黒田東彦日銀総裁が就任1ヵ月を迎える。4月4日には大胆な金融緩和を断行して、金融市場を驚かせた。ところが、その後の長期金利の推移を見ると、順調に低下したとはいえない。むしろ乱高下を繰り返しながら、予想に反して上昇気味なのだ。

 そんな中で黒田日銀は17日、金融市場局長の交代を含む異例の人事を発令した。いったい、日銀に何が起きているのか---。

◆「長期金利の低下」が実現できていない


 「この人事は例年より1ヵ月半くらい早い。4日の『ビッグサプライズ(金融緩和)』以降、肝心の長期金利は下がるどころか、逆に上昇気味になっていた。これは、はっきり言って金融市場局のお粗末なオペレーションのためです」

 こう語るのは、ある外資系金融機関のアナリストだ。

 本来なら、日銀が大胆な金融緩和を決めた以上、長期金利は上がるどころか下がらなければならない。とくに今回の緩和は従来の操作目標だった短期金利だけでなく、最初から長期金利を下げる効果を狙っている。そのために長期国債の買い入れ残高を2012年末の89兆円から13年末には140兆円、14年末には190兆円へと2年間で倍増する方針を発表したのだ。

 ところが、実際の動きがどうなったかといえば、緩和発表の翌日4月5日には10年もの国債利回りが一時、0.315%という史上最低金利まで下げたものの、午後は一転して0.62%にまで上昇した。1日の間に0.3%幅で乱高下する異常事態だった。

 先物市場では、取引所が一時的に取引を停止するサーキットブレーカーと呼ばれる強制措置が発動されたほどだ。国債市場はその後も不安定な動きが続き、18日夕方時点でも0.585%と緩和前日の水準を
上回っている。

 つまり、黒田日銀が狙った長期金利の低下は実現できていないのである。

◆乱高下の責任は金融市場局にある


 史上最大の大規模緩和を決めながら、これはいったいどうしたわけか。先のアナリストが解説する。

 「日銀は緩和を発表した4月4日の夕方、金融市場局が『当面の長期国債買い入れの運営について』というペーパーを公表しました。これは金融政策決定会合での緩和決定を受けて今後、