ヤマハ発動機がストレスを解消できるとして開発した「Revストレッチ」。すでに動画も音源も公開されているのだが、それを知ってもらうきっかけとしてWEB上に「Revパズル」というストレスを増大させるなんとも矛盾したものを公開している。
この矛盾を解き明かすべくヤマハに直撃取材した。
やってきたのは静岡県磐田市のヤマハ発動機。
始業時間前に職場を訪ねた記者は、全社一斉に放送で流れるというRevストレッチの音楽を待った。
音楽が流れ始めると、一斉に社員がストレッチを始めた。
同社内のアンケート結果では、肩こりや腰痛に効果があったとする割合が約58%、リフレッシュやストレス緩和に効果があったとする割合が約65%にのぼり、それなりに役に立っているようだった。
それはそれとして、Revストレッチのホームページには、Revパズルという落ちてこないオチゲーが無料公開されている。
これが曲者で、「何でこんなものを?」という疑問がそもそも取材するきっかけだったのだが、開発者にその疑問をぶつけるのは、とりあえずRevストレッチを見てからにする。
Revストレッチは非常にまじめに考え抜かれたもので、ヤマハというブランドを結集して作られていることがうかがえる。
すなわち、バイクのヤマハとしては、ライディングポジションが取り入れられていたり、エンジン音が取り入れられていたりと、ライダーの心をくすぐる技が随所にちりばめられている。
楽器・音楽のヤマハとしては、そもそもの音源がヤマハで作られているので、そのクオリティの高さはもはや説明の必要はないだろう。
公開されている音源を聞けばそれはわかる。
また、ジュビロ磐田のコーチが制作に携わっていると聞けば、もはや一企業の体操レベルではなく、真面目に本格的に作られたことも納得がいく。
さて、Revストレッチを披露してくれた写真の最前列、この日のダブルセンターだった二人に話を聞いた。
二人の話を総合すると、部署ごとにRevストレッチを習得してみんなに指導する方式を取ったので、現在ではほぼ全員が自然にやっているとのこと。
また、出勤していきなり朝礼ではなく、Revストレッチで顔を合わせるので部署の一体感が生まれたという副産物もあったという。
ストレッチそのものは、ラジオ体操よりも体が伸びて気持ちいいのだそうだ。
休日やちょっと疲れた時に体が自然にRevストレッチの動きになっているほど浸透しているのは自分でも驚いたという。
自称宴会部長の彼女(写真右)は「みんな、癖があるじゃないですか。そんな癖を毎日読み取って、宴会の一発芸としてやるんです。完全な内輪ウケですけど、それが面白くて。同じ動きのはずなのに個人の癖や体が伸びるときに思わず出してしまう声がみんな違うんですよ。それをまとめる方がつらかったですけどね(笑)」と、宴会にまで取り入れてしまったことを明かした。
さて、件の落ちてこないオチゲーである、Revパズル。
ブロックが上から落ちてきて消していく、世界を席巻した例の落ちものパズルの逆バージョンだ。
要するに、下からブロックが上がってきて組み合わせていけばよい。ただし、そのブロックがRevストレッチの体の形をしているので難易度は特級品で、はっきり言って無理。
記者も浜松に向かう新幹線の中でやってみたのだが、3分で腹が立ってやめてしまった。
そもそもは、Revストレッチ誘導のために作ったゲームなのだが、このコンセプトがなんともふざけている。
開発者によると、「ストレス解消のためにRevストレッチをやってもらいたいのですが、ストレスが少ない人のためにこのゲームでストレスをためていただこうと思いまして…」と、本末転倒の回答。
仮に、パズルでストレスをためて、ストレッチで解消しても、またパズルでストレスをためて…と悪循環ではないのか?
その点を指摘すると、「まぁ、ゆるい会社ですから…(笑)」と、ノリと勢いで作ってしまったことが露呈した。
インタビューした二人はこのゲームを知らなかったようで、やってもらったがやはりまともに進まず、面白がってはいたのだがやめてしまった。
しかし、二輪車というものは四輪車と比較して、趣味性の高い乗り物であることは事実で、これくらいの遊び心とノリがないといいバイクは作れないのかもしれない。
妙に納得した記者であった。
せっかくヤマハに来たのだから、バイクを見せてくださいとお願いしたところ、とんでもないものを持ってきた。
個人的な趣味で恐縮だが、自動二輪車はKawasaki党の記者も、さすがにこれには参った。
「MT-10」をショールームの玄関に出してきたのだ。
しかもエンジンを掛けてもよいという。ゆるい。緩すぎる。
確かまだ発売前のはずだが。というか、日本では発売予定はまだないはずだが。
ヤマハの発表によると、2016年5月に欧州で発売予定でクロスプレーン型クランクシャフトを備えた水冷・直列4気筒、排気量998cm3(cc)エンジンを搭載。
価格も未発表で、日本での発売予定も未定のミステリアスなネイキッドバイク。そのまま変形してロボットになって飛んでいきそうないでたち。
動画を撮る予定はなかったのだが、動画収録と掲載の可否を訪ねると、確認しますと言って5分ほど。「オッケーでーす!」とゆるい回答が。日本でのエンジンを掛けた動画ははまだほとんど公開されていないはずなので、レア動画となる。
■ヤマハ MT-10~
https://youtu.be/w75LjBgaxdw
スクープ級の動画を収録したらお腹が減ってきた。
同社敷地内にあるショールームを兼ねたコミュニケーションプラザ内には一般利用もできるレストランがある。
そこには「季節のRevプレート~静岡そだち」という税込み1200円のメニューがある。
土日のみ限定10食というこれまたレアなランチをいただく。なぜ10食なのかというと、地産地消の目的で、このプレートのために食材を調達に行かなければならないからだそうだ。そのため予約なしでは10食分しか確保できないという。もちろん、予約をすればいつでも人数分のプレートを確保してくれるという。
ラテアートもバイクだ。
静岡県ゆかりのサイダー4種類も備える。ツーリングで訪れた際にはこのサイダーはありがたいことだろう。暑かろうが寒かろうが、ライダーは喉が渇くものだ。お好みのサイダーでのどを潤してほしい。
デザートのパフェの皿にもココアパウダーで「Yamaha」の文字が。芸が細かすぎてヤマハファンにはたまらないだろう。
RevストレッチとRevパズルの矛盾の謎を解明しようとしたのだったが、ヤマハのゆるくて誠実な社風に「小粒でピリッと辛い」バイク造りの本筋を見たような気がした。
※写真と動画はすべて記者撮影・収録
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか