東方SS 相合傘
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東方SS 相合傘

2014-03-21 23:39

    ※これは東方Projectの二次創作です。


    (……まったく、面倒なことになった。)
     今日も一日頑張っていた太陽が山の向こうに落ち、燦々と降り注いでいた陽の光も消え、辺りを暗闇が包み込み始めた時間帯。人里の近くにある、命蓮寺というに寺に向かいながら、俺は心のなかでため息を吐く。
     なぜこんな時間に寺に向かうことになったか。一言で言うと悪ふざけ。いつもつるんでいる仲間内で、度胸試しをしようという話になったのだ。夜、命蓮寺に併設されているお墓に向かい、昼間のうちに置いておいた木札を取ってくるというもの。肝試しとは、まるで子供のような遊びだが、奴らは時々物凄く幼稚なことを考えて、それに俺を巻き込んでくる。普段は気のいい奴らなので仲はいいが、これだけはなんとかならないかと悩んでいる。
     大体、何故夜なんだ。妖怪が活発に活動する時間帯。度胸試しというより、妖怪に遭遇するかどうかの運試しである。しかも命がけの。それをそのまま伝えると、命蓮寺の妖怪は友好的なやつばかりだから大丈夫!と説明され、あげく、「なんだ、ビビッてんのか?」と挑発される始末。売り言葉に買い言葉で反論しているうちに、気づくといつもの様に巻き込まれてしまった。
    「……くそっ。しかもくじ引きで一番引くとか面倒くせぇ。さっさと終わらせて帰るか」
     人里の外には妖怪が出没するが、素早く命蓮寺にたどり着けば大丈夫だろう。あそこの妖怪たちは友好的。襲われたなどという話は聞いたことがない。あそこまで行けば安全だ。
     フクロウの鳴き声が響く闇の中を、手にした蝋燭の灯を頼りに人里の入り口にたどり着く。ここから先は人里の外。妖怪に見つかってはたまらないと思い蝋燭の灯を消す。途端、俺を遠巻きに囲んでいた闇が殺到し、先程まで見えていた人里周りの柵すら見えなくなる。
     その場で少し待機し、闇に目を慣らしてから月明かりを頼りに周りを確認。自分以外の影が無いことを確認して外への一歩を踏み出した。






     何事も無く命蓮寺の敷地にたどり着くことが出来た俺は、いつも門の近くで落ち葉を掃いている女の子を探す。確か山彦の妖怪で、幽谷(かそだに)といったか。話がわかる妖怪が一人でも居てくれたら安心できると思ったのだが……居ない。昼間に活動してるし、もう寝ちゃったかな。
     誰もいない砂利道を一人で進み、お墓に向かう。誰のものとも分からない墓石が並ぶ墓場に辿り着き、石畳で作られた通路を奥に進む。夜の静寂の中、聞こえるのはフクロウの鳴き声と俺の歩く音のみ。
    「なんだ。幽霊どころか、妖怪にも会わずに終了か。平和で良いな。いや、里まで帰らなきゃいけないのか」
     道のりの半分が終わって気が楽になり、一人言を呟く。奥の墓石まで進み、木札を取る。
    (後は帰るだけ……帰り道に妖怪に見つかったとしても、寺の中に戻れば襲われないだろうから大丈夫)
     自分をふるい立たせるようにそう考えながら、他の奴らが取りに来る木札が置いてある墓石に背を向ける。その時……


