No.045 祭祀の籠目 9.大和朝廷の籠目 (4)  「大國魂神社基準の籠目」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

No.045 祭祀の籠目 9.大和朝廷の籠目 (4)  「大國魂神社基準の籠目」

2020-02-27 11:43
    あらすじ 律令時代の各国国府をはじめとして、著名神社などの位置とよく一致する「生田神社基準の籠目」と「大國魂神社基準の籠目」(2つを合わせて「大和朝廷の籠目」と呼んでいる)。「大國魂神社基準の籠目」の導出の経緯と評価を行なう。

    このブログはなるべく多くの人に読んでもらいたいので、ツイート拡散か、次のボタンをクリックしてランキング投票してください。よろしくお願いします。


    原始・古墳時代ランキング

    にほんブログ村 歴史ブログ 考古学・原始・古墳時代へ
    にほんブログ村


    子午線の間隔を正確に決める

    前回示したように、図1のように関東には東西に等間隔に著名な神社や国府が配置されていることが分かりました。


    図1:関東の等間隔の子午線


    数値的にどの程度等間隔か計算してみましょう。

    試しに完全に等間隔な子午線を計算し、各拠点の位置との誤差を算出します。

    表1の(A)の子午線経度は各拠点の実際の経度です。

    表1の(B)の算出子午線経度は基準点を筑波山とし、子午線の間隔が 0.31253473度 とした場合の計算によって算出した経度です。

    すると、誤差が1%程度に収まるほど規則的に列んでいることが分かります。

    この誤差は子午線の間隔が 0.31253473度を100%とした場合のズレ量を%で示しています。


    表1:関東の拠点の位置と計算によって算出した等間隔点とのズレ量


    経度を見ると筑波山がズレ量がなく(経度の計算上の基準点のため)全体の基準点のように感じますが、筑波山山頂は結論から考えると方格の交点にはなりません。

    各地点から実測(マップ上でサンプルした座標)は表1内のA列の値ですが、作図上は計算に基づいたB列の値を使用します。

    これは完全に幾何学的、規則的に作図することて、図の恣意的な変更を避けるための措置です。

    筆者がマップ上で作図する籠目は、現代の地図上に現代の計算精度で規則的に作図しますが、同等の意図が古代人にあったとしても、その結果はその時代の測量精度やさじ加減によってズレが生じるということは念頭に置いてください。

    あくまで配置に規則性が見られるということを示すための基準線を引くための作画であって、当時の意図などを再現するためのものではありません。

    以上のようにして、経線については基準点と間隔が分かりました。


    緯線の間隔を求める前に

    次は緯線についても規則的な配置があるか確かめていきます。


    図2:籠目状方格のパターン


    筆者が着目している籠目状方格のパターンは図2のようになります。

    簡単に言うと昔の方格図や方眼図法といった地図(図3)のうち、緯線の間隔と経線の間隔の比が 1:√3 となるもので、地図の南北線(経線)が正確に南北となっているものです。


    図3:方格図の例:禹跡図(wikipediaより引用)


    図2のようなパターンから、経線間の距離を1/√3倍して緯線間の距離を出せばいいように思いますが、それだけでは済みません。

    経線間の距離は緯度によって異なるからです。

    また距離は地図ツールの計算方法に依存するため、緯度経度を使用して求めたいということもあります。

    ではどのように求めるのか?

