米ラスベガスや中国マカオといった名前を聞いて真っ先に思い浮かべるのが〝一攫千金〟を夢見る人々が集う「カジノ」だ。日本では認められていないことで海外旅行の楽しみでもある。そのカジノが日本で解禁することに期待が高まっている。
政府がカジノを含めたIR(統合型リゾート)の規制案について示し、実施法案の概要が固まった。これに伴い誘致に名乗りを上げる自治体の競争が激しくなりそうだ。
現状では、北海道(苫小牧・釧路・留寿都)、横浜市、大阪府・大阪市、愛知県、和歌山県、長崎県が名乗りを上げているが、カジノを巡る与党協議の合意内容で認定数の区域を上限3カ所としているからだ。
大阪では2025年の誘致を目指す万博を念頭に置いて予定地として大阪湾の夢州を予定地としている。
愛知県は、中部国際空港島への整備を検討し、長崎はテーマパークのハウステンボスを中心としたエリアでの展開を考えている。3カ所の誘致による経済波及効果は大きい。大和総研の試算として、開発・整備だけで5兆円を超えてIRリゾートの運営だけで年間2兆円弱の経済効果を生むとしている。
与党協議のカジノに関する主な合意内容は、指摘されているギャンブル依存症対策として入場制限を設けて週3回、月単位(28日間)では10回までとした。入場滞在時間は24時間以内を1回としてカウントする。カジノ入場料は6000円も訪日客(外国人)の入場料は無料とした。
カジノの面積制限としては、施設全体の延べ床面積かIR区域総面積のいずれか大きい面積の3%以下とした。3%にとどめたのはカジノがIR施設の一部に過ぎないとの位置づけであることを担保するためだ。シンガポールを参考にしている。
最初のカジノ誘致認定から7年を経過したあとに認定数を見直す予定でもある。
カジノを含めたIRリゾートの成否は、海外から人が集まるかどうかが鍵だと見られている。カネが落ちるかどうかだ。
カネが落ち資金が集まれば経済効果として大きい。資金が流入してこないと資本市場も、不動産市場も潤わないのは言うまでもない。
カジノ解禁でとりわけ恩恵を受けそうなのが、高級ブランドや飲食店などで構成する商業用不動産と投資用マンションだと見られている。
分譲マンションでは、風紀の乱れを背景にしたリピュテーションリスク(評価リスク)を気にする意見もあって不動産大手は慎重な姿勢を崩していないものの、すでに外国人のメッカと化している東京・六本木のマンション(新築・中古)の販売は好調であるため、アジアを中心とした富裕層がカジノ周辺で高級マンションや収益マンションを物色する可能性は低くはない。
収益マンションを購入して民泊として貸し出したり、旅行で自ら滞在する半実需的な使い方が想定されている。
シンガポールは、2010年にカジノを2カ所でオープンしたところ、観光客数は2009年の968万人から2013年には1557万人と3年間で6割ほど増えた。カジノ施設ができたことで周辺のインフラ整備が進んだ。
商業施設の開発も相次いだことで地価とテナントの賃料が150%程度上昇したという試算もある。
米不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールでは、世界的なIR運営会社が日本に着目しており、なかには最大100億ドルの投資金額を用意して興味を示しているという。
ただ、カジノに依存しすぎると危険だ。収益物件としてのリスクを考えておく必要がある。今回の与党合意の内容には7年を経過したあとに見直しが盛り込まれている。
地元経済が潤ったことでカジノ誘致に向けて手を挙げる自治体がさらに増えるかもしれないが、逆の場合、例えば犯罪件数が増えるなど治安が悪くなった、誘致したものの思ったほどの経済効果が得られなかった、となれば逆効果だ。
日本に興味を示していた海外のIR運営会社が日本から撤退となればカジノ経済の勢いはそがれる。仮に自治体がカジノ禁止、誘致表明を撤回となった場合は、カジノ需要を見込んだ収益物件のニーズはゼロになってしまう。
地域経済の起爆剤としてのカジノ期待は大きい。だが、地域に受け入れられる施設となれるかが成功する最大の要因と言っていい。日本人のギャンブルに対する社会的な評価は低い。
政府としても、民泊のように地域から人気のない施設になることは避けたいところだろう。
引用・健美家編集部