charoさん のコメント
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今週のお題…………「大晦日と格闘技」 文◎谷川貞治(『巌流島』事務局・広報部長 )………………月曜日担当
フジテレビの曙 vs ボブ・サップ。
TBSの魔裟斗 vs KID。
これって、10年以上前に僕が組んだカードじゃん。
負け惜しみでも何でもなく、5年ぶりの大晦日格闘技、もう少し何とかならなかったかなぁと思います。
でも、これって、100%主催者の責任ってわけじゃないんですよ。
榊原さんが進んで曙vsボブ・サップを組んだとは思えない。こういうカードは明らかに視聴率を取るためのテレビ局の意向。そう、やっぱり大晦日って、格闘技のコンテンツ自体を狂わす、団体にとって諸刃の剣なのです。
そもそも僕らがTBSと大晦日に格闘技を始めたのは、「打倒・紅白歌合戦」という指令を受けたからでした。紅白と言えば、日本人にとって一番のお茶の間番組。僕はそこで「お茶の間」格闘技というのを考えた。それが格闘技ブランドで一番世間に浸透している「猪木」軍と「K-1」軍の対抗戦であり、特にお茶の間ということでお涙頂戴のドラマを作ろうと、安田忠夫にスポットを当てたのです。それが成功すると、曙vsボブ・サップをやり、芸能人のボビー・オロゴンをリングに上げた。魔裟斗vsKIDをやり、歌で勝負しようと矢沢永吉も投入しました。
「桜庭vs田村」「桜庭vs船木」「桜庭vs秋山」は実現した時はドンピシャの旬ではないかもしれませんが、対世間を考えるとこういうカードが大晦日向きになってしまうのです。そして、僕の大晦日は「魔裟斗引退」とともに終わった。大晦日のおかげで僕には「谷川モンスター路線」のレッテルや、格闘技をバラエティ化したというレッテルが貼られてしまった。でも、今でも自分のやり方は、決して間違っていないと思っています。
しかし、それも成功すると、テレビ局は通常のイベントまで、曙やボブ・サップ、ボビーのマッチメイクを期待されてしまう。そうなると、通常のK-1や総合格闘技イベントまでおかしくなってしまうのです。おまけに僕らがTBSで成功したら、フジテレビがPRIDEの手を出し、K-1とPRIDEが大喧嘩になった。選手の引き抜き合いでファイトマネーが高騰、お互いに首を絞めることになってしまった。今回の『巌流島』が理不尽に放送を切られた件も含めて、大晦日は常にテレビ局という魔物に狂わされてしまうのです。
榊原さんはタダでさえ、8年ぶりの格闘技界への復帰。タイムラグはあるし、何をやっていいか分からない時代。しかし、ファンからはPRIDEの再現を期待されている。でも、一方で視聴率は取らなければならないし、フジテレビからの要望もある。イベンターとして優秀だけど、そもそも格闘技ファンではない榊原さんにとって、周囲にコンテンツをグチャグチャにされる環境なのは痛いほど伝わってきます。
私が大晦日の格闘技を通常どおりの総合格闘技で開けって言われれば、きっと五郎丸歩や篠原信一のところに必死に通っていたでしょうね。でも、それって格闘技界にとっての起爆剤にはなりますが、今の格闘技界を復活させるにはあまり意味のないことなんです。もう一度格闘技を復活させるには、過去の再放送ではなく、UWFやK-1、グレイシーが出た頃のような新しいうねりです。『巌流島』をスタートさせたのは、まさにそんな理由からです。だから、いまだに「大晦日頑張ってください」とか、「RIZINと対抗戦をやってください」なんて言われることもありますが、私は絶対に自分がやってきたことを含めて、過去とは違う「アナザーワールド」を作り上げることが大切だと思っています。
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