• コラム ジャパンダートダービーと、2020ダービーシリーズを振り返る

    2020-07-14 18:00
    7月8日に行われたジャパンダートダービーは1強ムードが漂っていたが、レース史上最大の大波乱が待っていた。この結果に対して様々な声が飛び交う中で、ダート競馬全体を見据えた背景を、冷静に考える必要があると私は判断した。またこのブロマガでは今年、ツイッター上で簡単に各レースを振り返ってはいたが、世代全体について詳しく振り返る機会を設けていなかった。そこでこの機会にジャパンダートダービーを振り返るとともに、ダービーシリーズについても簡単に振り返ることにした。

    <タフな馬場で繰り広げられたサバイバル戦を演出し、頂点に立ったダノンファラオ>

    まずはジャパンダートダービーを振り返りたい。ハナを奪ったのは戦前に“逃げたい”という声も出していたダイメイコリーダで、これを追走したのがダノンファラオ。断然人気を背負ったカフェファラオは、この2頭を見る3番手で1コーナーに入っていった。

    そのダイメイコリーダが刻んだペースは、前半3ハロン35.9秒に同5ハロン61.3秒5ハロン61秒台前半は高速馬場の名残があった2011年(34.8-61.2秒)以来だが、近年は62秒を切るかどうかが平均だったので、数字だけ見れば特別速いといえない。しかし今年の春に全面的に砂を入れ替えてからの大井コースは、道悪になると時計がかかる傾向があった。その視点に立てば、数字以上にタフな流れだったといえるだろう。

    それが露見したのが3コーナーを迎えてからだった。ペースが落ちずに引っ張るダイメイコリーダダノンファラオに対し、3番手のカフェファラオ以下が、ここからついていけなくなる。すると前を行く2頭が4コーナーを回った時、後続は既に5馬身以上離されてしまい、最後の直線は2頭のマッチレースに。この競り合いは、残り200mを切ったところでダイメイコリーダを交わしたダノンファラオが制し、3歳ダート王の称号を得ることになった

    勝ったダノンファラオは、後続も力を使わずに追走しやすい中央の比較的軽いダートにおけるOP級では、後続に呑まれる競馬が続いていた。しかし追っかけた方が苦しくなるタフな馬場になったことで、速いラップで先行しても簡単にバテない持ち味を発揮できる条件が揃い、状態面の良さも相まって勝利を掴み取った1戦だった。2着のダイメイコリーダにもいえるが、今後もこういったタフさを求められる競馬になれば、力を発揮してくれるはず。もっともこの日のような馬場が、そう頻繁にあるとは思えないが。

    <カフェファラオが惨敗した、これだけの理由>

    一方で断然人気に推されながら7着と崩れたカフェファラオは、前走ユニコーンSの内容が強かっただけに、失望の声が広がった。その敗因として1コーナーで躓いたことでリズムを崩したことなど、様々な理由が上がっているが、私にはその前から気になる場面があった。それは枠入りの直前、口元から盛大に泡を吹き出したシーンが映ったこと。大した場面ではないかも知れないが、私自身はここに、レース前から平常心を保てていなかったことが示されていたと考えている。

    それを意識してパドックをもう一度見直してみると、力強く迫力満点で周回していた姿は、実は気負いだったのではないか。初物尽くしの環境に平常心を失い、消耗したことが、1コーナーで躓いたことなどに現れていたとすれば辻褄が合う気がする。そうであれば次に同様の環境になった際、克服する可能性は十分にあるけれど、更に指摘しないといけない話がある。それはユニコーンSで求められる能力が関係している。

    レース前日にツイッターでもつぶやいたが、ユニコーンSが春開催になった2001年以降、これとジャパンダートダービーを連勝したのはわずか3頭(注1)。だがそれ以上に注目すべきは、春開催になってからのユニコーンS優勝馬が、その後2頭(注2)しか2000m以上の古馬統一GⅠを制していないことである。

