゆんゆん端的に言うと東ドイツのクラブを応援したいという気持ちがあった。
ブンデスリーガは多くのクラブが南部・西部に集中していて、1部に限って言えば、ほぼ全てが旧西独のクラブ。近年はブレーメンやハンブルクなど北部勢の凋落が著しいと言われるが、旧東独勢は1部に残留することすら難しく、しかもそれが話題にすらならない。以前から「南部や西部だけじゃなくて東のクラブが強くなったらブンデスリーガはもっと盛り上がるのにな」と考えていたのだ。
筆者が2部に興味を持ち、試合を観戦するようになったのはここ数年のことなのだが、どうせなら贔屓のチームを通じて楽しみたい性分。「どうせならどこか応援したい」→「どうせなら東ドイツのクラブがいい」。まあ、こんな流れだ。
そこで何故デュナモになったのかというと、まず旧共産圏の色濃いクラブ名とエンブレムが気に入り、そして熱狂的なサポーターが創り出すホームスタジアムの空間に心を奪われたから。あとは応援しているうちに思い入れが深まってきた次第。昨季も欧州最大規模と言われる巨大フラッグが話題になったりと、サポーターの気合の入り様には只々圧倒される。
機会があれば、是非デュナモ・ドレスデンのホームゲームを観戦してみて欲しい。サッカーが好きであれば後悔はしないと思う。
毎シーズン予想の難しいツヴァイテリーガ。1年での復帰を目指して、昨季の降格組が上位につけているのは予想通りだが、意外なチームが下位に低迷するなど、相変わらず競争は激しく面白い。折り返しである第17節終了時の順位表は以下の通りとなっている。
第2章 ツヴァイテリーガ前半戦の総括
以下の画像は、2部を担当する執筆者の最終順位予想。前半戦を終了した時点で予想を出してもらったため、現在の順位をかなり忠実に反映したものとなっている。上位3チームは並びこそ違うものの、顔ぶれは全員同じである。
暁氏には順位予想の背景を、他の執筆者には前半戦のリーグ総括と後半戦の展望をまとめてもらった。
■最後は「個の質」と「完成度」が順位を決める文・暁空也
身も蓋もない話だが、私には順位を予想できるほどの知識がない。2部の試合を継続的に観るのは今季が初めてだからだ。しかも、あくまで「シュトゥットガルトの担当」として追っており、各クラブの印象は対戦した試合からしか語れない。予想に際し、改めて前半戦が終了した時点での順位表を眺め、ニュルンベルク(9位)やボーフム(11位)、カールスルーエ(15位)、ザンクト・パウリ(18位)の低迷に驚いたくらいだ。昨季は3位のニュルンベルク、同4位のザンクト・パウリ、同5位のボーフム、同7位のカールスルーエに、何が起きたのだろうか。
逆に、1位のブラウンシュバイクや5位のウニオン・ベルリンは、昨季の8位、6位から着実に前進しており、状態は右肩上がりと推察できる。共に終盤まで昇格を争いそうだ。
個人的に前半戦で気に入ったのは、6位のヴュルツブルガー。攻守にダイナミックで、その戦い方からは選手の特長を生かそうとする監督の意志も伝わってきた。選手のスムーズな連携も含め、ホラーバッハ監督の手腕を賞賛したい。とても昨季は3部で戦っていたとは思えない完成度だ。
一方で、1対1の攻防をはじめ、いわゆる「個の力」ではシュトゥットガルトやハノーファーの優位性が目立った。2部への降格で多くの主力を手放したものの、なお選手の質は1部の下位と同等以上。事実、ハノーファーは2位、シュトゥットガルトは3位と揃って昇格圏内にいる。
2部は1部に比べて技術の低さや組織の粗さなどが否めず、悪い意味で内容と結果が結び付きにくい。泥仕合も頻発し、上位が下位に簡単に敗れる。経営難や首脳陣のゴタゴタで多くの選手が入れ替わり、昨季の順位が当てにならないクラブも少なくない。予想は困難なリーグだが、前半戦のパフォーマンスを重視すれば、ブラウンシュバイク、ハノーファー、シュトゥットガルト、ウニオン・ベルリン、ヴュルツブルガーが昇格の有力候補だろう。
■継続したチーム作りが上位進出の鍵文・BOJP
2部の順位予想は大変難しいが、今季は1部から降格してきたシュトゥットガルトとハノーファーの戦力が突出している。試合によっては多少不安定なところは見られるが、それでも予想通り上位争いに加わってきた。リーグ戦の前半を終了して、この2つのクラブが3強の2つを占めているのは予想通りである。
その他のクラブについては、主力選手個々の能力に関してはさほど大きな力の差は感じない。上位争いに加わっているクラブと、そうでないクラブの差は何かというと、昨季から継続したチーム作りができているかどうかの差ではないだろうか。
首位のブラウンシュバイクは、就任9季目となるリーバークネヒト監督のスタイルがチームに浸透している。もともと2部で上位を争う戦力はあると見ていたが、今季はクンベラに好調時の得点力が戻り、接戦を勝ちきる力が加わった感がある。
また4位のハイデンハイムもブラウンシュバイクと同様、長くチームを指揮するシュミット監督のコンセプトがチームに根付いており、今季は特に守備が安定している。5位のウニオン・ベルリンは長期的な戦力強化が実を結んできており、新たに就任したケラー監督がうまくチームをまとめているように見受けられる。
リーグ戦の後半もブラウンシュバイク、ハノーファー、シュトゥットガルトの3強を軸に、ハイデンハイム、ウニオン・ベルリンが絡んだ昇格争いが展開されていくだろう。ただし2部に所属するチームは選手層がそれほど厚くはないため、主力選手が怪我をするようなことがあると、思わぬ失速をしてしまう可能性もある。
下位に目を向けると、現在のところカイザースラウテルン、ザンクト・パウリには大きく期待を裏切られた。特にザンクト・パウリは昨季は4位に終わり、上位争いを期待していたが…。
後半戦はヴュルツブルガー、ニュルンベルク、カールスルーエの3チームに注目したい。ヴュルツブルガーは昇格チームながら、現在6位と好調を維持。戦力的にはやや厳しいが、組織的なサッカーでどこまで頑張れるのか。ニュルンベルクは守備に問題を抱えながらも、リーグでのトップクラスの攻撃力で、少しずつ順位を上げてきた。ここまでリーグトップの14得点を記録しているブルクシュタラーが移籍したのは痛いが、それをどうカバーしていくのか。山田大記選手が所属するカールスルーエは現在15位と振るわないが、監督が代わりどこまで巻き返すのか。
