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日本初の4DX上映専用ホラーとして話題の白石晃士監督作『ボクソール★ライドショー~恐怖の廃校脱出!~』が1月16日より公開。バラエティ番組のロケで廃校に潜入することとなったアイドルたちの味わう恐怖を体験できる今作は、4DXの9つのアクションをすべて駆使した体感型アトラクションホラー。

“ホラー映画と4DX”というのは、ホラー好きにとって、「そうこなくっちゃ!」な組み合わせですよね。筆者も一足お先に観て参りましたが、もう座席が動くわ動くわ! 風は吹くわ、液体はふりかかるわ、「着替え必須!水浸し!!!」の殺し文句は伊達じゃないです。

この動きまくりの4DXがどうやって作られたのか? 4DX専用映画『ボクソール☆ライドショー』の特性と4DX演出について、CJ i-studio クリエイティブ・ディレクターYoung Choi(チェ・ヨンスン)さんのインタビューを公開します。

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―本作に携わっての感想。

Young Choi(チェ・ヨンスン):今までは長編映画を主に作業していたので『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』のような作品に出会ったことは、特別な経験でした。特にPOV(Point of View Shot:主観ショット)スタイルの映像を4DXで感じ取ってもらうための作業は、すごく楽しい経験でした。

―4DX専用映画という日本の製作陣のチャレンジについてどう思いますか?

Young Choi(チェ・ヨンスン):そのような試みをされているときいて興奮しました。新しいチャレンジは、クリエイティブ・ディレクターとしていつも嬉しいものです。いつもの映画の作業より、もっと企画的で新しいチャレンジの方が、我々がすでに持っているものを試すことができるので、常に楽しく、常に興奮するものです。

―「ボクソール★ライドショー」の4DX演出について、コンセプトやポイントがありましたら教えてください。

Young Choi(チェ・ヨンスン):大きく、4つのコンセプト要素がありました。一つ目は、POVスタイル作品の魅力を活かすべく、4DXの動きや動線をうまく組み合わせて俳優たちとの距離感を自然と共感できるようにするのがポイントでした。二つ目は、「はっ!」と驚かせる演出の意図を倍増させるため、4DX的な効果Back Tickler(背面座席が動く)やFace Water(前席から、顔の周辺に水が吹き付ける)などの効果を重ねました。そして、バランスとエキサイティングです。本作は、日常を描いた作品ではなく、映像も整えてない荒さなど、そもそも追求する表現スタイルがある作品なので、そこに4DXのエンターテイメント(風やバブルなど)を溶け込ませて、4DXとしての魅力もふんだんに味わえるようにしました。

―製作時のエピソードを教えてください。

Young Choi(チェ・ヨンスン):一般的なホラー映画とは違う、独特の企画だったので、スタッフの中では話題になりました。そういったユニークな部分で大きな魅力を感じ、”もっと頑張る!”という意志をスタッフらに与えた作品だと思います。

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日本の4DXコンテンツとハリウッドの4DXコンテンツ

―Young Choiさんはどのような経緯で、現在の4DXクリエイティブの道を選ばれたのですか?

Young Choi(チェ・ヨンスン):最初、広告製作からスタートし、ビジュアル・エフェクトのプロデューサーとして活動しました。その後、映画製作からの疲れもあり、1年間仕事を休んでいる中、韓国で「ゼロ・グラビティ」の4DX映画が大ヒットし、その時、生まれて初めて4DX映画を経験しました。映画の中に入って体感できる、新たなエンターテイメントのカタチ、と感心していたところ、たまたま偶然に4DXで働いていた友人から提案があリましたので、迷わずyesと答えて、クリエイティブ・ディレクターとして働いております。

―これまでのどんな作品を4DX化してきましたか?

Young Choi(チェ・ヨンスン):現職について2年目になりますが、毎年75本、今年まで150本の長編商業映画を担当しました。商業映画だけではなく、CMや予告編、オルタナティブ・コンテンツなども手掛けており、全部で累計300本くらいです。
※(編集部注)ここは何度も聞き直しましたが、彼は本当に2年で300本の4DXコンテンツを作っている驚異的な仕事量といっていいです。

―過去に手掛けた4DXで、過去一番満足している映画は?

