私を突然支配した考え「海苔を何とかしないとなぁ」の根本。
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私を突然支配した考え「海苔を何とかしないとなぁ」の根本。

2013-08-05 14:57
  • 4

 私は唐突に思った。バイト先から帰る道の途中で唐突にである。
「海苔を何とかしないとなぁ。」
 海苔は海苔である。板状に乾かされた海藻でできた海苔のことだ。

私は(もう何度も言っているけど)コンビニエンスストアでアルバイトをしている。コンビニのアルバイトのメリットとして廃棄処分の食品をもらえるというのがある。本当は法律的にはあまり良くないらしいのだけど、経営者の許可を取っているから大丈夫だろう。

 私がもらうのは大抵おにぎりである。海苔を食べるときに巻くタイプの方。私はアレルギーがあるので、それくらいしか食べられるものがないのだ。


 特に卵はひどくて、誰かが生卵を割った手で触った皿に触れると、触れた皮膚が腫れぼった感じになって三時間はかゆみが引かないくらいにひどい。だから、弁当でも明らかに卵を使ってなかったとしても、卵焼き一つ入っているだけで怖くて食べられない。
 まぁ今はそんなことはいい。


 で、もらってきたおにぎりなんだけど、これはすぐに冷凍庫に入れることになる。廃棄で回収した直後でない限りはそのまま食べることはない。というのも長時間冷蔵庫に入れられた米というのは、はっきり言って食えた物じゃないからだ。コンビニの期限切れのおにぎりを一時間ほど冷蔵庫に入れると、もう硬くて食えた物じゃなくなる。どういう仕組みかは解らないけど、常温保存から冷蔵保存に変えるとデンプンがβ化しやすいかもしれない。


 そういう理由から、もらうときにはすでに硬くなっていることが多い。そのまま食べたら菌的な問題ではなく腹をこわしてしまうだろう。
 しかし、硬いご飯もきちんとした調理をしてやればまた食べられるようになるのだ。コンビニのおにぎりに使われている米は良い米なので、むしろ普通のご飯よりもおいしくなる。

 土鍋に冷凍状態のおにぎりと1個あたり50mlの水を入れて蓋をして、とろ火で15分。これで炊きたてとほぼ同じになる。しかも具入りなのでそのまま普通に炊きたてご飯として食べられる。水の量を増やして雑炊にしてもいい。
 もしくは、常温解凍してから一度水に浸し、他具材と一緒に油で炒めてチャーハンにするのも良い。
 大体この二つの方法を私はよく使う。


 しかし、そうするとどうしても外装にある海苔が残ることになる。そして、なんかもったいなくて捨てられずに冷蔵庫に隠してしまう。一番下の野菜を入れるトレイの下の辺りに。結果、大量の海苔が冷蔵庫に眠ることになるのだ。
 存在はいつも見えている。でも、いつも「あとで良いや」と放置して、いつも見て見ぬふりをしてしまう。結局そのままにして忘れてしまう。


 そして、どういった拍子なのか、ふと思うのである。「海苔何とかしないとなぁ」と。


 別に海苔が嫌いという訳ではない。使い方だっていっぱいある。
 大量にあるならば佃煮にしてやればいい。少しピリ辛に、豆板醤とかみそとか入れてやれば夏でもおいしいだろう。適当な野菜でナムルにしても良い。和風のパスタに付け合わせれば良いし、少し待って秋冬にスープにしても良いし、おかゆや雑炊に入れても良い。料理をするのが面倒な日にインスタントラーメンに入れればいい。

 使い道を考えているときいろいろと想像すると、否応なしに腹が減ってくる。海苔という食材だけでも食欲を刺激するのには十分だ。
 けれど何で、使わないのだろう、と思うのである。思ってしまったのである。そして、よせば良いのに考えてしまった、「そういえばこんな事が前にもあった気がするなぁ」。そうしてよみがえる、あの夏の記憶。



 私は電車に乗っていた。その時は仕事に向かう途中で、クソ暑い夏の昼間だった。昼という事もあり、都心のラッシュに巻き込まれるという事も無かったので、座席に座っていた。何となくぼーっとしていて、ふと思ったのである。「海苔、何とかしないとなぁ」と。

 その時、実家からまるで当てつけのように送られてきた大量の海苔があったのだ。なんの嫌がらせなのか。まぁただの厄介払いだったのだろうが。その海苔を棚に隠して、私は見て見ぬふりをしていた。あるのは解っているが、その当時ほとんど料理をしなかったので、どうすることも出来なかった。

