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中国はクリミアの問題を見て何を考えているのか

長谷川: 中国についてさらにお聞きします。先ほど総理はハーグのサミットにおいて、東シナ海と南シナ海の問題を念頭に置いて、日本やアジアの国々にとっても対岸の火事ではないということを主張した、ということでした。私は、その認識が各国にどれくらい強く共有されるのかが重要なポイントだと思っています。その辺り、総理の感触をお聞かせください。

安倍: ウクライナの問題がヨーロッパ、EUだけの問題ではなく、世界全体の問題だという認識をG7で共有することが重要だと思っています。ですから、G7の会合において、私が発言するチャンスを得たときに、少し説明をしながらその話をしました。

G7の代表のみなさんは、私の話に大変興味深く耳を傾けてくださり、さらに私のあとに発言した方たちは「安倍さんが言ったように」という形で言及してくださいました。

アジアにおける中国の脅威と、その力を背景とした現状変更の試みを許してはいけないということを明確にしておかなければ、それは世界にも波及していきます。そういう観点を念頭に置きながらこの問題を議論していくべきだということは共通の認識になったと思います。

長谷川: 先日もフィリピンの大統領が、『The New York Times』のインタビューで、中国が南シナ海において、1995年以来、たとえばミスチーフ環礁、スカボロー礁を実効支配している状況を、かつてのヒトラーに対する宥和政策になぞらえて、警告しています。つまり、まさしく力による現状変更の試みが南シナ海で行われつつあったと。

とりわけ日本においては、尖閣諸島の問題があるわけです。だからこそ心配で、そういう認識が世界の人々に共有されるということがとても大事だと思うわけです。中国は今、ロシアのクリミアの冒険を見て、何を考えているんでしょうか?

安倍: 中国はすでに、南シナ海において、係争中の岩礁等を軍事力を背景として獲得していっています。フィリピンに対しても、ベトナムに対してもそうですね。そして、南沙諸島、西沙諸島において一方的に「9ドット」というものを指定して、自分たちの排他的経済水域を相手の了解を得ることなく指定してきています。

それに対して、東南アジアの国々は大変な脅威を感じている。そこで、やはり海洋法条約に則ってお互いに行動しよう、何か偶発的な出来事が起こってはいけないからきちんと行動規範を決めましょう、ということを提案しています。

防空識別圏もそうです。事前に何の相談もなく、しかも、国際的な常識を破る形でいきなり設定して、そこを通る民間航空機はすべて中国に通報しろと主張しています。これはあまりに非常識なことであり、国際社会からも強く非難されています。

日本と中国は切っても切れない関係

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安倍:われわれと中国との関係は、特に経済においては、切っても切れない関係にあると思います。日本は中国に輸出して利益を上げていますし、多くの企業が投資をしてやはり利益を上げています。同時に中国は日本からの投資によって、1000万人以上の雇用を生み出しています。かつ日本にしかできない半製品を輸入して加工することで、日本も含めた欧米諸国に輸出をして多くの利益を上げている。つまり、切っても切れない関係なんです。

ですから、その関係性の中において、平和的に台頭していくことによって経済を成長させ、国民を豊かにしていく。それが中国の通っていくべき道だと思います。海洋、あるいは海洋資源というのは国際公共財ですから、「国際社会と一緒に活用していきましょう」という立場をとるべきなんですね。「これは私のものだ」と軍事力を背景に獲得していこうという姿勢は改めさせなければいけない。

ASEANの一つひとつの国は、確かに軍事力では中国と比べものになりません。だからこそ、お互いの助け合いが必要です。共同して、中国を排他的に追い出していこうということではなく、中国にも輪の中に入ってもらって、公共財である海を国際法のルールに則って一緒に使いましょう、ということを私たちは申し上げているわけです。こういう認識をアジアだけではなく、G7の国々とも共有したい。そこで中国も正しい方向に転換してほしいと思いますね。