「ジャパンダートダービー」戦評-兄に肩を並べたクリソベリル。兄を超えるために待つイバラの道
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「ジャパンダートダービー」戦評-兄に肩を並べたクリソベリル。兄を超えるために待つイバラの道

2019-07-12 20:00
    まだ20年ほどの歴史とはいえ、無敗でジャパンダートダービーを制したのが2001年のトーシンブリザードしかいなかったのは、芝を試そうとして成績表を汚すことも少なくなかったため。その中には批判を受けながら東京優駿に出走し、結果を残せず終わったシーンも数知れなかった。兵庫チャンピオンシップを無敗で制したクリソベリルも、5歳上の半姉にJRAGⅠ2勝のマリアライトがいる血統背景から、その道を選択したくなる状況にあった。しかしそれに目もくれなかったことで、史上2頭目となる無敗のジャパンダートダービー馬誕生につながったと思っている。

    <荒々しさのない、正攻法の競馬で横綱相撲を演じたクリソベリル>

    レースは大方の予想通りヒカリオーソが逃げ、2番手にはサクセッサーと南関東勢が先導。その後位に中央勢のロードグラディオデルマルーブルがつけ、隊列は早々に落ち着いた。ただしヒカリオーソが勝った東京ダービーで14.4秒まで落ち込んだ4ハロン目のラップは、今回13.0秒。前半1000mは東京ダービーより3.5秒も速い62.1秒と、淀みはないけれど決してハイペースではない、底力勝負になる流れとなった。

    この流れを勝ったクリソベリルは、デルマルーブルの直後を追走。これはデビュー2連勝を飾った時と似たような位置取りだったが、違ったのは強引に前を捕まえに行くのではなく、勝負所でもじっくり脚を溜めていたこと。少々乱暴な競馬をして勝ってきたのは、結果的に力の差がある相手だったから。手に負えない程の乗り難さはないので、いつでもオーソドックスな競馬ができることを、この舞台で証明したといえるだろう。

    そしてペースが落ちた4コーナー手前で前との差を詰めると、直線では一歩先にヒカリオーソを捉えたデルマルーブルの外から迫り、残り200mを切って抜け出しに成功。あとは後続に差をつける一方で、世代の頂点を射止めた。勝ちタイムが2分6秒1と、久しぶりに6秒台の遅い決着になったものの、5秒台後半の決着が続く近年との比較では許容範囲。どこにもケチが付けられない、横綱相撲で力を誇示した1戦だった。

    まだキャリア4戦と成長の余地を残す中で、これから始まる古馬との戦いでは、6年前に制した全兄クリソライトが成し得なかった古馬統一GⅠ制覇に期待がかかる。そのためには更なる賞金の積み重ねが必要なイバラの道が待ち受けるが、そのための選択肢として紹介したいのがシリウスSだ。ハンデ戦で厳しい斤量を背負うと思われがちだが、3年前にジャパンダートダービーを勝って参戦したキョウエイギア(8着)が56キロ。同レース2着から昨年制したオメガパフュームは53キロだったといえば、印象は変わるはず。ここに出て無敗の連勝をさらに伸ばすようなら、一気に兄越えが現実味を帯びてくると思っている。

    <見せ場作った南関東勢。影響否定できない超スローの東京ダービー>

    2着デルマルーブルの前に、地元勢の戦い振りを振り返りたい。地元勢で最上位の評価を受けたミューチャリーは、ほぼ最後方から。直線では馬群を捌きながら凄い脚を使ったが、アタマ差届かずの3着に終わった。手綱を取った御神本訓史騎手は、ペースが速くなると踏んでこの戦い方を選択したようだが、超スローで末脚を封じられた東京ダービーより後ろというのは、自身の能力を信じられなかったためではないか。レース全体の流れは勝った羽田盃に近く(注)、中団ぐらいで進めていれば勝っていたのはこちらだったかも。実にもったいない競馬だった。

    これまで早目早目の競馬をしてきたウィンターフェルは、今回は中団やや後ろから直線勝負に賭けた。直線で大外に持ち出して前に迫ったが、ラスト1ハロンで置き去りにされると、最後はミューチャリーにもアタマ差差されて4着。この戦い方に手応えはあったと思うけれど、今回も競り合いでの弱さは拭うことが出来なかった。どんな戦い方をするにしろ、1つ勝てば一気に飛躍する可能性はあるはすだが、その正解はどこにあるのだろうか。

    ハナを奪ったヒカリオーソは、東京ダービーのような超スローではなく、ペースを落とさない真っ向勝負の逃げ。残り200mの手前で捕まったが、ズルズル下がることなく5着に粘った。前走がフロックでないことは示したが、真っ向勝負で勝てるだけの地力に欠けることも証明された1戦。南関東ローカルならハナにこだわってマークが緩くなるのを待っても良いだろうが、それで統一グレードを勝てるほど、現状では甘くないと思う。

    総論として、東京ダービーとジャパンダートダービーの勝ちタイムの差は3.3秒。これだけ時計を詰めて勝負になったことからも、南関東勢と中央勢のトップクラスは互角に近い力量があると評価できるだろう。それだけに東京ダービーが異次元ともいえる低質なレースになっていなければ、もっと戦えたのではと思うと悔やまれて仕方がない。中央勢と地方勢の差の1つに、厳しいレースを経験する頻度にあるのだから。

    (注)南関東3歳3冠路線の、前後2ハロンを抜き出したラップ形態
           前半2F-中間部分<ハロン平均>-上り2F

    羽田盃(良) 23.9-64.6<12.92>-25.0

    東京D(良) 24.1-80.9<13.48>-24.4

    JDD(稍) 23.9-77.4<12.90>-24.8


    <先行策で結果を出したデルマルーブル。勝負付けが済んだとするにはまだ早い>

    ここからはクリソベリル以外の中央勢について触れる。2着に入ったデルマルーブルは、案外だった年明け2戦は、どちらも後方から追い込んで届かずという内容。好位からの競馬を選んだ今回は、スムーズに流れに乗って一度は抜け出したのだから、初コンビを組んだ戸崎圭太騎手の戦術変更が奏功したといえる。また今回はドバイ遠征帰りで調整が難しい中で迎えた1戦だったので、今回つけられた3馬身差は能力差と言い切れない。今日のような先行策が板につけば、差を詰めることも可能ではないか。

    クリソベリルと相前後する位置で進めたトリガーは、そのまま6着に流れ込んだ。北海道2歳優駿でも同様の競馬で5着に入ったように、タフさを求められる舞台でしぶとく戦える持ち味を発揮した結果だ。ただし条件クラスから再出発する中央では、これが活きる舞台が少ない。それを乗り越えてクラスを上げて行けるかが、今後の課題といえる。

    2番人気に推されたデアフルーグは、クリソベリルを終始マークして進めたが、直線で伸びず8着止まり。少し前に行きすぎた可能性はあるが、3走前にOP特別を勝った時が大乱戦に乗じた漁夫の利であり、底力勝負では厳しいことがハッキリした。再浮上の可能性は否定しないが、現状では前が崩れるのを待つしかない立場だろう。

    初ダートの前走を勝って注目されたロードグラディオは、3番手追走も直線で沈み、結局10着。ダート競馬に対する経験値が決定的に乏しい状況で、通用しなかったという評価で今回は十分である。

    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)

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    4月より地方主催のダート統一グレード競走も、戦況記事の掲載は統一GⅠのみとしております。そのため、次回のダート統一グレード競走の戦評記事は、10月14日に行われるマイルチャンピオンシップ南部杯となります。


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