残留争いの行方については、現段階では全く予想ができない。いかに早くチームのスタイル、戦術を確立し、安定した戦い方ができるかどうか、そして、選手が良いコンディションで戦うことができるかがポイントになるだろう。
■明暗を分けた昇格組
文・神様仏様ミニョレ様今シーズンの2部は、気付いたらもう折り返し地点を迎え、後半戦がスタートしている。そこで、今回のメイン記事の前に私なりに2部を少し振り返ってみようと思う。
まず今シーズン、個人的に最も驚いたのは、ザンクト・パウリの低迷だ。昨シーズンは昇格まであと一歩のところで惜しくも2部にとどまる形になってしまったが、この様子であれば来シーズンも善戦するものだと思っていた。
しかし、ここまで勝ち試合は未だ2しかなく、さらには12試合連続で勝ちなしという時期もあり、昨シーズンとはまるで別のチームのような成績になってしまっている。だが、後半戦からはブレーメンに移籍したティーの復帰が決定しており、この移籍はもしかしたらチーム復活の鍵となるかもしれない。
次は昇格組の3チームについてだ。今シーズンから2部に加わったのはデュナモ・ドレスデン、エルツゲビルゲ・アウエ、ヴュルツブルガー・キッカーズ(並びは昨季順位順)の3チーム。昇格組のチームというものは次のシーズンに苦戦を強いられ、そのまま降格してしまう、というパターンも珍しくはない。
しかし今シーズンはドレスデン、ヴュルツブルガーの2チームは現時点で7位、6位と昇格組としては上々の成績を出している。一方で残念ながら降格圏の17位に沈んでいるのが、アウエである。試合を見ても昨シーズンのような迫力がなく、失点はここまででリーグ最多と順応に苦しんでいるように見えてしまうのが現状である。
上位陣は昨シーズン上位につけていたチームと、下位のチームの順位の入れ替わりのようなものが散見されるものの、1部からの降格組であるハノーファー、シュトゥットガルトの2チームを抑えて、首位を走るブラウンシュバイクの強さは特筆に値するだろう。あと4試合勝てば昨シーズンの勝点に並ぶだけに、このままの勢いで1部に上がれるか、今後も注目してみたくなるチームである。
激しい応援が日本人のメンタルを引き上げる
話は変わるが、日本人についても言及したい。現在は1部のみならず、2部でも多くの日本人が活躍している。有名なのがザンクト・パウリの宮市、カールスルーエの山田だろう。個人的にはブンデスリーガは日本人にとって非常に適しているリーグであると考えている。
例えば英プレミアリーグだと、フィジカルの強さがかなり要求されるため、日本人には活躍が難しい。しかし、独ブンデスリーガは走力など比較的日本人にとっても伸ばす余地のあるところを改善していけば、活躍の余地があるリーグであり、非常に日本人に適していると思われる。
また、フィジカル的な強さもかなり向上させられることは、ヘルタ・ベルリンの原口を見れば分かる通りで、こちらからも日本人にとって適しているリーグであると言えるだろう。
さらに2部はフィジカル的な強さだけではなく、メンタル的な強さも鍛えられるリーグでもあると言える。2部の応援は世界でも有数の激しさを誇り、ドレスデンのサポーターがRBライプツィヒとの試合で、牛の頭部を投げ込む事件があったほどである。時には過度なところまで行ってしまうことのある2部の応援の中での試合は、日本人選手達のメンタル的な強さの向上にも一役買ってくれることは間違いない。
■ニーダーザクセンのライバル同士が上位を争う文・かめゆみこ
2部の前半戦は、ブラウンシュバイクが勝ち点34で秋の王者となり、ウインターブレイクを迎えた。最終節で勝てば、首位に立つ可能性もあったシュトゥットガルトは、ヴュルツブルガー・キッカーズに3-0と完敗。3位で折り返した。2位はシュトゥットガルトと同じ降格組のハノーファーだ。ブラウンシュバイクの29ゴールを上回る32ゴールは、今季から加入したハルニクの力が大きい。ブラウンシュバイクとハノーファーは地理的にも近く、ダービーの際は逮捕者が続出する熱い関係。順位が拮抗したままシーズンが深まれば、両者のライバル意識も気になるところだ。
上位3チームを追って、ウニオン・ベルリンとハイデンハイムが、それぞれ勝ち点29と28で続いている。ハイデンハイムは9年目のシュミット監督が指揮を執る。選手も比較的チーム所属歴が長く、監督のやりたいことを熟知しているようだ。
ホッフェンハイムのナーゲルスマン監督が、ドイツサッカー特有のツヴァイカンプフ(1対1)をせずに、ボールを奪うと言って話題になったが、ハイデンハイムもそれに近いサッカーを行っている。1対1に持ち込まれる前にボールを奪う。次々とカバーに入って、出来るだけ危険な状況を作らないようにする。イエローカードが24(リーグ平均38枚)、レッドカードは0と、リーグ1少ないのも象徴的だ。ウニオン・ベルリンは今季より就任したケラー監督。DFBポカールで、ドルトムントを最後まで追い詰めた試合も記憶に新しい。その下には、3部より昇格したヴュルツブルガー・キッカーズとデュナモ・ドレスデンが、勝ち点27で並ぶ。近年、3部と2部の実力差はますます縮まり、昇格してきたチームもすぐに上位で順位を争う傾向にある。ヴュルツブルガーは2年前にレギオナルリーガ・バイエルン(4部)で優勝し、プレーオフを経て3部へ昇格。翌年には入れ替え戦から2部まで駆け上がった。修羅場を乗り越えてきただけにメンタルも強い。選手としても活躍したホラーバッハが率いるヴュルツブルガーは、セットプレーに強みを持ち、奪ってから得点までもよどみなく早い。今シーズンどこまで順位を上げるか見ものである。
