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武術家に3・25巌流島はどう映ったか?
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武術家に3・25巌流島はどう映ったか?

2016-04-08 12:00
  • 13
今週のお題…………「3・25巌流島! 私はこう見た!」


文◎野田派二天一流東京支部長・響尤会長 勝田兼充


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まず論じさせていただきたいのは、『巌流島の掲げる武道という概念』についてです。今のままでは巌流島の掲げる『これからは武道だ』というコピーに実現性が薄いように思います。
 
なぜなら実際に蓋を開けてみれば、いろんな畑の競技者を巌流島ルールという『武術からのアプローチで新たに制定したオリジナル・ルール』で闘わせている、不完全な格闘技大会というふうにしか観て取れないからです。
 
いつの時代も人間に影響を与えるのはルールですが、現状では巌流島という競技ルールは、競技者を武道家たらしめる影響力のある競技システムにまで至っていないということです。
でもご安心いただきたいのは、未だかつて、武道に馴染みのない一見(いちげん)様をルールに従うだけで武道家たらしめる競技など存在しませんでした。剣道然り、柔道然り、唐手然り。ではそのような都合のいいルールをどのように創成したらいいのでしょうか?
 
それにはまず、『大会におけるコンセプト』をもっと明確にする必要があります。
これはあくまでも当流東京支部としての見解ですが、外国人の修行希望者が日本武道に望んでいる要素は、ずばり『詫び寂びの妙味と武士の情け』です。
 
上記コンセプトをふまえ、武士道を実現させるための巌流島ルール及び運用について勝手ながら以下のように思案いたしました。
 

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1 装備に関して
 
・怪我防止のため、薄めのゴムを使用した地下足袋を装着する。
・闘技場の段差を現行の高さで維持するなら、後頭部保護用のヘッドギアを義務付ける。
 

2ルールに関して

・グラウンド状態でのパウンドを廃止する。
・グラウンド状態で掴んでもよいのは、道着の襟と袖、ならびに腕のみとする。
・片方がグラウンド状態の時、スタンド状態の選手が闘技場内で残心ポーズ(武士の情け)を取ってから2秒以内にスタンド状態にならないと、グラウンド状態の選手は一本負けになる。(2秒あれば、戦場ではグラウンド状態の相手の体勢に関わらず頭を踏みつけて殺せるから)
・転落、同体のときにも同様とする。
・ゆえに基本的には闘技場外に出た(転落した)だけではポイントが得られない。
 
これら改定により、以下の利点が想定され、独自の妙味が生じます。
・選手は投げられたり、グラウンド状態に陥るリスクを避けるために、必要以上に接近しなくなる。
・倒された場合に相手に残心ポーズ(武士の情け)を取らせまいと、相手の道着にしがみつく。その効果として、しがみつかれた側には衣類を用いての関節技を極めるチャンスが生まれる。
・衣類を使っての関節技をかけられたくなければ、グラウンド状態になったときに相手にしがみつかず、また投げ技に対しては有効な受け身を取ることで、即座に復位する(立つ)ようになる。
・時間稼ぎがなくなり、観客に技法を見せる場が増え、より「決闘」らしくなる。
 

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3 設備に関して

今大会における闘技場の不備を挙げます。
・堀への段差が深いため、今後それを利用して反則にならない傷害行為を行う選手が出るおそれを感じ取れた。具体的にいうと闘技場から堀の下に相手の後頭部を打ち付けるなど。
・堀の中でドライアイスを焚いているため、堀の下での傷害行為をしても審判からは確認しにくい仕様となっていること。またドライアイスのせいで滑る可能性がある。
・SRS席の最前部及び解説席においては、炭酸ガスで目が痛くなるとの苦情。
・堀の下に敷いてあるマットが角部では明らかに薄かったことにより、安心して観賞できない。
・堀の下にセットしてあるブルーライトが眩しすぎて辛い。
・そもそもあれだけ段差を深くするなら、安全性を確保するためにはもっと堀の幅を広くしないといけないと思うが、客席の関係で苦しいか....
 
よって設備の変更案として、
・堀の深さを浅くするか、または堀を廃止する代わりに簡易型の土俵用ゴムブロックを闘技場の今まで堀としていた部分に配置し、一番外側には安全対策用ロープなどで囲う。そしてロープの外側には厳重にマットを敷く。
・安全の確保のため、堀に設置してあったブルーライトは廃止し、競技中のドライアイス演出を中断し、結露を除去する。
                              
以上が3月25日の巌流島の検証・提案でした。
 

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次に、『これからは武道だ』を論じられる前に、軽く『モノノフ』という意味や、『武士道』その他の概念についてまとめさせて頂きました。
 
武士道=武士の哲学
平法=武士の護身術+哲学
兵法=戦術+哲学
武道=武術を通して武士(モノノフ)から物部(モノノフ)へと還る道
※物部(モノノフ)とは、新たなるものを生み出し、生み出した物を上手に扱い、その影響に責任を持って他の者に伝えて富をもたらす者のこと。
 
