W杯ベスト16の守護神の“実像”
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W杯ベスト16の守護神の“実像”

2014-07-02 22:30

    FIFAワールドカップブラジル大会はGKに好プレーが相次ぎ、勝敗を左右した試合も多い。コスタリカの躍進は、ナバスが文字通り“守護神”と化したからだろう。メキシコのオチョア、ナイジェリアのエニュアマ、ドイツのノイアーらも強烈な存在感を放った。GKには「手を使う」という共通項こそあるが、スタイルは千差万別。身体的な資質、あるいはメンタリティによって大きく異なる。しかし、メディアの評論は往々にして「反応が良い」、「ハイボールに強い」、「守備範囲が広い」、「足元が巧い」など“紋切型”で、個々の特徴を捉えづらい。そこで、決勝トーナメントに進出した16カ国のGKを“GKの目線”で掘り下げて、長所や短所を明らかにする。

    ○最盛期を彷彿させるジュリオ・セーザル

    ブラジルのジュリオ・セーザルは、動き出しや横へのダイブが極めて速く、鋭く厳しいコースに飛んだシュートにも間に合う。近年は衰えからか信じられないミスを犯すようになったが、今大会では「世界最高」と目された最盛期を彷彿させる。ハイボールの処理は少し怪しいか。

    チリのブラーボは、軽やかな体捌きが印象的。ペナルティエリアを広く使える機動力があり、DFの裏を狙うボールや左右からのクロスを無効化する。パスを振り分ける技術も高く、バルセロナが目を付けたのは頷ける。セービングもキレがあり、遠いコースに付いていける。

    コロンビアのオスピナは、南米のGKに特有のバネがあり、手足の“伸び”は多くのシューターを驚かせる。中でも下方向の“塞ぎ方”は角度とタイミングが良く、通過を許さない。かつての守護神・イギータとは180度異なり、プレーの選択はオーソドックスだ。

    ウルグアイのムスレラは、ハイボールに絶対的な自信を持ち、単純な放り込みは絶好の獲物だ。人と人の間をすり抜けるようなステップが、それを可能にする。190cmと大柄ながら、動きによどみがない。ややアバウトなポジショニングと、DFとの役割分担の不足は課題だ。

    ○今大会のベストはコスタリカのナバス

    コスタリカのナバスの最大の良さは、俊敏さと的確な判断力に裏打ちされた飛び出しで、1対1やハイボールには滅法強い。反応やポジショニングも一級品。シュートストップは安定している。常に落ち着いており、ミスが非常に少ない。今大会での貢献で評価すれば、ナンバーワンだろう。

    メキシコのオチョアは、やや身体能力や勘に頼るきらいがあり、集中力の欠如や過信から凡ミスを犯すが、当たり出すと止まらない。しなやかさを生かした横方向へのセービングは高いレベルにあり、近距離からのシュートに対してギリギリまで我慢できるのも強み。ハイボールの対応は、やや危うい。

    ギリシャのカルネジスも平均点が高い。長身を存分に使って、広いエリアをカバーする。空中戦も地上戦も堅実で、危ない橋を渡ってのミスは皆無。派手さはないが、味方に安心感を与えられる。

    オランダのシレッセンは、経験不足からか判断やポジショニングに甘さが見える。セービングも平凡で、物足りない。オランダ人らしい足元の上手さはあるが、強調する材料に乏しい。

    ○リベロのようなノイアー

    フランスのロリスは、シュートの高低を問わず正確かつ素早く対処でき、制空能力にも優れている。若くして台頭したが、年齢を重ねるうちに安定感が向上。足元でのコントロールやパスは標準的で、対峙する相手を怯ませるような威圧感にも欠けるが、世界的な名手と言える。

    ナイジェリアのエニュアマは、身体能力では大会ナンバーワン。驚異的な反応と、チーターを想起させるバネや柔らかさで、決定的なシュートを弾き出す。守備範囲も広い。ただ、身体能力が傑出している分、ポジショニングや判断力にアバウトさがあり、揺さぶられると脆さも顔を覗かせる。

    ドイツのノイアーは、現代のGKに求められる資質を全て持つ“理想型”。大柄ながら硬さや鈍重さとは無縁で、伸びのあるセービングで上下左右の全てのコースを封じる。守備範囲は非常に広く、DFの背後を完璧にカバー。飛び出しの速さやタイミングの良さは感嘆に値する。足元も抜群に巧い。

    アルジェリアのエムボリは、ズバ抜けた技能はないものの、セービングは手堅く、ハイボールへの対応やキックも上々。計算できる職人肌のGKと言える。ちなみに、2008年にはFC琉球でプレー。日本と縁がある。

    ○横方向に比類なき捕捉率を誇るハワード

    スイスのベナーリオは、194cmと大柄ながら俊敏で、特に中長距離からの速いシュートを止める技術は卓越している。反応も抜群で、近距離戦にも隙がない。独1部でも指折りの実力者だ。ただ、稀に迂闊なプレーから失点を喫する悪癖を持ち、日によって足元のコントロールやフィードにバラつきがある。

    アルゼンチンのロメロは、難しいプレーを選ばず冷静かつ確実にシュートを止める。192cmと長身でハイボールに強く、アンダー世代から代表を務めるだけあって豊富な経験に基づく判断も正確。モナコで出場機会を得られず試合勘が心配されたが、GSでは全く問題なかった。

    アメリカのハワードは、横方向へのシュートに対して比類なき捕捉率を誇る。速さや強さに頼った単純なフィニッシュは通用しない。若い頃は身体的な資質に頼りポジショニングや判断が悪く、ボーンヘッドも少なくなかったが、年齢を重ねるうちに磨かれ、解消した。

    ベルギーのクルトワには、次代の世界一を狙える非凡な才がある。鋭い反応と199cmのサイズを目一杯使い、際どいコースもシャットアウト。これだけの長身ながらステップワークは滑らかで、腕や足を使ったストップにも窮屈さは感じられない。22歳とは思えない冷静さも備えている。



    <編集後記>

    大半は「ツイッター」でのツイートをそのまま使っていますが、ブラジル、チリ、コロンビア、ウルグアイの4カ国は抜けていたため、ブロマガの執筆に伴い足しました。ありきたりでなく、かつマニアックになり過ぎないように調整しながら書いたつもりですが、いかがでしょうか。

    決勝トーナメントの2日目以降に登場した国のGKは、試合前に寸評を公開しました。コスタリカのナバスやドイツのノイアー、アメリカのハワードらの活躍、エニュアマのミスからの失点などは、それなりに寸評が当たっていると思います。4日目に「見劣りする」と書いたロメロも不安定でしたしね。

    個々の評価はあくまでも私見であり、絶対ではありません。ただ、長くGKを務めている人間として、そう大きく外してはいないはずです。

    本当は、PKの巧拙や駆け引きについても書きたかったのですが、仕事が忙しく断念しました。基本的に「動き過ぎる」タイプは逆を突かれやすく、PKを苦手としています。実は、南ア大会の川島は動き過ぎるタイプで、パラグアイの選手は決めやすかったでしょう。その反省からか、次に川島をPK戦で見た時には「ぎりぎりまで動かずに待つ」タイプに変わっていました。とても印象に残っています。

    このブロマガが、GKを見る楽しみの一助となれば幸いです。


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