    つまり現在のユニコーンSは、後のチャンピオンディスタンスで活躍する馬を輩出するレースになっていない事実がある(注3)。更にかねてから指摘するように、東京競馬場のダートコースは特殊な適性を求められる傾向にある。つまりチャンピオンディスタンスで活躍する馬を輩出する競走としての可能性は、もはや限界を迎えていたのだ。それを棲み分ければいい気もするが、歴史的にJRA主催の競走は誤った認識を植え付けやすい。これを放置してしまえば、ダート競馬の未来に悪い影響が出る可能性もあると感じている。

    (注1)カネヒキリ、ノンコノユメ、ルヴァンスレーヴ
    (注2)カネヒキリ、ゴールドドリーム。3着馬まで広げても、サウンドトゥルーが加わるだけ

    (注3)昨年まで直近5年の優勝馬は、全てマイルの古馬統一GⅠを制している


    <ブラヴールの好走に見えた、南関東3歳世代のハイレベル>

    ここでは東京ダービー(6月3日・大井)の話を交えながら、南関東勢の走りを振り返りたい。地方馬最先着の4着に入ったブラヴールは、有力馬に数えられていた東京ダービーを、当日になってザ石により競走除外。ここから立て直して間に合わせてきたが、その仕上げでは最後方から脚を測る戦い方しかできなかったのも事実だ。

    それでも地元馬同士で発揮していた豪脚が通用したのは確かで、その意味では収穫は大きかったが、もし万全の出来だったらという想いも捨てきれない。もっと凄い脚で前に迫れただろうし、道中の位置取りも変わっていた可能性が。展開は間違いなくこの馬に向いただけに、全馬を差し切っていたシーンまであったかもしれない。それを今後の戦いで現実になることを、期待せずにはいられないだろう。

    その東京ダービーを制したエメリミットは、当時は序盤逃げたファルコンウィングに絡んで序盤のペースを上げさせると、一旦控えて直線で抜け出す味な競馬。ブラヴールの除外でレース全体が前がかりになる中、先行して差し馬を凌いだレース内容は中身が濃かった。戦前の前評判は高くなかったが、力でもぎ取った東京ダービー馬の称号だったと思う。

    今回も地方勢では1番前で戦ったように、東京ダービーと同じような戦い方を意識していたと思うが、向正面から追走に汲々としたのは相手のレベルが上がったから。それでも最後まで下がることなく6着に踏ん張ったなら、悪い評価は必要ないだろう。こちらも更なるスケールアップができるなら、中央勢相手に通用する未来はあると思っている。

    南関東全体を2歳戦から振り返れば、その時々の舞台や展開によって勝ち馬がコロコロ変わったものの、個々の勝ち馬は総じてレベルが高かった。ジャパンダートダービーにおけるブラウールの健闘は、それを証明するに十分だったと考えている。なお羽田盃を制したゴールドホイヤーは、5着に終わった東京ダービーのレース後に骨折が判明。首を長くして再起を待ちたいと思う。

    <1冠目を制した馬が軒並み勝てなかった、今年のダービーシリーズ>

    最後に今年のダービーシリーズ各競走から、すでに触れた東京ダービー以外に印象に残ったレースを、開催順にいくつか紹介したい

    先陣を切った九州ダービー栄城賞(5月31日・佐賀)は、地元無敗での戴冠を目指したミスカゴシマが、好スタートを切りながら控えたことでチグハグな競馬になってしまい、後方からの向正面まくりを決めたトップレベルに屈して3着に敗れた。
    どうしても地方競馬のダービーは初距離で迎えることが多いため、距離延長を受けて戦い方が慎重になりやすい今回のミスカゴシマはその落とし穴に嵌り、余所行きの競馬になったことによる敗戦とみている。しかし7月4日の古馬A級戦で見せ場なく敗れた走りを見ると、地元無敗という部分に踊らされた部分もあったかもしれない。