以上によりわかることは、武道修行者が体現せしめる究極は、単なる『ツワモノ』になることではなく、世々に大いなる影響をもたらす物事を生み出す役目にあることがわかります。そのような観点で五輪書を改めて読むと、始祖宮本武蔵師の意図がようやく観えて来ます。
 

また、剣道には『前後際断』という教えがあります。真理を悟ったものは、真に精神を統一し、過去も未来もなく、前と後の際(きわ)で切断するので無念が最上の仏法である、とするものです。前の心を捨てず、また今の心を後に残すことは悪、と説くのです。「今なすべきことを無心になすことが大切」と精神的価値観を説きました。
 
『ブームを仕掛ける時代は終わった!再現性を積み重ねる時代が来た』
 

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さて、現代に真の『モノノフ』が居たとするなら、巌流島の仕合で次のように考えるでしょう。
「単なる勝ちをおさめるよりも、対戦者同士で後世に残る名試合を真剣に繰り広げ、双方ともに人気者になることに死力を尽くそう。そうする事で同じ対戦者同士の試合をもっと観たいと思われることこそ真の勝利だろう」と。
つまり狙うべきは目先のファイトマネーではなく、観衆に『再現性』を渇望させ、将来の徳を得るところに重きを置くはずです。
再現性とは言っても当たり前ですが、八百長ではない内容にする必要があります。
そのためには勿論、運営関係者に闘いの手の内を明かさない、というのは頂けません。
 
武道とは学ぶことによって精神変革や精神育成を促すシステムなのです。
武道を通して競技が成長するにはどうしたら良いのかと云いますと、武道精神を体現した試合を魅せることにより、マンネリではない無数の組み合わせの『再現性』を主目的とすれば良いのです。ここで言う『再現性』とは、仕合を観戦した人が、競技者にあこがれを持ったり、真似をして同じ競技を学んでみたくなったりすることであります。そこからエンターテインメント性を促す仕掛けへと入ってゆける、と考えます。
この過程を通じて「武蔵」や「巖流」を超えるカリスマを発掘することが成功へとつながると確信いたします。何故ならカリスマ性の原動力は、継続する社会を約束する『再現性』だからです。
 

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それでは長くなりましたが、宮本武蔵先生による言葉で締めさせて頂きます。
 
宮本武蔵『独行道』(全二十一箇条)より「武士道論」に該当する部分
  一、 我が事において後悔をせず
  一、 善悪に他をねたむ心なし
  一、 自他ともにうらみかこつ心なし
  一、 道においては死をいとわず思う
  一、 身を捨てても名利はすてず
  一、常に兵法の道をはなれず
 
宮本武蔵『五輪書』風の巻より
他流の道をしらずしては、わが一流の道、たしかにわきまえがたし
他の流々、芸事とおなじく、身すぎのためにして、色をかざり、花をさかせ、うり物にこしらへたるによって実の道(真の兵法)にあらず
我が一流において、太刀の奥義も入口もなし、構えに極意なし、ただ心をもって、その徳を身につけることが、我が兵法の肝心なり
 
プロジェクト「巌流島」が、未だ舟島に残る巖流小次郎の無念を晴らして、武蔵の待つ彼我への成仏へと導き、以て新時代の護符とならんことを。




[お知らせ]
『巌流島』のオフィシャルサイトをリニューアル致しました。アドレスが変わりましたので、ご確認ください。→  ganryujima.jp
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他3件のコメントを表示

>>4
響尤です。
初心者でも真似できるこめかみ攻撃(ただし致死率高)以外の急所も狙えるかどうか。
プロの攻防を拝見したいです。
シラットの選手の蹴りはアゴ先をかすっただけですが、対戦相手は記憶障害に陥ったそうです。

以下、支部長のヘッドギアに関する追記見解です。

「そもそも側頭部の急所は選手に後遺症を残させる危険があり、又後頭部付近も同様です。
記憶障害はかなり危ないです。
武道を掲げているからには人道に則り、運営及び観覧者は選手の引退後も思いやるべきでしょう。

今回の試合でジダ選手にビターリ選手が食らった部位ですが、耳後部の頚椎に近い急所(乳様突起)でこれも危ないです。
もしこの様なヘッドギアを装着していれば防げたはずです」

No.5 97ヶ月前

>>4
>>5
響尤です。ミノルさん、「1 装備に関して」の再読をお願いします。

そもそも『闘技場の高さを今のままで行くのなら』ヘッドギアを義務付けるという提言です。
もしも高さがフラットもしくは低くなれば、ヘッドギアは不要、となるかもしれません。

No.6 97ヶ月前

>勝田様

そうなんです、「これだとこめかみは効かないから選手も倒す技術要求されるよな」と思ってました。
技術向上の為にも、選手の引退後の為にも、着けた方がいいかもですねー

私は出来れば堀の深さはあれぐらい欲しいので、ヘッドガードを着けて欲しいです。
ある程度「崖の説得力」も要りますので。
でもSEIZAの方は「異種格闘技戦の巌流島」より、更に武道性が濃いので、勝田さん案は正にピッタリだと思いますし、堀もそれほど深くなくていいと思います。
武道的見地から完成度の高い案なのでこのまま正式採用して欲しいですね。