シーズン前にはいつも順位予想は行っているが、2部は特に下位の予測が難しい。昨シーズン4位だったザンクト・パウリは、17試合で2勝と最下位に低迷。後半戦でかなり巻き返さなければ、3部への降格も見えてくる。冬の中断時には、昨季パウリでブレイクした後、ブレーメンへ移籍したティーを再びレンタルで呼び戻し、得点力のアップを狙っている。最下位から14位の1860ミュンヘンまで、勝ち点5の中に5チーム。15位カールスルーエの低迷も予想外だったが、新監督となったスロムカが後半戦でどの程度チームを立て直すことができるか、また山田をどう使うかにも注目したい。
■安定した強さを見せるブラウンシュバイク文・ゆんゆん
まず1部からの降格組のシュトゥットガルトとハノーファー。2部で最も選手にお金がかかってるチームなので、3位以内で前半戦を終えたのは当然といえば当然。1年で戻ることがノルマである彼らの戦いはここからが本番だろう。
昇格組は明暗が分かれた。ヴュルツブルクとドレスデンは健闘して1桁順位。対してアウエは出だしこそ良かったが、その後はずっと低空飛行を続け降格圏に沈む。戦力的にも残留はかなり厳しい。
際立ったのは前半戦2位以下の順位にならなかった首位ブラウンシュバイクの安定した強さ。未だ無敗のホームゲームで手堅く勝点を積み重ねている。
過去3シーズン、秋の王者はそのままリーグ優勝し昇格を果たしているが、その前に優勝を逃しているのは他ならぬブラウンシュバイク(昇格はしている)。2位、3位とは僅か2ポイント差。今季はドイツ王者に輝いてからちょうど50年。クラブも大々的にキャンペーンを張っているが、このまま逃げ切って節目の年に花を添えることができるのか注目だ。
~My Opinion~
クラブ史における転換点となった入れ替え戦 (ボーフム)文・BOJP
最近の日本のサッカーファンは、VfLボーフムというクラブについて、果たしてどのような印象を持っているのだろうか。「ルール地方の地味なクラブ」、「乾貴士や田坂祐介ら日本人選手が所属したクラブ」、あるいは「イルカイ・ギュンドアンやレオン・ゴレツカの出身クラブ」というイメージを持たれることが多いかもしれないが、かつてはブンデスリーガ1部の常連だったという歴史を知っている人は、もはや少ないのかもしれない。
ボーフムは1971年にブンデスリーガ1部に昇格して以来、常に残留争いに加わりながら、決して2部に落ちることはなかった。当時は「Die Unabsteigbaren」と呼ばれていたのだ。 しかし93年に初めて降格すると、以後は1部と2部を往復するエレベータークラブとなってしまう。それでも93年から2005年までは、5度も降格をしながら、必ず1年で1部へ復帰を果たしていた。
10年に6度目の降格をした時も、翌季の2部で3位となり、それまでのレギュレーションであれば1年で昇格を果たしているはずだった。しかし不運だったのは、このシーズンから1部の16位と2部の3位による入れ替え戦がスタートしたということだ。
そのシーズンのボーフムは、2位で自動昇格を決めたアウクスブルクとは同じ勝ち点で、得失点差によりプレーオフに回ることになってしまった。まさに紙一重で自動昇格を逃したという印象が強い。
ボーフムにとってさらに不運だったのは、入れ替え戦の相手がルシアン・ファブレ率いるボルシアMGであったことだ。ボルシアMGは16位とはいえ、シーズン終盤に調子を落としたのではなく、最下位から徐々に調子を上げてきたチームであり、相当な強敵だった。
入れ替え戦の初戦、アウェイで対戦したボーフムは、劣勢に立たされながらも、DFの懸命の守備とGKのスーパーセーブで失点を防いでいた。しかし追加時間も終わろうとする94分、まさに最後のワンプレーで失点し、重要な初戦を落としてしまう。
最後のプレーの起点となったスローインがスタートする時点で、時計は94分をわずかに経過しているようにも見えた。こればかりは主審の判断なのでどうしようもないが、本当に微妙なところで勝敗が決したのは事実だ。ホームでの第2戦はドローに終わり、結果としてボーフムは昇格を逃すこととなった。
その時以来、ボーフムはプレーオフを戦うことすらできず、2部に定着して今季で7季目となる。その後、資金力のある新興勢力が1部に定着しつつある一方で、ボーフムは経営状態が悪化し、綱渡りの経営を余儀なくされるなど、1部への復帰は極めて困難になってしまった。
今になって思えば、この入れ替え戦に敗れたことはボーフムにとってクラブ史における転換点となる重要な試合になってしまったのだと思う。なお、この入れ替え戦に勝ったボルシアMGは、その後、ヨーロッパリーグやチャンピオンズリーグに出場を果たすようになり、こちらはポジティブな意味でこの試合がクラブ史における転換点として語られているのは皮肉なものである。
勝てそうな試合を追いつかれたり、ドローで終われる試合をつまらないミスで失点して1ポイント失う。わずか1ポイントや2ポイントかもしれないが、それが後になってクラブの立場を変えてしまうような大きな違いとなることもあるのだと実感する。その意味でこの10-11シーズン、そして入れ替え戦は忘れることができない。
その後、ボーフムは14年に財務担当取締役に就任したヴィルケン・エンゲルブラハト氏の下、女子チームやU23チームの解散を始めとした思い切ったリストラを図り、経営状態も徐々に改善。またクリスティアン・ホッホシュテッターSD、ヘルトヤン・フェルベーク監督による中長期を見据えた戦力強化が、徐々に軌道に乗ってきたように見受けられる。
しかし、伝統はあるが資金のない地方の中小クラブが、生き抜いていくのに厳しい時代であることにかわりはない。そして何年先になるかわからないが、再び1部に昇格することを信じて長い目で見守っていきたいと思う。
※編集提供
第3章 応援するクラブの中間考査と後半戦の展望
日本人選手に注目の集まるツヴァイテリーガ(2部)だが、若いスター候補や才能ある監督もひしめいている。ここでは執筆者達に応援するクラブの前半戦での戦いぶりと、注目する選手を挙げてもらった。
■攻守に組織の整備が遅れ、覚束ない昇格への道程(VfBシュトゥットガルト 3位 勝ち点32)文・暁空也
