「東京大賞典」戦評-2018年のグランドフィナーレも3歳馬! オメガパフュームが古豪撃破で世代交代完了へ
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「東京大賞典」戦評-2018年のグランドフィナーレも3歳馬! オメガパフュームが古豪撃破で世代交代完了へ

2019-01-07 19:00
    ホッカイドウ競馬の、そして地方競馬の夢を乗せて懸命に逃げるスーパーステション。これに歴戦の雄はもちろん、下剋上を狙う新鋭たちが襲い掛かり、最後の直線における攻防は近年にない迫力だった。全ての馬が全力を出し切った競り合いを制したのは、後方でじっくり脚を溜めていたオメガパフューム。先に抜け出していたケイティブレイブを残り100m付近で交わすと、喰らいつくゴールドドリームを4分の3馬身振り切ってゴール。統一GⅠ2着2回の無念を乗り越え、待望の統一GⅠタイトルを手中に収めた。

    <2度の統一GⅠ2着から最適解を見つけた、オメガパフュームのロングスパート>

    レースは戦前の予想通りにスーパーステションが逃げたが、これにアポロケンタッキーが絡んでいったことで、前半1000mは61.2秒。時計がかかる傾向にあったので、これでも相当なハイペースといえ、道中の馬群はバラバラ。一方で上り3ハロン39.6秒は、2000mになってからの東京大賞典では最も遅く、それだけ息が入らない消耗戦になったことが窺える1戦になった。

    勝ったオメガパフュームのスタート直後は、後方から3~4頭目あたり。それまでの競馬と比べても位置取りは後ろで、期待してみていた人は不安を覚えた人も多かっただろう。事実、向正面で上昇した時には既にミルコ・デムーロ騎手の手は動いており、負ければ早仕掛けと批判されていた可能性もあった。ところがその勢いを保ったまま4コーナーでゴールドドリームの外まで追い上げ、最後にもう1段ギアを上げて先行馬を抜き去ったのだから、とてつもないロングスパートを決めたことになる。

    振り返ってみると、ジャパンダートダービーは好位で流れに乗りながら直線でもたつくシーンがあり、JBCクラシックはケイティブレイブに動きを合わせたことで仕掛けが遅れた。この2戦から導き出したのが、道中は周りに惑わされずに後方から進める、今回の戦い方ではなかったか。久々に手綱を取ったミルコ・デムーロ騎手がその最適解を見つけ、その通りに導いたのが、今回の勝利につながったと思っている。

    ところで予想の段階で、この馬に対して他馬より秀でた武器があるのかと指摘したが、今回の戦いでそれが“バテない末脚”であることを教えてくれた。その意味では消耗戦になった展開の後押しがあったといえるが、自分自身の戦いに徹すれば、今後も展開不問で最後は飛んでくるだろう。もっともミルコ・デムーロ騎手は、最大のライバルであるルヴァンスレーヴの主戦騎手でもある。かち合えば相手に乗るのは間違いなく、他の騎手でも同じような末脚を繰り出せるのか、課題になるかもしれない。

    <完敗に終わった“元”王者たち>

    2着に入ったゴールドドリームは、終始ケイティブレイブをマークする位置での競馬。マイルチャンピオンシップ南部杯における対ルヴァンスレーヴに重なる戦い方だったが、当時と同じように勝負所での反応が悪かった。それが直線に向いた時、前のケイティブレイブ、外のオメガパフュームに行く手を阻まれる要因になった。もし反応の悪さがなければ、オメガパフュームに被される前に、ケイティブレイブに並びかけられたはず。残念だがそこに、勝つための底力がなかったことが証明されていた。
    しかし俯瞰で見ると、相撲でいう変化やいなし技で重箱のスミを突く振る舞いではなく、真っ直ぐぶつかる力勝負だった。だからこそオメガパフュームとの差が如実に出たともいえるが、それでも最後にケイティブレイブを差し切ったのは、既成勢力の中で評価を変える力にはなった。そこを認めつつも、なぜ今までやらなかったのかは理解できないのだが。


    ケイティブレイブはJBCクラシックを制した時のように、先行勢を行かせる形で機を窺っていた。そして直線半ばで先頭に立つまではイメージ通りだったと思うが、オメガパフュームに抵抗できず、最後はゴールドドリームにも交わされて3着に終わった。2度目の対戦でオメガパフュームに屈したのはともかく、正攻法の競馬をやったゴールドドリームに先着を許したのは、さすがにいただけない。1年以上同馬に先着できていないことからも、既成勢力を代表する2頭の力関係は固まったといえそうである。