    歴史的に順当な決着が多かった東北優駿(6月7日・盛岡)は、人気を分けたグランコージーマイランコントルが、スタートから競り合う意外な展開。結果ハイペースとなり共倒れとなったところ、後方からレースを進めたフレッチャビアンカが、直線で先に抜け出していたピアノマンを差し切り、ダイヤモンドC2着からの巻き返しに成功した。
    これはスタートから3コーナーまで上り坂が続く盛岡2000m戦ゆえに起こった乱戦で、平坦の水沢コースだったら、あのペースでも2頭で最後まで押し切った可能性はあった。それだけコースの違いが結果に影響したといえ、またマイランコントルが6月28日のウイナーCを制したことから、2頭に力がなかった訳ではないことも申し添えたい。


    シリーズ8戦中、1番人気で制した馬は3頭いたが、その中で最も危なげなかったのが東海ダービー(6月9日・名古屋)を制したニュータウンガールだ。一連の路線で力関係がわかっていたことと、好位抜出の安定感ある戦い振りで、道中の3番手からアッサリ抜け出して楽勝。前哨戦に当たる1冠目を制した馬が軒並みダービーでは敗れた今年、唯一の2冠馬となったことも評価を高めた。
    ただしこのレース単体の盛り上がりを考えると、昨年まで別路線の競走として行われていたぎふ清流Cが距離短縮の上、6月4日に組んだのはどうだったのか。ダービーに向けた路線が一本道になってしまい、レースの興味が膨らみにくくなった嫌いがあり、今後路線の再検討をお願いしたいところだ。


    今年から1着賞金2000万円と、大幅に引き上げられたことが話題になった兵庫ダービー(6月11日・園田)は、1冠目の菊水賞で逃げ切ったステラモナークを制してハナを奪ったディアタイザンが、そのまま最後まで踏ん張って逃げ切り勝ち。重賞では苦戦が続いていたが、得意の単騎逃げを叶えたことで、ダービー馬の称号を引き寄せることができた。
    ただし近年、園田の中長距離重賞では、差し馬勢の無策による逃げ切り決着が目立つ。その傾向に助けられた凡戦という指摘をレース直後にしたが、一方で2番手から交わせなかったステラモナーク“いつでも交わせる”と思っただろうし、差し馬勢もディアタイザンの逃げなら“先行勢は怖くない”と感じたはず。人気薄の逃げだっただけに、その心理的な要因を無視して批判したのは、言い過ぎだったかもしれない。


    最後までわからなかった好勝負という意味では、勝ったアベニンドリームと2着に逃げ粘ったシンボが、長い直線でマッチレースを演じた北海優駿(6月18日・門別)も忘れられない。今期は2歳時の実績馬がほとんど残らなかった中、アベニンドリームは数少ない実績馬として牽引役を期待されていたが、1冠目の北斗盃では崩れていた。それだけにこの舞台で巻き返したことは、地区全体としても救われたと思っている。
    そして2着だったシンボはその後、7月12日に中央1000万下に遠征して勝利。これは芝だったとはいえ、北海優駿は出走馬のネームヴァリュー以上にレベルが高かったと感じ始めている。23日に迫った3冠最終戦王冠賞が、ここにきて俄然楽しみになって来た。


    総体的には質量ともに豪華だった南関東勢を除けば、統一グレード級で可能性を感じる馬は、現時点では見当たらなかった。ただしそれは、牡馬に関してはという話。牝馬は東海ダービーを制したニュータウンガールや、年明けデビューから無敗で石川ダービー(6月2日・金沢)を制したハクサンアマゾネスなど、充実している地方競馬の牝馬路線において、活躍を期待したくなる存在は登場したと思っている。
    もっとも牝馬の地方ナンバー1は、南関東牝馬3冠路線で2冠を達成し、関東オークスでも2着に入ったアクアリーブルで揺るがないだろう。距離が延びるにつれて粗削りなところが解消されたのも好感が持て、牡馬トップクラス相手にどこまで戦えるか、見てみたいとも思っている。


