日本のインディーゲームを世界へ発信することを目的に2013年に立ち上がったイベント『BitSummit』は、第3回となるイベント『BitSummit 2015 Return of the Indies』を7月11日(土)から12日(日)の2日間にわたって開催しました。会場は昨年と同じく京都・みやこメッセ。国内外から約80チームのインディーゲーム開発者が作品を出展し、今回も活気あふれるイベントとなりました。
●日本のインディーゲームブームの火付け役となったイベント
2013年の第1回『BitSummit』開催をきっかけに、その後2年で日本のインディーゲームシーンは大きな動きを見せてきました。主要なトピックを挙げるだけでも、
・『LA-MULANA』(NIGORO)が『Steam』で配信を開始
・『東京ゲームショウ』にインディーゲームコーナーが新設
・『Tengami』のNyamyam・東江亮氏と『LA-MULANA』のNIGORO・楢村匠氏が発起人となり開発者コミュニティ『INDIE STREAM』が発足
・稲船敬二氏の新作『Mighty No.9』が『Kickstarter』で384万ドルの資金調達に成功
・『LA-MULANA 2』(NIGORO)が『Kickstarter』で26万ドルの資金調達に成功
・『Airship Q』(ミラクルポジティブ)が『Makuake』で資金調達に成功して注目を集め、サイゲームスから7000万円の出資を受ける
・開発者の交流イベント『INDIE STREAM FES 2014』が開催
・『PLAYISM』が『TorqueL』(FullPowerSideAttack.com)を皮切りにPlayStaitionプラットフォームのパブリッシャー事業を展開
・五十嵐孝司氏の『Bloodstained: Ritual of the Night』が『Kickstarter』で554万ドルの資金調達に成功
といった動きがあるように、開発者コミュニティは活性化し、作品は規模やプラットフォームがさまざまな展開を見せています。出展者やステージ上の登壇者として、上記のプレイヤーがすべて顔を合わせたのが今回の『BitSummit 2015』。「インディーゲームの祭典」の名にふさわしいイベントに成長しました。
●Indie MEGABOOTHのサポートで開催が実現
今回からイベントの運営は一般社団法人として設立した日本インディペンデント・ゲーム協会が担当。キュー・ゲームス、ピグミースタジオ、ヴィテイ、17-Bit、オーツーの5社が協会に参加しています。日本側の運営チームに加えて、今回はIndie MEGABOOTHの開催協力を得られたのが大きなトピックのひとつ。
Kelly Wallick氏が創設したIndie MEGABOOTHは、欧米を中心にインディーゲーム開発者コミュニティの核となり、出展サポートやメディアサポートで開発者を支援してきた団体。約80近くの出展者の4分の1は“Indie MEGABOOTH枠”として海外のインディーゲーム開発者が出展し、会場は国際色豊かな顔ぶれに。海外プレスの呼び水となる効果があったものとみられます。
日本インディペンデント・ゲーム協会でBitSummit実行委員のメンバーであるキュー・ゲームスの富永彰一氏によると、今回の『BitSummit』は一時期開催が危ぶまれたものの、Indie MEGABOOTHが「一緒にやらないか」と声をかけてきたことで開催が実現したとのこと。Digital Develop Management社のベン・ジャッド氏は講演の際、自身に影響を与えた兄にたとえて「日本のインディーズ開発者には、Indie MEGABOOTHのようなビッグブラザーが必要」「日本のインディーズ、ビッグブラザーと一緒に心を持って助け合いましょう」と訴えました。
個々が単独で動くだけでなく、コミュニティでノウハウを共有し、一緒にシーンを大きくしていこうと動いてきた日本のインディーゲーム開発者たち。「日本のインディーゲームを海外プレスに知ってもらう」という目的で始まった同イベントは、3回目に海外の“ビッグブラザー”とも連携して、より大規模なコミュニティへと成長する過程へ踏み出したように感じられました。
●海外からも注目集める日本人がIndie MEGABOOTH枠で出展
その“ビッグブラザー”Indie MEGABOOTHと国内インディーゲーム開発者の連携を象徴する存在が、現在『Downwell』を開発中のもっぴん氏。PC/iOS/Android向けに開発中の作品が米国のインディーゲームイベント『Independent Games Festival』で学生部門にノミネートされ、米国のゲームイベント『PAX EAST 2015』でIndie MEGABOOTHから出展を果たすなど、既に海外から注目を集めている開発者です。
『BitSummit 2015』でもっぴん氏は日本人で唯一、海外からの出展者が軒を連ねるIndie MEGABOOTH枠でブースを出展。Indie MEGABOOTHによるパネルセッションで17-bitと共にステージに登壇するなど、『BitSummit 2015』の主役の1人として活躍していました。
●アワードはNIGOROが“ビッグブラザー”として大賞を受賞
『BitSummit 2015』のもう1人の主役は、NIGOROを率いる楢村匠氏。昨年に続き2回目となる『BitSummitアワード』では、NIGOROの『LA-MULANA 2』が大賞である朱色賞を受賞しました。作品はまだ出展用のデモであり、未完成な状態で受賞したことには不本意な様子でしたが、記事冒頭に挙げたようにNIGOROが世界に日本のインディーゲームシーンを注目させる役割を果たし、開発者コミュニティに大きく貢献してきたことは事実。今後も日本のインディーゲーム開発者の“ビッグブラザー”としての活躍が期待されます。
朱色賞:NIGORO(『La-Mulana2』)
http://bitsummit.org/2015/?project=la-mulana2〈=ja
http://nigoro.jp/
ノミネート:
もっぴん(『Downwell』)
http://bitsummit.org/2015/?project=downwell〈=ja
http://www.downwellgame.com/
Onion Games(『勇者ヤマダくん』)
http://bitsummit.org/2015/?project=onion-games新作(仮)〈=ja
http://oniongames.jp/
ビジュアルやゲームデザイン、音楽、シナリオ、革新性などの部門別の受賞作品とノミネート作品は次の通り。
ビジュアル・デザイン最優秀賞:Friends & Foe(『Vane』)
http://bitsummit.org/2015/?project=vane〈=ja
http://www.friendandfoegames.com/vane/
ノミネート:
Oink Games(『伝説の旅団』)
http://bitsummit.org/2015/?project=args仮〈=ja
http://oinkgms.com/