多くの主力が残留し、昇格は至上命題のシュトゥットガルト(写真はシュトゥットガルトの公式サイト。以下、同じ)曖昧模糊――。「ぼんやり」や「不明瞭」といった意味を表す四字熟語だが、シュトゥットガルトの現状に最適だ。ウインターブレイクを迎えた時点での戦績は10勝2分5敗の3位。勝ち点では2位と並び、首位との差も僅か2だが、攻守に組織の整備が遅れており、昇格への道のりは覚束(おぼつか)ない。
1部でも通用する陣容選手の質はリーグでもトップクラスだ。1部からの降格に伴い、ディダビ(→ヴォルフスブルク)やコスティッチ(→HSV)、ティモ・ヴェルナー(→ライプツィヒ)、ルップ(→ホッフェンハイム)らを失ったが、インスーア、バウムガルトル、グロスクロイツ、クライン、ゲントナーなど多くの主力を引き留めた上で、2015-16シーズンの2部の得点王であるテロッデ(←ボーフム)、パバール(←リール)やマネ(←スポルティング)、浅野(←アーセナル)といった俊英、確かな実力と豊富な経験を有するトビアス・ヴェルナー(←アウクスブルク)や細貝(←ヘルタ・ベルリン)らを獲得。1部でも通用する陣容を整えた。
実際、「個の力」の違いを随所に示した。中でも“新顔”だ。テロッデは抜群の決定力で11得点を挙げ、マネは卓越した突破力で好機を量産。自らも4度、ゴールネットを揺らした。浅野も、持ち前のスピードと的確なパスで前線を活性化。ボールを受ける、運ぶ、繋ぐ技術はチームでもトップクラスで、得点は2、アシストは4を記録した。決定機でのミスショットを連発しなければ、得点は倍以上に伸びただろう。“古株”のゲントナーも攻守に存在感を発揮。得点を5まで伸ばし、キャプテンとしてチームを牽引した。
リーグで2位の11得点を挙げたテロッデ。ポストワークの質も高い
抜群の突破力で攻撃の起点となるマネ
プレーのクオリティは高いが、決定力の低さが目立った浅野
さらに、「ダイヤの原石」と言っても過言ではない若手がいる。18歳のMFベルカイ・エズカンだ。プレーは繊細さと重厚さを併せ持ち、巧みに「柔」と「剛」を使い分けてゴールに迫る。前半戦は14試合で1得点、3アシスト。ムラが磨かれ、判断力が向上すれば、いずれはビッグクラブへと羽ばたくに違いない。
先発が4試合、途中出場が9試合と、大切に使われているエズカン疑念が募る指揮官の手腕
問題は、監督にある。開幕から2勝2敗と出遅れたルフカイと3カ月足らずで契約を解消し、アシスタントコーチから昇格させたヤンセンを経て、ドルトムントのU-17やU-19をリーグ優勝に導いたヴォルフを招聘したが、9月20日の就任から3カ月近く経っても攻撃や守備に明確なコンセプトを落とし込めず、対戦相手の研究も甘い。
分析や采配に物足りなさが否めないヴォルフ監督16節と17節が象徴的だった。ホームでハノーファーを迎え撃った16節は、防戦に終始。高く設定した最終ラインの裏を狙われて何度もピンチに陥り、3バックと4バックを使い分ける変則的なフォーメーションも混乱に輪をかける。攻撃では、ボールを起点に複数人が密集するプレスに手を焼き、ビルドアップが停滞。マネや浅野、グロスクロイツの個人技に頼るばかりで、効果的な策を打ち出せないまま敗れた。
アウェイでヴュルツブルガー・キッカーズと対戦した17節も、采配がことごとく裏目に出た。
攻撃では、マネの起用法が大失敗。“本職”のサイドでなく、トップ下を任せたが、ピッチを右往左往。ボールに触れず、ほとんどの時間で消えていた。
守備では、前節の反省からか最終ラインを下げたが、今度は人に寄せ切れない。深い位置で簡単にドリブルやミドルシュートを許し、フィニッシュに持ち込まれる。特にドリブルに対しては、あまりにも無防備だった。ヴュルツブルガーには、強力なドリブラーがいる。それを知らなかったかのような杜撰(ずさん)な対応は、スカウティングの不備を咎められても仕方ない。
センターバックのパバールに中盤の底を任せた判断も、結果的に“悪手”だった。狙いは守備の強化だが、自陣のペナルティエリア付近での軽率なドリブルをカットされ、先制点をプレゼントした。
2試合連続で攻守に限界を露呈し、ヴォルフ監督の手腕には疑念が募る。ただ、同情の余地もある。まだ35歳、トップチームを率いるのは初めてだ。シーズンの途中での就任では、じっくりと戦術を浸透させる時間もない。それに充てられるウインターブレイクを、指揮官は心待ちにしていたはずだ。
守備の改善は後半戦への吉兆
報道によれば、ウインターブレイクでは攻守のバランスを修正。ヴォルフ監督は「組織として良化した」と、特に守備の改善に手応えを掴む。実際、1月はケルン、デュイスブルク、ローザンヌ・スポルト(スイス1部)との練習試合に臨んだが、全て無失点。新たに採用した4-1-4-1も機能した。リーグの前半戦では、得点が2位、失点が11位と守備陣が足を引っ張っただけに、明るい兆しだ。
一方で、攻撃は3試合で1得点と不発。しかし、ヴォルフ監督はキャンプによる疲労や試合勘の欠如などを指摘し、テロッデ、マネ、浅野を軸とするアタッカーに信頼を寄せる。素質を高く評価されながら、度重なる怪我に悩まされてきた大型FWのギンチェクも、ヴォルフ監督のキメ細やかなサポートを受け、いよいよ臨戦態勢が整いつつある。移籍市場でバイエルンから期限付きで獲得したFWジュリアン・グリーンも、スピードや突破力に長けた有望株だ。
バイエルンから期限付きで獲得したグリーン
立て直すための時間は、十分に与えられた。29日に再開するリーグ戦では、敵地で最下位のザンクト・パウリと対峙する。内容を伴った勝利で上昇気流に乗るか、3連敗を喫して混迷を深めるか。ヴォルフ監督が、シュトゥットガルトが、岐路に立つ。
<シュトゥットガルトの主な選手と基本布陣>
4-1-4-1や4-2-3-1、4-3-3を基本に、3バックも使われた。GKはランゲラク。ポカも少なくなかったが、それを補って余りある好守でチームを救った。両CBは対人戦に強いが俊敏さに欠ける。右SBは攻撃的なグロスクロイツ、中庸のクライン、守備的なパバールと多彩。左SBのインスーアは超攻撃型で、ドリブルでチャンスを切り拓く。いわゆる「アンカー」の役割は、軸と目された細貝の離脱が長く、主にツィマーマンが担った。