 それが唐突に、「何とかしないと」と思ったのである。不思議なこともあるものだ、そう思ってふと、何の気なしに見回した。

 人というのは自覚していなくても入力された情報というのはきちんと処理しているものなのだ。そして、何気なく思ったことと言うのは、無自覚に受け取っていた情報であるという事は良くあるのだ。
 何となくカレーが食べたくなったとき、目の前を通り過ぎた人がカレーを食べたあとだったとか。昔挫折したギターを思い出したとき、どこかからギターの音が聞こえていたとか。なぜか唐突に浮気は許せないと思ったとき、目の端で女性週刊誌の広告があったりなど、それぞれ無自覚に認識していたというのは良くあるのだ。

 見回した目が釘付けになったのは、とあるおっさんの頭だった。そのおっさんの頭だけが異質であった。夏のクソ熱い中、外を歩いてきた頭であるから、多少汗でしっとりしていたりと、そういうのは良くある。けれど、そのおっさんだけはどうにも違った。

 そう、海苔である。どうやったらそうになるのだろうと言うほどに海苔だった。素の頭に海苔を貼り付けたようで、どう見てもおかしい。カツラか、とも思ったけれど、実際どうなのか今でも解らない。
 どう見ても板海苔を貼り付けているようにしか見えない。毛量は無く(?)、頭の形がはっきりと解る。そこに所々うねった髪(紙?)が付いてテラテラと光っているのだ。
 私はあまりの気持ち悪さに目を背けた。私の近くに学校をサボったと思われる女子高生もいたが、彼女も私と同じ方向を見ていた。目を背けたのである。異様すぎて笑いにもならなかった。

 そのまま家に帰り棚を見れば大量の海苔、海苔、海苔。それをぼーっと眺めているウチに海苔と、件のおっさんの頭の区別が曖昧になって来た。ゲシュタルト崩壊である。海苔、海苔、頭、海苔、頭髪、海頭、頭苔、カツラ、海髪、髪頭、苔カツラ、海苔。
 どうしようもなくなって、気持ち悪くなって。そして、私はこのおっさんを海苔と一緒に記憶の奥底に沈めたのである。

 私はそんな過去に沈めたパンドラの箱を引き上げてしまったのだ。
 いけない、振り返ってはいけない。

 そう思ってしまったら、振り返ってしまうのが人というものである。

 小太りのおっさんが目に入った。まわりとは明らかに違うテラテラした髪だった。まるで頭に直接海苔の佃煮をかけたような頭であった。地肌の色が味付けご飯のようだった。電車のおっさんに異様さでは負けるが、食欲減退率は小太りのおっさんのほうがすごかった。

 マヨネーズで頭を洗っているのだろうか。

 ともあれ、その頭は海苔の調理方法をいくつも考えて、気分が乗り始めた私の気持ちを余裕でへし折ったのだ。私はまた、海苔と一緒にこの記憶を頭の深淵に沈めることにした。
 前の海苔は金銭的に困窮したときに、すでに消費期限の切れたその海苔を食って食いつなぎ消費できた。が、今は・・・・。
 いや・・・・もう、忘れよう。






 そして、きっと、すっかりと忘れた頃にまた思うのだ。
 「海苔何とかしないとなぁ」と。


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 卵アレルギーだと、大変だな~!食べる物なくなっちゃうね。パンでもクッキーでも、そこら辺の物にたくさん入ってるから。
 海苔たくさんあったら、ご飯食べる時に毎食使っちゃいそう。
 それにしても、髪の毛で海苔か~、この発想はなかったw
84ヶ月前
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>>1
コメありです。

そうなんですよ。食べるものが全然無くなってしまって。外に食べに行くのも怖くなってしまいましたね。
大抵は自分で作るので問題はあまり無いんですが、付き合いが・・・w
84ヶ月前
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 人って情報を無意識に処理してる、、、
 こういうことあると僕も思います。一瞬見ただけでも、ちゃんと脳で処理されて、その処理に沿った行動が行われるように。
 人間の視力では認識できないような速度で、TVで何度も石鹸の画像を一瞬一瞬流し続けると、その石鹸が欲しくなる人が続出するみたいな、こういうの聞いたことあります。
84ヶ月前
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>>3
コメントありです。

 サブリミナル効果ですね。まぁ無自覚に認識しているのはサブリミナル効果とは違うと言う人も居るみたいですけど、同じだという人も居るようです。

 案外人って言うのは自分の意思で生きているとは言いがたいのかもしれませんね。
84ヶ月前
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