【動画に歴史あり】 36, 初音ミクも歌う、くまうた『希少価値』
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【動画に歴史あり】 36, 初音ミクも歌う、くまうた『希少価値』

2013-09-28 13:35


    「初音ミクが来ない?来た?」の最後で触れた「くまうた」への反応動画となります。
    初音ミクはバーチャルアイドル足りえるのかといった命題への挑戦でもありました。

    バーチャルアイドルの条件

    「バーチャルアイドル」という言葉が使われる様になったのは90年代前半かなーと思います。
    「DK-96(伊達杏子)」が思い浮かぶ人が多いかも知れませんが、実際はそれよりももうちょっと前。主にゲームの方面から伸びていきます。
    そのものずばり「ヴァーチャルアイドル」という題名の季刊誌(ムック?)も発行されていました。これは人気が伸びてきて存在感を増しつつあったゲームヒロインと(いわゆる)アイドル声優の専門誌でした。第1号は人気絶頂のときめきメモリアルからヒロインの藤崎詩織を大フィーチャー、声優は椎名へきるだっけかな?丹下桜はもうちょっと後でブレイクするのですが、ラジオときめきメモリアルのパーソナリティを務め頭角を現し始めているような頃。
    この「ヴァーチャルアイドル」という本は実に革新的で今なら違和感無い存在なのですが、当時は時代に対して早すぎました。いわゆるギャルゲーが生まれたのも、ゲームにボイスが付いたのも、アイドル声優なる存在が確立したのも全部1990年代に入ってからのお話ですので歴史もネタの数も少なすぎたのです。
    結局3号あたりで方向性を失ってグダグダになり、5号あたりで休刊となってしまいました。
    しかし、このゲームキャラと声優(ゲームキャラのボイス)という取り合わせは非常に示唆に富んだところだったと思います。

    とまあそんな状況なのですが、その後訪れる LEAF のビジュアルノベルインパクト(雫・痕・東鳩)なども牽引してゲームキャラクターというのはバーチャルアイドルの最前線で有り続けました
    ゲームはストーリー等の牽引もあり強力に感情移入をしてしまうメディアでしたから、キャラクター構成とガチファンの獲得に長けています。ただ、ゲームでのフルボイスが当たり前になったのはもうちょっと後の話ですので正確な意味でのバーチャルアイドルというのには当たらないかもしれません。
    むしろ「ときめきメモリアル」の成功を見て声優とキャラクターソングを真っ先に取り入れた「センチメンタルグラフィティ」によってバーチャルアイドルは模索され、道筋を固めて行ったと言えるかも知れません。
    キャラクターソングという歌がキャラクターに付随するのは2000年代に入って当たり前の事になっていましたが、どちらかというと人気が既にあってそれに付随する形だった気がします。

    そして、バーチャルアイドルを1から作り上げるという難題に挑戦する意欲的な作品が登場しました。2005年アーケード版「アイドルマスター」の登場です。
    アイドルマスターによってキャラクターがバーチャルアイドルである条件が確立したのではないかと思います。
    1. ビジュアル
    2. 設定(性格、シナリオ等々)
    3. 歌声、ボイス、楽曲
    4. モーション(しぐさ、ダンス)
    これらが揃うと、バーチャルであってもアイドルたり得るんだというボーダーを見せてくれました。
    特にアイマスは最後のダンスモーションという新しい要素を確立してくれました。
    「ときめきメモリアル3」で仕草萌えの可能性を開拓し、「ゆめりあ」でモーションの魅力を見せ、「アイドルマスター」でキャラクター要素として完成されていったのです。

    初音ミクは踊るのか

    『初音ミクはバーチャルアイドルになり得るのか』
    発売直後はそんな命題が存在していました。
    初音ミクだのVOCALOIDだの言っても単なる楽器にすぎません、それにキャラクターが付いただけの存在です。
    しかし、このキャラクターにはこれまでの物にはなかった「自由に扱える歌声」が付いていました。ボイスを作り手の方が自由にできるキャラクターなんてそうそうありません。なので、初音ミクは新しい形のバーチャルアイドルになるかも知れないという可能性を秘めていたのです。

    改めてバーチャルアイドルとして見た場合どうすれば良いのか。
    簡単です、既にニコニコ動画上で存在が確立しているバーチャルアイドルの先生「アイドルマスター」をお手本にすれば良いのです。
    ビジュアルはある、歌声もある、楽曲も揃ってきた、じゃあ次に欲しくなるのは動いている姿、『ダンス』でしょう。
    そう考える人は少なくありませんでした。
    二次絵での初音ミクが次々と描かれる中、初音ミクを3DCGとして作成しようという一派が少なくない数で動き始めます。これらのムーブメントは「初音ミク3D化計画」というタグで追うことができます。現在は「VOCALOID3D化計画」と改題されたのでそちらのタグでないと確認できないでしょう。
    見返してみると3D作ろうという呼びかけの三面図動画が 2007/9/10、実際にポリゴンモデリングを始めた人がいるのが 2007/9/13。それ以降は色々な作者が参加してそれぞれのモデルを作り始めます。
    ちなみにMMDと共に後世広く使われるようになる「あにまさミク」の製作開始動画は 2007/9/16 ね。