ゲントナーはキャプテンで、攻守にそつがなく、運動量も多い。テクニシャンのマキシムは、好不調の波が激しかった。テロッデ、マネ、浅野のトライアングルは不動。いずれもタイプが異なり、親和性が高い。序盤は左サイドにヴェルナーが起用されたが、怪我で離脱。合流が遅れ、スーパーサブからスタートした浅野が結果を出し、ポジションを手中に収めた。
■予想以上の善戦。3位以内も夢ではない (フォルトゥナ・デュッセルドルフ 8位 勝ち点27)文・かばちゃん
執筆者提供フォルトゥナ・デュッセルドルフの2016-17シーズンの前半戦は、14位でのフィニッシュとなった。12-13シーズン以来の1部での戦いを目指したものの、まさかの残留争いとなった昨シーズンを考えると、ここまでの戦いは予想を遥かに上回った。
昨シーズンの核であったデミルバイ、ポーヤンパロがレンタル終了、サラレル、ハグイといったレギュラーの選手も去っていった中、まず今シーズン、補強としてシャルケからアイハン、シーズン途中には14-15シーズンの2部の得点王のヘニングスをバーンリーよりレンタルで獲得した。
開幕戦からザントハウゼン相手に2点のビハインドを追い付くドローでスタートすると、1部からの降格組のシュトゥットガルトを相手に、ホームで1-0勝利と健闘。最終的に前半戦は8位でフィニッシュし、負けた相手もニュルンベルク、ハイデンハイム、ドレスデンなど上位陣のみであった。
後半戦に向けて、フォルトゥナはボーフムからU18ドイツ代表のギュル、ハノーファーからアンドレ・ホフマンを獲得。戦術面では前半戦は、センターバック、ボランチのスタメンが定まっておらず、組み合わせを模索している最中とも言えた。最後は4試合勝ちなしで終わったものの、失点はハノーファー戦の2失点、それ以外は1失点と安定してきているように思える。これを固定することができれば守備も安定し、後半戦の躍進も期待できる。勝ち点が取れなかった相手から、勝ち点を取れるようになれば、3位以内も夢ではないと思う。
■GKの怪我と失点の多さに苦しむ (エルツゲビルゲ・アウエ 17位 勝ち点13)
文・神様仏様ミニョレ様今シーズンのアウエの前半戦についての振り返りと、後半戦の展望について書いていこうと思う。
まずは前半戦についてだが、率直に言うと上位ディビジョンでの戦いの厳しさを思い知らされるものとなってしまった。3部での2015-16シーズンでは、42得点21失点とまずまずの成績を残しており、多少の希望的観測でもあったが、2部でも下位に低迷するようなことはないであろうと思っていた。シーズン当初は、まだ負けが多少多くてもしょうがないと、ある程度割り切って試合を観ていられたが、第9節のザンクト・パウリ戦を最後に、8試合勝利がない状態となってしまっている。得失点も17得点32失点と、攻守にわたって苦戦しており、上位ディビジョンでの戦いの厳しさを突き付けられているような格好となっている。
チームとしても、負け癖のようなものがついてしまっているような印象があり、追いついてもまた失点してしまう、先制してもリードを守りきれないような試合が多々見られた。また負けが込んでいるせいか、選手たちが試合中にカッカして、カードをもらってしまうシーンも多く見られている。
第6節のビーレフェルト戦では、キャプテンでGKのメネルが負傷退場して、長期離脱を余儀なくされてしまった。彼の離脱中、チームは25失点を喫している。このこともアウエの前半戦の不調の大きな原因と言えるだろう。
後半戦はどうなるかということに関してだが、このままの流れでシーズンを終えるような形になれば、非常に残念だが降格は免れないだろう。なんとか降格を避けるには、まずディフェンスの立て直しが急務と言える。究極の話、サッカーというスポーツは、失点さえしなければ必ず勝ち点をもらえるスポーツなので、復帰したメネルと共に、どう守備を立て直すのか、監督のドチェフの手腕が問われることになる。
攻撃陣ではケプケがU21のドイツ代表に選ばれたので、より決定力に磨きがかかり、彼の1トップのフォーメーションを好んで使用しているアウエは、少なからず恩恵を受けることになるだろう。しかしそれは同時に、代表ウィークにエースFW不在で試合をすることが増えることを意味し、さらにケプケにも代表での疲労、怪我のリスクも出てきてしまう。
またケプケの1トップは、彼の調子に得点が入るか否かが左右されてしまう諸刃の剣のフォーメーションでもあるため、クヴェシッチ、アドラー、スカラティディスなど、他の攻撃陣選手の奮起がなければ、依然として得点不足に悩まされてしまうことは間違いないだろう。
そして、この記事の公開前に後半戦1試合が終了した。アウエは4位のハイデンハイムとホームで対戦し、90分にナザロフの勝ち越しゴールで勝ち点3を獲得した。この試合のみの感想としては、ウインターブレイクで、山積していた問題がかなり解決されていたように見えた。またエースのケプケもしっかり得点を取り、守備の大崩れもなかったという、多少なりとも楽観できる材料が発見されたのはファンとして嬉しい限りだ。上位相手の劇的な勝利だったため、未だに降格プレーオフ圏内ではあるが、今週だけは手放しで喜んでもいいかなと思える内容だった。
今はこんな問題だらけのチームだが、もちろん私は応援しているし、まだ立ち直れると信じている。なぜ好きになったかと言うと、とても単純で、3部の頃の試合でスーパーゴールを見た。本当にそれだけである。中央から右サイドに浮き玉のパスが出るまでは、サッカーでよくあるシーンの1つだった。しかしそのパスにダイレクトで合わせて、中央に弾丸のようなクロスが飛んで、結果それがアシストとなり得点に結びついた。そのシーンを見た時に、これは面白いチームがいると感じ、そこからアウエを応援し続け現在に至っているのである。
できることならば1部に上がり、もっと日本の皆さんにも選手や熱いサポーターについて知ってもらいたいが、今はまだまだマーケティング以前に我慢の時期であることは、ファンも選手も百も承知のはずである。そしてできることなら死ぬまでに、1部で優勝するシーンを見られる日が来ることを祈るばかりである。
■チーム完成度の高さで昇格を狙う (ハイデンハイム 4位 勝ち点29)
文・かめゆみこ