    まずは正距円筒図法(方格図、方眼図法)のくせを知る必要があります。

    現代の地図図法でもっとも近い方式のものを正距円筒図法といい、世界地図で現わすと図4のようになります。


    図4:正距円筒図法の世界地図(脚注1を使用)


    メルカトル図法の世界地図(図5)と比較して、高緯度が南北に圧縮され、緯線が等間隔になっているのが分かります。


    図5:メルカトル図法の世界地図(脚注1を使用)


    何故、正距円筒図法や方眼図法(方格図)なのかという話は「古代の測量技術について」のシリーズを参照してください。

    No.019 古代の測量技術について  ~その1~
    No.020 古代の測量技術について  ~その2~
    No.029 古代の測量技術について ~その3~
    No.030 古代の測量技術について ~その4~
    No.032 古代の測量技術について ~その5~
    No.033 古代の測量技術について ~その6~

    正距円筒図法は図4を見れば分かるように、高緯度になるほど横に引き延ばされるという欠点を持った地図です。

    球体の表面を平面で表現する地図は全て何らかの歪みが生じます。

    メルカトル図法も高緯度になると大きく表示されるという欠点を持ちます。

    図4の正距円筒図法では、具体的には北緯30°においては横方向に1.15倍引き延ばされてしまいます。

    特に高緯度地方では使いにくいので、世界地図でなければ横幅を縮めて補正して使用します。(正距円筒図法を使用するメリットとしては南北の距離が正確であることが上げられます)

    緯度N度において縦横比が1:1になるように補正した正距円筒図法を、「標準緯線N度の正距円筒図法の地図」といいます。


    図6:標準緯線35度の正距円筒図法の世界地図(脚注1を使用)


    図6は標準緯線35度の正距円筒図法の地図で、図4の赤道を基準にした地図を経度方向に約0.82倍したもので、日本付近では縦横比がほぼ1:1になり、大和朝廷の籠目ではこのパラメータを使用します。

    標準緯線35度とする理由としては、大和朝廷の中心だった奈良盆地南部から京都の緯度が北緯
    34.4度~35度あまりであることが上げられます。

    北緯34度と北緯35度では経線の間隔が距離で1%ほど変わってしまうので、このあたりは改善の余地があるかもしれません。

    ここで疑問になるのは、古代に使用された方格図と現代の正距円筒図法がほぼ同等として、標準緯線のような概念が当時あったのか?という点です。

    基準となる緯度の北方は(基準となる緯度と比較して)経線の距離が短くなり、南方は長くなるという形で現れたハズです。

    「大和朝廷の籠目」が神社などの拠点の配置と良く一致するという結果は、古代の日本人がこのような測量上の特徴について気付いていたことを窺わせます。


    緯線の間隔の求め方

    さて、緯線の間隔の計算に戻りましょう。

    経線の間隔は北緯35度を基準にする場合、以下の式になります。


    緯線の間隔(度)=経線の間隔(度)x(0.820063385)÷√3


    (0.820063385)は図6の0.82のことで

    (緯度35度における経度1秒の長さ(m))/(赤道における経度1秒の長さ(m))
    =25.358/30.922 ≒ 0.820063385

    で得られます。

    コレは地球を球体と考えた場合のCOS(35度)= 0.819152044.. でもかまわないのですが、地球は完全球体でないため、wikipediaより経度1秒の緯線の長さを取得し計算しています。

    緯線の間隔(度)= 0.31253473 x (0.820063385)÷√3 = 0.147973887


    この間隔で、関東の主要な拠点の位置を測ると、大國魂神社の緯度を基準にした場合、緯線の間隔のほぼ整数倍に位置していることが分かります。(表2)

    ズレ幅が子午線のときと比べて大きくなっていますが、地図上で示すと図7のようになり、関東内の拠点数に対して、合致するケースが少ない気がしますが、緯線の間隔の計算は筆者の意図通りで良いように思えます。

    表2:関東の拠点の位置と計算によって算出した等間隔点とのズレ量(南北方向)



    図7:表2の各神社を図示した場合の位置(緯線は手作業で作図)


    大國魂神社基準の籠目

    このように求めた「大國魂神社基準の籠目」は次のパラメータからなっています。

    経度の中心 筑波山山頂 東経 140.1082167 度 実際の山頂より東に調整
    緯度の中心 大國魂神社 北緯 35.6674139 度
    経線の間隔 0.31253473 度
    緯線の間隔 0.147973887度