One or Eight(『Earth Wars』)
※PlayStationブースに出展
サウンド・デザイン最優秀賞:Route24(『まかいピクニック』)
http://bitsummit.org/2015/?project=まかいピクニック-makai-picnic-放置系パズル〈=ja
http://www.makaipicnic.jp/
ノミネート:
RIKI(『8BIT MUSIC POWER』)
http://riki2riki.com/
Hyper Lyfe(『FD』)
http://bitsummit.org/2015/?project=fd〈=ja
http://sagzorz.com/
革新メビウスの帯賞:shoji hibino “AstralGate”(『GENSO』)
http://bitsummit.org/2015/?project=genso〈=ja
http://genso-game.net/
ノミネート:
Flashゲーム日本代表(『カッパーナムーン by SKT』)
http://bitsummit.org/2015/?project=カッパーナムーン-by-skt〈=ja
http://skt-products.com/
Pon Pon Games(『ヒーラーは二度死ぬ』)
http://bitsummit.org/2015/?project=ヒーラーは二度死ぬ〈=ja
http://ponpongames.genin.jp/
ビットサミット賞:Pon Pon Games(『ヒーラーは二度死ぬ』)
http://bitsummit.org/2015/?project=ヒーラーは二度死ぬ〈=ja
http://ponpongames.genin.jp/
ノミネート:
Throw the warped code out(『Back in 1995』)
http://bitsummit.org/2015/?project=back-in-1995〈=ja
http://backin1995.com/
Bonion Games(『ガーデンテイル』)
http://bitsummit.org/2015/?project=ガーデンテイル〈=ja
http://gardentale.net/
インターナショナル賞:Witch Beam(『Assault Android Cactus』)
http://bitsummit.org/2015/?project=assault-android-cactus〈=ja
http://www.assaultandroidcactus.com/p/landing.html
ノミネート:
Brace Yourself Games(『Crypt of the NecroDancer』)
http://bitsummit.org/2015/?project=crypt-of-the-necrodancer
http://braceyourselfgames.com/
Drool(『Thumper』)
http://bitsummit.org/2015/?project=thumper〈=ja
http://www.drool.ws/
●企業ブースはインディー開発者支援を全面に
開発者が主役の『BitSummit』ですが、スポンサーの企業ブースも力を入れた展示内容で存在感をアピールしていたのが印象に残りました。中でも、インディーゲームシーンとの連携と注力を強く感じさせたのがソニー・コンピュータエンタテインメント。「PS love Indies」を掲げたブースではYoung Horsesの『オクトダッド -タコと呼ばないで-』やキュー・ゲームスの『トゥモロー チルドレン』などをプレイアブルで初披露したほか、今後PlayStationプラットフォームに展開するインディー作品を多数出展。さらに、SCEワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏をステージに登壇させるなど、インディーゲームへ注力する姿勢を感じさせます。
PS love Indies
http://www.jp.playstation.com/software/indies/
マイクロソフトブースでは『Goat Simulator』などインディータイトルを試遊できたほか、開発機材やUnityライセンスの無償提供を含むXbox Oneのインディー開発者向けプログラム『ID@XBOX』を開発者向けにアピール。
ID@XBOX
http://www.xbox.com/ja-JP/developers/id/
サイバーエージェント/サイゲームスは、オリジナル作品やインディーゲーム開発者によるスマートフォンアプリを提供する、サイゲームスのカジュアルゲームブランド『ちょゲつく』を中心に出展。『Airship Q』のクラウドファンディングや追加出資に見られるようなインディーゲーム開発者の支援を打ち出したほか、脱出ゲーム『ドランクルーム!』を『Oculus Rift』に対応させた『ドランクルーム! VR』をプレイアブル出展しました。
ちょゲつく
https://chogetsuku.jp/
Oculus社も『Galaxy』スマートフォンと組み合わせて利用するVRヘッドセット『Gear VR』を出展し、今後のインディーゲーム分野でVRを組み合わせるトレンドを予感させます。
Oculus
https://www.oculus.com/ja/
インディーゲームの開発環境として普及が進むUnityを提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、インディーゲームのパブリッシング事業『Unity Games Japan』で展開するタイトルを座敷に上がってゆったりと遊べるブース『お休み処 雲丹亭』を出展。リラックスした雰囲気が、インディーゲーム開発者との距離の近さを感じさせました。
Unity Games Japan
http://www.unity-games.jp/
会場中心のステージを囲むように、出展者とスポンサー企業が比較的フラットにブースを並べた印象がある今回の『BitSummit 2015』。約80チームの出展者の個々の作品はこの記事では紹介できませんでしたが、取材できた範囲で可能な限り紹介していく予定。各記事は本記事にリンクを追加していきます。
Bitsummit 2015 | A KYOTO INDIE GAME FESTIVAL
http://bitsummit.org/2015/?lang=ja
過去の『BitSummit』レポートはこちら:
「自分が作りたいゲームを作ろう」 日本のインディーズゲームを世界へ発信するイベント『BitSummit』レポート
http://getnews.jp/archives/298243
開発者が主役となる舞台へ インディーゲームの祭典『BitSummit 2014』レポート
http://getnews.jp/archives/554986
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