2部の中でも名前の知られているクラブもあれば、そうでないクラブもある。日本人選手がプレーしているチームはもちろんだが、1860ミュンヘンや、ボーフムなど、かつて日本人選手が所属したチームも、名前を耳にしたことがあるかもしれない。2部の中でも1.FC ハイデンハイムはかなり地味な存在だと言える。そんなクラブが注目を浴びたのは、2013年に製作された「Trainer!」という映画だ。3人の監督の1シーズンを追いかけたドキュメンタリーで、中でもハイデンハイムのフランク・シュミット監督は強烈な印象を残す。横浜フットボール映画祭での上映が予定されているので、これでハイデンハイムが少しでも知られるようになると嬉しい。
2016-17シーズンの前半を終了し、ハイデンハイムは8勝4敗5分、勝ち点29の4位で折り返した。3位シュトゥットガルトとの差はわずか2ポイント。昇格も十分狙える好位置につけている。ただしまだ「Aワード」つまり「昇格(Aufstieg)」の話はタブーのようだ。ハイデンハイムは13-14シーズンに3部で優勝し昇格している。この時の2位はRBライプツィヒ、3位はダルムシュタットだった。両チームとも現在1部でプレーしていることを考えると、負けず嫌いなシュミット監督が昇格を考えていないわけがない。
昨シーズン、10ゴール9アシストと活躍したライペルツをシャルケに買い戻され(その後インゴルシュタットへ移籍)、得点力の低下が心配されたが、フライブルクからレンタルでティム・クラインディーンストを獲得。ドイツU20でもプレーする194センチの大型フォワードだ。
クラインディーンスト(ブンデスリーガ公式より)
クラインディーンストは3部のコットブス時代にブレイクし、昨シーズン、2部だったフライブルクに移籍。残念ながら大きな怪我もあって、出場機会には恵まれなかった。今季レンタルでハイデンハイムに加入すると、第9節のフュルト戦での右膝内側靭帯損傷による離脱まで、3ゴール3アシストと活躍、チームを2位まで押し上げた。第16節のウニオン・ベルリン戦で怪我から復帰し、さっそくゴールを挙げている。高さを生かしたヘディングのみならず、スピードもあり、プレーは柔軟。フライブルクやハイデンハイムのようなチームで、高い戦術理解も備えることになると、今後がますます楽しみな選手と言える。
もう1人、注目して欲しい選手はキャプテンのマルク・シュナッテラーだ。
マルク・シュナッテラー(Margarete Steiff facebook)
08年からこのチームでプレーする31歳のベテランは、前半戦17試合で7ゴール6アシストと安定した活躍ぶりを見せている。14-15シーズンに、現フライブルクのニーダーレヒナーと組んでいたコンビが非常に印象的で、2人の破壊力はリーグでもトップクラスだった。セットプレーからのボールや、ダイレクトで素早く上げるクロスの精度は高い。試合開始時は左サイドハーフだが、かなり自由にポジションをとる。第14節ザンクト・パウリ戦で、フェルホークとのパス交換から決めたシュートは、シュナッテラーらしいゴールだった。バランス感覚とボール扱いのうまさはこちらの映像でも証明済みだ。(ヘディングでボールを回しているのがシュナッテラー)
https://www.youtube.com/watch?v=F7ABE5ZbeEI
基本的なフォーメーションは4-4-2。第11節のボーフム戦以外は、すべてドッペルゼクサー(ダブルボランチ)で、組み合わせはほぼグリーズベックとティッシュ・リフェロの2人だ。どちらもカバーリングに優れ、最終ラインに持ち込まれる前に素早くコースを限定する。
ハイデンハイムはイエローカードの少ないチームで、むやみに1対1に持ち込まず、タックルも比較的少ない。チームの守備はよくアグレッシブと表されるが、ガツガツと当たりにいくことがこの言葉の意味ではないという好例を示す。ただしDFBポカール2回戦で、マリオ・ゴメスに得点を許した時のように、フィジカルで対峙すると不利になることもある。
ディフェンスラインは、真ん中にベールマンとヴィテックが不動のスタメンをとる。冬にレンタルでインゴルシュタットから加入したヴァールが、固いスタメンの壁に対し、どこまで違いを見せられるか興味深い。
サイドバックはシュトラウスとファイクがファーストチョイスのようだ。レバークーゼンからレンタル中のベッカーや、ハイデンハイムユース育ちのシュカルケなど、楽しみな若手も多い。
ハイデンハイムでもう1つ注目して欲しいのはマスコットのパウレ。クラブの集合写真にも一緒に写る人気者だ。
ハイデンハイムのスタジアムから南へ10キロの場所に、テディベアのぬいぐるみで有名なシュタイフの生まれ故郷・ギンゲンがある。パウレもよく見ると、耳にシュタイフのボタン・イン・イヤーと黄色いタグがついている。夏のシュタイフ祭りでは、敷地内で選手たちのサイン会も開かれた。1.FC ハイデンハイムとシュタイフは、どちらもこの自治区の誇りなのだ。
■主力移籍による得点力不足が影響 (VfLボーフム 11位 勝ち点22)
文・BOJP
ボーフムはここまで11位につけている。昨季の最終順位5位と比較すると物足りなさを感じるが、要因は昨季までのチームの得点源であったテロッデが抜けた穴を埋めきれていないこと、怪我人が続出して特に守備での安定感を欠いていたこと、この2点だと思う。昨季2部で得点王に輝いたFWのテロッデ、攻撃的MFのブルト、ハーベラー、テラッツィーノといった攻撃陣のレギュラーメンバーが、そっくりそのままいなくなってしまった。活躍した選手が他クラブに引き抜かれることは避けられないことではあるのだが、昨季はこの4人で合計して37ゴール29アシストを記録しており、その穴を埋めるのは容易ではなかった。
新たに獲得したヴルツ、ヴァイラント、シュテーガー、クバシュナーは非常に良い選手であり、攻撃的MFの抜けた穴は埋めたと言える。しかし今季のチームに決定的に欠けているのは得点能力である。やはりテロッデの移籍による戦力ダウンは大きかった。