No.7 97ヶ月前

>>7
Wミノルさん
私は演武会の乱捕りで耳上部に軽く鉤突きを喰らっただけですが、その後片耳が聞こえなくなりました。
聴こえなくなると、方向感覚が狂うのです。ボコボコにやられました。幸い半月で回復しました。
女子は骨も薄いし、重心の高い外国人の選手ならばなおのこと頭部保護は必須です。

相撲の土俵とは表面の素材が違うので、専門家に計測してもらって「崖の形」を決めるべきかと思います。
裸足なので後ろ向きに滑って転倒が最も危ないです。事故が起きてからでは遅いです。
ですから滑り防止と感染症予防のため五本指の靴とか骨法の先生が使っておられた足袋等も要る、という見解です。

決して不都合でがんじがらめにしたいわけではなく、整備するにつれ、逆に選手の動きは違ってきますよ。

No.8 97ヶ月前

>勝田様

武道は裸足が基本なのかという固定観念がありました。
サバットみたいな本格的なシューズは危険ですが、足袋ならデザインに拘れば具体化出来るかも知れないですね。
ヘッドガードの成功例の様に何とか開発して欲しいな。
ただスパッツには似合わないのでその場合道着ズボン着用を義務化して欲しいです。

No.10 97ヶ月前

>>10
Wミノルさん。響尤です。

巌流島の数ある講談の絵の中は素足のものもありますが、
山口県下関市舟島の休憩所にある「公式巌流島決闘の図」では
武蔵先生、巌流先生おもいおもいに履物をつけておられます。(下記画像参照)

また、鉢金ではないのですが、双方とも鉢巻を装着しています。
距離が同じでも繊維がめり込むのでたった布一枚といえど防御効果はあるのです。

「武道」の始まる前まで遡って考えてみる必要があるかもしれませんね。
下の画像が含まれている記事は、とても面白いのでぜひお読みください。

画像出典:NAVERまとめ
【巖流】悲運の天才剣士『佐々木小次郎』は、実は謎の多い人物だった!?
http://matome.naver.jp/odai/2139451720555189401/2139476739521497103

No.11 97ヶ月前

http://matome.naver.jp/odai/2139451720555189401/2139476739521497103
小次郎が巌流島で「足袋履いてる」!
勝田さん紹介の出典先見ると小次郎や #巌流島 のイメージが次々覆りますね!

足袋に滑り止めの効果が期待出来るなら私としては反対する理由が見当たりません。
道着ズボン着用義務化の条件付きで賛同致します。

No.14 97ヶ月前

>>7
Wミノルさん
先日のRIZINでは田村選手がヘッドガードを着用されていましたね。
特に違和感は感じませんでしたが。

No.15 97ヶ月前

巌流島の行き着くつころはプロ剣術しかない。
素手の戦いで武術家は格闘家に勝てない。別に素手で勝てないのは恥ではないでしょ?卑怯上等、どんな手段でも負けなきゃいい生き残れってのが根底にあるんでしょ。一応観客の目の前では卑怯は使えないから、武器を持って正々堂々勝てばいいんだ。ハイテク剣とハイテク防具で面や胴や脛打ちありで組討ち蹴り足払いパンチなんでもありのルールで押し出しありの闘技場で戦う。これしかないだろ。薙刀もカリもありにしたら女性も参加できる。SASUKEみたいに出場者を大量に応募したら試合時間が短くても大丈夫だ。中途半端に素手でやるから消化不良感不公平感ハンパないルールしかできない。素手はMMAで答えは出ているし、それ以上のルールはないだろ。格闘家に勝ちたいために変なルールを作ってもどうしようもない。闘技場の周りには水をはれよ。島なんだから。仮想巌流島で剣を持った二人が戦う。巌流島にふさわしいルールだろう。

No.16 96ヶ月前

>>16
これまでの「巌流島」との関連性が見出せませんのでそれは別の大会となるでしょう。
ネオ骨法さんのご意見のルールと装備だと、ただでさえ改善のために腐心されている主催者や巌流島選手、そして審判の先生方にご負担をかけます。
格闘家は剣の修行を一からやらねばなりませんし、剣術家達は自己の練磨が日常修行や大会の目的であり、最強格闘技など望んではいません。
プロ剣術競技を審判できる先生方は、現状剣道界にも剣術界にもおりません。
なんでもありだからこそ、到達点へのアプローチは重要です。

水を張れば島になります、ではなくていかにそこを島と見立てるかの工夫に設立された方々やファンの皆さんの努力があるのです。
私どもはどのように崖を安全な仕合場にするか、どちらの環境がよい攻防が見られるかを検討し、ご依頼があれば検証もお手伝いし、継続性のある競技になるようにと考えさせて頂いています。
このように所属と名前を明らかにすることでいつでもご質問に応じられることを示した上で、これまでのデザイナーさんやルールディレクターの先生方の一助になるよう改善案を公開で聞いていただいています。

ネオ骨法さんのNo.16のご意見はここではなく、議論ページの方へお名前と所属を明記して谷川様へ直接提言されてはいかがでしょうか。素晴らしい提案であればあるほど、検証には責任が伴います。

No.20 96ヶ月前
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