    そしてこの1戦から船橋所属となったサウンドトゥルーは、序盤最後方から懸命に追い込んだが、4着止まり。環境や鞍上が変わったことで慎重になったとしても、やりたい競馬をスケールアップした形でオメガパフュームにやられた形ではなかったか。個人的にはこの馬が長年守って来た、追い込み馬のトップホースとしての立ち位置を、後輩に譲ることになった1戦と考えている。

    <レースを盛り上げた助演男優賞・スーパーステション>

    このレースを盛り上げた立役者は、スーパーステションだったことに疑う余地はない。好スタートからハナを奪い、絡んできたアポロケンタッキーを振り切って直線半ばまで先頭を守った走りは、感動すら覚えるもの。結果こそ6着だったが、今期ホッカイドウ競馬で古馬中長距離重賞完全制覇を果たした実力が、統一GⅠで通用したことは十分示すことができた。
    併せて言いたいのは、今回オメガパフュームにつけられた0.8秒差は、能力差ではなく経験値の差であること。冒頭でハイペースと記したが、ペースを落とせなかったことよりも、絡まれてプレッシャーがかかったことの方が影響は大きかった。それに負けない強さを身につけるには、今後も積極的に統一グレードで戦う必要があるが、地元には条件が合う舞台がない。移籍を勧める意味ではないが、ホッカイドウ競馬の顔という評価を捨てる覚悟も、求められるかもしれない。


    あとは一部の3歳馬に触れるが、5着のエイコーンは終始内々を回り、直線に向いて一瞬抜け出さんかのシーンを作った。初OPが大舞台になったが、距離得があったにしてもこれだけ走れるなら、今後の期待が高まる。まずは統一グレードタイトルを手にして、強力な3歳世代の一角として加わる必要があると思っている。

    7着には直線大外を伸びた、南関東移籍初戦のワークアンドラブが喰い込んだ。自身の競馬に徹した走りで、ホッカイドウ競馬時代に歯が立たなかったスーパーステションに2馬身差まで迫った。力をつけているのは間違いなく、南関東に残れば重賞戦線で活躍できるだろうし、ホッカイドウ競馬に戻るならスーパーステションとの対決が話題になるだろう。

    期待したモジアナフレイバーは、課題だったスタートを決めたものの、その分だけこれまでより前の位置取り。結果ハイペースに巻き込まれて脚をなし崩しに使ってしまい、9着に終わった。出遅れた方が良かった訳ではないが、もっと末脚を信じて後方で我慢できれば、違った結果になったのではないか。全体を見渡してこの馬だけが、持てる力を発揮できなかった印象がある。

    <2019年のダート競馬界・・・明け4歳世代の戦いに、古豪はどれだけ抗えるか>

    最後に2019年のダート競馬を展望したい。2018年は秋を迎えて3歳世代が席巻し、同世代からルヴァンスレーヴとオメガパフュームの2頭が古馬統一GⅠを制した。過去に複数の3歳馬が古馬統一GⅠを制したのは、アドマイヤドン(JBCクラシック)とゴールドアリュール(東京大賞典)が制した2002年だけ。それだけ歴史的な年だったといえるだろう。

    中でも2歳時から世代の頂点に君臨したルヴァンスレーヴは、早くも歴史的名馬への階段を登り始めている。しかもデビュー当初は常識にかからない姿も見られたが、チャンピオンズCでは2番手から抜け出す競馬を披露し、精神的な部分の成長も顕著。課題らしい課題がほとんどなく、2019年はこの馬に同世代のライバルがどう臨むのか、そして私たちに見たことのない世界を見せてくれるのかが最大の焦点と思っていた。

    ところがルヴァンスレーヴについて、年末に脚部不安を発症し、次走に予定していたフェブラリーS出走を白紙にしたという情報が入った。これで故障が長引けば残念なことだが、それを補うだけの明け4歳世代が次から次へと台頭しており、競馬場の盛り上がりは失われないはず。その筆頭格は現時点ではオメガパフュームだが、その地位を脅かす役者は中央・地方ともに満載。これから台頭する馬も含め、1戦1戦が見逃せない戦いが繰り広げられるはずである。

    一方でゴールドドリームやケイティブレイブなどの旧勢力は、王者ともてはやされた過去を否定し、チャレンジャーに戻らなければ壁にもなれないかもしれない。それでも彼らが抵抗できないなら、世代間の争いが消え、味気ないダート路線になる可能性もある。そのためにもあっさりフェードアウトせず、路線を支えてきた意地を見せもらうことを、併せて期待したいものだ。

    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)

    このあと、2018NARグランプリに関するコラムを掲載します。


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