    結論から言うと、初音ミクが3DCGという体をまとい歌うPVというものが完成したのはキオ式ミクの登場動画である「3D初音ミクに01_balladeを歌わせてみた」であるという認識です。これが 2007/10/4。

    これ以前にも初音ミクの3DCGモデルが踊る動画はあったのだけれども実験的意味合いが強く、完成度の高さなどからこの ballade の動画が「ミク+3DCG+動画=PV」という構造を皆にたたきつけた最初の作品ではないかと思います。

    誰が初音ミクを踊らせるのかというレース

    さて周辺はともかくとして私の方のお話。
    「初音ミクが来ない?来た?」が 2007/9/11 に終わりを迎えほっとひといきです。
    翌日の 2007/9/12 には初音ミクのプロデューサーとして次の可能性試行を始めます。実のところここの時点で十分に人気を確立しており、ほっておいても盛り上がるブーム状態にはなっていました。
    しかし、バーチャルアイドルとしてどうしても「踊り」が必要だと確信していた私は、如何にして初音ミクが歌って踊っている未来絵図を提示するかということを考え始めます。実のところ私が手を出さなくても誰かが3DCGモデルを作り、完成させ、踊る動画が投稿されるのでは無いかと思ってはいました。そこへの到達が早いか遅いかだけで。
    なので、これは「誰が最初に初音ミクをおどらせるのか」というタイムアタックレースなのです。

    この時の私は3Dモデリングはできましたが、人型のキャラクターをスクラッチで作る技量は持ち合わせていませんでした。まあ全くできないわけではなく、やったとしてもなんかクリーチャー的で人に見せられるものにならないというかそういった感じで。
    なので、イチからモデリングを開始しても初音ミクは作れなかったでしょうし、作っている間に誰かがもっとうまく作って最初に踊らせてしまうに違いないのです。
    そこで "POSER" という3DCGアプリと、それ用に売られていた有料モデルの「にあ☆みぃ」(かこみきさんのモデル)を利用することにしました。
    "POSER" 用モデルは OBJ 形式等で衣装モデルを追加することができなくもない、ので「にあ☆みぃ」を素体として初音ミクの衣装モデルを用意してやろうと考えたわけです。今のニコニコ動画用語にいうと「にあ☆みぃ式初音ミクモデル」といったところですか。
    これで完成までの時間を大幅に短縮でき、見栄えもそこそこになるはずです。

    初音ミクの髪型と衣装のモデリングについては、私でもこなすことができました。
    その次の作業は "POSER" に読み込ませて、ボーンの適用とウェイトマッピングなのですが、これが思ったより手間がかかりました。なんせ "POSER" のその機能が貧弱な上に、その時の "POSER" はしょっちゅうクラッシュしてパスパス落ちやがるのです。
    もう本当に切れそうになる思いで何度も何度も "POSER" を立ち上げては少しずつ作業を進めていくしかありませんでした。

    クマへの応援歌

    「にあ☆みぃ」と "POSER" を採用することで何とか初音ミクを踊らせる事ができそうな目処が立ってきました。
    モデル作成と平行してどのような動画を作って踊らせるかということも考えないといけません。
    単純に考えると「アイドルマスター」のモーショントレースなのでしょうが、アイマスはある意味アイドルモーションの最先端、あのレベルのものを真似するには技術も時間も足りません。それに初音ミクは既存の権利関連から離れた世界を作り出す希望でもあるので、著作権版権的にグレーなものを提示しては方向性示唆にはなりません。
    そのような事を考えていたら「くまうた」に目がとまりました。音声合成歌唱の先駆者であるとともに、モーション付き3DCGPVの先駆者でもあります。
    音声も映像もモーションも一世代前のものですけれども、そのぎこちなさを「くまが歌っている」という奇抜な設定でごまかしているという見事さがあります。
    なので、最初の動画は、このクマとデュエットさせることで音声合成歌唱の先輩を立てるというものにしました。
    奇しくも「初音ミクが来ない?来た?」のラストでくまうたも巻き込んでしまったので、そのお詫びという意味でも丁度良い題材だと思ったのです。

    元のくまうた動画にあわせて "POSER" のカメラを作りレンダリングするとか、くまうたを音取りしてミクに歌わせるとか地味に大変でしたがモデル作りに比べればましな方です。
    最初はそのまま歌わせていたのですが、ミクの歌声があまりにも綺麗で面白みが無いので最後の最後で「ちゃちちゅちぇちょ」に変換して幼児言葉っぽくしました。言うまでもなく「とたちつくちて」オマージュであるとともに、ニコニコ向けな「つっこみどころ」でもあります。

    2007/9/18 05:46 投稿。
    こうして、本当に僅差ではありましたが、ニコニコ動画としては初めての「初音ミクがPVとして3DCGで踊る動画」を投稿することができました。
    本当にこれが最初に踊った初音ミクかというと、判断基準が怪しいのですけれども、そのころ団子状態で開発されていた「3DCGで踊る初音ミク」の最初期グループのひとつにはなれたと思います。

    「こうあるべきだ」という、シェアードバーチャルアイドルとしての初音ミクの姿は確実に形となっていきました。

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