Young Choi(チェ・ヨンスン):ディレクターとして手掛けた全ての作品に愛着を持っていますが、やはり4DXと相性が良いジャンルといえば、アクションです。そこで「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」では、作品のキャラクターを追っていくような新しい企画を試みました。〈アイアンマン・スペシャルバージョン〉では、まるで自分がアイアンマンになったような体験が、〈ハルク・スペシャルバージョン〉では、ハルクの咆哮(ほうこう)する瞬間のリアルな振動をバイブレーションで表現など、ユニークなバージョン展開で、とても印象深い作品でした。

―また、これは難しかった、苦労したという映画があればお教えください。

Young Choi(チェ・ヨンスン):昨年度担当した「ニード・フォー・スピード」というレース映画です。4DXの動きや効果を組み立てて行くスタッフは個々の体験があればこそ、よりリアルな4DX表現をすることができます。しかし、映画に登場する4〜5億超えの高価なスポーツカーを運転した経験は誰もありません。それにも関わらず、映画の製作陣より「カーレースに登場する車一つ一つの違いを説明してほしい」と、オーダーが来たので9回にかけて監修作業を行いました。9回という数字は、我々にとってとても大変で苦しかった過程の表れで、車一つ一つ、エンジンの音や動きの特性を勉強するなど、間接的なリサーチを重ね、監督や製作陣に深い感動を与えたことは、とても苦労した映画でもありましたが、記憶に残る、想い出が詰まった作業でした。

―4DXのことを知り尽くしたクリエイティブ・ディレクターさんが映画を作ったらすごいことになると思うのですが、そういう野望はありますか?

Young Choi(チェ・ヨンスン):もちろん、野望はあります(笑)。今はすでに完成された映画に効果や動きを加えて製作していますが、車や飛行機など、主役がどんな形になるだろうと、最も4DXの魅力を発散できる演出をふんだんに入れ込んだ企画やカメラアングルなどをまとめて一つの映画にすることが最終目標です。そうなった時、”すごい!この4DX映画、今まで経験したことない最高の映画だ!”と賛辞を頂戴できたら本当にうれしいですね、私の野望、野心です。

―韓国では4DXの他にもスクリーンXのような上映形態があると聞きました。多様化する視聴方法ですが、未来の映画館、映画の楽しみ方はどのようになっていくと思いますか?

Young Choi(チェ・ヨンスン):みなさんご存知の通り、2Dが進化して3Dに発展し、IMAXやVRが誕生しての4DX。さらに映画館に足を運ばなくても、VODサービスのようなホームエンターテイメントで映像を楽しむことができる時代になりました。こういった多様化する視聴方法やそれを取り巻く背景の中、(他のエンタテイメントに比べて)4DXは観客に映画の世界への没入感を与えることができますし、今後4DXが将来の映画業界を牽引していくリーダーになれるよう努力をし続けなければならないでしょう。そうなって行くと、自然と観客らのニーズも増えて、映画館も増えて、観客動員数も増えて、映画業界全体の成長にもつながるのではないかという期待をしています。

―4DXが商業化されたのは、2009年。もし、過去作の中で4DXにしたらもっと面白くなる作品があれば?

Young Choi(チェ・ヨンスン):4DX初体験だった「ゼロ・グラビティ」や「インターステラー」のような宇宙の無重力状態の動きを表現したく、私は70〜80年代に大学生活を送りながら20代の黄金期を過ごした世代でもあり、憧れの巨匠スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」です。4DXとの相性が良い作品でもありますが、その静的な映画の美しさを4DXの表現で再誕生させたい!一度は挑戦してみたいです。また、スタンリー・キューブリック監督といえば「シャイニング」。ジャック・ニコルソンの狂気に満ち満ちた最後のシーンをサプライズ効果をふんだんに取り入れて表現したいです。ご迷惑にならないのであれば、そんなクラシックな映画を4DXにしてみたいです。

【Young Choi(チェ・ヨンスン)プロフィール】
CJ 4DPLEX 4DX i-Studio
総括クリエイティブ・ディレクター

1971年7月生まれ。広告製作会社、ビジュアルエフェクトのプロデューサーなどを経て2014年に CJ 4DPLEX 4DX i-Studioに入社。同年1月総括クリエイティブ・ディレクターに就任。主に4DXコンテンツの品質管理及び4DX最終演出の方向性を打ち立て2015年現在150本以上の長編商業映画を4DX化。映画のほか、CMや予告編、オルタナティブ・コンテンツなど含め、2年間累計300本以上のコンテンツを手がけるという驚異的な仕事量をこなし、精力的に活動中。

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