    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)


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  • ショートコラム “アフターコロナ”下で考えたい、新たな場外馬券売場の形

    2020-06-13 19:00

    今年に入って世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスは、経済活動のみならず、あらゆるスポーツ・エンターテインメントの活動を停止させてしまった。そんな中でも公営競技は、無観客開催や場外発売施設の閉鎖、競輪界で日本選手権の中止に象徴される開催縮小はあったものの、ひとりの感染者も出さずに続けてきたことは、奇跡に近いだろう。


    そしてここにきて感染拡大が一息つき、他種公営競技ではファンを入れての開催を再開した施設も出てきている。それと比べると競馬界の動きは遅れているが、岩手競馬が一部場外発売施設での発売を、明日6月14日の水沢競馬から再開すると発表。後を追うように愛知県競馬は6月15日、ホッカイドウ競馬は6月17日から一部場外発売施設での発売を再開すると発表している。


    ただし感染拡大期に小池百合子東京都知事が、営業自粛要請先に場外馬券売場(発売施設)を含めたように、リスクは低くない。特に小規模な施設では、一般的に用いられる換気の徹底や、入場時の体温チェックだけでは限界があると思っている。そうなれば感染リスクを抑えるために、発売施設への滞留を防ぐ、今までと違う運営方法を考える必要があるはずだ。


    その意味でJRAが“ライトウインズ”と称して、映像やオッズ情報を提供しない形で運営している施設は参考になる。だが私がそれと同等以上に非滞留効果のあるのではと、かねてから考えているのが・・・

    「レース当日分の払戻が出来ない発売施設」

    である。なぜなら場外施設に滞留する理由の1つに、当たった時にそれを軍資金として後のレースにつぎこみたいという欲望がある。その欲望を断ち切ることで滞留を防ぐことが出来るなら、小規模な施設であっても運用が可能になると考えているからだ。


    特に競馬は2日以上前に出走馬が確定するため、検討に費やせる時間が長い。他種公営競技との大きな違いがそこにあり、それ故に発売施設に来た段階で購入する馬券が決まっている人も少なくない。その意味で競馬界は“アフターコロナ”下でも、発売施設を運用する上での選択肢は多いはず。それが遠い未来に、発売施設そのものの増加という形につながる可能性もあると思っている。


    なお競馬場にファンの歓声が戻って来るのは、もう少し先になりそうだ。施設が広い割に特定の場所に人が集中しやすいことに加え、ファンから関係者に感染しない環境を考える必要もあるためだ。特に集団生活している厩舎関係者に感染者が出ると、長期の開催中止に追い込まれる恐れがある。それらを含めたリスクを下げるノウハウができてから、次のステップに進むことになるだろう。


    <おことわり>

    発売を再開するとした主催者でも、施設によっては閉鎖が続きます。そのため地方競馬発売施設ごとの再開状況については、各主催者や地方競馬全国協会のオフィシャルサイトで公開されている情報にてご確認ください。


  • コラム 間もなくダービーシリーズ2020-各地の3歳路線の現状は?

    2020-05-24 21:00
    全国各地でダービー馬が決まる“ダービーシリーズ”が、5月31日の九州ダービー栄城賞を皮切りにスタートします。新型ウイルスによって社会的活動が制限されている今、全てのダービーが無観客で行われる可能性が極めて高いのは残念ですが、それによってダービーの輝きが変わることはありません。そこで毎年このブロマガで紹介してきた、各地の3歳路線のダービーに向けた情勢を、今年も前哨戦の結果を交えながら、開催順に紹介することにします。

    おことわり・本コラムは、5月24日12時までに得た情報を基にしています。また現在は予想に関する活動を行っていないため、開催時に予想記事は掲載いたしません。ご了承ください。

    ・九州ダービー栄城賞(5月31日・佐賀2000m)

