コラム 新スタンドオープン。JBC2019に向け、準備が進む浦和競馬場
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コラム 新スタンドオープン。JBC2019に向け、準備が進む浦和競馬場

2019-09-11 13:00
    かねてから建設中であった浦和競馬場の新2号スタンド(以降、新スタンド)が完成し、9月2日(船橋競馬場外発売日)より一般利用が開始された。9日より始まったこけら落としの開催では、レースを追うカメラワークも新スタンドからの映像が投入。建設中は先頭付近のアップが多かった3~4コーナー付近を、俯瞰で映してくれるようになったことで、レースを振り返りやすくなったとも感じている。
    ところで私は一般利用が開始された9月2日に浦和競馬場に赴き、新スタンドなどを拝見してきた。その際に撮影した写真は当日に私のツイッター上でも紹介させていただいたが、その感想などを交えながら、JBC2019に向けて変わる浦和競馬場の今を紹介したい

    <指定席メインの新スタンド。意外と狭い一般客エリア>

    まずは新スタンドに関する感想から記していきたい。正門から入場し、新スタンドの1階部分を抜けてコース側に出ると、ちょうどゴール前の攻防が間近に見える場所。サラブレッドの蹄音とともにレースの興奮が伝わってくる屋外の椅子席は、絶好の観戦ポイントになるだろう。

    また新スタンドからゴール板の方に目を向けると、新たに設けられた賞典台(ウィナーズサークル)が眼前に広がる。せっかくなら新スタンドの正面まで持って来ればとも思ったが、勝利の余韻に浸りながら表彰を受ける関係者の表情を、しっかり見られる距離感。間近に迫ったJBCで喝采を浴びることになる関係者も、今まで以上に勝利の感動を味わうことが出来るだろう。

    ただし新スタンドそのものは、既設の3号スタンドよりも幅が狭く、屋内に入ると意外と空間がないことに気が付く。またそれに輪をかけているのが、2階席から指定席になっていること(売店と3号スタンドへの連絡通路は一般客も利用できる)。それにより、指定席客以外は1階でしか現金投票を行えないのは難点だ。ネット投票が主流になり、競馬場にいても現金投票を行わない人が増えたとはいえ、JBC当日などはそれを持たない人も多数訪れるはず。そういう日に購入者を捌けるのか、気になるところである。

    <防災拠点になっているが故に気になったこと>


    また浦和競馬場は緊急時の広域避難場所であったり、馬場内にヘリポートが併設されていたりと、防災拠点としての機能も有する。そのため新スタンドには、非常用電源設備や災害時でも利用可能なトイレを設置。また太陽光発電設備なども有し、災害に強い施設を志向して建設されたといっていい。ただそうなっているからこそ、以前から気になっていたことが、新スタンドの建設で改善されるのかは気になっていた。

    それは“競馬場全体のバリアフリー化”である。確かにスタンドの中だけに目を向ければ、車いす用の観戦スペースやエレベーターの設置によって十分対応できている。しかし場内全体を見渡すと、入場門からコース前のアスファルト部分へ出るまでに、どこかで長い階段を下りないといけない構造だった。それが新スタンドを経由することで解消することを期待していたが、そうなっていないと判断しないといけなかった。

    それは防災拠点として考えた場合、スタンド内にいる傷病者を内馬場ヘリポートから緊急搬送する状況を想定すると、階段を使わずにヘリポートに行けるシチュエーションが欲しいため。だがそのスペースは、新スタンドの横に1m強の幅しかない、芝生となっている急傾斜のみ。そのためにはとても利用しにくいと感じたのが、正直な感想である。

    だから個人的には、入場門側からなら2階、コース前のアスファルト側からは1階に入る構造(注)が理想に思っていた。その上でスタンド内のバリアフリー化が出来れば、場内の平面移動は完全に出来たので、防災拠点になっていることを声高にしているなら、そこまで意識してほしかった。何十年も先の話になるかだろうが、いずれ今の3号スタンドを建て替えるという話が出ると思う。その時にこの考えが活かされることを願うことにしたい。

    (注)例は多くないが、例えばJRA東京競馬場は、コース側からは2階、パドック等の裏手からは1階に入る構造になっている。

    <JBCに併せて変わったこと、変わってほしいこと>

    ここまでは新スタンドの話をメインにしてきたが、JBCに向けて整備してきたのはそれだけではない。前述した賞典台の設置もそうだが、2000mの発走地点を改修し、それまで11頭だった2000m戦のフルゲートを12頭に拡大したことも、大きな変化である。

    改修を行ったのは昨秋のことであったが、実際に12頭立てで運用を始めたのは今年に入ってから。安全に実施できることを中央の関係者にも確認してもらうため、5月30日に中央500万下交流を2000mの12頭立てで実施し、手順も踏んだ。11頭のままであれば、JBCクラシックの出走枠をどうするかでもめた可能性もあっただけに、ここに手を付けたことは素直に評価したい

    この他にもJBCに間に合うか不明だが、パドック周辺なども改修する予定と聞いているが、個人的に直してほしいと思っているのがハロン棒の再整備だ。浦和のハロン棒はスタート地点を示すためにまず置かれていて、そうでないハロン棒は最長距離の2000m戦を基準に数字が振られている。そこに1500mのスタート地点を新設した際に、残り1100mと900mのハロン棒が追加。その結果、不規則にハロン棒が並ぶコースになってしまったのだ。

    そこで再整備にあたり、奇数となるハロン棒を撤去して、一般的な200m単位のハロン棒だけにするのが1つ。もう1つは完全に100m単位になるよう、残り500mと300mにハロン棒を追加する一方で、笠松競馬場のように奇数と偶数でハロン棒を色分けする形である。どちらにしてもファンにとって見やすくなるし、騎手も距離感を掴みやすくなるはず。JBCまでの限られた時間で対応できることと感じるので、検討してほしいと思うのだが

    <浦和競馬場開場70周年記念誌>

    このコラムの最後に、今年7月に出版された「浦和競馬場開場70周年記念誌」について紹介したいと思う。

    これは1948(昭和23)年に開場した浦和競馬場の歴史を、当時の新聞記事や時代を映す写真を織り交ぜながら取りまとめたものである。また浦和所属として一時代を築いた名馬の紹介に加え、売得金や県・市に対する配分金推移といった業績関係の資料も充実している。また過去の経営危機など、負の側面についても正面から向き合って記していることもここで触れておきたい。

    だが何より驚いたのが、これを一般向けに廉価(税抜700円)で出版したことへの“英断”だ。実はこういった“年史”の類は、関係者に配布するためだけに製作されることが大半で、出版されたとしても高額な価格設定が当たり前。そのため出版される際に納本の義務がある、国立国会図書館に納本されていないことが珍しくない。結果的にそういった貴重な資料が、ファンの目に触れる機会がほとんどないのが現状なのである。

    その意味で今回の出版をきっかけに、各地方競馬主催者が今後年史を編さんする際に、市販してファンに広く知っていただく流れが生まれることを期待している。もっともそれは、私がいわて競馬マガジン「テシオ」誌上で連載していた“いわて競馬今昔物語”の編さんを、長きにわたって中断していることに対する自戒もあるのだが・・・。

    ※「浦和競馬場開場70周年記念誌」は、発行元である埼玉新聞社の取扱販売店などのほか、浦和競馬場内にある県産品ショップでも購入できます。


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