コラム ヤングジョッキーズシリーズと31勝ルール
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

コラム ヤングジョッキーズシリーズと31勝ルール

2018-01-19 21:00
    昨年、デビュー間もない若手騎手が各地に集結し、年間を通して腕比べをした“ヤングジョッキーズシリーズ”が創設された。中央・地方を横断する年間イベントとしても注目を集めたが、若手騎手の台頭が難しくなった近年の競馬界に対する危機感から生まれたもの。とりあえず1年を終えたことで見えてきた課題を、ここでまとめてみたいと思う。

    ・間延びしたトライアルラウンドに商品価値はあったか

    改めてヤングジョッキーズシリーズ(以降、YJS)のシステムを紹介すると、4月1日時点で所属主催者から減量を受けている騎手(一部主催者で導入している“女性騎手に対する1キロ減”は対象外。以降“減量騎手”)全員参加で、ファイナルラウンド(以降“FR”)を主催する大井・JRA以外の全11主催者でトライアルラウンド(以降“TR”)を実施。その成績上位者が年末のFRに出場し、4レースの合計得点で減量騎手ナンバー1が決められた。

    そしてYJS初代王者となったのは、船橋の臼井健太郎騎手。TRで東日本1位となった勢いと、FR初戦で断然人気馬を引き当て勝利したアドバンテージを活かして、その栄誉を勝ち取ることにつながった。

    ただし年間を通じてYJSが盛り上がり、注目を集めたかといわれると、厳しい評価が必要だろう。その根本にあったのが、TRが4月の高知からから11月の浦和まで、時間をかけ過ぎたこと。そのため継続的に興味を持ち続けることが難しく、個々の主催者における盛り上がりも出場騎手に左右される傾向があった。

    これを改善するために、TRは夏場など3ヶ月程度の期間に集約し、毎週どこかの競馬場で実施する形を提案したい。見る側も継続性を得られるし、その年の春にデビューした新人なら、ある程度の経験を積んだ上で参加できる。短期間になれば参加騎手の割り振りや、負傷などによる急な参加騎手の変更も対応しやすいはずで、多くのメリットがあると感じるのだが。

    ・所属によって得られた経験値に差が出るシステム

    またYJSは、所属主催者(地区)以外での騎乗機会が乏しい減量騎手に多くの競馬場を経験してもらい、成長の糧としてもらう意図もあった。そのためには当日の対象レース以外にも積極的に騎乗してほしかったが、期待ほど多くなかったと感じている。

    この理由については憶測でしか述べられないので避けるが、一部には積極的に騎乗していた騎手がいたのも事実。対象レースとは別に強制的に騎乗機会を用意する手もあったかもしれないが、多くの主催者はエキストラ騎乗に減量を認めていた。これを有意義に使ってほしかった気持ちは、正直抱いている。

    またこれに関連するが、中央所属騎手は2ブロック、地方所属騎手は3ブロックに分かれ、その枠内でTRの参戦競馬場とFR進出騎手を決めたのもどうだったか。特に南関東所属騎手は乗り慣れている南関東だけでTRを消化することになり、YJSの理念に沿っていたとはいえないだろう。TRの騎乗数が4~8と差が出たことも含め、所属によって得られた経験値に差が出ることになったのは残念である。

    ・最大の問題は“平等ではない出場資格”

    だがYJSの最大の問題点は、その出場資格にある。というのは減量騎手という出場資格は一見平等のように見えるが、実は主催者毎に減量騎手の規定が違う。つまりどこに所属しているかによって、出場できたりできなかったりがある訳だ。

    それもあって一部地方競馬主催者には、減量規定をJRAのそれと統一する動きもあったが、まだ取り残されている主催者もある。例えば昨年4月に兵庫県競馬でデビューして、それまでの新人最多勝利記録を更新した永井孝典騎手の勝ち星は36勝。この数字なら2キロ減で騎乗できる主催者もある中、彼は既に減量騎手を卒業している。もし昨年と同じルールで今年YJSが行われるなら、彼は参加できないことになるのだ。

    YJSの主旨にもつながるが、若手騎手の育成はどの主催者も待ったなしの状況。そのために減量規定の緩和を通じ、騎乗機会を増やす手助けは必要で、未来のスタージョッキーを誕生させる後押しをしてもらいたいもの。特に前述した兵庫県競馬は、国内の主催者で唯一2キロ減からスタートする。他の主催者と同様に3キロ減でスタートさせることで、不平等を解消することを切に願うところである。

    ・JRAは31勝ルールの対象に騎手交流イベントを

    最後に減量騎手に関係するJRAの“31勝ルール”を取り上げたい。JRAでは31勝以上の実績がない減量騎手は、JRAGⅠに騎乗出来ないことになっている。同様のルールは南関東でも導入されているが、減量特典の軽減および卒業とは別に大きなハードルと位置づける向きもある。ただこの31勝という数字に、ある定義があることをご存知だろうか。

    それは対象となる競走が“JRA主催で行われた競走”“JRA所属馬に騎乗したJRA以外の競走”(注)であること。ということはYJSの場合、JRA中山競馬場で行われたFR分を除けば、31勝ルールの枠外に置かれた競走なのだ。以前にも主催者や団体などを基に記録を分断することに疑問を呈したことがあるが、これも意味合いとしては同じものである。

    今回のYJSをはじめとするJRA主催ではない騎手交流イベントは、JRAの派遣により初めて騎乗できるもの。オファーを受けて統一グレードや条件交流戦に騎乗することと同等に扱うことに対し、特段の問題があるとは思えない。逆に問題があるなら、騎手交流戦や若手騎手戦など騎乗できる騎手に制限のある競走は、JRA主催の競走でも除外すべきという考えだってできるのだ。

    もしYJSをはじめとする騎手交流イベントが31勝ルールの枠内に入れば、中央所属騎手のモチベーションを上げることにつながるし、有望な減量騎手にチャンスを与えやすくなる。エキストラ騎乗の成績まで認めるのは困難だとしても、騎手交流イベントについては31勝ルールの枠内に入れることを、JRAには是非とも検討してほしいと考えている。

    (注)厳密にいえば“地方競馬で実施される指定交流競走”“JRAが指定する海外の重賞競走”で、JRA所属馬に騎乗した時。これはJRAの年間表彰である「JRA賞」において、最多勝などの選考・表彰でも用いられている基準である。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。