    佐賀生え抜きで地元戦では無敗を誇るミスカゴシマが、5月3日に行われた1冠目の九州皐月賞も制し、地元での連勝を10に伸ばした。無敗といってもその中にはヒヤリとするレースもあったが、それでも最後は勝ち切っており、逃げ馬ながら競っての強さを持っているのは大きな強みだ。これが地元無敗で戴冠できるかが最大の焦点で、その勝負強さを距離が延びても発揮できれば、現実のものとなるだろう。

    これを脅かす筆頭格であるトップレベルは、今年に入りミスカゴシマの2着が4回。いずれも差して届かずという内容だったが、ミスカゴシマ以外には今年負けておらず、また九州皐月賞でクビ差まで迫っている。これが力の差が詰まったことを意味していれば、距離延長を味方につけて、逆転する可能性もあるはずだ。

    またミスカゴシマが不在だった2歳重賞カペラ賞を制したリバイブが、同じ日に行われた古馬戦で戦列復帰。結果は出なかったが、この後の変わり身には注目したいところ。別路線組では、5月17日に行われたトライアルを制したアイノウィステリアが、中央未勝利から転入後、無傷の3連勝で出走権を手にした。この勢いでどこまで戦えるかにも注目したい。

    ・石川ダービー(6月2日・金沢2000m)

    5月4日に行われた1冠目の北日本新聞杯を制したのは、後方から鋭く追い込んできたフジヤマブシだった。今年に入って3戦連続2着と勝ち切れないレースが続いていたが、この勝利で改めてトップクラスの力があることを証明した。また2着だったストロングフーブスは連勝が4で止まったが、先行馬に苦しい流れを早目先頭で押し切ろうとした内容は秀逸。今期の充実度・順調度では、この2頭が一歩リードしている感がある。

    一方、2歳時に兼六園ジュニアCで前記2頭を破った後に休養していたハイタッチガールが、5月17日に復帰。ここでは反応が悪く2着に敗れたが、使われた上積みがあれば、当然本番でも勝負になるはず。そしてこれを破ったコードジェニックは、これが中央1勝からの転入初戦だった馬で、有力グループに突如割って入ったと考えている。

    同じ5月17日には牝馬限定のノトキリシマ賞が行われたが、4月デビューのハクサンアマゾネスが無傷の3連勝で制覇。年明けデビュー組には、北日本新聞杯当日に行われたA2戦を、これより0.3秒遅いだけのタイムで圧勝したトップロイヤルもいる。これらが一堂に会するなら、大混戦は必至といえるだろう。

    ・東京ダービー(6月3日・大井2000m)

    次から次へと有力馬が登場した今年の世代は、2月の雲取賞を制したゴールドホイヤーが4月29日に行われた1冠目の羽田盃も制し、実績面で一歩リードした。どちらもマイペースで逃げたファルコンウイングを、直線で楽に捉えて突き抜けており、落ち着いた流れになると一定のペースで走り切る持続力が活きてくる。同じような展開になれば、2冠達成というシーンも見えてくるだろう。

    一方で2着だったブラヴールは、前が止まらなかった流れを後方から鋭く追い込んで来た。先行勢が崩れた3月の京浜盃では差し切り勝ちを収めており、前が止まる流れなら自慢の末脚が本領を発揮する。その意味で流れが向かなくても結果を出した羽田盃の評価は高く、馬券的にはこちらが1番人気となる可能性が高そうである。

    別路線組では、ハイペースの乱戦となった4月15日のクラウンCで、4角先頭から押し切ったウタマロ。年明けから1戦ごとに力をつけている上、2着マンガンが5月6日の東京湾Cを制したことからもレベルは低くない。マイルまでしか経験していないが、距離延長を克服してどこまで迫れるかは興味深いところだ。

