コラム 記録と記憶で振り返る「T(タルマエ)・L(リッキー)時代」
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コラム 記録と記憶で振り返る「T(タルマエ)・L(リッキー)時代」

2018-01-17 18:00
    日本競馬史で初めてGⅠ10勝に到達して2016年に引退したホッコータルマエと、昨年の東京大賞典でこれを塗り替えるGⅠ11勝目を手にして競馬場を去ったコパノリッキー。この2頭がダート競馬の主役として活躍していた、2013年からの5年間について後世語られる時、時代を象徴するライバルとして描かれるはずだ。ダート競馬の歴史において、長きにわたり頂点を2頭で争い続けた関係はそう多くない。それだけにこの2頭が積み重ねた記録と記憶を1つの形にまとめてみたいと思い、今回筆をとることにした。
    なお最後に2018年シーズンのダート競馬界も展望するので、少し長くなるがおつきあいいただきたい。

    ・時代の王道を歩み続けたホッコータルマエ

    まずは2頭の全成績を簡単に振り返ってみたい。生涯成績36戦17勝を残したホッコータルマエがデビューした2011年当時のダート競馬界は、歴史的名馬が綺羅星のように居並び、名勝負を繰り返していた黄金時代。この後継者として颯爽と登場したのが、2013年のかしわ記念で黄金時代最後の生き残りだったエスポワールシチーを破り、統一GⅠ初制覇を遂げたホッコータルマエだった。

    以降、翌年のフェブラリーSまで出走可能な全ての統一GⅠに出走し、この間に統一GⅠ5勝。一気にダート競馬界の頂点に駆け上がると、この実績を認められて2014年のドバイワールドカップにも招待された。残念ながら3年連続して出走した同レースで結果は残せなかったが、国内では毎年のようにGⅠタイトルを積み重ね、2016年の川崎記念でGⅠ10勝目に到達。この時点では不滅の偉業を成し遂げたと思った人が多かったはずである。

    何よりこの馬を語る上で見逃せないのは、絶えず人気を背負った上で結果を出し続けたこと。統一GⅠホルダーとなって以降は海外GⅠを含めて23戦連続でGⅠ競走に出走したが、その期間における国内20戦中、1番人気が実に11回。そして統一GⅠ10勝中7勝が1番人気での勝利だった。絶対的な存在ゆえにライバルからのマークも厳しかったが、それを乗り越えて勝ち続けたことは、改めて賞賛すべきである。

    ・チャンピオンディスタンスでも強さを発揮した“史上最高のマイラー”コパノリッキー

    そのホッコータルマエの快進撃を事実上ストップさせたのが、2014年のフェブラリーSを逃げ切って、統一GⅠホルダーとなったコパノリッキーだった。追いすがるホッコータルマエに最後まで影を踏ませなかったこの1戦は、統一グレード制定後では唯一である最低人気馬による勝利(注)。もしこれで終わっていれば、コパノリッキーは“最高の一発屋”といわれたかもしれない。

    しかし直後のかしわ記念を完勝し、フロック視する声を一掃。これで統一グレード戦線の主役グループに躍り出ると、この年は最終的に3つの統一GⅠタイトルを獲得。すると引退した2017年まで毎年複数の統一GⅠを制覇し、引退レースとなった昨年の東京大賞典でホッコータルマエを超える、GⅠ11勝目を手にして花道を飾ったのである。

    33戦16勝という生涯成績で特筆されるのは、マイル戦における強さだ。GⅠ11勝中7勝がマイル戦だが、これはエスポワールシチーと並ぶ記録。ただし7敗あったエスポワールシチーに対し、コパノリッキーはわずか2敗であることから“史上最高のマイラー”の称号を与えるにふさわしい。それでいながら2000mの統一GⅠも4勝し、チャンピオンディスタンスでも力を発揮したことは、高く評価すべきだろう。

    一方で統一GⅠ出走23戦中、1番人気は8回に止まり、勝利もマイル戦の3回のみ。これだけの実績を残しながら馬券で評価されなかったのは、最初のインパクトが残っていたためかもしれない。

    (注)1997年4月の統一グレード制定前であれば、1996年のマーチSにおけるアミサイクロンの例がある

    ・直接対決は五分も、中身でコパノリッキーに軍配が上がる

    ここからは2頭の直接対決を振り返りたい。初対戦となった2014年のフェブラリーSからホッコータルマエの最後のレースとなった2016年のJBCクラシックまで、同じ時代に競い合ったのは約3年間。その間に同じレースを走ったのは10度あるが、統一GⅠに限っても年間8度対戦可能なことを考えれば、少ないと感じる人もいるかもしれない。その理由をまとめると、以下のようになる。

    1.3度の海外遠征があったホッコータルマエに対し、国内に専念したコパノリッキー
    2.ホッコータルマエが3連覇した川崎記念に、コパノリッキーは不出走

    3.マイルの統一GⅠで対戦したのは2回のみ


    そして対戦結果だが、まとめてみると興味深い結果が出た。こちらについても主な対戦データから紹介していきたい。

    1.対戦成績は5勝5敗の五分
    2.コパノリッキーが先着した競走は、全て1着となっている

    3.ホッコータルマエは先着しても、勝てなかったレースが3戦ある

    4.上位人気となった回数も5回ずつの五分だが、1番人気だった回数はコパノリッキー4回に対し、ホッコータルマエ3回

    5.人気順と結果の相関関係でいえば、人気のない方が先着したのが6回。1番人気で勝ったのは、どちらも1回ずつしかない


    ここまで拮抗した数字が出るとは思わなかったが、その中身でコパノリッキーが上回っていたことも、私自身意外に感じた。というのも2000m級でコパノリッキーが先着した3戦中2戦で、ホッコータルマエは海外遠征帰りだったように、臨戦過程の差が結果に現れていた部分があったから。ただしそれをもって事実を捻じ曲げることはできないので、コパノリッキーに軍配を上げることに対し、ためらいも感じる人はまずいないはずだ。