今季の1トップはムラパが務めることが多かった。彼のスピードやフィジカルの強さを生かした突破力は素晴らしいが、センターFWが彼の適性に合っているかどうかは疑問である。試合を重ねるごとにポストプレーは良くなってきているが、得点力には不満を感じる。新加入のヴルツはセンターFWタイプではないし、クバシュナーも将来性は感じさせるが、まだ未熟な点が多い。その結果、今季のボーフムはそれなりに多くの決定機を作りだすものの、ゴールを決める力に欠け、内容で相手を圧倒していても勝ちきれない試合が少なくなかった。
守備に関しては、元々が選手層が薄かったにもかかわらず、満足な補強ができなかった。いや、そもそも補強ポイントとは考えていなかったようにも見受けられる。
特にCBはこのポジションを本職として実績のある選手が、バスティアンスとファビアンの2人だけになり、しかもファビアンは十字靭帯損傷の大怪我で長期離脱中。ボランチやサイドバックを本職とする選手をCBとして起用して対応していたものの、両SBにも怪我人が続出、ギュル、ライチュなどのように、まだトップチームの選手として公式戦に出場経験がない17歳、18歳の若手を起用して窮地を凌ぐ形となった。
ボーフムは毎試合のようにつまらないミスから失点を繰り返し、無失点で試合を終えたのは第16節の1860ミュンヘン戦だけである。せっかく試合を優位に進めていても、肝心な所でミスから失点を喫し、勝てる試合をドローにしてしまうことが多かった。
比較的選手層の厚い攻撃的MFにも怪我人は多く、特に序盤でチャンスを演出する役目を担っていたシュテーガーとアイスフェルトが今季絶望となったのは痛い。ただその一方で、多くの選手が実戦でのプレーを経験できたことは、今後に向けての収穫と言えるのではないだろうか。特にサーラムやライチュなど若い選手にとっては自信になったはずである。
リーグ戦後半への期待
リーグ戦後半は戦線離脱していた選手が戻ってくるので、守備は安定してくるものと思われる。確信を持って言えるだけの根拠があるわけではないが、そうなることを信じたい。幸い中位以下は未だに混戦となっており、ボーフムにも上位に浮上するチャンスはまだ残っている。昇格はさすがに厳しいが、6位あたりまで順位を上げることは十分に可能であろう。
2014-15シーズン途中にフェルベーク監督が就任して以来、ホッホシュテッターSDは中期的な目標として1部復帰を掲げている。中期的というのは5年を目途ということのようで、その通りであるなら、来季あたりは本格的に昇格争いを加わっていかなくてはならない時期だ。
そのためには、フェルベーク監督のサッカー哲学を、控え選手を含めたチーム全体へより一層浸透させることが必要となる。来季以降のことも考えて、リーグ戦後半の戦いを無駄にはしないで欲しいと思う。
■条件が揃えば昇格も夢物語ではない (デュナモ・ドレスデン 7位 勝ち点27)
文・ゆんゆん
2部に返り咲いた初年度にして首位と7ポイント差の7位は大満足の結果だ。夏のマーケットで3部優勝の原動力となったアイラース、ヘフェレらを失い、モルに至っては同カテゴリーのブラウンシュバイクに移籍。対して補強はフリーエージェントや期限付きでの加入ばかりとクラブの金回りは芳しくない。
苦しいシーズンとなることが予想されたが、蓋を開けてみれば一時は2位にもつけるなど健闘。ハイライトはシュトゥットガルト戦(5-0)とブラウンシュバイク戦(3-2)の勝利。昇格レースを主導している両クラブ相手に大量得点で勝利したことは、チームにとって大きな自信となった。
とはいえ、多少の不満は残る。ボールを繋ぎ多くの試合で主導権を握るも、創り出した決定機を決め切れずに勝点を落とすことが幾度となく見られた。内容からして「もっとできたはず」というのが率直な感想だ。もちろん、先に述べた通り、予想を上回る好成績ではあるのだが。
前半戦のMVPを挙げるとすれば、やはりアカキ・ゴギアになる。
攻撃陣の中核であるマルヴィン・ステファニアクが、太腿の負傷で11月以降ほぼ全休(中断前最後のビーレフェルト戦で復帰)を強いられても、チームのパフォーマンスが大きく落ち込まなかったのは、このジョージア生まれのアタッカーの活躍によるところが大きかった。左右どちらのサイドで起用されても遜色なく、切れ味鋭いドリブルでチャンスを量産。遠く離れた位置からでも、自らゴールを狙っていく。2試合連続のドッペルパック(2得点)などチーム最多の7得点を記録した。加入1年目にして早くもチームの中心的存在だ(保有権は英2部のブレントフォードにある)。
後半戦、さらに上を目指すには攻撃の効率向上が必須。チャンスを潰しすぎだから、取り零しを少なくしようということだ。言ってそれができれば、どのチームも苦労はしないのだが。昨季18得点を挙げエースとして期待されたパスカル・テストロートは、そうした意味で象徴的な選手である。
この前線には、十字靭帯を断裂して以降フリーエージェントとなっていたマルコス・アルヴァレスを加えている。年代別ドイツ代表経験もあるシャドーストライカーだが、主だった実績は3部リーグのみと未知数。前半戦好調だったシュテファン・クチュケを含めFW陣の奮起に期待したい。
その他、マルク・ヴァクスが負傷離脱したレフトバックに、シュトゥットガルトで出場機会を失っていたフィリップ・ハイゼを補填。残りのシーズンを乗り切る陣容は整った。
浮沈の鍵を握るのはマルコ・ハルトマン。精神的主柱であり、中盤の底で危険の芽を摘み取り続ける屋台骨で、若きCBコンビがやや不安定な最終ラインには彼のサポートが不可欠だ。万が一のことがあれば、その影響はステファニアクの離脱時の比ではない。
代替不可のキャプテンの存在と得点力向上という条件が揃えば、1部昇格も決して夢物語ではないだろう。若き2人に注目
最後に、注目して欲しい選手を紹介する。
1人目は、マルヴィン・ステファニアクだ。年代別ドイツ代表までチェックしているファンであれば、ディナモの試合を観ていなくとも説明不要だろう。左サイドを主戦場とする時代が求めし万能型MFだ。
