今週のお題…………「大晦日と格闘技

4c4fcc0163edda37e543c03732b8be6555478466
文◎山口日昇(『大武道』編集長)………火曜日担当



全国3千万人の『厳流島』ファンの皆さま、こんにちは。
ワタクシ、山口日昇という者です。
よろしくお願いいたします。
 
2000年大阪ドームでのプロレスイベント『INOKI BON-BA-YE』に端を発した大晦日狂想曲ですが、2002年夏には『Dynamite!』が国立競技場に9万人を集め格闘技の遠心力を広げ、2003年夏にはPRIDEが急速に求心力を強め、そしてその2003年大晦日には、PRIDEがフジテレビと組んで大晦日戦争に参入。『INOKI BON-BA-YE』は日本テレビに移籍。TBSでは『Dynamite!!』を放映。
日テレ、TBS、フジテレビが大晦日のゴールデンタイムに格闘技中継をするという一種の狂乱状態に陥りました。
 
そんな狂乱状態の中、『Dynamite!!』の曙vsサップ戦は最高瞬間視聴率で紅白歌合戦を越え、まさに格闘技界はビッグバンを起こしました。
 
その後数年、K-1とPRIDEが対立概念となったりくっついたりしながらもブームが続いたように見えた格闘技界でしたが、運営サイドとしてその渦中にいたボクは実感としてわかります。
この2003年の「3局大晦日戦争」で実質、格闘技ブームは終わりを告げていたのです。
2003年大晦日が頂点、ここからはそのブームの延命策でアップアップでした。
 
その証拠に、2007年にズッファに売り抜いたPRIDEは当時の借財が約30億円あったはずですし、2012年に破産したK-1も最後の最後は負債が約30億円くらいあったと聞いてます。
この数字を見てもわかる通り、2003年大晦日以降の格闘技界の延命策や対処法には、ひと言でいうと無理があったということです。
 
2000年以前に、ボクシングやプロレスが大晦日に興行を打つことはあっても、もともと大晦日と格闘技になんて、なんの関係もない。あるとしたら、「対世間」への装置ということだけです。
 
「紅白歌合戦をぶっ飛ばせ!」というスローガンのもとに、お茶の間に格闘技の遠心力を示したまではよかったのですが、その後は、「テレビ局との関係性」、「大晦日という装置」に固執・依存することなく、うまく使いながら地盤をしっかり固めるべきでした。
 
まぁ、いまさら何を言っても後の祭り。
あの熱は“あの時代のもの”です。
 
しかし、どのジャンルでもそうですが、格闘技界もご多聞にもれず、これからも“祭り”が必ず必要となる時期がきます。
人間、形はともかく、“祭り”なしでは生きられませんから。
その来たるべき“祭り”に備えて、これまでとは違う座組み、なおかつ同じ失敗を繰り返さずに、これまでとは違った“うねり”を起こせるような地盤をつくるべきだと思います。
 
ボクは個人的には、これまで通りの「テレビ局との関係性」だったり、「大晦日という装置」が、これからの格闘技界の起爆剤になるとは思っていません。
「テレビ局とイベント」の関係性、「テレビと視聴者」の関係性、「イベントと
消費者」の関係性も、時代性の中で大きく変わってきているからです。
 
2003年大晦日に3局がゴールデンタイムで放映したことでもわかるように、日本の国民は“格闘技”や“闘い”が大好きです。
では、なぜ日本の国民は“格闘技”や“闘い”が好きなのか!?
なぜ“格闘技”をやったり観たりするのか!?
 
ボクは、これからはそういった根っこを考えていくべきだし、その根っこを掘り下げていくときの重要なキーポイントが“武道”という概念にあると思っています。
 
今年の大晦日は『RIZIN』というビッグイベントがあります。
やる以上は成功してほしいし盛り上がってほしいと思いますが、何年かぶりに浮上してきた“大晦日”というキーワードをきっかけに、格闘技ファンには、ぜひ“武道”という概念にも目を向けてほしいと願っています。
 
そういうわけで、大晦日やお正月にはぜひ『大武道!』も読んでください。
RIZINもいいけど、TATSUJINもね!