    この他にも重賞路線で差のない競馬をしているティーズダンクや、4月30日のトライアルを勝って権利を手にしたブリックオドーン。さらに4月28日に行われた東京プリンセス賞2着から参戦を目指すリヴェールブリスも地力は高く、ハイレベルの大混戦は間違いない。なお京浜盃2着のコバルトウィングは、昨年導入された新規定(中央在籍経験馬は、同期間に獲得した賞金額をカウントしない)により、出走できるか微妙。また昨年の全日本2歳優駿を制したヴァケーションは、年明け2戦とも着外に終わり、参戦を見送るという情報がある。

    ・東北優駿(6月7日・盛岡2000m)

    今年から1冠目に位置付けられたダイヤモンドCが5月3日に行われ、2歳王者グランコージーが、2着に9馬身差をつける逃げ切り勝ちを収めた。シーズンオフに移籍した南関東ではクラウンC6着の1戦だけで戻って来たが、パワーアップは明らか。2着フレッチャビアンカが今シーズン、奥州弥生賞スプリングCを連勝していたことを踏まえても、改めて抜けた存在であることを証明したといえそうだ。

    一方で昨年までのやまびこ賞に相当する、岩手の3歳世代にとって初めての1800m戦を5月17日に実施。ここを勝ったマイランコントルは、3月デビューから無傷の3連勝となり“ストップ・ザ・グランコージー”に名乗りを上げた。長い距離を経験できたことは強みだが、レース直前の雨で高速馬場になったことは留意しておきたい。タフさが求められない馬場状態だったからだ。

    この2頭を突き崩すとすれば、これと戦っていない存在が台頭するか、タフな馬場になって自滅するケース以外に考えにくい。特に今年はタフな盛岡コースに舞台が戻るので、有力馬も不安なく本番を迎えることは、なかなか難しい気がしている。

    ・東海ダービー(6月9日・名古屋1900m)

    近年1強ムードとなる傾向にあるが、今年ニュータウンガール1強ムードで迎えそうだ。5月1日に行われた1冠目の駿蹄賞で、2番手から余裕を持って抜け出し、これで重賞4連勝。絶対的なスピードを武器に無敗でこの舞台に立った一昨年のサムライドライブ(2着)、昨年のエムエスクイーン(1着)のような派手さはないが、好位から前を捉える戦い方は安定感抜群。乱戦に巻き込まれるようなことがなければ、勝利に最も近い存在だろう。

    その駿蹄賞で2着だったエイシンハルニレは、名古屋転入後4月2日の新緑賞まで、地元戦では4戦無敗だった馬。こちらはスピード能力の高さを武器にしており、駿蹄賞では捕まってしまったが、それを受けて今度はどういう逃げ方をしてくるか。それが上手く行けば、今度は逃げ切るシーンが見られるかもしれない。

    今年は劣勢気味の地元生え抜きでは、エムエスオープンに期待がかかる。今年に入り重賞2勝も、ニュータウンガールがいる舞台では3戦とも3着止まり。ただし末脚の破壊力は上位の存在で、前が崩れる展開になれば、大舞台での逆転もあるだろう。この他では4月21日の東海クイーンCを制したビックバレリーナ辺りで、気になる上がり馬は見当たらない。有力馬は絞られている印象がある。

    ・兵庫ダービー(6月11日・園田1870m)

    1冠目となる菊水賞は4月16日に行われ、それまで重賞3連勝中だったステラモナークが逃げ切り、1強ムードすら漂った。しかし確勝を期したはずの5月14日に行われた牝馬限定ののじぎく賞で、マイペースで逃げながらも5着に失速。馬体減や乾いた馬場に苦労したなどの敗因は見受けられるが、この敗戦によって混沌とした雰囲気が漂い始めたと思っている。

    そこで俄然注目を集めるのは、5月6日に行われた地元3冠2冠目の統一GⅡ兵庫チャンピオンシップで、地元最先着を争ったピスハンドとガミラスジャクソンだ。ピスハンドはいまだ1勝も、兵庫若駒賞と菊水賞で2着と重賞実績は豊富。兵庫チャンピオンシップでガミラスジャクソンとの競り合いを制したことで経験値を手にしていれば、檜舞台で頂点に立つ可能性は十分あるだろう。

