映画『ハンガー・ゲーム』シリーズがもたらした影響かもしれないが、カットニス・エバディーン(映画『ハンガー・ゲーム』)、レイ(映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)、ブラック・ウィドウ(映画『アベンジャーズ』)らはハリウッドのガラスの天井にへこみを与えた。しかし、すべての人にとって良いニュースではないようだ。
サンディエゴ州立大学のテレビと映画における女性研究センターの調査によると、興行収入ランキングでトップ110に入る映画を詳しく調査した結果、女性主人公の割合は22%、主要な役における女性の割合は34%、それ以外の、セリフがある役における女性の割合は33%であった。女性主人公の割合は昨年より6%ほど上昇し、直近において高い数値となった。また、主要な役とセリフのある役の女性の割合は、それぞれ5%と3%上昇した。
この調査結果は、エイミー・シューマー主演の映画『Trainwreck(原題)』、エロティックドラマ映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、米ディズニーの実写映画『シンデレラ』のような、興行収入が好調だった、女性主人公による映画の影響が大きいと見られる。
それだけではない。主に男性主人公によって支配されてきたアクション系のジャンルにおいても、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、そして映画『ハンガー・ゲーム』シリーズに見られるように、最近は女性リーダーの活躍が目立った。
しかし、女性たちは専らヒーロー役となるわけではなく、敵役にもなり得る。同センターとしては、初めて敵役について調査した結果、その18%が女性であった。
同センターのエグゼクティブ・ディレクターであり、この研究をまとめたマーサ・ローゼンは「この数字は明らかに良い方向へ動いている」と語るが、「2015年がたまたま良かったのか、それとも、これが長期的なトレンドの始まりなのかは分からない」としている。
これは、確実な進歩と受け取ることはできないだろう。興行収入のトップに君臨する多くの映画を見ると、性別に対する固定観念が溢れかえっている。映画ファンは、生き残りを賭けた戦いならば女性主人公よりも男性主人公のそれを見たがり、また、女性キャラクターの話であれば、結婚がテーマになることが多い。仕事をテーマとする作品の64%が男性主人公であり、女性主人公の44%よりもはるかに多い。また、男性の登場人物の78%は特定できる仕事を持っていたが、女性の登場人物で仕事を持っていたのは61%に過ぎなかった。
同センターの調査によると、最近、オスカー受賞者が論争やボイコットの動きを見せた流れがあるように、主要な女性キャラクターの多くが白人であったという。人種の多様性が欠けている証拠として、女性キャラクターの人種の割合は、昔とほとんど変わらなかった。黒人女性のキャラクターは、2014年の11%から2015年の13%へとわずかに上昇したが、ラテン系女性のそれは4%と横ばいであり、アジア系女性のそれは4%から3%へと下がった。
また、白人以外の女優によって演じられる役があっても、その重要性は低い。黒人系、ラテン系、アジア系の女優によって演じられた役の中で、作品にとって重要だった登場人物は27%に過ぎず、一方、白人女優によって演じられた役のうちの38%は重要な役回りであった。
女性がどのようにスクリーンに登場するかどうかは、カメラの裏側で活躍する女性の影響が大きい。監督/脚本家チームの中に、最低でも1名以上の女性が関わった作品では、セリフのある役の40%が女性となるが、男性のみによる作品の場合、その割合は30%に下がる。また、女性の監督/脚本家が作った映画の50%は女性が主人公となっているが、男性監督/脚本家の場合、その割合はわずか13%になってしまう。