圧力鍋のじいさんの妄想
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圧力鍋のじいさんの妄想

2013-07-03 10:44
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 圧力鍋は怒っている。いつも怒っている。でもイライラしているだけで最後までは怒らないのだ。これはある意味紳士なのか。いや、イライラしている時点で違うか。

 私は鮭の中骨が好きだ。近所のスーパーで鮭のアラが安く売っていれば一度に一キロくらい買ってしまうくらいに。それで作るときに圧力鍋を使う。前は普通の鍋を使っていたのだけど身が崩れる。だからそれ用に圧力鍋を購入した。

 適当に下ごしらえして火にかけてやると、程なく上の排気弁から蒸気が出てくる。プシーって音がする。これが合図だ。圧力鍋のイライラが開始した合図である。さらなる怒りが爆発しないように火を弱めて蒸気がそれ程出ないように調節。

 定期的に「俺は怒っているんだぞ」と辺りに知らしめるためにプシーと鳴る。まるでじいさんが咳払いするような趣である。静かに、しかし確実に相手に認識できる絶妙な音量である。気むずかしいじじいは嫌われるぞ。と思うがそれを理解する脳みそはない。と言うか脳みそゆだっているのか。

 というか、プシーじゃなくてプッシーだったらとんでもないエロ爺だな。そういえばたまに蒸気穴が詰まったかのようにそうなることがあるなぁ。エロい妄想でゆだっているのか。まぁじいさんでも男だもんな。仕方ない。気の済むまで妄想するが良いよ。

 そんな感じでプシプシうっさい。私の住む狭い部屋の中だからどうあがいても聞こえるし、唐突に鳴るもんで結構驚くんだよ。本とか読んでられなくてさ、だからもう仕方ないからじいさんの相手をしてやるのだ。

「どうしたんですか、何かありましたか」
「プシー」(以後略)
(うるさい)
「いやぁ、もしかして寂しいのかなぁなんて思ったんですが。」
(そんなんじゃないわい)
「はぁ、そうですか。私の勘違いですね。すみません。」
(いや、まぁ・・・、別に出て行く必要はないぞ)
 なんてね。このツンデレ爺が。

 会話も途切れたので、近くで洗い物やらの作業をする。しかしじいさんは常に一触即発状態だから本当にうるさい。ほんの少しの衝撃でもすぐに短く「プシッ(喝)」って言い出すのだ。

(おい、うるさいぞ)
「すみません」
(ゆらすんじゃねぇよ、このやろう)
「すみません」
(食器洗うのに何でこんなうるせんだよ。)
「すみません」
(お前扱い方が荒いんだよ。もっと丁寧にやれよ)
「すみません」
(そんなだからガラスコップ買ってきたその日に割るんだよ。三日連続で。)
「すみません」
(お前直す気ねぇだろ、ていうか聞いているのか)
「すみません」
(おい)
「すみません」
(・・・)
「すみません」

 怒るのである。知ったことじゃないけど。触れなきゃさほど危険じゃないし。うるさいだけだからなぁ。逸触不発とでも言おうか。うん、うまくないな。

 そういえば前動画で怒り狂った圧力鍋を見たことがある。弱火にするのを忘れてとんでもないことになってた。蒸気穴から「シュゴー」って音が鳴っててさ。どっかにそのまま飛び立つんじゃないかと思えるくらいの噴出だった。いや、向き的には埋まるのだろうか、「シュゴー」って。今にも飛び立ちそうな音をさせといて埋まる。シュールだな。
 まぁマジレスすれば爆発するんだけど。

 そういえば、圧力鍋爆弾ってあったなぁ。この間も圧力鍋で爆弾が簡単に手軽に安く作れるとテレビで放映したとか。あまりの詳細さで、かつ、さらなる作り方はネットでどうぞと、さぁ皆さん作りましょうと言わんばかりだったとか。アホだなぁ。そりゃぁ顰蹙も買いますよ。

「そんなマスコミに対して、どう思われますか」
(喝)
「そうですか、でもつまらないですね。ありきたりですよ、その返しは。」
(・・・。逆ジャパネット。)
「あー売るんじゃなくて買っていると。ひんしゅくを。でも説明しなきゃ解らないのはボケとして致命的ですね」
(プシーーーーーー)

 怒るのである。蒸気を噴出させて怒るのである。もう止まることもなく気が狂ったように蒸気をあげるのである。
 あ。まずい。どうやら火が強すぎたようで、気付けば蒸気が噴出。とりあえず火を止めて、丁寧に鍋を蛇口の下に。流水で冷やしてやればすぐにおさまる。人間でも鍋でも水をぶっかければ落ち着くもんなんだねぇ。機会があれば怒れるじいさんに水をかければ良い。きっとすぐにおさまる。責任取らないけど。

 時間的にはもう充分だったので圧力鍋の蓋を開けることにする。鮭のアラである。うまそうな蒸気が立ち上る。じいさんの怒りは晴れて昇華した。じいさんのゆだった脳みそはうまい料理になったのである。悪いなじいさん。

 しかし味見をしてみたら、とんでもなくしょっぱい。じいさんの汗が濃縮されたのか、ボケに失敗したじいさんの涙なのか、はたまた単純にじいさんが高血圧だったのか知らないけど。とにかくしょっぱい。
 鮭のパックをゴミ箱からあさってみたら、しっかりと書かれていた。
 塩鮭。
 あ、塩抜いてない。
 くそう、なんで塩鮭だったり紅鮭だったりするんだろうね。どっちかにしろと。自分自身の確認の怠慢を棚に上げて思った。

 まぁいいか。飯を倍食えば良いのさ。
 あっ、だから太るのか。くそう、これがじいさんの仕返しか。なんて卑怯なやり方なんだ。
 あくまでも自分の責任を棚に上げたくなる日ってありませんかね。
 うん、いつかじいさんの怒りが爆発するかもしれない。


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 こういう妄想話、大好きw
 圧力鍋か。そういえば、使ったコトないな。便利らしいけどね。スジ肉とか骨付きのお肉なんかも圧力鍋使えば、美味しいカレーが作れるとか。
 でも、古くなってくると、普通に使ってても、たまに爆発しちゃうんだよね?圧力爆弾じゃなくても。
 プシ~じゃなくて、ボッコン!って大爆発!!ちょっと恐いな~
85ヶ月前
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>>1
コメントありがとうございます。

案外慣れると簡単ですよ。

爆発は確かに怖いですね。武器になるくらいですしね。
85ヶ月前
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