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東方SS 虎鼠散歩
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東方SS 虎鼠散歩

2015-03-24 23:41

    ※このSSは東方Projectの二次創作です。独自設定、キャラ崩壊、その他。苦手な方は戻る推奨



     冬も終わりに差し掛かり、暖かな日差しが積もった雪を溶かし始めている、そんな時期。
     人里の外れに位置する丘に建っているお寺、命蓮寺では、季節に関係のない普段通りのやりとりが交わされていた。

    「ナズーリン……私の宝塔はどこですか?」
    「……またですかご主人」

     命蓮寺において、毘沙門天の代理を務めている寅丸 星が、毘沙門天から預かっている宝塔を紛失し、その捜索をナズーリンにお願いしている。

    「すみません……。昼過ぎまではたしかに持っていたのですが、参拝に来た方たちと話をした後、気づいたら失くなっていて」
    「ってことは、少なくとも敷地内にはありそうですね。探してきます」

     いつものようにさっさと探しに行って、回収して星に届けようとしたナズーリンだが、それを遮ったのは当の寅丸星本人だった。

    「待ってくださいナズーリン。さすがに毎度毎度あなただけに任せるわけには行きません。私も探します」
    「そうするとむしろ被害が広まりそうなんですが」
    「しかし、待つばかりではさすがに申し訳ないです」

     多少抜けているところはあるが、基本的には責任感が強く真面目なのが星である。ナズーリンもそれは分かっており、心の中で嘆息しながらも了承した。

    「わかりましたご主人。それで、宝塔を落としたのはどの辺りですか?」
    「場所は分かりませんが……昼からはずっと敷地の中にいましたよ」
    「じゃあ、そっちを探しましょう」

     そうして二人は命蓮寺の本堂を出て、敷地内の東のほうを探し始めた。







    「……敷地の中にずっといたんじゃないんですか?」
    「確かにそのはずなんですが……なぜでしょう?」

     宝塔は見つかった。だが、見つけたのは命蓮寺の正門から出て300メートルほど進んだ先だ。とても敷地内とは言いがたい。溶けかけた雪の間から宝塔を拾い上げたナズーリンは、それを星に渡しながらため息をついた。

    「まあ見つかったんだからいいですよ。さ、帰りましょうご主人」
    「えぇ……もう帰るんですか?」
    「宝塔は見つかったんだから帰ればいいでしょう」
    「せっかくですし、少し辺りを歩きませんか? 天気もいいですし」
    「もう。仕方ないですね。少しだけですよ」

     星の和やかな笑顔に乗せられて、二人は辺りを散歩することにした。命蓮寺の回りは小さな林になっていて、正門の正面を進めば人里。道をそれて進めば魔法の森や霧の湖にたどり着く。不規則に並ぶ木々の間を歩いていると、雪を踏むシャリシャリという音に混じって、空を飛ぶ鳥達のさえずりが聴こえてくる。
     静かな林の中を歩く星とナズーリンは、その身長差から、並んで歩く親子のようにも見える。

    「最近変わったことはありませんか? ナズーリン」
    「特に変わりはないですけど、どうしたんです急に?」
    「いえ、最近は寺でのお勤めばかりで、あまりあなたと会話をしていないような気がして」
    「そんなことありませんよ。宝塔の場所とか参拝客の様子とか、よく聞いてくるじゃないですか」
    「仕事のことではなく、個人的な会話のことですよ」

     星は苦笑いしながら答える。改めて考えると、尚更必要なことしか話していないような気がする。

    「もしかして、話をするためにわざと宝塔を置いてきたとか言いませんよね?」

     ナズーリンが訝しんで聞く。

    「まさか。会話をしたいとは思ってましたが、だからといって大事な宝塔を利用するわけないじゃないですか。宝塔を無くしたのは素です」
    「そっちの方がダメな気がする」

     きっぱりと答える星に呆れるナズーリン。しかしその答えは予想していたようで、それほど驚いた様子はない。
     そして今度は、ナズーリンの方が星に尋ねる。

    「ご主人はどうです? お寺の場所が新しくなったから、参拝に来る人たちもがらっと変わったでしょ」
    「信仰してくれる人たちは変わっても、やることは変わりませんよ。私は大丈夫です」
    「なら良いんだけど」
    「ふふふ……」
    「? なにさご主人」

