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  • 長谷川幸洋コラム【第67回】政府もIMFも弱気なのに、日銀だけはなぜ強気なのか? 現状維持政策の読み方

    2014-10-16 20:00
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    「タマ」はまだ取っておきます!〔PHOTO〕gettyimages

    日銀が10月7日に開いた金融政策決定会合で、景気は「緩やかな回復を続けている」という基調判断を据え置いた。

    日銀の強気は突出して異様

    一方、内閣府は同日に発表した景気の現状を示す指数の低下を受けて、基調判断を「下方への局面変化を示している」と引き下げた。政府が弱気なのに、日銀はなぜ強気なのか。

    弱気なのは日本政府だけではない。国際通貨基金(IMF)も2014年の日本を0.9%成長と予想し、7月時点の見通しから0.7%ポイントも引き下げた。4月の消費税引き上げで4~6月期の成長率が予想以上に落ち込んだためだ。さらに言えば、15年についても0.8%成長と同じく0.2%ポイント引き下げた。

    私はよく各地の中小、零細企業経営者たちと話をする機会がある。8日には兵庫県姫路市で税理士たちの話を聞いたが、彼らは異口同音に「私たちの顧客である中小、零細企業には景気回復の実感がありません。厳しい状況ですね」と言っていた。

    田園風景が広がる田舎に行けば、道を走っているのは軽自動車ばかりだ。生活の足になっている軽自動車のガソリン代値上がりが可処分所得を直撃している。家族数にもよるが、一世帯当たりでトータルの所得減は1万円を超える場合もあるという。これは物価上昇を加味した実質ではなく名目の話である。目の前で現金が消えていくのだ。

    そういう肌感覚や政府、IMFの発表と比べると、日銀の強気は突出していて、やや異様な感じさえある。

    10%消費増税がどちらに転んでも「いま緩和する必要はない」

    日銀内の事情に詳しいウォッチャーに話を聞くと、実は日銀の中でも意見が割れているらしい。それはそうだろう。「景気の先行きについて、事務方ではこの数週間で急速に弱気派が増えました。日銀は上司の顔色をうかがう“ヒラメ集団”でもあるので、トップの黒田東彦総裁が強気だと、あえて表で異論を唱える人はいませんが…」という。

    事務方だけではない。岩田規久男副総裁と黒田総裁の間でも意見が割れている、という説もある。岩田本人に確かめたわけではないから、それはひとまず措くとしよう。

    私は金融政策決定会合がまだ続いていた7日午後、テレビの生番組(BSスカパーの『チャンネル生回転TV Newsザップ!』)に出演していた。景気判断と金融政策の据え置き決定を聞いて「あ、これはタマを出し惜しみしたな」と直感し、番組でそう解説した。

    黒田総裁はこの先に控えている消費税増税問題をにらんで景気判断の変更と追加緩和を先送りした。私はそう思う。本来なら、ここで追加緩和に踏み切ってもおかしくない局面なのに、緩和どころか景気判断も現状維持にしてしまったのだ。

    ご承知のように、安倍晋三政権は消費税を10%に引き上げるかどうか、7~9月期の国内総生産(GDP)の数字をみて12月に判断する方針だ。ここで増税断行を決断すれば、政権は増税による一段の景気悪化を防ぐために、政策でテコ入れしなければならない。本当は増税しなくてもテコ入れが必要なくらいの局面だ。補正予算の編成と追加金融緩和である。

    補正予算編成は政府の裁量で可能だが、金融緩和は日銀の仕事である。建前はそうだが、政府は日銀に意見を述べることができる。当然、日銀に緩和圧力がかかる。黒田総裁とすれば、それはいまから十分に予想できるから、そのときに備えていまは緩和に踏み切らない。つまりタマをとっておいた。

    逆に増税を先送りした場合、露骨な緩和圧力はなくなるので、日銀には裁量の余地が広がる。そうであれば、緩和を急ぐ必要はない。増税先送りは前向きなサプライズになって、景気にプラス効果さえ生むかもしれない。それなら、なおさらいま緩和する必要はない、という話になる。
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    〔PHOTO〕gettyimages
     
  • 田原総一朗「『1強』自民党の独走を止められるのは誰か? 僕が注目する政治家はこの人だ」

    2014-10-11 20:00
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    現在の日本の政治情勢は、「1強多弱」といわれる。「1強」はもちろん自民党、その他の政党は「弱」という。要は、野党がだらしないということなのだ。アベノミクスにしても、集団的自衛権にしても、批判するばかり。「対案」を出すことができない。そういうところを、国民は情けない思いで見ているのだろう。

    ところが、ここのところ野党が活性化し始めている。まず「日本維新の会」と「結の党」が合併した。そして「維新の党」が誕生した。野党の牽引役たるべき民主党も、新体制を発足させた。一時は海江田代表降ろしを画策した、岡田克也さんが代表代行になっている。いわば現体制が、岡田さんを「引き入れた」格好となったのだ。