    「うらめしや~!! 怖がれ~!!」
    「うおおぉぉぉぉ!?」


     突然目の前に、番傘を持った少女の顔が至近距離で迫ってきた。あまりの不意打ちに、思わず声を上げながら尻餅をつく。
    「えへへへへ。夜に来る人なんて珍しいから、いつにもなく本気だしちゃった♪ ねえ、怖い? 恐ろしい?」
     少女の声はほとんど耳に入らず、俺は彼女の持っている番傘に目を奪われていた。毒々しい紫色の番傘からはダランとした赤い舌が飛び出しており、大きな一つ目が浮かぶ。少女が持っている持ち手は明らかに人間の足のような形をしており、ご丁寧に下駄まで履いている。
    (よ、妖怪……やばいやばいやばい! 俺は馬鹿か! 何が寺は安全だ!)
     寺が安全だという前提は、いつも居る妖怪が有効的だからというもの。とはいえ、他の妖怪が中に入れないわけではなく、人がほとんど居ない夜に外の妖怪が入っていてもそれを知るすべはない。それは人里も同じだが、妖怪は人里内では人を襲ってはいけないというルールを持っている(誰が作ったルールかは知らないが)。対して命蓮寺にはそんなルールはない。つまり、命蓮寺の外から入ってきた妖怪が敷地内で人を襲ってもなんらおかしくはない。それに気づかずに寺の敷地は安全などと考えていた俺は馬鹿としか言い様がない。
    「し……死ぬ。食われる……誰か……」
     無意識にそんな事を呟きながら、尻もちを付いたまま後ずさる。すぐに後ろの墓石に当たり、それ以上後ろに下がれなくなる。
     俺の呟きに気づいた少女が、怪訝そうな顔をする。
    「……? ちょっと大げさじゃない? 怖がってくれるのは嬉しいけど、別に食べたりはしないよ? 聖に怒られるもん」
     しかし俺には、少女の言葉は獲物を油断させる言葉にしか聞こえない。少女が左右で色の違う目を困ったように細めながらも、内心舌なめずりをしているのではないかという考えが消えない。
    「く、来るな! 俺なんか食べても美味くねえよ。帰れ!」
     咄嗟に手元にあった石を少女に投げつける。彼女は手を振ってあっさりと石を弾き、俺の前に屈みこんでくる。
    (なんだ。近くで見ると結構可愛い……いやいや! 相手は妖怪だぞ! しかも俺を狙ってるやつだ!)
     頭に浮かんだ感情を振り払っていると、屈んだ少女が話しかけてきた
    「大丈夫だって。食べるつもりなら最初に怖がらせずにいきなり食べてるし。ただ怖がらせたかっただけだよ」
     彼女の言葉に、段々と頭が冷える。突然現れてパニックになっていたが、確かに襲うなら最初から攻撃してるよな。という考えに至り、息を整える。さっと辺りを見渡し、彼女の他に人影はなく、他の妖怪が居ないことを確認する。俺の動きを、逃げ道を探していると思ったらしく、少女が俺の腕をぎゅっと掴んできた。
    「逃げなくていいって。とりあえず、参考に色々話聞かせてもらっていい?」
    「さ、参考? ……なんの?」
     人肉の味についてだろうか? と、後ろ向きな考えを頭に浮かべながら、少女の言葉に答えていた。






     数分後。頭を落ち着かせた俺は少女と一緒に墓場入り口のベンチに腰掛けていた。
     少女は多々良小傘。彼女の言うことを信じるなら、人を食べるのではなく、怖がらせる妖怪だという。この墓地を中心に活動しているが、夜はほとんど人が来ないため昼間に頑張っているらしい。久しぶりに怖がってくれた俺に色々と聞きたいらしい。
    「でも、皆全然怖がってくれなくて……最初は怖がるんだけど、すぐにケロッとした顔になって平然としてるんだもん」
    「……まさか、さっき俺にやったみたいに?」
    「? うん。物陰から飛び出したり背後からうらめしや~って大声出したり……」
    「……それ、怖がってない。びっくりしてるだけだ」
    「ええっ!?」
     本気で驚いた表情をする小傘。
    「怖がらせるなら不意打ちじゃなくて、普通に近づいてから怖がらせないと……」
    「普通に近づいて……?」
     小傘はベンチから立ち上がり、俺の正面に回りこむ。俺の顔をじっとみつめ、意を決して挑戦!

