-
長谷川幸洋 コラム第2回 『政府は公に語らないが、ここだけはおさえておくべき話』
2013-05-09 15:30330pt政府は口が裂けても言わないが、実は「この問題はここがキモ」という話はたくさんある。本来なら、メディアが問題のポイントを鋭く突いて広く議論を促すべきなのだが、どうも日本では政府や官僚、政治家が言わないと、メディアも積極的に書かない風潮がある。
政府が公に語らない話をズバズバ書いて「もしも自分の理解がトンチンカンだったら大変だ」とビビッているような感じなのだ。つまり、あえてリスクをとりたくない。そこで今回は「政府は絶対に言わないけど、ここはおさえておくべきだ」という話をまとめて紹介しよう。
◆メディアが正面から書かないTPPの本質
まず、環太平洋連携協定(TPP)だ。
TPPについては「日本が自動車で米国に譲歩した」とか「米国にやられてしまう」といった話が相変わらず流れている。ところが、そういう見方は評価の基本軸がずれている。TPPは単に貿易自由化を目指す通商交渉ではない。米国を軸とした外交・安全防衛上の枠組みに参加する意味合いがあるのだ。
TPP交渉に参加している国はいずれも自由と民主主義、市場経済、法の支配といった理念と価値観を共有している。だが、たとえば北朝鮮はそうではない。民主主義どころか貿易すら極めて限定的で、鎖国した独裁国家だ。他国と貿易を通じた相互依存関係にないから、ともに利益を享受する「ウィンウィン関係」には入りようがない。
それどころか核ミサイルを振りかざし、日本や米国、韓国を脅して生き残りを図ろうとしている。こういう国に対処するために、米韓はいま日本海で合同軍事演習を展開中だ。日本もイージス艦を出して米韓と隊列を組んでいる。
中国はどうか。こちらは市場経済に移行しつつはあるが、政府の関与はまだ非常に大きい。民主主義や法の支配もけっして十分ではない。日本とは尖閣諸島問題で険しく対立している。
そういう中で、TPPはアジア太平洋地域の平和と繁栄に寄与する枠組みになる。言うまでもなく、地域の「平和と安定」は「繁栄」の前提だ。だから、TPPの損得勘定は繁栄=貿易自由化だけでなく、平和と安定=安保防衛という側面も視野に入れて考えなければならない。
はっきり言えば、日本がTPPの枠組みに入って平和と安定の基礎が強化されるなら、貿易自由化で多少、譲歩したところでトータルでみれば収支が合うのだ。こういう議論を表立って言うと「日本は米国の属国になるのを認めるのか」といった感情的な反発が起きたりする。だから、メディアもなかなかずばりと書かない。 -
【新連載】ジャーナリスト堀潤の新しい活動はここから始まる! 「目指せオープンジャーナリズム」
2013-05-07 13:45330pt筆者がNHKに退職届を提出した事が公になった3月19日、現代ビジネスの瀬尾傑編集長が「わたしたちもメディアの世界を変えたいという思いでやっています。ご一緒できるとすごく嬉しいです」とFacebookでメッセージをくれた。面識はなかったものの「ぜひ」と返事を返すと「今夜会いましょう」とまたすぐに連絡がきた。
午後11時、新橋の居酒屋で落ち合い、終電の時間もすっかり忘れ午前2時頃まで二人で話し込んだ。
組織の建前とジャーナリズムの実践が混在するマスメディアのジレンマ。ソーシャルネットワークの発達で加速する市民発信と既存メディアとの融合の未来像。一次情報保持者が直接発信する時代におけるジャーナリストの役割とは何か---話題は尽きなかった。なかでも、市民発信の可能性についての意見交換は盛り上がった -
年間3万人の自殺者に思う。日本は一度失敗してもやり直せる社会になれるのか?
2013-05-07 12:15330pt日本国内の自殺者数の増加が近年いっそう問題になっている。平成21年には、自殺者数が3万2345人に達した。その後やや減少したものの、昨年も2万7858人と、いまなお年間3万人近くの人が自ら命を絶っている。
こうした現象は、日本人の宗教的な死生観によるところもある、と僕は思う。キリスト教では、自殺は「罪」である。それに対して、日本で広がる多くの仏教的な教えでは、善い行いをしていれば「極楽浄土」に行けると解釈している人が多いようだ。だから、どうしようもない状況に陥ったときに「死んで楽になる」という発想を持ちやすい。日本人に「自殺」が多いのは、宗教的背景もあるのだろう。
僕自身は、死にたいと思ったことは一度もない。僕は悩み続けることができないのだろう。問題が起きてしまっても失敗しても、「どうにかなる」と考えてしまう。いくら悩んでも、何も変わらないと思っているのだ。
そんな考えをもつ僕だからこそ、いままさに危機に直面し、苦しんだり悩んだりしている人にあえて言いたい。死なねばならない理由なんて、人生には絶対ないのだ。経済的な問題で苦しんでいる人もいるだろう。恋愛の問題で悩んでいる人もいるだろう。人間関係でつまづいている人もいるだろう。だが、どこかに必ず打開策はあるのだ。
ところで、あまり報じられないことがある。戦後、日本人の自殺者は増え続けている。その「増えている分」はほぼ男性なのだ。たとえば、内閣府や厚生労働省が発表する数字を見れば一目瞭然だ。平成9年までは、自殺者数は2万人から2万5千人の間を推移している。ところが、平成10年に突如、3万人を突破する。この推移を男女別でみてみよう。女性の自殺者数は1万人弱とほぼ横ばい、男性の自殺者数だけが急増したのだ。
2 / 2