    その背景を考察すれば、逃げるコパノリッキーを潰せる力を持っていたのが、ホッコータルマエしかいなかったという事実に行きつく。楽に行かせれば捕まえられないし、潰しにいけば差し馬の台頭を許す。その役割をホッコータルマエが背負い続けたことは、王道を歩み続けたがゆえ、余計に苦しい立場に置かれたのかもしれない。それだけ力を出せる形になった時のコパノリッキーを、誰も止められなかった訳でもあるのだが。

    ・唯一のマッチレースを見せてくれた、2014年12月29日

    それも関係しているのか、この2頭で1-2着となったレースは、わずか2回しかなかった。負けた方が崩れてしまう関係だったことは、見る側に立てばライバル関係を希薄にさせたかもしれないが、それもお互いの強さを意識するがゆえ。逆にいえば双方が持てる力を発揮し、他を圧倒した競馬がほとんどなかったことを意味するが、そんな例外といえる1戦が2014年の東京大賞典だった。

    レースは好スタートを切ったホッコータルマエを制し、コパノリッキーが逃げる展開。この2頭に対するプレッシャーは厳しく、向正面で捲ったロイヤルクレストが一旦先頭に立つシーンもあったが、2頭はこれに激しく抵抗。3コーナー過ぎには2頭で抜け出す形に戻り、そこからプライドをぶつけあう競り合いが始まった。最後は残り200mで突き離したホッコータルマエが制したが、これはホッコータルマエのベストレースといえる走りだったし、コパノリッキーも2000m級で戦えることを真に示した意義ある結果。そしてこの1戦があったからこそ、2頭の輝きはより強くなったと思っている。

    ・これから期待したい“馬産地での戦い”

    ホッコータルマエのベストレースを紹介したのだから、コパノリッキーのベストレースも紹介しなければいけないが、私は2016年のマイルチャンピオンシップ南部杯を選ぶ。満を持しての初参戦となったレースで、ホッコータルマエや過去2年の覇者ベストウォーリアらを圧倒し、1分33秒5の大レコードで快勝。しかも当時の盛岡競馬場は実質馬場の外半分だけで競馬をしていたので、それによる距離ロスを考慮すれば実質1分31秒台という試算も当時出させていただいた。スピードで他を圧倒するコパノリッキーの真骨頂といえる内容で、このレコードが破られる姿は、私は見られないものと考えている

    競馬場での2頭を駆け足で振り返ってみたが、これからより厳しい戦いが待っている。既に昨年より供用されているホッコータルマエに続き、コパノリッキーも今年から種牡馬として、新たな戦いに身を投じることになるからだ。近年はダート競馬で活躍した種牡馬の人気も高まっており、サイアーランキングの上位にも顔を出すようになっている。それが2頭の成功を約束しているわけではないが、これまでダート競馬で活躍して種牡馬入りした馬たちより、恵まれた環境でスタートできることは大きいだろう。

    ただ裏を返せば、それだけ成功への期待が高いことでもある。この2頭が種牡馬としても成功を収めれば、ダート競馬は質量ともに充実し、更なる発展を期待できるはず。その意味でもこの2頭には、ダート競馬の未来を託せる名馬を数多く輩出し、第2のライバル物語を繰り広げてほしいと願っている。

    <2018年のダート競馬・・・核となる候補はどこにいる?>

    最後に昨年末の東京大賞典の戦評記事を掲載した時に積み残した、2018年のダート競馬をここで展望したい。今年は次なる主役候補を見定める年と誰もが感じているが、その期待が最も高いのは、昨年統一GⅠ2勝のゴールドドリームだろう。ただしこれまでのレース内容から、距離に対する限界が見えているだけでなく、今後は地方の馬場を使わないことも示唆している。そうなれば活躍の場は限定的なものとなり、ダート路線の核になるかと問われると、疑問を感じずにはいられない。

    では私が期待する馬は何か。まず取り上げたいのはケイティブレイブだ。逃げると思われた昨年の帝王賞で、出遅れから笑撃的な追い込みを決めた1戦は記憶に新しいが、本来は徹底先行で力を出すタイプ。昨秋はそういった競馬を見せなかったことに何度も不満を述べたが、東京大賞典でコパノリッキーにケンカを売ろうとした姿に、フロントランナー役を引き継ぐ覚悟を持っていたか。そうであれば、今年は飛躍の年になると感じてならない。

    そしてもう1頭、テイエムジンソクも取り上げておきたい。遅れてきた大物として1番人気に支持されたチャンピオンズCで、完璧な競馬でコパノリッキーに競り勝った内容は、強烈な印象を与えた。結果は2着だったがまだ底を見せておらず、成長する余地もあるだろう。早速、今週末に行われる東海Sに出走予定だが、そこを勝利でスタートできるようだと、統一GⅠタイトル獲得も現実的な目標になるとみている。

    これに昨年のJBCクラシックで統一GⅠ3勝目を挙げたサウンドトゥルーに、昨年韓国遠征を含めて重賞3勝とブレイクしたロンドンタウン。さらにまだ終わったと言い切れないアウォーディーらが絡んでいくだろう。これにヒガシウィルウィンなどの地方勢が絡めばより盛り上がるが、この展望の賞味期限は春まで。それだけ現3歳世代のレベルは高く、秋にこの世代が一気に呑み込む可能性までありそうだ。そのため今年の春は、既成勢力にとって地位を築く最後のチャンスかも知れないと考えている。


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