    そんな民主党に対して、僕がとても期待しているのは、新幹事長の枝野幸男さんだ。僕が見る野党議員のなかで、枝野さんは「対案」を出せる唯一の人物といっていいだろう。

    彼は、まずアベノミクスに反対している。経済成長する時代は終わったと考えているのだ。ご存じのとおりアベノミクスは、「経済成長」を大前提とする政策だ。そのため「異次元」の金融緩和、そして公共事業をおこなって、成長戦略を掲げているのだ。それに対して枝野さんは、「無理だ」と考えている。さらにいえば、「資本主義の終わりがきている」とも考えているようだ。だから、これからはいかに富を分配するのか、いわば「ポスト資本主義」を示そうとしているのだ。

    一方、集団的自衛権についても、はっきりと反対の立場を打ち出している。安倍内閣は戦争をしないといっている。だが、後世の内閣が解釈を変えて「行使できる」としてしまえば、戦争をできるようになってしまう。極端なことをいえば、日本に共産主義の政権が生まれたとする。それは日本共産党のことではない。その政権が、ロシアや中国から要請され、軍隊を海外に出すことも十分に考えられるのだ。

    僕は、枝野さんの立法能力にも非常に期待している。そんな彼が幹事長に就任したことは、民主党にとって大きな原動力となるだろう。 
  • 田原総一朗「僕が、80歳を過ぎても徹夜で議論できるワケ」

    2014-10-10 20:00
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    僕は今年80歳になる。毎週土曜にBS朝日「激論!クロスファイア」、月に一度、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」の司会をしている。また、ラジオ番組は週に2本あり、雑誌の連載は6本、ネット連載は3本ある。そのほか、単発のテレビ出演や講演もあり、僕の手帳はいつも真っ黒だ。

    「その歳で、なぜそんなに元気なのですか」と、よく聞かれる。そんなとき僕はいつも、「悩まないこと」と答えている。もちろん、日々迷うことはある。いろいろと考え込むこともある。けれど夜になれば、悩んでも仕方ないと寝てしまうのだ。だから、失敗しても引きずらない。済んでしまったことを、くよくよ悩んでも仕方ないからだ。

    ぼくは、特別な健康法なんてしてはいない。ただ、しいていえば、たっぷり7時間睡眠をとるようにしている。そして、好きなことしかしない。このふたつだけは、心がけている。人間、ストレスが一番体に悪いのだ。

    以前、人に頼まれて、オーケストラの指揮者の真似事をやったことがある。カラオケの音楽に合わせてイヤイヤ指揮棒を振る練習をしたら、たちまち消化器系がダウンしてしまった。それ以来、僕は嫌だと思う仕事は受けないようにしている。

    食事も、嫌なものは食べない。好きなものしか食べないのだ。たとえ身体によくても、食べたくないものなんか食べても、身体が喜ばないのではないか。僕は、そう考えているのだ。だから、朝はトーストと目玉焼き、ちぎったレタスと紅茶。そして、すりおろしたリンゴと季節の果物と決まっている。昼は、だいたいうどんだ。

    夕食は、外食になることが多いが、それでも、あきれられるほどいつも同じメニューにしている。僕は、お酒は一切飲まない。そのかわり、白いごはんと味噌汁、煮るか焼いた白身の魚、野菜の煮物かお浸しと豆腐。デザートは旬の果物だ。25年来、ほぼ毎日、こんな食事をしているが、飽きることはない。

    かなり前のことだが、「三世紀会」という、政治家の会合を取材したことがある。会長は、1896年生まれの岸信介さん。岸さんは戦中戦後に活躍した政治家で、安倍首相の祖父である。この岸さんはじめ、会員はみんな19世紀生まれだ。そもそも会の名称は、19世紀、20世紀、21世紀と、「三世紀を生きよう」ということでつけられたのだ。つまり、みんなで100歳以上生きようというわけである。

    では「長生きのコツは?」と僕は会員たちに聞いた。すると、3つの答えが返ってきた。ひとつめは、つきあいを悪くすること。つきあいがよいと、パーティや飲み会についつい毎晩顔を出して疲れてしまうというのだ。ふたつめは、悩まないこと。悩んでも物事は解決しない。3つめは、肉を食うこと。これは、最近の研究でも科学的に実証されているようだ。

    僕は、肉は好きではないので、残念ながら3つめは実践できない。でも、ひとつめとふたつめは、実によく実践できていると思う。

    僕にとって何より大事なことが、ひとつだけある。それは、毎日いろんな人たちと会うことだ。家で本を読んだり、原稿を書いているとき以外は、たいてい人と会っている。なぜ人に会いたくなるのか。それは「好奇心」があるからだ。好奇心が、僕の原動力になるのだ。