老後破産をする人が、高齢者世帯全体の約4割に達しているという調査結果が出ています。老後に破産するとはいったいどういう状況なのでしょうか。また今から備えておくことはできるのでしょうか。
老後破産の現状
老後破産の原因は、一つや二つではないようです。いくつかのタイプがあり、それぞれ原因は変わっています。共通していることは、老後の生活でお金が底をついてしまうこと。高齢化社会が生み出した現象であることに間違いありません。
破産してしまう理由としては、退職金やコツコツと貯めていた貯金が老後に患った病気の治療費でなくなってしまった、夫婦二人の年金で暮らせると思っていたのにどちらかが亡くなり年金が減ってしまった、昨今の晩婚高齢出産によって定年後にも教育費の負担がある……などのケースです。このようにさまざまな理由から、年金よりも生活保護を受けた方が月々の収入が高くなるということで破産を選ぶ人が増えているといいます。
どうしてこのような状況になってしまうのでしょうか
本当に必要な老後の費用を自身で計算
世帯主が60歳以上で無職である世帯(世帯員が2人以上)では、1ヵ月の消費支出は約24万8,000円となっています(総務省「家計調査年報(2015年)」より)。また、公益財団法人生命保険文化センターによると、ゆとりある生活費としては平均34万9,000円が必要だとされています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査(平成28年度)」より)。
しかし、この金額の根拠も人によっては合致しません。例えば20代後半で結婚して子どもをもうけ、上場企業の管理職に就いて定年、子どもは大学が私立だったが高校までは公立高校に通わせたとします。このケースの家庭では、貯金をする余裕もあり、子どもたちが独立した後も定年までに数年間貯蓄をする期間もあるため、老後はその貯蓄と退職金で過ごせるかもしれません。
しかし、このようなケースに当てはまる家庭は一体何世帯あるのでしょうか。実際には子どもを幼稚園から私立に通わせたり、高齢になっても養育費がかかったり、自身や親たちの介護や治療費への出費が重なったりと各家庭によって諸問題が引き起こります。
情報は耳にするかもしれませんが、リアルに自身の場合はどうすればいのかを考える必要があります。子どもが一人なのか二人なのかでも大きく違います。夫婦のどちらかが一人っ子で両親の生活環境はどうなのかということも関係してくるでしょう。そこへ自身の生涯収入を想定し、夫婦で入念に試算してみることが大切です。
社会・経済情勢に応じて老後の費用の試算も見直す
大切なことは、変化に気付き常に老後の試算を見直す習慣を付けることです。事業に成功する人や投資で収益をあげられる人には「変化に気付き素早く対応できる」という共通点があります。個人の人生設計も同じです。これほど情報社会が発達している世の中では、流行や傾向、それに伴う経済情勢や法整備等は日々目まぐるしく変化しています。
昭和の時代のように、この保険にさえ入っていれば大丈夫、というような長期的に安心な老後策はありません。貯金以外での資産形成はもちろんですが、保険商品の見直しや金融消費のチェック、持ち家を含めた所有不動産の見直しなど、定期的にこまめに行うことが必要です。
先のことだからと言って気楽に考えてしまいがちですが、ここできっちりと家計を見直し、定期的にその内容をアップデートしていく世帯こそが、年を重ねるごとに着実に安心を得られる構図が定まってくるでしょう。