    一方のガミラスジャクソンは、もまれ弱さがあって安定して結果を出せない馬。それでも1頭で走れる形になれば、1月に笠松に遠征したゴールドJrで最後方からの追い込みを決めたように、凄みを発揮する。極端な競馬しかできなくとも、力を発揮できる格好を作れれば、勝てる力はあると感じている。

    あと兵庫チャンピオンシップ未出走組では、2歳時に園田ジュニアCを制したイチライジン。菊水賞こそ4着に終わったが、この1戦で底を見せたとはいえず、巻き返しがあっておかしくない。なお2歳時に兵庫若駒賞を制したエキサイターは戦線離脱中で、本番までに戻って来る可能性は、ほぼないだろう。

    ・高知優駿(6月14日・高知1900m 地方全国交流)

    2歳時に金の鞍賞を制したレインズパワーが、5月3日に行われた1冠目の黒潮皐月賞でも2番手から抜け出し、1冠目を手にした。道営時代にフルールC2着にエーデルワイス賞7着と重賞でも上位を賑わせた経歴は、2歳時に高知へ転入した馬としては破格で、その素質は高知でも発揮している。転入後に唯一同世代に敗れた土佐春花賞3着も、流れに乗れなかっただけで力負けではない。遠征勢に対峙できる地力は、当然あると考えている。

    また5月23日に行われた、高知の3歳世代初の1800m戦となる準重賞は、マイネルヘルツアスが向正面からのロングスパートで制した。同馬は中央未勝利からの転入組で、転入後も好走を続けていたが、距離が延びて高い破壊力を披露した。昨年このレースを制したナンヨーオボロヅキは高知優駿も制しており、距離経験のアドバンテージは大きい。一躍逆転候補の筆頭に躍り出た。

    この準重賞で3着だったフルゴリラは、土佐春花賞と黒潮皐月賞でともに2着だった馬。距離にメドは立てたといえ、この経験を武器に逆転を目指す。一方でレインズパワーを土佐春花賞で破ったリワードアヴァロンは、準重賞で8着に敗れて株を下げた印象も、単騎逃げなら力を発揮するだけに警戒は怠れない。あと5月17日のマイル戦を好時計で制し、転入後2戦2勝としたアーヴィングが、間に合うようなら不気味な存在になる。

    ・北海優駿(6月18日・門別2000m 地方全国交流)

    7頭立てとやや寂しくなった1冠目の北斗盃は5月14日に行われたが、ハイペースの乱戦を唯一の牝馬レッドガードが、4角先頭から押し切った。2歳時に似たような乱戦模様となったブロッサムCで2着となったように、タフなレースになると台頭するタイプ。北海優駿前日に行われる古馬牝馬の重賞ヒダカソウCに向かうプランもあるようだが、出てくれば有力候補の1頭となるはずである。

    このレースで1番人気だったアベニンドリームは、2歳時に北海道2歳優駿2着と、今期残った北海道デビュー組では屈指の実績を誇る。今回はハナに行こうとして行き切れずに6着に惨敗したが、落ち着いた流れなら巻き返しを期待できるはずだ。また逃げて3着に粘ったシンボは、2歳秋以降は岩手の重賞戦線で好走を続けていた馬。以前は差す競馬が目立っていたが、これが持ち味を発揮する形なら、侮れないだろう。

    北斗盃に出なかった中では、今期が開幕した4月15日に行われたOP特別で、アベニンドリームに競り勝ったビービーガニアンが注目される。冬場に南関東で力をつけてきた馬で、この時の走りが本物なら、本番でも注目される1頭になる。ただし全体的な勢力図はおぼろげで、本番前の古馬戦で可能性を見せた馬が、いきなり素質を覚醒させる可能性も。地元の勢力図は固まらないまま、本番を迎えそうだ。