得点センス、ドリブル、スピード、パス、どれをとってもハイレベル。身長の割に空中戦にも強く、巨漢FWのクチュケよりもボールを収められる。守備の貢献度も高い。キッカーとしても優秀でそのFKはチームの重要な得点源。2部で今最も注目を集めている若手の1人だ。地元ザクセン州出身で16歳でディナモに入団した生え抜きだが、すでに今夏のウォルフスブルク移籍が決まっている。来季1部に彼が姿を現すのはほぼ確実なのだ。今年の暮れには彼が大きな話題となっているかもしれない。先取りする意味でもこの東ドイツが生んだ天才のプレーに注目して欲しい。
もう1人、若い生え抜きの選手を紹介しておきたい。二クラス・ハウプトマンは12歳でケルンからディナモのジュニアユースに移り、昨季トップチームでデビューを果たした。精密なキックとリズミカルなドリブルが光るセンターハーフである。
第11節のブラウンシュバイク戦、自陣内でボールを奪うとステファニアクとのパス交換を挟み、流れるようなドリブルで相手選手をゴボウ抜きにしてフィニッシュまで持ち込み、見る者の度肝を抜いた。続くデュッセルドルフ戦で開始直後に左足を一閃、トップチームでの初ゴールを挙げる。僅か25秒の早業であった。デビューから瞬く間に定位置争いに名乗りを上げた20歳の逸材に期待は高まるばかり。”ステファニアク以後”の時代を担うのはきっと彼になるはずだ。
~My Opinion~
2部から見たRBライプツィヒ文・かめゆみこ
ラーゼンバルシュポルト・ライプツィヒが2部にいた2年間は、ファン文化の観点からも非常に興味深いシーズンだった。試合のたびに、ウルトラスを中心とした対戦相手のサポーターが、激しい抗議活動を展開した。個人的にはやり過ぎと感じることも多々あったが、これらの活動には、金の力で強くなることへの反発だけではなく、根底にドイツサッカーの理念を守るという気持ちがあったことはわかって欲しいと思う。
今や旅立っていったRBライプツィヒを下から眺めるだけとなったが、2部時代にあった圧倒的な違和感は、1部ではずいぶん希釈されたように感じる。資金、コンセプト、能力。3つのCがRBライプツィヒ成功の秘訣だと、スポーツディレクターであるラングニックは語る。確かに1部に置くと、そこに相応しいチームのようにも見えてくる。2部時代、サッカーはマーケティングツールではないという抗議活動に共感したものの、今では明確なビジネスモデルとサッカーのスタイルに、抗えないものを感じるのも事実だ。
ドイツのプロサッカーチームは、もともと地域にある体操クラブ内のサッカー部から生まれたものが多い。その地に根差したスポーツクラブは、少額の会費で誰でも参加することができた。それに伴い、地方自治体の所有している施設の使用権や優遇税制といった恩恵が与えられた。日本で言うところの社団法人に近い非営利団体である。今でも会費を払った人達が参加し、自分達の力で運営するという、設立時の理念を引き継ぐ。
この枠組みを支えるため、ドイツサッカーリーグ機構には、元になる組織に51%の所有権を定める「50+1」という規定がある。設立母体以外の参入者は、20年間は単独での会社支配が難しく、これがイングランドなどと違い、外国企業や資産家のブンデスリーガへの参入を阻んできた。
1部のクラブで、未だに社団法人の形がそのまま残っているのは、シャルケやフライブルクなどの4つ。それ以外はトップチームをスピンオフし、会社化しているところばかりだ。母体の非営利団体が利益を生み出す株式会社を所有するという構造である。2部になると、オリジナルのままの形で運営しているクラブの数が一気に増える。ウニオン・ベルリン、ボーフム、デュナモ・ドレスデン、ザンクト・パウリ、ハイデンハイムなど18チーム中12チームがそうだ。
RBライプツィヒが3部から2部に上がる時に、ライセンス付与を巡ってリーグから出された条件は、ロゴデザインの変更と異常に高い年会費の改訂だった。これにより地域の人々の参画が可能になるはずだった。
しかし、それから3年以上経った今でも会員数は増えていない。ブンデスリーガの公式によると600人(ちなみにバイエルンは27万329人)。ラングニックは、クラブの会員数はチームの戦略的な決定に何の影響も及ぼさないし、時代遅れの枠組みだと主張する。影響を及ぼさないのであれば、入会条件を下げて数を増やす努力をしてもいいようなものだけど。
実のところ「50+1」は今や形骸化し、リーグはレッドブルのような参入を黙認しているようにも思える。RBライプツィヒに隠れて、日本では目立たないが、1860ミュンヘンもその手法が多くの批判を浴びているクラブの1つだ。トップチームはすでに株式を発行しており、11年に1人の投資家が60%の「議決権」を1800万ユーロで取得した。しかし書類上は出資比率の51℅を、母体である社団法人が所有していることになっている。
2部のハノーファーもまた、資産家の支援を受けているクラブの1つである。「50+1」は、継続的にクラブに貢献し続けてきた企業及び個人が、20年を超えた時点で適用外になる。これは長年レーバークーゼンとウォルフスブルク限定の例外措置だった。
しかしハノーファーのキント会長はリーグに働きかけ、20年間メインとなって継続支援を続ければ、誰でも過半数を超えて所有できるよう改定することに成功した。そして今年、彼はついにその20年目を迎える。
RBライプツィヒが台頭する前、同じような批判の矛先はホッフェンハイムに向けられていた。しかし会長のホップは、長年にわたり多額の資金をクラブに注ぎ、今やホッフェンハイムの育成部門が高い評価を得るだけではなく、優秀な監督をトップチームに送り出すまでにもなった。ホップは現在、トップチームの株式を96パーセント所有しているが、このことは2015年にリーグが承認している。
ホッフェンハイムやハノーファーのように正攻法で行くのか、あるいは抜け道を探るのか。いずれにせよ、今後、クラブの資本のあり方に見直しが必要となることは避けられないように思う。その時、ドイツサッカーの文化は変わるのか、そのままであり続けることができるのか。そんなことを考えながら、今日も2部の試合を見ている。
次回へ続く
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