    図7を見ると、等間隔の緯線、経線の両方で交点に位置しているのは、大國魂神社と貫前神社になります。

    前回述べたように、大國魂神社は埼玉古墳群の真南に位置し、この籠目を発見するきっかけにもなっていますので「大國魂神社基準の籠目」と呼ぶことにしました。

    以上のパラメータにより、方格図を作図し、緯線と経線の交点を結ぶ斜線を引くと図8の図が得られます。

    (斜線部分は正距円筒図法(方格図)では、図上で直線となりますが、グーグルマップなどのメルカトル図法では直線とはなりません。図8を含めて斜線は微妙に曲線になっていますが、これは筆者の意図通りで間違いではありません)


    図8:大國魂神社基準の籠目


    図8のグーグルマップ版はこちら
    (表示後「主要拠点」と「生田神社基準の籠目」のチェックを外してください。
    グーグルアカウントへのログインが必要です)


    大國魂神社基準の籠目を見てみる

    さて、筆者は結果を知っているので、「神社などの拠点が籠目の線上に位置する」と言ってきましたが、本当にそのようになっているのか確かめてみましょう。

    関東の主要神社の特徴をヒントにして、全国的に一定の規則で作図したのが図8ですが、そのようなやり方で、「神社などの拠点が籠目の線上に位置する」なんてことが起きるのでしょうか?

    グーグルアカウントのある人は是非上記のリンクからグーグルマップ上で確認してみてください。(画像版のほうもクリックすると拡大表示されます)

    以下の図では特に国府、総社、国分寺について籠目に良く合うもの(今回は目視で判断)をピックアップして図示しました(図内十文字のマークの場所)。

    そのうち、「大國魂神社基準の籠目」の緯線や経線に良く一致するケースはその緯線や経線を太線で示してあります。

    各拠点が整然と籠目に合う位置に配置されていることが分かると思います。


    図9:大國魂神社基準の籠目(東北)


    東北は律令国数が少ないため、国府、総社、国分寺について取り上げるとケースが少なくなります。

    しかしながら、出羽国総社、陸奥国国分寺、佐渡国総社が籠目付近に立地します。

    籠目の子午線と一致するのは出羽国総社のみです。


    図10:大國魂神社基準の籠目(関東)


    関東は国府、総社、国分寺に絞ると一致しない拠点が多くなります。

    上野、下総はニアミス、安房、相模はまったく一致しません。
    (那須国府が表示範囲外で取りこぼしました。)

    ですが、等間隔に列ぶ様子や同緯度に列ぶ様子がよく分かるケースになります。


    図11:大國魂神社基準の籠目(中部)


    これまでは関東の拠点の分布を元に「籠目」の存在を予測したので、拠点の位置と合致してもある意味当然でしたが、この図11は「元々拠点に規則性が存在しなければ、合致するはずがない例」になります。

    作図した籠目が「予測値」であるとしたら、籠目との合致具合は「予測計算が実情に合っている」ことを示します。

    図内では越後国総社、能登国総社、加賀国総社、甲斐国総社、美濃国総社が良く一致します。

    このうち越後国総社、図11の下野国総社と甲斐国総社は武蔵国総社と同緯度に列んで存在します。

    良く合うケースがある一方、越前、信濃は全く合いませんし、越中はニアミスになります。


    図12:大國魂神社基準の籠目(東海)


    中部の例と重複がありますが、東海道の各国(伊勢、尾張、三河、遠江、駿河、伊豆)の拠点は全く一致しません。

    むしろ、この方が「普通」で、神社などの拠点の位置が自然発生的で、測量などによってお互いの配置が操作されていないならば、等間隔に引いた緯線や経線と合うわけがありません。

    例えば大國魂神社基準の籠目の緯線はほぼ16kmに一本の間隔で引かれていますが、緯線からの距離500mが「一致する」と考えると、緯線を中心に1kmの幅に入るケースが一致となります

