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「ホラー映画のベスト3をあげるなら?」というシンプルながらも悩んでしまう質問を、映画関係者・著名人の皆さんにうかがっていく『ホラー通信』特別企画です。

今回は、最新作『ドロメ 女子篇』『ドロメ 男子篇』が公開され、新しいスタイルのJホラーで観客を魅了している内藤瑛亮監督にお聞きしました。内藤監督自身の作品にも大きく影響を受けている映画とは? どうぞご覧あれ!


『ドロメ』公式ページ:http://dorome-movie.com/[リンク]

人生のホラー映画ベスト3 内藤瑛亮編

・『ザ・ブルード 怒りのメタファー』(1987) 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
・『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』(2006) 監督:ロブ・ゾンビ
・『小さな悪の華』(1972) 監督:ジョエル・セリア

<内藤監督のコメント>
小学校の高学年くらいに映画に興味を持って、親が勧めた作品から観ていったんです。映画本を読んでデヴィッド・クローネンバーグ監督を知って、母に「クローネンバーグの映画でいちばん面白いのどれ?」と聞いたら、「そりゃあ『ザ・ブルード 怒りのメタファー』でしょ」と(笑)。今となっては「クローネンバーグ映画の入り口、それじゃねぇーだろ」と思うんですけど(笑)。『ザ・ブルード』はお母さんが怪物的な子どもをどんどん産んでって、その子どもが先生や家族を殺していきます。人を殺すとき、子どもが無表情なのが怖くて、怪物を妊娠しているお母さんのお腹がグチョグチョしているのは、気持ち悪かったです。子どもやお母さんの描写に対する恐怖に、「なぜ母親はこれを僕に勧めたのか」って困惑が混じって、トラウマ作品になっています。『先生を流産させる会』(2011/内藤瑛亮監督作)が完成した後に見直して、怪物的な子ども・妊娠に対する恐怖・先生に対する暴力等、リンクするところが多く、無意識的に大きく影響を受けてました。

『デビルズ・リジェクト』は殺人鬼一家が酷いことをしまくるんだけど、彼らを追い詰める警察や大人たちのほうがだんだん悪者にみえてきて、信念を貫いて闘う彼らのほうがカッコいいし、感情移入しちゃうんです。ラストは泣いちゃいました。一般的な社会規範と、それに抗う者って構図が燃えますよね。映画というフィクションのなかでは一般的な社会規範から解き放たれることが大事じゃないかと思っています。出演しているビル・モーズリーが来日して新宿のビデオマーケットでサイン会やったときはサイン貰いに行きました。

『小さな悪の華』は実際にニュージーランドで起きた少女ふたりによる母殺しをベースにしています。ピーター・ジャクソン監督の『乙女の祈り』も同じ事件を題材にしてるんですけど、こっちのほうが好きです。少女たちが「この世の悪の限りを尽くしましょう」と誓って、悪いことをしまくります。現実の事件では二人は逮捕されて、『乙女の祈り』は現実に沿ったかたちで終わるんですが、『小さな悪の華』は少女ふたりの想いが達成されるんです。現実の記録だけに留まらず、フィクションだからこそできるビジョンを提示した方が映画って面白いんだなって思いました。監督の半生がキャラクターの背景に反映されていて、私的な情念が注がれていることも作品に強度を与えているように感じます。

<内藤瑛亮プロフィール>
1982年生まれ。短編『牛乳王子』で『第一回 学生残酷映画祭』グランプリを受賞。初の長編映画『先生を流産させる会』が話題となる。テレビドラマ『悪霊病棟』やホラーオムニバス『鬼談百景』に監督として参加。2016年は古屋兎丸の原作を実写化した『ライチ☆光クラブ』が公開、3月には二本立ての青春ホラー『ドロメ 女子篇』『ドロメ 男子篇』が公開された。

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