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【第45回】cubic3
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【第45回】cubic3

2013-11-17 13:00

    タイトル:cubic3
    作者:グロビュール
    ジャンル:????
    公開:2005年


    ~ノベルゲームの可能性を広げた前衛作品~

     弟切草を開祖として、ノベルゲームが生まれてすでに20年が経っている。この間、文字で読ませるという基本的なスタンスには何の変わりもない。ノベルゲームはゲームではないと言う人も多いが、このような意見が出るのも、読むだけの作品はシステム的に仕掛けを施しにくく、きわめて進化性に乏しいからだろう。20年でグラフィック、演出に関しては目まぐるしい進歩を遂げてきたのだが、もはやノベルゲームの発展は限界に来ていると思われた(例外として『ひぐらしのなく頃に』の、一度に答えを出さずプレイヤーに推理してもらうという手法は、とても画期的だった)。

     そこで現れたのが『cubic3』というノベルゲームだった。真っ暗な場所で、記憶を失った状態で目覚めた「僕」がプレイヤーに語りかけるようにしてテキストが進む。暗闇の中で出会った「そいつ」と周囲についての怪奇を淡々と語るという、それだけの流れだ。しかし、選択肢により時系列と語り手が変化するというのが、これまでのノベルゲームになかった仕掛け。サイトから引用すると「あのとき、僕とそいつは、何をしたのか。そして僕は、その話を誰に、いつ話しているのか」。プレイヤーはこれをパズルのように当てはめながら、その難しさに頭をクラクラさせながら、結末まで導かれる。

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     時系列や語り手をバラバラにして最後にピタリとすべてを収束させる作品は、小説ならば上遠野浩平の『ブギーポップは笑わない』などがあるが、これは本だから表紙からエピローグまで通しで読むという決まりには逆らえない。しかし『cubic3』の場合、選択肢の存在によって「ここから最初に読むべき」という決まりすらない。言わば道しるべのないテキストの迷路である。しかも語り手が変わるのに 語り口が変わらないのが困難に拍車をかけている。これはプレイヤーに作品世界を容易に理解させないために意図的にやっていることだろう。

     とにかく複雑で読解が難しく、最終エンディングを迎えてもわからない人が多いと思う(私自身も最初そうだった)。だがいったん理解できれば、その計算しつくされた物語の絡み合いの感触に、妙な心地よさを覚える。

     ストーリー自体はそうたいそうでもなく(トンデモ系?)、驚くような感動に満ちているわけではない。はっきり言って万人に受けるタイプの作品でもない。しかし本作が示した手法は、間違いなく斬新だった。このシステムで長編を作ったら、とてつもない傑作が生まれそうな気がする……と思っていたのだが、やはり誰も挑戦しようとはしていない。最初からそんなことは無理だったのだろう。
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