    すると、拠点の配置が作為的でないならば、1/16の確率で「緯線と一致」となります。

    律令国は68カ国として4カ所あまりが「緯線と一致」なるはずですが、ここまで見てきただけでこの数を超えています。(国府、総社、国分寺が同じ場所にあると考えた場合)

    「大國魂神社基準の籠目」に合う/合わない地域が偏っている件については、後日取り上げるとして次の地域を見てみましょう。


    図13:大國魂神社基準の籠目(近畿)


    図13を見ると、緯線や経線に関して規則的な位置に立地していることが分かります。

    一方、「大國魂神社基準の籠目」に合わない例も多く、山城、若狭、摂津、河内、丹後、伊賀、播磨は合いません。

    この点については東海のケースと同様、後日取り上げます。


    図14:大國魂神社基準の籠目(中国)


    中国地方を見ると、山陽道以外は良く一致するようです。

    特に美作は丹波と同緯度、石見は近江と同緯度で、しかも緯線の最小間隔で並んでいます。

    籠目状方格が実際に存在すると考え得る良いケースです。


    図15:大國魂神社基準の籠目(四国)

    四国は4カ国の4つの拠点が大國魂神社基準の籠目の緯線か経線に一致するケースになっています。

    ここまでのケースを見て、多くの拠点が規則的に計算された大國魂神社基準の籠目の位置に合致することがよく分かっていただけると思います。

    中心点の経度、中心点の緯度、経線の間隔、緯線の間隔の4つのパラメータによって、これだけの拠点があらかじめ計算可能というのは偶然ではありえません。

    大國魂神社基準の籠目、あるいはそれと同等の「拠点を地理的に規則的に配置する意図があり、その測量が可能だった」からこそ、大國魂神社基準の籠目が拠点の位置を合致するのだと、筆者は考えています。


    図16:大國魂神社基準の籠目(九州)

    九州の例も、筑後国総社、日向国総社、薩摩国総社が籠目の緯線と良く一致し、(当時の)日本の南端まで、籠目に総社の位置を合わせる配慮が行なわれていると考えられます。

    同時に今回の「大國魂神社基準の籠目」の緯線間隔などのパラメータの精度が良いことも現わしています。
    (あくまで現代の地図上での話で、地殻変動の影響がどの程度あるかは筆者には不明です)

    特に肥後国国分寺や日向国総社はその敷地を籠目の軸線が通るほど良く一致しています。
    (もちろん、ノーコンピッチャーが「手が滑って」ど真ん中ストライクを投げるような、「結果が良くなる誤差」である可能性もあります)


    おわりに

    全体を通してみると、「大國魂神社基準の籠目」は畿内から遠い地方の拠点、国府、総社、国分寺のいずれかと良く一致します。

    しかしながら、一致しない一宮、式内社も相当数あり、これだけでは「籠目」のような考え方があるとは断定できないでしょう。

    筆者も全国的に籠目と拠点の位置が合うと分かって驚きましたが、その反面、一致しない地域が偏在することに疑問を感じました。

    「大國魂神社基準の籠目」には図17中の生田神社を通る経線や図18中の出雲大社を通る緯線が入っていないので、そのような軸線が重要だと考えていた筆者には拍子抜けでした。


    図17:生田神社を通る経線

    図18:出雲大社を通る緯線


    ならば、これらを含んだ「籠目」がまだあるのではないか?ということで再チャレンジとなったのが「生田神社基準の籠目」です。

    既に図8のグーグルマップ版で示してありますが、内容の紹介は次回以降とさせていただきます。


    このブログはなるべく多くの人に読んでもらいたいので、ツイート拡散か、次のボタンをクリックしてランキング投票してください。よろしくお願いします。


    原始・古墳時代ランキング

    にほんブログ村 歴史ブログ 考古学・原始・古墳時代へ
    にほんブログ村


    脚注1:地図投影法学習のための地図画像素材集を使用



    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。