     急に笑いを漏らす星に、ナズーリンが尋ねる。星は嬉しそうに答えた。

    「いつもそっけないですけど、私のことを心配してくれるんですね。それに、口調も少し砕けた感じになってます」
    「……公私を分けてるだけだよ」

     そっぽを向いてごまかそうとするナズーリンだが、星はニコニコと笑顔を浮かべている。
     そうして話しているうちに、いつの間にか二人は人里の近くまで来ていた。里の人たちの喧騒が少しずつ聞こえるようになり、飲食店からと思われる食べ物の匂いも伝わってきた。

    「さて、この辺りで引き返しますか。あまり長くお寺を空けると、参拝に来た人たちが困ってしまいます。……ご主人?」

     返事がないのが気になってナズーリンが星の方を見ると、彼女はジーっと里のほうを見ている。そして、一言。

    「ナズーリン、お腹が空きました」
    「……お寺に戻ればお団子がありますよ。あとムラサが作ったカレーが残っていたと……」
    「ナズーリン、今日は冷えますね。お店の中はきっと暖かいですよ」

     しばらく顔を合わせて黙りこむ二人。やがて折れたのはナズーリンだった。

    「……空いてるところ、ありますかね」
    「きっとありますよ。探しましょう」






     人里で暖かいおでんを食べて、帰路につく二人。行きにも通った小道を歩きながら、雑談に興じている。

    「……そこでなんと、先日の少女がこっそり入ってきてまして」
    「ああ、地底の。最近よく見かけると思ったらそんなことしてたんですか」

     最近お寺であったことを話す星とそれを聞いて相槌を打つナズーリン。星はどことなく楽しそうで、ナズーリンはそれを嬉しそうに聞いている。
     雪を踏む軽い音と鳥の鳴き声。二人の話し声が響く林の中は穏やかな雰囲気に包まれていて、小道を歩く一組の”親子”を木々が見守っている。
     やがて命蓮寺が見えてきて、散歩が終わる時間であることを知らせてきた。

    「ほら、ご主人。ビシッとして。参拝客の前であまりはしゃがないように」
    「は、はしゃいだりしませんよ。いつもどおり私の勤めを果たすだけです。それよりも」
    「なんです?」
    「また、散歩に行きましょうね」
    「……まあ、機会があれば」
    「なんですかそれ。行きましょうよぉ、散歩!」
    「なんでそんなこだわるんですか」
    「だって、楽しいですから、ナズーリンといるの。あなたは違いました?」

     星が寂しそうに聞くと、ナズーリンは口ごもった。ナズーリンが星と一緒にいるのは、毘沙門天に星がサボらないよう監視を任されているからだ。つまり、仕事である。楽しいかどうかなど考えたこともなかったが、面と向かって聞かれると……。

    「まあ、楽しいですよ。ご主人といるのは飽きませんし」

     ナズーリンの答えを聞いて、星は嬉しそうに笑う。子供みたいだなと思いながら、ナズーリンは星から目をそらす。すると、木に止まっていた鳥が目についた。

    「あ……つばめ」
    「ああ、ほんとですね。聞こえていた鳴き声はつばめのものでしたか。もう春ですね」
    「そうだね。春だ。もうすぐ暖かくなる」
    「では、暖かくなる前にもう一度食べに行きますか。おでん」
    「良いね。やっぱりあれは寒いうちに食べないと」

     そんな話をしながら、二人は命蓮寺の正門をくぐる。ナズーリンが留守中の見張りを頼んでおいた使いの鼠を呼んで話を聞いている間に、星は仕事のためにグッと気を引き締め、持って帰ってきた宝塔に改めて目を落とし……




    「……ナズーリン、宝塔がありません」
    「はぁ!?」
    「おでんを食べていた時は、あったのですが……」






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    ツイッターでのお題募集2つ目。お題は「冬と春の狭間にちょこっと散歩して春を見つける話(子連れ)」

    星とナズーリンを親子に例えて、散歩をする話にしました。最後は安定のオチ。
    意外と早く、また二人でおでんを食べに行ったことでしょう。

    春・・・といえば、渡り鳥のツバメが渡ってきますね。私の自宅にも毎年ツバメがやってきて巣を作ります。今年もすでに姿がちらほら。雛鳥の声が聞けるのが楽しみです。



    なんかプロ作家のあとがきっぽくなってる。本編後の小ネタとか近況報告とか


    内容に関する感想・ご指摘、ご自由にどうぞ。お待ちしています。



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