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ネスレ日本が販売しているカプセル式本格的カフェシステムである『ネスレ ドルチェ グスト』(以下ドルチェグスト)より、コーヒーマシンで抹茶を作ることができる専用カプセルを発売したというので、無謀にも茶道の先生を招致してお点前の薄茶と対決してもらうことにした。
お茶菓子は先生に用意してもらい、記者が主客となっていただく。
懐紙も作法も持ち合わせていない記者は、基本的なお茶のスタイルの話を先生から聞きながらお菓子をいただく。基本的にお菓子をいただいてから、お茶をおただく。食べながら飲むのではない。
半分に割ったところで撮影のために手を止めたが、鮮やかな桜色のあんの甘さがまったりと口を包んでいく。
条件を同じにするために、お釜のお湯は使用せずに同機から出るお湯を使用して、まずは先攻、お点前による薄茶。
色もそれは鮮やかなお抹茶。
道具は先生が普段使用している本物。
そこに、カプセルを入れていないドルチェグストからお湯を注ぐ。
茶道の先生が披露する見事な所作に、企画した記者自身が不謹慎な感覚を覚える。
ちなみにお湯の量も、後攻のドルチェグストの宇治抹茶と同じ量とした。
茶せんで立てていると、抹茶の独特な香りがまわりに漂ってきた。
泡立って、さらに色鮮やかになるのだが、記者はこれを「どのようにして、いただくんだったかなぁ?」と、シミュレートしながら、頭の中で作法を復習していく。
主客である記者の目の前に出された薄茶は黒い茶わんに抜群に映える。
概ね3口で薄茶をいただき、最後は”ずずっ”と泡を含めて口の中に吸い込む。
普段飲みつけないせいかイメージとして持っていた「抹茶は苦い」という思いとは反対に、むしろ甘味さえ感じる。
高級抹茶アイスクリームのホット版のような感じとでも言ったらいいのだろうか?しかし砂糖やミルクを使用しているわけではないのに、このほのかな甘みはなんだろう。不思議な和の一服を堪能した。
もう十分お茶の世界を堪能したのだが、始めてしまったものは後戻りできまい。後攻はドルチェグスト。
操作方法を先生に覚えてもらい、先生がカプセルをセットし、機械のスイッチを入れる。
注ぎ口から泡立った抹茶が注がれてきた。
機械で入れる抹茶は、高圧の蒸気を使用して入れているため、茶せんで立てるのではないが、見た目には違いはわからない。
そして、こちらも同じように今回の茶席の主人である先生からお茶が出される。
ずずっといただく。これは、期待通りのいわゆる「抹茶」であった。舌全体で感じる抹茶独特の苦みと香りは「これぞ抹茶」というイメージそのもので、これはこれで美味しかった。
しかし、対決と言ってしまったからには勝敗は付けなくてはなるまい。明らかに先生が入れたお点前による薄茶の勝利だ。
ここで、先生にもドルチェグストで入れた抹茶を飲んでもらい、感想を聞いてみた。
「ちょっと苦いですかね。でも、値段が全く違うので、(当然ドルチェグストのカプセルの方が断然安い)これは仕方がないでしょう。私としては、普段あまり飲む機会のない方がお抹茶の世界に触れていただき、健康にも良い成分がたっぷり含まれた抹茶を飲む入口やきっかけになっていただければ普段飲みとしてこういう機械もいいのではないかと思います。飲みなれてくると、もう少し違った感じのお茶が飲みたいと思ってくるはずですので、その時には茶の湯の世界をのぞいていただければよろしいのではないかと思います」
見事な先生の感想でノーサイドとなった対決だった。
記者のつたない知識の奥底から「その道に入らむと思ふ心こそ我身ながらの師匠なりけれ」という利休道歌が浮かんできた。
「その道に入ろうという心こそが自分自身であり、また師匠である」という意味だったと記憶しているが、千利休も文明の利器を目の当たりにして微笑んでいるかもしれない。
ドルチェグストで入れた気軽に飲むことができる宇治抹茶が「その道」に入るきっかけになるのかもしれないと思った対決だった。
※写真はすべて記者撮影
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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