    「が……がおーっ!」

     両手を振り上げ、精一杯驚かせようとしてきた。
    (……なんだこれ。可愛い)
     俺が黙っていると、小傘は段々と顔を赤くして、そそくさと俺の横でベンチに座り直した。
    「……どうすれば怖がるか、教えてください」
    「怖がらせる相手に聞くのか」
    放って置けないような感じがして、とりあえず幾つかアイデアを出してやることにした。





     小傘と話をしているうちに、気づくと空に暗雲が立ち込めていた。
    「あ……雨ふりそうだね。お兄さん、もう帰ったら?」
    「それもそうだな……」
    「そういえば、なんでここに? 夜に来る人は珍しいよ」
    「なんでって俺は木札を……あ」
    (肝試し……完全に忘れてた。まぁいいか。この空じゃ、あいつらも諦めて帰るだろ)
    「……散歩だよ。ちょっと夜風に当たりにな」
     とりあえずそう言って誤魔化しておく。もしかしたらこの後に奴らが来るのを期待して、ここで待ち構えると言い出すかもしれない。雨が降って風邪でも引かれたら大変だ。
    「天気変わりそうだから帰るよ。小傘は?」
    「私も帰る。朝から動いてるから眠いし……」
     二人で墓を出て寺の門に向かう。砂利道を歩いてる途中、パラパラと水滴が落ちてきた。降りだしてしまった。慌てて二人で門の下に走りこみ、雨を逃れる。間一髪、雨はすぐに本降りになり、さっきまで聞こえていたフクロウの鳴き声を掻き消す。降りだした雨を眺めながら、小傘が心配そうに俺を見た。
    「……帰れる?」
    「どうだろうな。通り雨ならすぐ止むだろうけど……そんな強い雨じゃないから降り続くかもな。これ以上強くなる前に濡れながら帰るか」
     ちょっとでも雨が弱いタイミングを狙おうと空の様子を伺いながら、小傘の問に答える。彼女は少し考えて、「送ってこうか?」と言ってきた。
    「話し相手になってくれたお礼。私が引き止めたから雨に遭ったみたいなもんだしね」
    「……じゃあお言葉に甘えて」
     小傘が傘を俺の頭の上に掲げて、歩き出す。俺も歩幅を合わせて歩き、彼女と一緒に人里への道を進む。歩きながら雑談を交わす。
    「帰り道、大丈夫か? 夜道は危ないぞ」
    「私は襲う側だよ?」
    「でも、見た目は可愛い女の子だぞ」
    「……ありがと。でも妖怪だからね。不審者の一人や二人……っていうか、この雨じゃ不審者も家に帰ってるでしょ」
    「確かに」
     そんな風に会話をしながら歩き里の中に入る。つるんでいた友人たちは入り口近くで待ってるという話だったが、姿は見えない。帰ったか。雨宿りしながら待っててすらくれないとは薄情な。
     小傘に家の場所を教えて、そこまで送ってもらう。自宅に到着し。お礼を言う。彼女は嬉しそうに笑いながら「じゃあ、またね」と言って雨の中を歩いて行く。心なしか、寂しそうに見えるのは、俺の勘違いか?
     俺は玄関近くの棚から自分の傘を持ち出し、気づくと、小傘を追いかけていた。横に並んで、驚く彼女に声をかける。
    「やっぱ女の子一人じゃ危ないからな。送ってくよ」
     彼女はクスっと笑って傘をたたみ、俺が差している傘の内側に入ってきた。
    「じゃ、お願いしようかな」
     少し顔が赤くなっている彼女の頭を撫でながら雨の中を二人で歩く。
     一緒に歩いていく間の話の内容を考えながら。


    終わり 

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    縦書と違って読みづらいのではと思って普段空けていた、セリフと地の文の間の改行失くしてみました(一部除く)
    空いてたほうが読みやすいかな? 書く側はよくわからん。


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